定額減税が決まりました!|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!
2024/04/12
目次
はじめに
令和6年度税制改正の目玉が2024年(令和6年)限定の定額減税です。当ブログでは、2月2日に改正案の段階で定額減税の概要について取り上げました(リンクはこちら)。その後、2月5日の改正法案審議中に国税庁から所得税定額減税Q&Aが公表されその後も改定による内容の増補が行われています。
今回は3月28日に税制改正法案が成立し定額減税の内容がほぼ確定したことから改めて定額減税の疑問点についてQ&Aを基に解説致します。なお、今回の内容は3月18日改訂版Q&Aに基づいておりますことをあらかじめ申し添えます。また、今回のQ&Aは国税である所得税に関するのみであるため、地方税である住民税の定額減税に関してはこの記事の「おわりに」で簡単に取り上げます。
定額減税の対象者
まず、今回の定額減税が受けられる対象者についておさらいします。定額減税の対象者は、令和6年分所得税の納税者である居住者で、令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下である人です。 ここでの「居住者」とは、国内に住所を有する個人、又は現在まで引き続き1年以上居所を有する個人をいいます。
住所と居所との違いは住所が生活の本拠としている一方、居所は単なる住まいを指します。分かりやすい例で説明しますと、
- 勤務先に近い住まいが日本、別荘が海外にある場合、住所は日本となる
- 現在は海外に赴任・留学・ワーケーションしているものの元の住まいは未だ日本にあり、赴任・留学開始後1年内に日本の元の住まいに戻る場合、住所は日本となる
以上の例を参考にご自身が日本の定額減税を受けることができるかどうかご確認いただけますと幸いです。
(Q&A1-1、1-2)
給与所得がある人の定額減税の時期
定額減税が実際に行われる時期が収入の得方により異なること及び具体的な時期・方法は2月にアップした記事でも取り上げましたが、改めてこの記事でも取り上げます。
給与を得ている場合は6月に最初に支給される給与または賞与(ボーナス)に関する源泉税の天引きが1人当たり3万円減らされる形で実施され、6月最初の支給で上限額まで引ききれなかった場合は、次回以降の支給で順次引ききれなかった残額を源泉税天引きから減らします。年内最終支給までに引ききれない場合は年末調整で減税額を最終確定します。
給与計算ソフトの設定や計算の煩雑さの関係で定額減税を年末調整でまとめてできないかという声がよくありますが、12月の最終支給時まで休職等の理由で無給が続いた場合を除き不可とされています。給与計算ソフトにつきましてはソフトベンダーで定額減税対応を進めているようですので、ベンダーからの情報をご確認ください。
また、掛け持ちして給与を受けている場合は昨年年末調整の対象となった(扶養控除等申告書を提出した)勤務先から支給される給与のみから適用されるため二重で定額減税は受けることができない仕組みになっています。万が一、いずれの勤務先からも定額減税が適用されなかった場合は令和6年の年末調整または確定申告で適用を受けることになります。
扶養家族についても給与所得者本人の給与源泉税から定額減税を受けることができますが、定額減税の金額は直近の扶養控除等申告書を基に算定するため、配偶者控除や扶養控除の対象外となる、令和5年度所得が900万円超の人の同一生計配偶者と16歳未満の扶養家族の分の定額減税が受けられない可能性があります。この場合、定額減税適用開始前に「源泉徴収に係る申告書」を追加で勤務先に提出することで定額減税を受けることができるようになります。
一方、非居住者である扶養家族については配偶者控除や扶養控除の対象であったとしても定額減税の対象外となりますので、仕送りや留学をしている家族がいらっしゃる方は特に注意が必要です。
(Q&A1-6、6-1、6-2)
給与所得がない人の定額減税の時期
ここでは給与を特にもらっていない場合の定額減税の時期及び方法について取り上げます。
このうち、公的年金を受けている方については6月以降最初に支給される年金の源泉税から順次限度額に達するまでの間天引き額が減らされる形で適用されます。定額減税の対象となる公的年金は複数あり対象となる年金を複数受けている方は定額減税が二重適用になる可能性があり、確定申告をして定額減税額を調整することになります。
一方、給与も公的年金も受けていない方については、予定納税がある場合7月納付分で納付額が減額され、上限額まで引ききれない場合は11月納付分で残額が減額され、それでも引ききれなかった場合は確定申告で最終確定します。予定納税額が特にない場合は確定申告で定額減税が適用されることになります。
なお、退職金について源泉徴収がありますがこの源泉徴収では定額減税が適用されません。よって、退職後給与や公的年金などで定額減税が適用されない場合確定申告で定額減税を受けることになります。
(Q&A1-7、1-8、1-9、1-10)
給与があるのに定額減税の適用がない?
ここからは細かい論点をいくつか取り上げます。6月に給与またはボーナスを受けているのに定額減税が適用されないケースがありますので、以下に列挙します。
- 2024年(令和6年)6月1日現在、給与の支払者のもとで勤務している人のうち、給与等の源泉徴収において源泉徴収税額表の乙欄又は丙欄が適用される居住者の人 (つまり、給与の支払者に年末調整書類である扶養控除等申告書を提出していない人)
- 2024年(令和6年)6月1日より後に雇用された人(ただし、年内に給与の支払者に扶養控除等申告書を提出すれば提出後の給与から順次定額減税を受けることができます)
また、年末調整で定額減税を最終確定させるときに定額減税の適用から除外されるケースもあります。
- 2024年(令和6年)中の主たる給与の収入金額が2,000万円を超える人(そもそも年末調整対象外ですので、確定申告をして適用額を最終確定することになります)
- 2024年(令和6年)分の給与に係る源泉所得税について、災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律(昭22法律第175号)の規定による徴収猶予や還付を受けた人
- 2024年(令和6年)分の年末調整時にその給与の支払者に扶養控除等申告書を提出していない人
- 2024年(令和6年)5月31日以前において、死亡や海外赴任などの理由で年の中途での年末調整の対象となる人
- 合計所得金額が1,805万円を超える人 (そもそも定額減税対象外のため確定申告をしても適用除外となります)
以上のケースをご確認いただき、「定額減税が適用されていない」というトラブルを未然に防止しましょう。(Q&A2-1、2-2)
給与と年金両方から定額減税の適用があった場合
公的年金を受けている方の中には給与を受けている場合があり、給与と公的年金の両方の源泉税で定額減税が二重適用される場合があります。この場合は確定申告をして最終的な定額減税額を確定することになりますので二重適用の可能性がある方は来年2月~3月に忘れずに確定申告をするようにしましょう。
(Q&A2-3)
定額減税実施前に死亡または日本出国の場合
2024年(令和6年)5月 31 日以前に、死亡により退職した人及び年の中途で海外の支店等への転勤などにより出国し非居住者となった人は、以下の方法により、定額減税の適用を受けることとなります。
- 2024年(令和6年)6月1日以後にいわゆる準確定申告書を提出する。
- 2024年(令和6年)5月31 日以前に準確定申告書を提出した場合には、令和6年6月1日以後に更正の請求書を提出する。
なお、出国を理由とする場合日本国内における納税管理人を選任したときは選任した納税管理人が年明け確定申告書を提出することで適用を受けることもできます。
(Q&A2-7)
定額減税実施後に子供が生まれた場合
定額減税が6月以降順次適用された後、年内にお子様が生まれるケースがあるかと思います。定額減税の対象者は2024年(令和6年)年末時点で最終的に判定され年内に生まれたお子様の分も適用対象と一方、給与所得者のお子様が定額減税適用後に生まれた場合そのお子様については給与支給時に定額減税が適用されないケースが生じます。その場合でも適用対象ではあるため年末調整または確定申告で生まれたお子様の分の定額減税を受けることになりますので、その点はご安心ください。
(Q&A6-12)
5月分給与が6月に支給される場合の定額減税
勤務先によっては、給与支給対象が前月分となるところがあります。例えば5月末までの1か月分の給与が6月に支給される場合、定額減税に関する源泉税減額はどのタイミングから行うのでしょうか?
所得税の定額減税は2024年(令和6年)6月以降最初に支給される給与またはボーナスから適用されるとされています。このため、5月末までの1か月分の給与が6月に支給される場合は定額減税適用対象の給与となります。一方、2023年(令和5年)以前の勤務を対象にした給与や賞与が2024年(令和6年)に支給される場合、支給が6月以降になる場合は支給時期に関係なく定額減税の対象外となりますので、誤って定額減税を適用しての源泉税天引きをしないようご注意ください。
(Q&A7-3、7-4)
税額が少なく定額減税が満額受けられない場合
定額減税Q&Aには載っていませんが、定額減税について関与先から度々質問を受けることについてこちらで取り上げます。その質問は所得税額が定額減税額未満となり定額減税を満額受けることができなかった場合の残額の取扱いです。2月にアップした記事では定額減税を受けることができなかった分について還付を受けることができないため、必ずしも低所得者にとってお得な制度ではないとお話ししました。
今回の税制改正確定時点においても定額減税を受けることができなかった分について税金還付がない点は特に変更ありません。ただし、定額減税の恩恵を満額受けることができない世帯向けの低所得者支援及び定額減税補足給付金制度が内閣府地方創生推進室より公表(リンクはこちら)され、2024年(令和6年)のできる限り早期に定額減税を満額受けることができないことが判明した世帯から順次非課税給付金を支給するとされています。税金還付ではなく非課税給付金の形ではありますが実質的に定額減税の恩恵が満額受けられるため、低所得者にとって定額減税の恩恵がない状態ではなくなります。給付金支給判定は令和5年度の所得金額を令和6年度見込所得金額と推定して行い、6月中には給付金の支給ができるように準備するとのことです。
給付金の支給は住民税定額減税分と合算で行われることから市区町村が主体となって行い、住民票のある市区町村から支給対象者に給付同意の通知がされるとのことです。
おわりに
今回は令和6年度税制改正において目玉となっている定額減税について国税庁Q&Aを基に制度の解説をしました。ここでQ&Aの対象外である住民税の定額減税について簡単にお話します。対象者は2023年(令和5年)分として2024年(令和6年)6月から2025年(令和7年)5月までの間に住民税納税義務のある居住者及びその居住者の扶養家族です。1人当たり1万円の減税となっており、給与からの特別徴収(源泉天引き)の場合は2024年(令和6年)7月支給分から2025年(令和7年)5月支給分までの期間にわたって均等に定額減税が適用されます。また、公的年金からの特別徴収の場合はは2024年(令和6年)10月1日以降最初の支給分において適用され、上限額まで引ききれなかった場合は次回支給分以降の天引き額から順次引ききれなかった残額が控除されます。
一方、普通徴収(本人直接納付)の場合は第1期(2024年(令和6年)6月納期)分において適用され、第1期分で上限額まで引ききれなかった場合は、第2期分以降の税額から順次引ききれなかった残額が納付額から控除されます。
今回の記事が経理・人事担当者はもちろんのこと多くの方のお役に立ちますと幸いです。