公認会計士・税理士熊谷亘泰事務所

【令和5年7月版】路線価とは何か|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!

お問い合わせはこちら

【令和5年7月版】路線価とは何か|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!

【令和5年7月版】路線価とは何か|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!

2023/07/07

目次

    はじめに

    毎年7月1日になりますと国税庁から路線価が公示され、昨年との比較の形で報道されます。路線価は土地価格の一つですが、そもそもどのような形で使うのか、また、地価や販売価格など様々ある土地価格との違いは何でしょうか?
    今回は路線価について疑問に思うであろう事項について解説いたします。

     

    路線価とは

    まず、路線価について解説します。路線価とは、「路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額(千円単位)のこと」をいい、路線価が定められている地域の土地等を評価する場合に用います。つまり、道路に面する宅地(建物の敷地となる土地)の1㎡当たり単価です。路線価は原則、交差点を区切りに道路に沿って示されています。国税庁が路線価を示していることからもわかる通り税金計算に用いられる価額で、相続、遺贈または贈与により取得した土地に係る相続税及び贈与税の計算の基になる財産評価に用います。
    路線価の公示時期は例年7月1日ですが、財産評価の適用対象は同じ年の1月1日~12月31日の間に生じた相続、遺贈及び贈与です。では、こうした税金計算に路線価を用いるのはなぜでしょうか?それは評価方法を理解すると理由がわかります。次の項目で解説します。

    国税庁HP 路線価図の説明
     

    路線価の評価方法

    では、路線価はどのように算出されているのでしょうか?路線価は毎年1月1日を評価時点として1年間の地価変動などを考慮し、地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に定めています。つまり基になっているのは主に地価公示価格です。
    地価は、毎年1回国土交通省令で定めるところにより2人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求め、その結果を審査し必要な調整を行って一定の基準日(地価公示:1月1日、地価調査:7月1日)における当該標準地の単位面積当たりの正常な価格(自由な土地売買取引が行なわれるとした場合におけるその取引(農地、採草放牧地又は森林の取引を除く。)において通常成立すると認められる価格)(地価公示法第2条第1項、第2項)とされています。
    ですから、路線価は土地を売買した場合の価格に連動しています。相続税法において相続、遺贈及び贈与時点の土地評価について路線価を用いるとする規定はなく、あくまで相続などの時点での時価で評価するという建前になっています。実際に課税対象の土地について直近売買事例があり、その価額が路線価とかけ離れている場合に直近売買事例を評価額とすべきと判断した裁判例もあります。それでも、路線価という価格がある理由は直近の売買事例がない場合があり、ある場合でも売手買手双方の交渉により売買価額が大きく変動している可能性があるためです。
    また、地価公示価格等を基にした価格の80%程度とされているのは課税負担をいたずらに大きくしないためとされています。ただし、先述の通り取引価額が異常に高騰している局面であるにもかかわらず、直近の路線価を適用して相続税評価をしたことを課税当局から否認され裁判で課税当局の処分が認められた事例もありますので相続や贈与が発生した場合は土地価格の動向に十分に留意すべきです。

     

    路線価の評価方法

     

    ここからは実用的な話として路線価図をどのように使えばよいのかお話します。右の図は弊事務所のある札幌市の中で新幹線ホーム建設により特に価格上昇率が高い札幌駅東側の路線価図です。
    路線ごとに数字が記載されており、1㎡あたり価額(千円単位)が記載されています。また、数字の右側にアルファベットが記されており、図上段の説明のアルファベットの借地権割合に対応しています。例えば北5条東5丁目と北5条東6丁目の間の道路ですと「120E」と示されていますが、意味は1㎡あたり価額が12万円で、借地権が設定されている土地のうち借地権として評価する割合はEの50%(残りの50%は土地本体価額に按分)であるということです。(ご参考までに、昨年の同じ道路の路線価は9万4千円でした。つまり1年間で27.6%価格が上昇しています。)
    相続や贈与における土地の評価については、相続税解説シリーズ第5回をご参照ください。
    また、数字が記載されている図形が円、楕円、菱形と路線によって異なっており、黒塗りがある路線もあります。これは、路線沿いの土地用途を示しており、その意味は図上段の左側に掲載されています。例えば北5条東5丁目と北5条東6丁目の間の道路ですと、菱形の囲みになっており、両方向とも中小工場地域であるということです。
    なお、路線価図は税務署単位で公表されており、別の税務署の管轄である地区については、図の左下の通り別の路線価図を参照する形式になっています。

     

     

    路線価がない地区の評価

    路線価は全ての路線沿いに示されているわけではなく、原則市街地化区域に限定されています。よって、農地や森林など市街地化されていない区域には路線価が設定されていません。
    右図は、令和5年から北海道日本ハムファイターズの本拠地になった北広島市のエスコンフィールド北海道周辺の路線価図です。右上の住宅地周辺の道路には路線価が設定されていますが、路線図左側にあるエスコンフィールド北海道(左側のFビレッジと書かれている地区にあります)や「北広島市総合体育館」周辺の道路には路線価が示されていません。示されていない地域は都市計画法に定める「市街化調整区域」に該当し、住宅や商業施設、ホテルなどの建築が規制されている地帯です。

    路線価がない場合、相続や贈与における土地の評価は固定資産税評価額に一定の倍率をかけて評価額を計算しますが、その計算方法の対象であるという意味で路線価図に「倍率地域」と記載されています。路線価図は国税庁HPから丁目単位で検索することができ、該当する地名や丁目が無ければ「倍率地域」であり、固定資産税評価額を基に評価するとご理解いただけるのではないでしょうか。
     

    土地の価格にはいくつかあるけれど…

    ここまでの路線価の説明の中で、「地価」「売買事例」「固定資産税評価額」などいくつかの土地価格が登場しました。地価及び売買事例については上述しましたが、路線価と同じように税金計算に用いる土地評価額である固定資産税評価額についてここで説明します。
    固定資産税は1月1日時点で固定資産を保有しているものに対し固定資産が所在する市町村から課税される税金で、税額計算及び徴収は市町村の固定資産税部門が行います。市町村の事務負担軽減観点から土地及び家屋に対する固定資産税の評価は毎年ではなく3年に1回と定められており、直近では令和3年(2021年)が全国一律で評価実施年度でした。この評価実施年度を基準年度といいます。ただし、基準年度に該当しない年度に建物の増改築が行われたり用途変更が行われたりした場合は、基準年度でなくても評価替えされます。
    よって、固定資産税評価額は路線価と比較して直近の土地価格の実態との乖離が大きくなる可能性があります。ですが、路線価が示されていない地域の場合土地評価のよりどころが固定資産税評価額しかないことがほとんどですので致し方ないところです。
    固定資産税評価額は基準年度の公示地価に70%をかけたものとされており、70%をかける理由は3年に1回の評価で実態との乖離が大きくなることから過大な税負担とならないようにするためとされています。
    なお、相続税や贈与税の評価において固定資産税評価額を用いる場合にかける倍率は住所ごとに評価倍率表に示されています。以下のリンクの説明をご参照ください。
    国税庁HP 評価倍率表(一般の土地等用)の説明

     

    おわりに

    今回は路線価について解説しました。路線価は地価と連動しており、その時々の景気や土地の利用動向により価格が変動します。日経新聞の記事を引用しますと、2023年(令和5年)度の路線価については「全国約32万地点の標準宅地は平均で前年比1.5%上昇した。上昇は2年連続。新型コロナウイルスの影響が弱まり、観光地や繁華街を中心に人出や経済活動の回復が著しく、22年の上昇率を1ポイント上回って」います。
    また、「標準宅地の変動率を都道府県別にみると、25都道府県が上昇し、前年より5県多かった。最も上昇したのは北海道(6.8%プラス)で、札幌市内や近郊で住宅地の需要が伸びたほか、30年度末の北海道新幹線延伸を見据えて商業地などでも上昇地点が目立って」います。路線価の読み方の事例で取り上げましたが、当事務所のある北海道の路線価上昇が目立っています。この文章だけ見ると北海道全体で土地の価格が上がっているのではないかと思う方もいらっしゃるかもしれません。
    ですが、必ずしもそうではなく日経新聞北海道版の記事を引用しますと「札幌圏以外で路線価が上昇した地点は限られるものの、前年に路線価が下がった網走や名寄などで今年、横ばいとなった。帯広や稚内、苫小牧は長年にわたる路線価の下落に歯止めがかかった。新型コロナウイルスの感染拡大前に多くのインバウンド(訪日外国人)客でにぎわったスノーリゾート地の路線価も横ばいだった。ニセコエリアにある倶知安町ニセコひらふ1条3丁目(道道ニセコ高原比羅夫線通り)の路線価は72万円で、伸び率は3年連続でゼロとなった。富良野市幸町(東5条通り)の伸び率も4年連続ゼロだった」とあり、札幌近郊以外では路線価の伸びが頭打ちになったり、未だに低迷したりしている地域が多くあります。路線価が低いことは税金負担の面では有利になりますが、地域経済にとってはまだまだ改善の余地があるということになります。
    果たして来年2024年(令和6年)度の路線価はどうなっているのでしょうか?評価基準日である1月1日の状況が重要なカギになります。私個人としては経済の地域格差が縮小されあらゆる地域が明るく元気になることを願うばかりです。

    日本経済新聞記事7月3日:路線価2年連続上昇 23年分1.5% コロナ禍から回復鮮明

    日本経済新聞北海道版記事7月3日:北海道の路線価6.8%上昇 全国首位、札幌圏再開発進む

    当店でご利用いただける電子決済のご案内

    下記よりお選びいただけます。