公認会計士・税理士熊谷亘泰事務所

インボイス解説シリーズ(令和6年4月追加分)①|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!

お問い合わせはこちら

インボイス解説シリーズ(令和6年4月追加分)①|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!

インボイス解説シリーズ(令和6年4月追加分)①|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!

2024/04/26

目次

    はじめに

    2023年(令和5年)10月1日より開始されたインボイス制度が導入されて半年がたちました。インボイス制度開始後インボイス実務が動くにつれて新たな不明点や疑問点が生じています。今回はこうした不明点や疑問点に答えている国税庁のインボイスQ&Aの2024年(令和6年)4月改訂版で追加された項目を取り上げます。今回の改訂では実に23の項目が追加されています。ボリュームが多いため今回は3回に分けてアップします。今回は特にインボイスの書き方、出し方に対する項目が中心です。2回目以降は以下のリンクをご覧ください。
    国税庁Q&Aの解説令和6年4月追加分その2
    国税庁Q&Aの解説令和6年4月追加分その3

    なお、過去にインボイスQ&Aに取り上げられた項目のうち特に多くの事業者に影響があるものについて過去に解説しておりますので、以下にリンクを貼っておきます。
    第5回 国税庁Q&Aの解説その1
    第6回 国税庁Q&Aの解説その2
    第7回 国税庁Q&Aの解説その3
    第8回 国税庁Q&Aの解説その4
    国税庁Q&Aの解説令和5年税制改正編

    国税庁Q&Aの解説令和5年10月追加分
     

    事業年度の途中から消費税課税事業者になった場合の基準売上高

    事業者によってはインボイス発行を理由とした取引先の要望などにより事業年度の途中から適格請求書発行事業者登録をするケースがあります。登録前は免税事業者であった場合、事業年度の途中であっても登録日から課税事業者に変わり消費税の納税義務が生じます。
    今回のように同じ事業年度において免税事業者と課税事業者の期間がある場合2事業年度後の課税事業者判定に用いる基準売上高の計算方法が問題になります。基準売上高が1,000万円を超える場合2事業年度後は課税事業者となるのですが、基準売上高によって課税事業者となる場合適格請求書発行事業者をやめても消費税の納税義務が残ったり2割特例が利用できなくなったりすることから大変重要な基準なのです。
    本題に戻りますが、同じ事業年度において免税事業者と課税事業者の期間がある場合、事業年度を通した売上、つまり免税事業者期間と課税事業者期間の両方の売上高を合算します。ただし、免税事業者期間は消費税が上乗せされていない前提での売上高となるため税込で集計し、課税事業者期間は経理の際用いている方法(税込または税抜)で集計します。
    例えば、2023年(令和5年)10月1日に適格請求書発行事業者に登録されて初めて課税事業者になった事業者で事業年度が2023年(令和5年)4月1日~2024年(令和6年)3月31日の1年間だった場合で、登録前の2023年(令和5年)4月1日~2023年(令和5年)9月30日の売上高が税込500万円、登録後の2023年(令和5年)10月1日~2024年(令和6年)3月31日の売上高が税込500万円で税抜経理を採用しているときは、
    基準売上高:登録前500万円+登録後500万円÷110×100=954.5万円
    となり、基準売上高による判定では2事業年度後において課税事業者に該当しないことになります。ただし、適格請求書発行事業者である限りは基準売上高に関係なく課税事業者となりますのでその点はご留意ください。
    (インボイスQ&A8-2)

     

    インボイス登録サイトとレシートで記載名称が異なる場合

    コンビニなどフランチャイズ方式で経営されている場合などは、レシートなどに記載の店舗名と経営している実際の社名や屋号が異なるケースがあります。インボイス登録サイトには実際の社名や屋号で登録されるため、登録番号が記載されていても実際に登録されている業者の番号なのか一目では判定不能な場合があります。この場合、レシート等に実際の社名や屋号がないとインボイスとして認められないのではないかという疑問が出ます。
    Q&Aによると必ずしも実際の社名や屋号が記載されている必要はなく、電話番号や住所など他の情報で一致が確認できる状態であればよいとされています。レシート等を受け取った側にとっては本当に登録番号が正しいのか確認する場合負担になりますが、レシート等を発行する側にとってはレジ等の回収の手間が省けることになります。
    (インボイスQ&A21-2)

     

    セミナー領収書でのインボイス

    多数の会員を抱える団体が主催して会員限定セミナーを開催することがありますが、参加者が多数の場合参加費を募る場合領収書に宛名を書く必要があると事前準備や当日受付の事務負担が重くなります。一方、宛名が不要な簡易インボイスは不特定多数を相手にする事業の場合に限定されます。では会員限定の場合、対象者が特定ができるため面倒でも領収書に宛名が必要になるのでしょうか?
    Q&Aによると、対象者は特定できるものの相手方は一意ではなく対象者が多数になるため領収書等への宛名は特に不要とされています。もちろん、宛名を書いても問題ありません。
    (インボイスQ&A24-2)

     

    消費者限定取引でのインボイス交付

    インボイス制度は受け取る側が事業者で消費税納税の際に仕入や経費でかかった消費税を控除するために必要となる制度です。そのため、取引先が消費者である場合にはインボイス対応していなくても特に問題ないことになりますが、もし適格請求書発行事業者に登録している場合相手が消費者のみとわかっていてもインボイス対応が必要なのでしょうか?
    消費者のみを相手とする取引の場合そもそもインボイスのニーズがないためインボイス対応は不要です!ただし、相手がインボイス対応の領収証等を求めてきた場合インボイス発行交付義務があることにはご留意ください。
    (インボイスQ&A24-3)

     

    免税事業者が発行する請求書等の有効性

    消費税免税事業者の立場を維持するため、適格請求書発行事業者として登録せずインボイスを発行しない事業者も少なくありません。この場合、インボイス適格でない請求書等ですと消費税相当額と記載されている金額は消費税として認められないのですが、免税事業者が消費税相当額を上乗せしたり、消費税相当額として別記したりすることは認められないのでしょうか?
    請求書等への消費税相当額の上乗せや別記そのものは適格請求書発行事業者でない場合でも法令違反に該当しないとされています。むしろ、免税事業者であることを理由とした消費税相当額の値引き要求は独占禁止法に規定する不当な取引制限や優越的地位の濫用として行政処分を受けることがありますし、信頼関係の崩壊につながりますので消費税免税を理由とした値引交渉はくれぐれも行わないようご注意ください。
    一方、登録番号が付与されていないにもかかわらずあたかもインボイス適格であるかのような請求書等はインボイス非適格であることはもちろん、不実記載に伴う消費税法違反となり1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることがありますので、適格請求書発行事業者でない場合は未登録の番号を記載するなどインボイス適格だと誤認させる請求書等を交付することのないようご注意ください。
    (インボイスQ&A26-3)

     

    予約サイトにおけるインボイス再発行

    近年はホテルや飛行機などの予約を予約サイトで行い代金決済も当該サイトで完結するケースがあります。この場合領収書は媒介者交付特例を利用しサイト運営会社が予約サイトから直接ダウンロードする形となっていることがあります。この場合領収書の再発行を顧客が求められたとき、予約サイトからの再ダウンロードでよいのかあるいは宿泊先または航空会社が直接発行しなければならないのかが問題になります。
    媒介者交付特例が適用される場合予約サイトからの再ダウンロードの形での再発行卯で差支えないとされています。もちろん、ダウンロードした事業者においては同一内容の領収書を共にインボイスとして保存することはできず、いずれか1つとなることは言うまでもありません。
    なお、サイト運営会社が適格請求書発行事業者でない場合は媒介者交付特例が適用できず領収書はホテルまたは航空会社が直接発行したインボイス適格領収書でないとインボイス非適格となります。
    (インボイスQ&A49-2)

     

    手書き領収書による簡易インボイスの記載

    旅館やスナック、バーなどの中には不特定多数の顧客を相手にするもののレジを備えておらず手書きの領収書で対応しているお店があります。手書きの領収書をインボイスとして発行する場合、インボイスの要件となる宛名、消費税率、消費税額を全て手書きで記載することは煩雑で時間もかかることからお店、お客さんともに負担となり実務上全ての要件を記載していないケースが多くみられます。
    インボイスQ&Aでは、不特定多数の顧客を相手にする事業で手書きの領収書をお客さんに渡す場合、より要件の緩い簡易インボイスの要件が適用可能となるため、宛名は不要で消費税率及び消費税額についてはいずれかの記載のみで足りるとされています。また、税抜金額の記載は不要とされています。
    なお、旅館などでは入湯税や宿泊税など消費税課税対象外の宿泊代金が含まれる場合がありますが、その場合は消費税課税対象外の入湯税等の金額と消費税課税対象額の税込額をそれぞれ記載すればよいとされています。
    (インボイスQ&A58-2)

     

    おわりに

    今回は2024年(令和6年)4月に公表された国税庁インボイスQ&Aで新規に登場した項目のうち、特にインボイスそのものの発行についての実務的な疑問点と取り上げました。
    インボイス制度が始まり、記載要件の原則を杓子定規に当てはめると実際に発行する側にとっては大きな負担となる事態が生じています。今回のQ&Aはインボイスとしての性格は崩さずにインボイス発行の実務負担に配慮したものになっているとの印象を受けます。
    是非今回の記事をご確認になり少しでもインボイス発行事務負担の軽減に役立てば幸いです。

     

    当店でご利用いただける電子決済のご案内

    下記よりお選びいただけます。