公認会計士・税理士熊谷亘泰事務所

【2022年12月リライト】インボイス解説シリーズ①

お問い合わせはこちら

【2022年12月リライト】インボイス解説シリーズ①|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!

【2022年12月リライト】インボイス解説シリーズ①|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!

2022/12/12

目次

    はじめに

    このシリーズは令和5年(2023年)10月1日より導入される消費税における適格請求書保存方式(インボイス制度)について8回にわたってお話します。インボイス制度の話題が登場して久しいのですが、未だインボイスと言われてもピンとこない方もいらっしゃると思います。今回の記事でどのようなもので生活にどのような影響があるのかご理解いただけますと幸いです。
    シリーズの構成は以下の通りです。
    第1回 インボイス制度の概要(今回)
    第2回 インボイスに必要な事項
    第3回 インボイス制度導入対応とスケジュール
    第4回 インボイス制度導入後の事務と消費税申告
    第5回 国税庁Q&Aの解説その1
    第6回 国税庁Q&Aの解説その2
    第7回 国税庁Q&Aの解説その3
    第8回 国税庁Q&Aの解説その4
    導入はまだ先だし、見送りになる可能性があるから急がなくてよいとお考えの方もいらっしゃるかと思いますが、今から制度をよく理解して余裕を持って対応できるようになりましたら幸いです。なお、この記事の内容は令和4年(2022年)11月時点の法令及び国税庁Q&Aの内容に基づいています。

     

    インボイスとは?

    初めに適格請求書(いわゆるインボイス)について概要を説明します。適格請求書とは、消費税課税事業者が毎年税務署に納付する消費税について、別の事業者に支払った消費税「仕入消費税」を差引くことができるようにするために必要な保存要件を満たす請求書等とご理解ください。
    本来消費税は最終消費者に課税されているのですが、最終消費者が納税せず販売した業者が消費者に代わって納税する「間接税」となっています。一方、販売した業者も仕入や経費の支払で別の業者に消費税を支払っており、最終消費者から預かった消費税の一部が別の業者に移転していることになります。そのため、業者が納税する消費税は、売上に含まれる消費税ー仕入・経費に含まれる消費税となります。インボイスは、仕入・経費に含まれる消費税を別の業者に支払った証明書として導入されます。従来仕入・経費に含まれる消費税は請求書等の保存と会計帳簿への記帳で控除可能となっていたものが、インボイス制度導入で決まった要件を満たした書類の保存が求められるようになったというわけです。
    請求書「等」とあえて鍵かっこをつけましたが、請求書と記載されていなくても要件が満たされていれば契約書、納品書、領収書等も適格請求書(インボイス)に該当するからです。また、請求書等とは別の新たな取引文書を発行・交付する必要はなく、請求書等に必要事項を追加するだけです。
    以降、「仕入消費税」「仕入税額」「請求書」という言葉が登場しても厳密に仕入れや請求書のみを指すものではないという理解でお読みいただければと思います。

     

    適格請求書の発行・交付義務者

    適格請求書(インボイス)は、売手である適格請求書発行事業者が日本国内で課税資産の譲渡等(消費税がかかる取引)を行った場合に買手である相手方に交付する義務があります。この義務は以下に掲げる事業の性質上適格請求書を交付することが困難な場合を除き、必要な要件を満たした文書を交付する必要があります。

    1. 3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の輸送
    2. 出荷者等が別の業者に委託して卸売市場において行う生鮮食料品等の販売
    3. 生産者が農協、漁協又は森林組合等に委託して行う農林水産物の販売
    4. 3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等
    5. 郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限られます)
       

    インボイス制度導入の経緯

    ここでは、インボイス制度が導入された経緯を説明します。
    海外では消費税に相当する税金(売上税や付加価値税などと呼ばれます)の仕入税額控除にインボイスの保存を求める国や地域が既にあります。現在の日本における仕入税額控除は取引書類を保存の上、会計帳簿に「取引先」「仕入日」などを記載することで受けることができます。この方式ですと保存する書類が少なくなる半面、相手先が預かった消費税と対応しているかどうかが不明となることがあります。
    また、令和元年(2019年)10月1日からの複数税率制度導入で、食料品店での買い物など1つの取引に複数の税率が存在することもあり、正しく区分されているかどうか検証できるようにする必要もあります。
    以上の理由で日本においてもインボイス制度が導入されたものと思われますが、複数税率導入と共にインボイス制度導入となると企業の準備や実務負担が大幅に増加し、反発が高まることが懸念されたのでしょうか、インボイス制度は複数税率導入から4年遅れの令和5年(2023年)10月1日からとなりました。

     

    インボイスに必要な項目

    インボイスに必要な項目を掲げます((新)消費税法第57条の4①、インボイス通達3-1)。

    1. 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
    2. 課税資産の譲渡等を行った年月日
    3. 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡である旨)
    4. 課税資産の譲渡等の税抜価格又は税込価格を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
    5. 税率ごとに区分した消費税額等
    6. 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
       

    特徴的な項目は、1.適格請求書発行事業者の登録番号と5.税率ごとに区分した消費税額等です。法律や通達でインボイスの様式は特に定められておらず、上記の6つの記載事項が載っていれば様式は自由です。また、先述の通りインボイスは「請求書」形式に限定されません。
    必要な記載事項の詳細については第2回で詳しく触れます。

     

    インボイスの導入スケジュール

    インボイス制度導入に向けてのスケジュールを以下時系列で説明します。

    令和3年(2021年)10月1日 適格請求書発行事業者(インボイスを発行・交付できる事業者)の登録申請受付開始
    令和5年(2023年)3月31日 運用開始日からインボイスを発行・交付する業者の登録申請受付締切
    令和5年(2023年)10月1日 消費税インボイス制度の運用開始

    ここまでが消費税インボイス制度開始前までのスケジュールです。当然ながらインボイスを発行・交付する業者は、令和5年(2023年)10月1日の運用開始までにインボイスを発行できるよう、システム改修や書式変更などの準備する必要があります。
    インボイス制度導入後、インボイスを発行していない事業者からの仕入や経費は仕入税額控除の対象外となります。しかしながら導入していきなり仕入税額控除を受けられなくなると急激に消費税の納付額が上がるリスクもあることから、インボイス制度開始後もインボイス適格でない請求書等による仕入や経費について仕入税額控除に関する経過措置があります。

    令和5年(2023年)10月1日~令和8年(2026年)9月30日  仕入税額相当額の80%控除可能
    令和8年(2026年)10月1日~令和11年(2029年)9月30日  仕入税額相当額の50%控除可能

    この経過措置を受けるために必要な対応は第4回目で詳しく触れます。

     

    もしもインボイスが入手できなかったら

    もし何かの手違いでインボイスが取引先から交付されなかった場合はどのようにすればよいのでしょうか。先ほど説明した6年間の経過措置はありますが、全額仕入税額控除を受けるためにインボイス要件を満たそうとして、加筆などで要件を満たしてもインボイス適格とはなりません。そのため、インボイスを発行する業者であれば後日改めてインボイス交付を依頼し交付を受けることになるでしょう。取引後速やかにインボイスを交付するのが原則でありますが、万が一の手違いで交付が遅れたとしてもインボイスは有効とされますので、すぐに受取れなかったとしても諦めずに交付するよう相手先に依頼すると良いでしょう。
    それでも相手先が交付に応じない場合、売手である相手先が適格請求書登録事業者がある場合交付義務がありますので、粘り強く交付依頼してください。交付義務がある業者が交付しなかった場合についても令和5年(2023年)10月1日のインボイス制度開始後6年間の経過措置の対象となり、仕入税額控除の一部を受けることが可能ですが、相手方に交付義務がある以上インボイス交付を依頼すべきと考えられます。

     

    おわりに

    今回はインボイス制度の概要をお話致しました。
    インボイス制度開始はリライト時の令和4年(2022年)12月12日から数えますと残り10か月余りとなり、制度開始時からインボイスを発行するための業者登録期限化令和5年(2023年)3月31日と3か月余りと残り少なくなりました。当事務所では早めに関与先にインボイス制度の個別説明を行い、必要な場合業者登録申請を行っていますが、申請が締切近くになりますと登録申請が殺到し税務当局での審査が後回しとなり申請から登録までに多くの期間を要します。また、インボイス対応にはシステム改修や書式変更を要する場合もあり、その場合更に時間を要します。インボイス制度開始に間に合わなくなりますと、得意先から仕入税額控除に必要なインボイスを受取れないことによるクレーム、場合によっては取引停止になることもあり得ます。このシリーズをご覧いただき早めの対応をお願い致します。

     

    当店でご利用いただける電子決済のご案内

    下記よりお選びいただけます。