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2022/07/21

目次

    はじめに

    毎年7月1日になりますと国税庁から路線価が公示され、昨年との比較の形で報道されます。路線価は土地価格の一つですが、そもそもどのような形で使うのか、また、地価や販売価格など様々ある土地価格との違いは何でしょうか?
    今回は路線価について疑問に思うであろう事項について解説いたします。

     

    路線価とは

    まず、路線価について解説します。路線価とは、「路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額(千円単位)のこと」をいい、路線価が定められている地域の土地等を評価する場合に用います。つまり、道路に面する宅地(建物の敷地となる土地)の1㎡当たり単価です。路線価は原則、交差点を区切りに道路に沿って示されています。国税庁が路線価を示していることからもわかる通り税金計算に用いられる価額で、相続、遺贈または贈与により取得した土地に係る相続税及び贈与税の計算の基になる財産評価に用います。
    路線価の公示時期は例年7月1日ですが、財産評価の適用対象は同じ年の1月1日~12月31日の間に生じた相続、遺贈及び贈与です。では、こうした税金計算に路線価を用いるのはなぜでしょうか?それは評価方法を理解すると理由がわかります。次の項目で解説します。

    国税庁HP 路線価図の説明
     

    路線価の評価方法

    では、路線価はどのように算出されているのでしょうか?路線価は毎年1月1日を評価時点として1年間の地価変動などを考慮し、地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に定めています。つまり基になっているのは主に地価公示価格です。
    地価は、毎年1回国土交通省令で定めるところにより2人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求め、その結果を審査し必要な調整を行って一定の基準日(地価公示:1月1日、地価調査:7月1日)における当該標準地の単位面積当たりの正常な価格(自由な土地売買取引が行なわれるとした場合におけるその取引(農地、採草放牧地又は森林の取引を除く。)において通常成立すると認められる価格)(地価公示法第2条第1項、第2項)とされています。
    ですから、路線価は土地を売買した場合の価格に連動しています。相続税法において相続、遺贈及び贈与時点の土地評価について路線価を用いるとする規定はなく、あくまで相続などの時点での時価で評価するという建前になっています。実際に課税対象の土地について直近売買事例があり、その価額が路線価とかけ離れている場合に直近売買事例を評価額とすべきと判断した裁判例もあります。それでも、路線価という価格がある理由は直近の売買事例がない場合があり、ある場合でも売手買手双方の交渉により売買価額が大きく変動している可能性があるためです。
    また、地価公示価格等を基にした価格の80%程度とされているのは課税負担をいたずらに大きくしないためとされています。ただし、先述の通り取引価額が異常に高騰している局面であるにもかかわらず、直近の路線価を適用して相続税評価をしたことを課税当局から否認され裁判で課税当局の処分が認められた事例もありますので相続や贈与が発生した場合は土地価格の動向に十分に留意すべきです。

     

    路線価図の読み方

    ここからは実用的な話をします。路線価図をどのように使えばよいのかお話します。右の図は弊事務所のある札幌市の中で新幹線ホーム建設により特に価格上昇率が高い札幌駅東側の路線価図です。
    路線ごとに数字が記載されており、1㎡あたり価額(千円単位)が記載されています。また、数字の右側にアルファベットが記されており、図上段の説明のアルファベットの借地権割合に対応しています。例えば北5条東5丁目と北5条東6丁目の間の道路ですと「94E」と示されていますが、意味は1㎡あたり価額が9万4千円で、借地権が設定されている土地のうち借地権として評価する割合はEの50%(残りの50%は土地本体価額に按分)であるということです。相続や贈与における土地の評価については、相続税解説シリーズ第5回をご参照ください。
    また、数字が記載されている図形が円、楕円、菱形と路線によって異なっており、黒塗りがある路線もあります。これは、路線沿いの土地用途を示しており、その意味は図上段の左側に掲載されています。例えば北5条東5丁目と北5条東6丁目の間の道路ですと、菱形の囲みになっており、両方向とも中小工場地域であるということです。
    なお、路線価図は税務署単位で公表されており、別の税務署の管轄である地区については、図の左下の通り別の路線価図を参照する形式になっています。

    路線価がない地区の評価

    路線価は全ての路線沿いに示されているわけではなく、原則市街地化区域に限定されています。よって、農地や森林など市街地化されていない区域には路線価が設定されていません。
    右図は、札幌の奥座敷と呼ばれる定山渓周辺の路線価図です。温泉街でホテルや旅館などが多く立ち並んでいますが、左側の「時雨橋」からの上(北側)の道路には路線価が示されていません。示されていない地域は都市計画法に定める「市街地化調整区域」に該当し、ホテルや旅館はもちろんのこと住宅や別荘、商店などの建築も規制されている森林地帯です。
    路線価がない場合、相続や贈与における土地の評価は固定資産税評価額に一定の倍率をかけて評価額を計算しますが、その計算方法の対象であるという意味で路線価図に「倍率地域」と記載されています。路線価図は国税庁HPから丁目単位で検索することができ、該当する地名や丁目が無ければ「倍率地域」であり、固定資産税評価額を基に評価するとご理解いただけるのではないでしょうか。

    路線価図・評価倍率表のリンク

    土地の価格にはいくつかあるけれど…

    ここまでの路線価の説明の中で、「地価」「売買事例」「固定資産税評価額」などいくつかの土地価格が登場しました。地価及び売買事例については上述しましたが、路線価と同じように税金計算に用いる土地評価額である固定資産税評価額についてここで説明します。
    固定資産税は1月1日時点で固定資産を保有しているものに対し固定資産が所在する市町村から課税される税金で、税額計算及び徴収は市町村の固定資産税部門が行います。市町村の事務負担軽減観点から土地及び家屋に対する固定資産税の評価は毎年ではなく3年に1回と定められており、直近では令和3年(2021年)が全国一律で評価実施年度でした。この評価実施年度を基準年度といいます。ただし、基準年度に該当しない年度に建物の増改築が行われたり用途変更が行われたりした場合は、基準年度でなくても評価替えされます。
    よって、固定資産税評価額は路線価と比較して直近の土地価格の実態との乖離が大きくなる可能性があります。ですが、路線価が示されていない地域の場合土地評価のよりどころが固定資産税評価額しかないことがほとんどですので致し方ないところです。
    固定資産税評価額は基準年度の公示地価に70%をかけたものとされており、70%をかける理由は3年に1回の評価で実態との乖離が大きくなることから過大な税負担とならないようにするためとされています。
    なお、相続税や贈与税の評価において固定資産税評価額を用いる場合にかける倍率は住所ごとに評価倍率表に示されています。以下のリンクの説明をご参照ください。
    国税庁HP 評価倍率表(一般の土地等用)の説明

     

    おわりに

    今回は路線価について解説しました。路線価は地価と連動しており、その時々の景気や土地の利用動向により価格が変動します。令和4年度の路線価については、「全国約32万地点の標準宅地は平均で前年に比べて0.5%上昇した。新型コロナウイルスの感染拡大の影響が徐々に緩和され、人流の増加などの期待が集まった観光地や繁華街などでプラスに転じたり、下げ幅が縮小したりした地点も多く、2年ぶりに前年を上回った」一方で、「リモートワークの浸透などで、郊外の住宅地などで路線価が上昇する地点が目立ったが、都心のオフィス街は昨年に続いて下落した。オフィスビルなどが建ち並ぶ東京都千代田区丸の内2はマイナス1.3%と、前年(マイナス1.1%)より下落幅が拡大、中央区八重洲1もマイナス1.3%となった」と7月1日の日経新聞に掲載されています。
    果たして来年令和5年の路線価はどうなっているのでしょうか?評価基準日である1月1日の状況が重要なカギになります。路線価上昇はその地区の景気が上向いていることを示す一方、税金面では負担増加につながります。頭が痛い話ですが、地域経済指標の一つとして注目したいところです。
    日本経済新聞 路線価2年ぶり上昇、22年分0.5% コロナ影響緩み回復

     

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