公認会計士・税理士熊谷亘泰事務所

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2022/06/02

目次

    はじめに

    4月、5月は多くの地域で自動車税(軽自動車税)の納期です。自動車税(軽自動車税)の滞納は財産差押えにつながる可能性があるだけでなく、車検に通過することができなくなりクルマの使用が大きく制限されます。一方、近年では負担の大きいマイカーの購入を避け、一定期間車両を借りる形にするカーリースや一定期間利用契約し必要な時だけ使用するカーシェアも普及しています。また、毎月定額で定期的に新車に乗り換えるカーサブスクも登場しています。
    今回は利用形態が多様化し、EVの進歩でますます変化する自動車に関する税金について今一度再確認できるよう、自動車に係る税金の種類と各税金の特徴について取り上げます。

     

    自動車税の種類

    自動車税はまず車種により、都道府県税である「自動車税」と市町村税である「軽自動車税」の2つに分かれます。自動車税は普通自動車及び三輪以上の小型自動車に、軽自動車税は原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車に課税されます。また、それぞれの税金に「環境性能割」と「種別割」と2種類の課税方式があり、一般に「自動車税(軽自動車税)」といわれるのは「種別割」のほうです。2つの課税方式の詳細は以下の通りです。
    ・環境性能割:自動車のエネルギー消費効率の基準エネルギー消費効率に対する達成の程度その他の環境への負荷の低減に資する程度に応じ課税する方式
    ・種別割:自動車の種別、用途、総排気量、最大積載量、乗車定員その他の諸元の区分に応じ、自動車に対して課税する方式
    環境性能割は自動車を取得した者に取得時に課税され(ただし相続や合併、法人分割、現物出資に伴う形式的な取得者変更は除く)、重量割は毎年4月1日時点の所有者に同年5月中(軽自動車税は4月中)を原則として各自治体の条例で定める期間に課税されます。参考までに北海道における自動車税種別割の納期は毎年5月15日~31日(道税条例第65条第1項)であり、札幌市における軽自動車税種別割の納期は毎年5月16日~31日(札幌市税条例第72条の3)です。
    税額については、環境性能割は車両本体価格(中古車の場合新車登録時車両本体価格×一定割合、50万円未満の場合は非課税)×税率(性能に応じ1%~3%)、種別割は種別と排気量に応じて設定された一律の年額となっています。
    環境性能割は新車登録または移転登録時に都道府県の運輸支局等で所定の用紙に収入証紙を添付する形で申告納付し、種別割は毎年4月1日以降車庫所在地のある自治体からの賦課徴収により納期限りまでに自治体窓口または金融機関での現金払いや口座振替、クレジットカード払いなどで納付します。ただし、新車取得時の自動車税については新車登録時から3月31日までの期間における月割税額を新車登録時に都道府県の運輸支局等で収入証紙を報告書に添付する方法で納付します。
    実務上新車登録は自動車販売店が代行することが多いため、運輸支局等での納付は購入代金決済時に預かった税額相当額を販売店担当者が代わりに納付することになります。
    なお、環境性能割については特に環境への負荷の低減に著しく資する、EV、PHV、NOx(窒素酸化物)排出量が一定量以下のガソリン・ディーゼル・天然ガス自動車については免税となります。また、種別割については条例により歩行が困難な者またはそのものの同一生計家族が所有する自動車を当該歩行が困難な者やその者を介護する者が利用する場合必要な手続きをすることで減免される自治体があります。当事務所のある北海道では自動車税種別割について道税条例で、軽自動車税種別割について各市町村の税金条例で定められており、いずれの種別割も振興局または道税事務所で必要な手続をします。
    国土交通省HP:エコカー減税 (自動車重量税) の概要

    北海道庁HP:障がいのある方に対する道税の軽減(自動車税)
     

    燃料に関する税金

    日本のガソリンは税金が高く消費税が二重で課税されているから高い、だから減税して家計に配慮してほしいという意見があります。でも実際の税制はどうなっているのでしょうか。改めて確認してみましょう。
    ガソリン税は正式には揮発油税といい、温度15度において0.8017をこえない比重を有する炭化水素油を揮発油と定義(揮発油税法第2条第1項)したうえで、揮発油の製造者が製造場から移出したとき、または、保税地域から揮発油を引き取る者が引き取ったときに(移出または引取した揮発油の数量×(1-政令で定める消費者に至るまでのみなし欠減割合1.35%))×(揮発油税48.6円/l+地方揮発油税5.2円/l)を課税するとされています(揮発油税法第3条、第8条、第9条、租税特別措置法第88条の8、揮発油税法施行令第3条)。石油連盟の統計情報によりますと、温度15度において0.8017をこえない比重を有する炭化水素油に該当するのは、ガソリン、ジェット燃料油、灯油です。ただし、揮発油税法で灯油およびジェット燃料油に関しては免税とされているため(揮発油税法第16条~第16条の5)、実質的にはガソリンのみに課税されているガソリン税なのです。納税義務者は消費者ではなく揮発油製造者または揮発油を輸入した者であり、毎月移出または引取数量を製造場を管轄する税務署または引取場所を管轄する税関に申告して納税します(揮発油税法第10条~第12条の2)。つまり、消費者が購入するガソリン料金には揮発油税相当額(1リットル当たり53.8円)は名目上含まれておらずあくまで販売業者の回収コストとなるため、消費税課税対象となるのです。
    現在適用されている税率は租税特別措置法に基づいた税率であり、連続して3か月以上揮発油の平均小売価格が160円/lになった場合は揮発油税法及び地方揮発油税法本則の税率である揮発油税24.3円/l+地方揮発油税4.4円/l=28.7円/lに引き下げ、その後連続して3か月以上揮発油の平均小売価格が130円/lになった場合は元の租税特別措置法に基づく税率に戻すとされています(租税特別措置法第89条第1項、第2項)。この措置がいわゆる「トリガー条項」といわれるものですが、現在は東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律第44条により、「別に法律で定める日までの間」その適用が停止されているため、平均小売価格が160円/lになってもガソリン税の引き下げはされないのです。トリガー条項の適用には法改正が必要になるため、国会で激しい議論となっているのです。
    一方、揮発油に該当しない軽油や重油については「軽油引取税」という1リットル当たり32.1円の都道府県税がかかります。原則として給油所や元売り業者から引き取った消費者に課税され、給油所や元売り業者が特別徴収義務者となって消費者から給油時に税金を預り、毎月都道府県税事務所に申告納付します。揮発油税と異なり消費者が税金負担するため、軽油引取税相当部分に消費税を含めることはできません。軽油引取税は都道府県税ですが、税収の90%×(政令指定都市内にある国道・都道府県道の面積÷都道府県内にある国道・都道府県道の面積)については政令指定都市に配分されます。軽油引取税にもトリガー条項が適用され、連続して3か月以上ガソリンの平均小売価格が160円/lになった場合は地方税法本則の税率である15円/lに引き下げられ、その後連続して3か月以上揮発油の平均小売価格が130円/lになった場合は元の32.1円/lに戻すとされています(地方税法附則抄第12条の2の8)。
    なお、令和6年(2024年)3月31日までの間以下の目的で使用する軽油の引取りには軽油引取税が免税となる措置があります(地方税法附則抄第12条の2の7)。
    1.船舶の使用者が当該船舶の動力源に供する軽油の引取り
    2.自衛隊が通信の用に供する機械、自動車(政令で定めるものを除く。)その他これらに類するものとして政令で定めるものの電源又は動力源に供する軽油の引取り
    3.鉄道事業又は軌道事業を営む者その他政令で定める者が鉄道用車両、軌道用車両又はこれらの車両に類するもので政令で定めるもの(日本貨物鉄道株式会社にあつては、政令で定める機械を含む。)の動力源に供する軽油の引取り
    4.農業又は林業を営む者その他政令で定める者が動力耕うん機その他の政令で定める機械の動力源に供する軽油の引取り
    5.木材加工業その他の政令で定める事業を営む者が当該事業の事業場において使用する機械の動力源の用途その他の政令で定める用途に供する軽油の引取り


    石油連盟HP: 統計情報 換算係数一覧
    国税庁HP:揮発油価格高騰時における揮発油税及び地方揮発油税の特例税率の適用停止等について

    マイカー購入に関する消費税

    ここからはマイカー購入時の消費税の扱いについてお話しします。車両本体やオプション代の代金については消費税10%が課税されます。一方、以下の料金については消費税の課税対象外(不課税)または非課税となります。
    【消費税課税対象外となるもの】
    ・自動車税環境性能割
    ・軽自動車税環境性能割
    ・自動車税重量割
    【消費税非課税となるもの】
    ・車両登録費用
    ・車両検査費用
    ・自賠責保険料
    ・ナンバープレート代
    なお、軽自動車や二輪自動車など陸運局へ登録しない(軽自動車税の対象となる)車両のナンバープレートについては、非課税となる行政手数料に該当しないため消費税10%が課税されます

     

    カーリースやカーシェア、カーサブスクリプションに税金はかかるのか

    近年、代金支払いの分散化や車検費用等の軽減のため、カーリースやカーシェア、カーサブスクリプションを利用して車に乗る人が多くなっています。では、税金はかかるのでしょうか?結論を申し上げますとリース料等全額が消費税10%の課税対象になります!理由はリース料等はあくまで賃借料であり、賃借料の中身に登録費用や車検費用、自動車税、保険料が含まれていても負担者は所有者であるリース会社等でありガソリン税と同様業者のコスト部分に過ぎないからです。
    ただし、販売形態が所有権の移転を伴う割賦販売の場合、諸費用の負担は買取と同じ実際の利用者となるため先述の買取の場合と同じになります。

     

    事業用車両の減価償却

    事業で使用する車両に関しては事業経費にすることができます。といっても、購入時に一括で経費にできるわけではなく一般的な平均使用年数として設定された一定の年数にわたって経費計上します。この計上方法を減価償却といい、この方法によって計上された経費を減価償却費といいます。
    減価償却の計算は大きく2種類あり、定額法と定率法があります。
    ・定額法の場合:取得価額×定額法償却率×使用月数÷12
    ・定率法の場合:前年度までに償却していない価額(購入年度は取得価額)×定率法償却率×使用月数÷12
    取得価額には本体価格やオプション価格、納車運賃、任意検査代などを含み、法定登録検査費用や自動車税など法定費用については含めないことができます。また、消費税については適用している経理方法により税抜経理の場合は含めず、税込経理の場合は含めます。
    償却率及び計上する年数は資産の種類及び償却方法により耐用年数省令で個別に設定されています。定額法と定率法のいずれを選択するかは任意ですが、任意選択の場合税務署への届出が必要です。特に届出をしない場合、個人事業主は定額法、法人は定率法で行うこととされています。

    国税庁HP No.2100 減価償却のあらまし 
    国税庁HP No.5400 減価償却資産の取得価額に含めないことができる付随費用

     

    おわりに

    今回はクルマに関する税金について取り上げました。クルマは身近な一方、1回の購入金額が高いことから住宅同様その時々の政策により税制がよく変わるところです。令和5年度税制改正では制度が大きく変わるような改正はありませんでしたが、主にエコカー減税の令和8年(2026年)4月30日までの適用延長と令和6年(2024年)以降の令和12年度燃費基準達成率要件の厳格化が図られています。よりエコカーへの買換え推進を図っていると言えます。
    税金の仕組みを理解するだけでもニュースになっている話題が分かりやすくなり、一人一人が税金のあり方を考えるきっかけになるのではと思っています。

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