令和8年度年末調整|札幌で税理士・公認会計士に相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!
2026/10/09
目次
はじめに
今年も年末調整の時期がやって来ました。毎年何気なく行っている年末調整ですが、年末調整とは何か理解していていますでしょうか?また、年に1回11月~12月の期間のみのため、何をするのか忘れやすいところです。今回は年末調整の復習・再確認ができるよう年末調整とは何か説明し、昨年令和7年度から変更があった点についても取り上げます。今年度も大きな変更点がありますので詳しく取り上げます。
また、年末調整において必要となる書類についても留意点を取り上げ、人事経理担当者、従業員共にスムーズに年末調整業務が進むような情報を提供いたします。
場合によっては年末調整だけでなく確定申告も必要になる方がいらっしゃると思いますが、後日令和8年度確定申告についての記事をアップ予定です。
年末調整制度のおさらい
まず年末調整制度についておさらいします。
所得税法に明確な定義はありませんが、所得税法第190条によりますと給与所得者の扶養控除等申告書を提出した居住者のうち、給与支払時に天引きされた源泉徴収額から年内最後の給与日までに支払われた年間給与総額を基に計算した所得税額との差額を精算する手続とあります。つまり、年間の給与に基づいた所得税計算を勤め先の企業が行い、年内に毎月あるいはボーナスから天引きされた源泉所得税との差額を計算して給与支給時に精算する手続です。
源泉徴収額が年間の税額以上に天引きされている場合は過大天引きの金額が給与支給と同時に従業員に支払いまたは還付され、逆に源泉徴収額が年間の税額に満たない場合は不足額が追加で天引きまたは請求されます。これにより、他の所得や年末調整で取り込めない控除がない限り、従業員の所得税の徴収が完了します。そのため、会社員に確定申告者の割合が少なくなっている原因になっています。
年末調整で反映できる所得控除は
- 社会保険料控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 小規模企業共済等控除(iDecoが''等''の例です)
- 控除扶養控除等の人的控除
- 基礎控除
- 住宅ローン控除
です。年末調整前に必要な書類(後ほど詳しく取り上げます)を勤務先に提出することで反映されます。この手続は年間給与支払額が2000万円以下の者が対象とされており、2000万円を超える場合は年末調整が行われず、確定申告が必要になります。なお、他の所得控除や税額控除を受ける場合は改めて年明けに確定申告をする必要があります。
企業が年末調整をしたとき、対象となった従業員に税額計算書である「給与所得の源泉徴収票」を交付し、翌年の1月31日までに年末調整をした企業は各事業所ごとに所轄する税務署に「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」を提出し、同日までに従業員の居住する市区町村に「給与支払報告書」という従業員の住民税計算基礎資料を提出します。これら税務署や市区町村に提出する書類には年末調整対象外となった者の分も含みますのでカウント漏れや提出漏れの無いようご注意ください。
なお、今回令和8年分よりこれまで税務署にも提出が必要だった「給与所得の源泉徴収票」は従業員の居住する市区町村に「給与支払報告書」を提出していれば「みなし提出」されたものとなり、税務署への提出が不要になります。
令和8年度の主な変更点
ここからは前年度との変更点について取り上げます。
令和8年度税制改正では所得税において影響を受ける人が多い改正が2つあります。
- 基礎控除及び給与所得控除額の引き上げ
- 23歳未満の扶養親族を有する場合の生命保険料控除額特例の新設
- 税務署への「給与所得の源泉徴収票」提出不要化(前項で説明しています)
令和7年度と令和8年度における基礎控除額の比較は以下の通りです。
| 合計所得金額 | 令和7年度の 基礎控除額 |
令和8年度の 基礎控除額 |
増減 | |
| 132万円以下 | 95万円 |
|
+9万円 | |
| 132万円超336万円以下 | 88万円 | +16万円 | ||
| 336万円超489万円以下 | 68万円 | +36万円 | ||
| 489万円超655万円以下 | 63万円 | 67万円 | +4万円 | |
| 655万円超2350万円以下 | 58万円 | 62万円 | +4万円 | |
| 2350万円超2400万円以下 | 48万円 | 48万円 | +4万円 | |
| 2400万円超2450万円以下 | 32万円 | 32万円 | ±0円 | |
| 2450万円超2500万円以下 | 16万円 | 16万円 | ±0円 | |
| 2500万円超 | なし | なし | ±0円 |
令和7年度と令和8年度における給与所得控除は以下の通りです。
| 課税給与収入 | 令和7年度の 給与収入からの控除額 |
令和8年度の 給与収入からの控除額 |
| 190万円以下 | 65万円 | 74万円 |
| 190万円超220万円以下 | 課税給与収入×30% +8万円 |
|
| 220万円超360万円以下 | 課税給与収入×30% +8万円 |
|
| 360万円超660万円以下 | 課税給与収入×20% +44万円 |
課税給与収入×20% +44万円 |
| 660万円超850万円以下 | 課税給与収入×10% +110万円 |
課税給与収入×10% +110万円 |
| 850万円超 | 195万円 | 195万円 |
上記の改正は社会保険強制加入の目安となるいわゆる180万円の壁対策と物価上昇に伴う税負担軽減を目的としたものです。基礎控除及び給与所得控除額の引き上げに伴い、以下の所得控除適用にあたっての扶養親族等の所得上限が以下の通り引き上げられています。
- 配偶者控除及び扶養控除:58万円→62万円(給与収入ベース 123万円→136万円)
- 配偶者特別控除:133万円で変更なし(給与収入ベース 201万5999円→207万円)
- 特定親族控除:123万円で変更なし(給与収入ベース 188万円→197万円)
- 配偶者控除及び扶養控除:85万円→89万円(給与収入ベース 150万円→613万円)
ここまで取り上げた控除額は12月に給与または賞与を支給されて年末調整が行われる場合に適用され、11月をもって給与または賞与支給が年内最終となって年末調整が行われた場合には基礎控除及び給与所得控除は昨年までのものが適用され、特定親族特別控除は適用されません。理由はご紹介した控除額を適用する改正法の施行が12月1日になるためです。このため、11月をもって給与または賞与支給が年内最終となって年末調整が行われた場合は確定申告をすることで令和8年度の新しい控除額が適用されます。
また、2026年(令和8年)の途中で海外に出国するなどで非居住者となって年末調整を受けた場合、基礎控除額については2,350万円以下の場合一律62万円になります。理由は上記一覧表の金額は国内居住者のみ適用されるためです。
次に生命保険料控除の変更について取り上げます。
23歳未満の扶養親族を有する場合の生命保険料控除額については新生命保険料(2012年(平成24年)1月1日以降加入の死亡保険料)について適用され、旧生命保険料(2011年(平成23年)12月31日以前加入の死亡保険料)、介護医療保険料や個人年金保険料については従来と変更ありません。生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料3種類の保険料合計ベースでの控除上限額は12万円でこちらも従来と変更ありません。
23歳未満の扶養親族を有する場合の生命保険料控除額は以下の通りです。
| 年間の新生命保険料 | 控除額 |
| 30,000円以下 | 新生命保険料の全額 |
| 30,000円超60,000円以下 | 新生命保険料×1/2+15,000円 |
| 60,000円超120,000円以下 | 新生命保険料×1/4+30,000円 |
| 120,000円超 | 60,000円 |
新生命保険料と旧生命保険料両方の支払がある場合の控除上限額についても23歳未満の扶養親族を有する場合は4万円から6万円に引き上げられました。
なお、上記の生命保険料控除特例については4月から施行されているため、11月以前に給与支給が終了して年末調整を受けた場合や2026年(令和8年)の途中で海外に出国するなどで非居住者となった場合に日本に居住していた期間に生命保険料を支払っていた時にも適用されます。
年末調整の際勤務先に提出する書類
- 扶養控除等(異動)申告書
年末調整を行う従業員はほとんどの方が提出します。記載事項は(源泉対象)配偶者、扶養家族に関する事項で、障がい者や寡婦(寡夫)、ひとり親、特定扶養親族(12月31日現在で19歳~22歳)に該当する家族(本人含む)がいる場合は該当する箇所を記載します。また、扶養家族のうち非居住者(海外在住者)については控除適用に制限があるため、生計を一にする事実の欄に控除適用対象者に該当する要件となるチェックと所得金額を記載します。
この申告書は人的所得控除の適用に必要な書類ですが、特に該当事項がなくても年末調整対象の場合は提出が必要です。また、配偶者の有無や年末調整希望の意思が翌年からの源泉徴収額計算に影響するため、当年度分(確定)と翌年度分(見込)の2年分を提出します。
なお、年末調整は1か所のみで行うため、複数の勤務先がある場合、最も給与が大きい勤務先に提出すると年末調整時の還付額が大きくなります。 - 基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書
この申告書は基礎控除の計算、配偶者(特別)控除の計算、特定親族特別控除の計算、所得金額調整控除の適用に必要な書類で、年末調整を行う従業員は全員提出が必要です。記載事項は年間の総給与額、他の所得の見込額、配偶者並びに特定扶養親族の所得見込額を記載し、特別障がい者(本人含む)や23歳未満の扶養家族がいる場合該当箇所を記載します。この申告書の提出は今年度1年分のみです。
控除額についてはこの申告書内に控除項目ごとに対応表があり、表を見ると控除額がわかるようになっています。令和7年度以降基礎控除の額が多段階になり、特定親族特別控除が導入されたことから所得見込みはできる限り精度を高め年末調整計算時になって実際の所得額に基づいた控除額結果との間に誤差が生じないよう十分な注意が必要です。支給実績額で正確に計算するためにできるかぎり最新版の給与ソフトを用いることをお勧めいたします。 - 保険料控除申告書
生命保険料控除、地震保険料控除、小規模企業共済等控除、給与天引き対象外の社会保険料の控除を受ける場合に提出する申告書で、それぞれ保険会社などから10月~11月に届く証明書に基づき必要事項を記載し、証明書とともに提出します。保険料の証明書については電子証明書が令和2年度から導入されています。詳細は後述します。 - 住宅借入金等特別控除申告書
住宅借入金等特別控除いわゆる住宅ローン控除を受ける場合に提出する申告書で、適用初年度は税務署による住宅購入や融資の事実確認のため確定申告で手続する必要がありますが、2年目以降は税務署から届く申告書用紙に銀行などから届くローン残高証明書の借入金残高を記入して必要な計算をすれば年末調整時に控除を適用することができます。
なお、令和4年度より金融機関から税務署に提供された情報を基に税務署が納税者に住宅ローン年末残高等調書を交付する調書方式が導入され、この税務署から交付される調書を勤務先に提出すれば改めて住宅借入金等特別控除申告書を作成提出する必要がなくなります。対応する金融機関は順次増えているものの一部に限られているため、調書方式への変更を希望する場合、事前に調書方式に対応している金融機関に「年末残高調書に係る経過措置に関する届出書」を提出する必要があります。この調書は11月中旬~下旬に交付されるため遅くとも10月中には手続きをすることをお勧めいたします。
電子証明書の入手と提出
令和元年度より従来はハガキなどの書面でしか入手できなかった控除証明書が電子データで入手することができるようになり、各種控除申告書の添付書類として電子データの証明書を使うことが可能です。当所は一部の生命保険会社から発行される生命保険料控除証明書に限られていましたが、行政DX化促進とマイナンバー普及促進のため年々控除証明書電子データが拡大されています。電子データで取得可能な控除証明書は以下の通りです。
【年末調整時に提出可能な証明書】
- 生命保険料控除証明書
- 地震保険料控除証明書
- 社会保険料(国民年金保険料、国民年金基金掛金)控除証明書
- 小規模企業共済等掛金控除証明書
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書(住宅金融支援機構のみ)
- (特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書
- 住宅取得資金に係る借入金等の年末残高等調書
【確定申告でのみ利用可能な証明書】
- 医療費通知情報
- 寄附金受領証明書、寄附金控除に関する証明書
- 有価証券特定口座年間取引報告書
- 公的年金等の源泉徴収票
電子データの入手方法の多くは、マイナポータルにあるe-私書箱の機能を利用し、電子データを受け取る控除証明書の発行事業者を事前登録し、控除証明書の発行時期になるとe-私書箱に電子データが格納されます。格納された電子データをダウンロードしてそのダウンロードしたデータを勤務先に提出することで控除証明書提出となります。
利用拡大のための課題は、勤務先事業者における控除証明書データの読込可能なソフトの導入状況及び従業員への周知徹底です。こうした課題が解決されるにつれ、年末調整の電子化が進むものと思われます。
おわりに
今回は令和8年度の年末調整に関する情報を事前作業を中心に解説しました。今年度も所得控除に関して改正があり年末調整実務においてもこれまでよりも煩雑になる部分があります。今一度具体的な変更点をご確認ください。
政府の行政DX化、ペーパレス化の流れを受けて年末調整の電子化整備も進んでいます。電子化に関しては納税者、各企業の認知度向上とシステム対応の進捗にまだまだ時間がかかりそうですが、テレワーク勤務や出張など勤務先に出向けないときでも提出できますし、電子データ化で記載ミスが大幅に減少し人事等の事務省力化につながります。年々年末調整の電子化は進むものと思われます。

