消費税率1%引き下げについて|札幌で税理士・公認会計士に相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!
2026/10/02
目次
はじめに
食料品の消費税を2年間1%に引き下げる方針が決定されたことが話題になっています。概要については下記の日経新聞記事にまとまっていますが、具体的にどのような措置になるのか、またどのような影響があるのか気になる方も多いのではないでしょうか?
今回は与党(自民党、維新の会)が9月15日に公表した税制大綱の解説を中心に深堀りしてていきます。なお、税制大綱はあくまでたたき台であるため、成立しない可能性がありまた成立時に内容が変更になる可能性がありますのであらかじめお断りしておきます。
日本経済新聞HP|食品消費税2年限り1% 中低所得者は先行給付、政府が税制大綱決定
引き下げの目的
はじめに今回なぜ食料品の消費税を2年間1%に引き下げるのか確認します。前提となる制度として「給付付き税額控除」があります。給付付き税額控除は中低所得の現役勤労者に着目して、その負担軽減を通じて、所得に応じて、手取りが増えるようにするとともに、いわゆる「年収の壁」などによる働き控えを緩和することを通じた就労促進を図るためと大綱の前文に書かれています。その際、令和11年度の本格導入までのつなぎとして、まずは、来年(2027年(令和9年))4月から、2年間に限った飲食料品に係る消費税率の臨時的な引下げと飲食料品にかかる消費税1%相当分の範囲で実施する支援金制度を組み合わせて行い、その後の支援金制度の本格導入に円滑に接続していくとあります。
つまり、「給付付き税額控除」制度導入の準備期間の間に手取りを増やす臨時的な策として行われる措置ということです。そのため、消費税引き下げが時限的なものになっています。「給付付き税額控除」の導入には各個人の正確な所得と迅速な給付のための口座情報等の把握の整備を行うのですが、現在の政府システムでは十分に整備されているとはいえず、構築・整備にそれなりの時間を要します。そのため、手取り増加の手っ取り早い措置として消費税率引き下げが行われます。
次項目以降、消費税率引き下げの概要及び影響を詳しく解説します。
消費税が1%に下がる対象、期間
では、具体的に消費税1%の対象になる取引及び期間について解説します。
今回の措置で消費税1%の対象になるのは「事業者が国内において行う飲食料品の譲渡及び保税地域から引き取られる飲食料品」です。言い換えると、日本国内での飲食料品譲渡及び日本への飲食料品の輸入が対象です。ここでいう「飲食料品」は、「現行の軽減税率(8%)の適用対象となっている飲食料品をいう」とされており、消費税8%対象の飲食料品取引が税率引き下げの対象となります。よって、例えば以下のような取引は消費税1%の対象外です。
- 薬事法上の医薬品とされているもの
- 酒税法上の酒類とされているもの
- 店内飲食目的での飲食料品の提供
- 週2回以上発行される新聞の定期購読分
上記のうち、「週2回以上発行される新聞の定期購読分」については現行の消費税法上軽減税率8%の対象になっていますので消費税引き下げの措置期間中は1%、8%、10%の3種類の消費税率が存在することになります。
では、この3種類の税率が生じる措置期間はどうなるのでしょうか?期間として、2027年(令和9年)4月1日~2029年(令和11年)3月31日の期間中の譲渡とされています。ここでいう「譲渡」とは実際に対象となる飲食料品が売手から買手に引き渡されたことをいい、必ずしも代金の支払時期とは一致しません。
「譲渡」のタイミングを基にした期間設定となるとある問題が生じます。例えば頒布会のように一定期間定期的に飲食料品が提供され価格が開始時に決められているような場合や通販で一定期間有効なカタログ等で販売をしているような場合です。このような場合において定期頒布案内やカタログ等の発行及び案内が改正法案成立前に行われますと、仮に法案成立した場合2027年4月1日以降の飲食料品引渡しの際の販売価格を事後的に引き下げ、販売業者に返金処理の手間が生じる可能性があります。このため、大綱ではこれら2つの場合について消費税1%の対象外とするとされています。ただし、設定した価格が2027年4月1日以降引渡し分について消費税率1%を適用する前提である場合には消費税1%が適用されるとされています。
なお、消費税1%は厳密には国税としての消費税0.78%、地方消費税0.22%の2つで構成されており、国と地方(都道府県)への消費税の按分割合は現行通りです。
価格表示への影響
飲食料品の消費税率が引き下げになると税込価格の値下げを行うケースが出てきますが、これまでの消費税率引き上げの時にも生じた対応が価格表示の貼り替えです。現行の消費税法では総額表示つまり税込での表示が求められており、消費税率の1%引き下げに伴う値下げ、また、8%へ戻ることによる値上げの際価格表示の変更が必要になります。しかしながら、飲食料品を取り扱っている業者の多くはアイテム数が多く価格表示の貼り替えには相当な時間がかかると予想されます。そこで大綱では以下の価格表示特例を設けるとされています。
- 開始前に引き下げ後価格(1%)表示に変更できる期間:2027年2月1日~3月31日
- 開始後引き下げ前価格(8%)表示ができる期間:2027年4月1日~5月31日
- 終了前に引き上げ後価格(8%)表示に変更できる期間:2029年2月1日~3月31日
- 終了後引き上げ前価格(1%)表示ができる期間:2029年4月1日~5月31日
特例期間中は価格表示と実際の価格が違うことによる混乱が生じることが予想されるため、飲食料品を取り扱う事業者は利用者に価格表示が混在しているなどの告知をすることになると考えられます。
事業者の納税への影響
消費税は課税対象者(消費者)と納税者(事業者)が異なる間接税です。そのため、消費税率引き下げに伴う影響は消費者だけではなく納税者である事業者にも納税負担の変動の形で及びます。
飲食料品を取り扱っている業者にとっては消費税率引き下げに伴い以下の影響が想定されます。
- 本則課税にすれば飲食料品販売に伴う売上消費税が大きく減ることにより、飲食料品仕入以外の仕入経費に係る仕入税額控除よりも売上消費税が少なくなるため還付になるはずが、簡易課税制度(売上消費税の一定割合を仕入税額控除額とする制度)適用の拘束期間(適用から2事業年度間の縛り)に該当する事業年度中のため還付されない
- 消費税課税事業者にであれば上記1.の還付が受けられるはずが、免税事業者であるために消費税還付を受けられない
- 消費税の中間納付が必要な業者において、引き下げ後の消費税率が適用されれば中間納付額が下がるのに消費税率引き下げ実施前の前年度実績を基にした納税額が適用されるために実態よりも多い消費税負担を強いられる
大綱では以上の影響を軽減するため以下の特例を設けるとされています。
- 飲食料品の譲渡(販売)を行う事業者が2027年(令和9年)4月1日以降開始する事業年度に課税事業者になる場合は課税事業者選択届出書等の提出期限が対象事業年度開始前日から対象事業年度の末日までに延長
- 飲食料品の譲渡(販売)を行う事業者が2027年(令和9年)4月1日以降開始する事業年度に簡易課税制度を取りやめる場合は簡易課税制度不適用届出書の提出期限が対象事業年度開始前日から対象事業年度の末日までに延長されるとともに、適用から2事業年度間の継続適用要件(2年縛り)から除外
- 飲食料品の譲渡(販売)を行う業者が2027年(令和9年)4月1日以降開始する事業年度中に中間納付を行う場合に、前年度実績を基にした中間納付額を納付する場合に飲食料品の譲渡(販売)に係る売上消費税及び飲食料品の仕入れに係る仕入消費税額控除については前年度売上または仕入実績に引き下げ後の消費税率を用いて計算可
また、2029年(令和11年)4月1日以降開始する事業年度中に中間納付を行う場合に、前年度実績を基にした中間納付額を納付する場合に飲食料品の譲渡(販売)に係る売上消費税及び飲食料品の仕入れに係る仕入消費税額控除については前年度売上または仕入実績に引き上げ後の消費税率を用いて計算可
この他、飲食料品の譲渡(販売)を行う業者が簡易課税制度を適用している場合において本則課税の適用に必要な経理体制が整っていない等の理由で簡易課税制度の適用を継続する場合、飲食料品の譲渡(販売)に係る売上に対応するみなし仕入税額控除額を売上と同額(つまり100%控除)とする特例も設けられるとのことです。100%控除の特例は、基準期間の課税売上が1000万円以下であるにもかかわらずインボイス制度対応のために課税事業者になった小規模事業者等が適用できる2割特例または3割特例を適用している場合にも適用されるとのことです。
引き下げ期間中に導入される給付制度
今回の飲食料品消費税の1%への引き下げ措置は給付付き税額控除導入までの経過措置であるとお話ししましたが、経過期間中全く給付が行われないわけではなく2027年(令和9年)4月から税額控除に先立って中低所得の現役勤労者向け給付制度が開始されます。
この給付の名称は「就業者負担軽減支援金」といい、以下の要件に該当する場合に支給されるとされています。
- 前年度の給与収入に応じて算定した額と、一定額を超える事業所得及び業務に係る雑所得との合計金額(以下、「勤労所得」という。)が税制及び社会保険制度の状況並びに就業の促進等の効果を考慮して定める金額(以下、「所得下限額」という。)を超えること
- 前年度の合計所得金額が、純負担率及び純負担額の国際比較や諸外国の類似する制度の状況を考慮し、19歳未満の居住者である扶養親族(以下、「扶養児童」という。)の有無及び数に応じて定める金額(以下、「所得上限額」という。)以下であること。
- 当該年度の住民税額を基礎とした金額と前年分の自己の負担すべき社会保険料に係る控除額との合計額から前年中の公的年金等の収入額を控除した金額が、我が国の純負担率の状況を考慮して定める額(以下、「純負担基準額」という。)を超えること。
- 1月1日(以下、「基準日」という。)現在において配偶者を有していた場合には、当該配偶者の前年の合計所得金額が、一定額以下であること。
なお、令和9年度及び令和10年度においては、
- 4.の要件は除外
- 2.にある「扶養児童」は16歳未満の扶養親族
- 3.にある「純負担基準額」は社会保険料控除額
とされています。
複雑な要件ですが、平たく言うと中低所得者のみに給付するため所得が一定の金額以下である一方、勤労制限対策として所得のうち勤労による所得が一定の金額以上の者を対象に税金や保険料など公的制度への負担額が基準額よりも多くなっている者に給付するということです。
支援金の支給額は年度単位で純負担率の国際比較及び就業の促進等の効果を考慮して、前年度の所得の額及び扶養児童の有無及び数に応じて定めるとされています。受給対象者の認定及び支払は基準日現在での住所所在地の市町村が行うとされ、3分の2以上を国、残りの3分の1未満のうち2分の1ずつを都道府県と市町村が負担するとされています。
この支援金は非課税の所得であり社会保険料算定基礎額からも除外されます。また、支援金受給権は他の者に譲渡したり、担保として提供したり、自治体による税金や社会保険料の滞納処分のため行う差押えの対象としたりすることはできないとされています。一方、国税滞納処分のための差押えの対象とすることはできるとされています。
おわりに
今回は飲食料品消費税の1%への引き下げについて取り上げました。
今年2026年2月の衆議院選挙時の自民党公約では飲食料品の消費税を2年間0%にする方向で検討するとされていましたが、国民会議においてレジ改修に1年程度かかるとの理由で改修期間が5~6か月程度で済む1%で大綱がまとまった経緯があります。
ここで注目すべきは、なぜ消費税「非課税」ではなく「0%」と表現されているのかです。消費税非課税にするのであれば現在の多くのレジでも対応しているため変更は容易なはずです。では、なぜ「0%」なのでしょうか?この違いは単なる表現の違いではありません。この2つの言葉の違いで商品を販売する業者の消費税負担が大きく変わるのです。
消費税「非課税」の場合「消費税を課さない」という意味であり、消費税非課税の売上のためにかかった仕入や経費の消費税は実質的に仕入や経費を支払った業者が消費者として負担したことになるため、仕入税額控除をうけることができません。一方、消費税「0%」の場合「消費税0%を課税する」という意味であり、消費税0%の売上に対しかかった仕入や経費の消費税は実質的に0%の消費税を別の業者に移転したとされるため、仕入税額控除を受けることができるのです。現行の消費税法でも輸出免税売上が消費税「0%」の対象になっています。
当事務所での関与先にも飲食料品消費税の1%引き下げによる影響がある先があります。現在当事務所が関与していない方でも飲食料品消費税の1%引き下げによる影響について個別相談を承っておりますので、下記のお問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。
自由民主党HP|食料品の消費税

