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【2022年12月リライト】インボイス解説シリーズ③

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【2022年12月リライト】インボイス解説シリーズ③|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!

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2022/12/14

目次

    はじめに

    インボイス解説シリーズ3回目の今回は、インボイス制度導入に当たっての準備と導入スケジュールについて詳しく解説します。
    インボイス制度対応に必要な対応を失念し、インボイスを販売先に発行・交付できなかったり、要件を満たさないインボイスを発行・交付したりすると、販売先に消費税負担を押し付ける結果となり、最悪取引停止や新規取引謝絶になる可能性があります。また、消費税の申告・納税をしていない免税事業者にとっては、インボイスの適格請求書発行事業者となることで課税事業者に変わり消費税納税が生じることから特に大きな影響があります。
    既に消費税を申告・納税している事業者はもちろんのこと、特に免税事業者や起業希望者は今回の解説をご覧いただき消費税インボイス対応の概要をご理解いただき、インボイス対応をするかどうかまた対応するスケジュール感を決めてくださると幸いです。
    なお、インボイス解説シリーズの構成は以下の通りです。
    第1回 インボイス制度の概要
    第2回 インボイスに必要な事項
    第3回 インボイス制度導入対応とスケジュール(今回)
    第4回 インボイス制度導入後の事務と消費税申告
    第5回 国税庁Q&Aの解説その1
    第6回 国税庁Q&Aの解説その2
    第7回 国税庁Q&Aの解説その3
    第8回 国税庁Q&Aの解説その4
    今回の記事の内容は令和4年(2022年)11月時点の法令及び国税庁Q&Aの内容に基づいています。

     

    導入スケジュール

    第1回で掲げたインボイス制度導入スケジュールを再掲します。
    令和3年(2021年)10月1日 インボイスを発行できる業者の登録申請受付開始
    令和5年(2023年)3月31日 運用開始当初からインボイスを発行できる業者の登録申請受付締切
    令和5年(2023年)10月1日 適格請求書(インボイス)の運用開始
    令和5年(2023年)10月1日~令和8年(2026年)9月30日  インボイス非適格の仕入・経費取引について仕入税額相当額の80%控除可能
    令和8年(2026年)10月1日~令和11年(2029年)9月30日 インボイス非適格の仕入・経費取引について免税事業者からの仕入税額相当額の50%控除可能
    令和11年(2029年)10月1日~ 免税事業者からの仕入税額控除一切不可
    上記のうち、今回は「業者登録申請」から「運用開始」までの部分を中心に解説していきます。一度運用が開始されれば日常業務となり、反復するためそれほど大きなトラブルは生じないものと思われます。だからこそ、最初の制度対応のための準備が重要なのです。業者登録開始期間は令和3年(2021年)10月1日から令和5年(2023年)3月31日までの1年半あります。しかしながら登録手続が締切直前になりますと、税務署での対応が遅れ締切までに登録できず、運用開始時にインボイス発行・交付ができなくなる可能性があります。また、運用開始当初からインボイスを発行する場合の登録締切日は令和5年(2023年)3月31日で開始半年前であり、開始日前日ではありませんので合わせて注意していただきたいところです。ただし、災害や令和5年(2023年)4月以降設立などやむを得ない理由がある場合は開始日前日まで登録可能です。
    なお、この記事をリライト更新した令和4年(2022年)12月14日においては令和5年度税制改正大綱策定の真っただ中でインボイス制度のスケジュールや経過措置に関して改正が盛り込まれる見込みですが、改正案未成立で流動的であるため今回は割愛いたします。

     

    インボイス制度対応が必要な事業者

    インボイス制度対応が必要な事業者について改めて解説します。
    ざっくり申し上げますと、他の事業者へ消費税が課税される販売・サービスをしている事業者は"全て"対応が必要な事業者になります。と言いますのは、消費税課税事業者にとってインボイスを受取り、かつ保存していることが消費税申告計算の際仕入税額控除の対象にできるかどうかの要件になるからです。
    別な言い方をしますと、他の事業者への販売・サービスを一切しておらず、消費税の最終負担者である消費者に対してのみ販売・サービスを提供している事業者はインボイス対応をしなくてもよいということになります。
    免税事業者で消費税の申告と納税をしない事業者に対する販売・サービスであればインボイスに該当しない領収書などを発行・交付しても問題ありませんが、相手が免税事業者かどうかわからないケースが多いと思われます。ですので、日本国内で販売・サービスを提供する全ての事業者が対応するか否かは別にしてインボイス制度対応の要否についてご検討いただく必要があります。

     

    インボイス交付業者登録手続の詳細

    ここからはインボイス交付業者になるための登録手続について解説します。
    インボイス交付業者になるためには課税事業者、つまり消費税を申告し納税している必要があります。そのため免税事業者のままですと登録することができず、インボイスを発行・交付することもできません。免税事業者の場合の手続は次の項目で詳しく解説します。
    次に申請ですが、納税地を所轄する税務署長あての登録申請書を提出し、税務署での審査を経て適格請求書発行事業者登録簿に登録され、登録簿に登録された旨が申請者に書面で通知されます。登録申請書は所定の様式が示されており、書面提出のほか、e-Taxを利用して電子申請することもできます。書面を郵送する場合郵便の送付先は所轄の税務署ではなく「各国税局(例えば北海道の場合札幌国税局)にあるインボイス登録センター」となりますので、お間違いないようご注意ください。
    先述の通り令和3年(2021年)10月1日から申請が受け付けられていますが、令和5年(2023年)10月1日の制度開始前に登録通知がされても登録日は制度開始日の令和5年(2023年)10月1日となります。
    審査項目は、国内事業者の場合課税事業者であるかどうかの他、消費税法違反で罰金刑以上の刑に処され、執行終了後2年を経過しているかどうかのみであまり厳しくないものとなっています。もっとも、法人が消費税法に違反し代表者も共に刑に処せられた場合は代表者個人での登録も拒否されます。登録申請書提出から審査を経て登録を通知を受けるまでの期間は適格請求書発行事業者公表サイトに掲載されています(インボイスQ&A Q4)。なお、この記事をリライト更新した令和4年(2022年)12月14日においては、e-Taxでの提出の場合で約3週間、書面提出の場合で約1ヶ月半かかるとのことです。

    なお、令和3年10月1日以降新規開業もしくは設立する場合の登録手続については、後の項目で詳しく説明します。
     

    免税事業者から課税事業者に変わらないといけない!?

    ここからは現在免税事業者である事業者向けに、インボイス制度対応について解説します。
    先述の通り免税事業者ですと適格請求書発行事業者(以降、インボイス交付業者ということにします)となることができず、インボイス制度開始後、取引先のためにインボイスを発行・交付する場合課税事業者、つまり消費税を納める事業者となる必要があります。課税事業者になる場合、課税事業者になる課税期間の開始1か月前までに課税選択届出書を所管の税務署に提出するのが原則です。
    しかしながらインボイス制度導入対応のために、インボイス登録申請と課税選択届出書の2つを提出することになると作業が煩雑になります。そのため、インボイス制度開始日である令和5年10月1日の属する会計期間においてインボイス交付業者に登録を受ける場合、例外として課税選択届出書を提出しなくても課税事業者になります(H28年改正附則第44条4項)。
    また、免税事業者と課税事業者のどちらになるのかは、原則会計期間単位に判定します。しかしながら、インボイス制度開始が各事業者の会計期間に関わらず一律令和5年10月1日であるため、インボイス対応のために課税事業者になる場合、各事業者が設定した課税期間によってインボイス制度導入前の消費税の負担が変わり課税の不公平が生じます。そこで、現在免税事業者である事業者が令和5年(2023年)10月1日以降インボイス交付業者になる場合に限り、課税期間の初日からではなく、インボイス交付業者登録日から課税事業者となる特例があります。つまり、インボイス交付業者になった課税期間はインボイス交付業者になった日から期末日までの取引についてだけ消費税が課税され、申告するということになります。
    もっともインボイス交付業者になること自体は任意ですので、現在免税事業者である事業者様においては、インボイスが発行できず取引の機会を失うデメリットと、課税事業者になることで新たに消費税を納めることとになるデメリットの双方を比較衡量して登録するかどうか検討いただくことになります。
    ただし、2期間前の課税期間における消費税課税対象売上高が1000万円を超える場合は、原則通り課税選択届出書を課税期間開始日前日までに提出しかつ課税期間の期首から課税事業者になりますのでその点はご注意ください。

     

    これから起業しようとする方のインボイス対応

    ここからは、これから起業する方向けにインボイスの発行・交付について解説します。
    現行の消費税法では、法人設立年度または個人事業開始年度、及び次の年度は一定の特別な要件(詳細は国税庁HP(リンクあり)をご参照ください)に該当しない限り、免税事業者となり消費税を申告・納付する義務が免除され、輸入ビジネスなど消費税還付を受けられる場合を除き、設立当初は免税事業者となっているケースがほとんどです。
    この規定通り設立当初の時点で免税事業者となる場合、インボイス交付業者登録ができないため、インボイス交付を求める販売先にインボイスを発行することができず、起業初期において特に重要となる販売先開拓や営業に悪影響を及ぼす可能性があります。消費税納税負担とBtoBの販売先開拓のどちらを重視するかによって判断することになりますが、今後企業を検討される場合、特にBtoBのビジネスを検討されている方は、インボイスを発行・交付できるよう設立当初から課税事業者になることも起業時の検討事項に入れてください。
    次に設立当初からインボイス交付業者登録をし、課税事業者になる場合の手続について解説します。既存の企業であれば適用を受けたい年度開始日前日前までに前もって課税選択届出書と適格請求書発行事業者登録申請書を提出しますが、設立当初の場合は当然無理なことです。そこで、令和5年(2023年)10月1日のインボイス制度開始後に設立し、設立当初からインボイスを交付する場合は特例として設立年度の期末までに課税選択届出書と適格請求書発行事業者登録申請書を提出すればよいことになっています((新)消費税法第70条の4)。むろん、インボイス発行の実務的な準備は設立準備の段階から必要です。
    なお、既存事業者の適格請求書発行事業者登録申請書提出期限後の令和5年4月1日からインボイス制度開始直前の令和5年9月30日までの半年間に設立・事業開始し、インボイス制度開始当初からインボイスを発行・交付する場合は、令和5年3月31日までに申請書を提出することが「困難な事情」があったものとして、令和5年9月30日までに適格請求書発行事業者登録申請書を提出すればよいことになっています。この場合、令和5年(2023年)10月1日のインボイス制度開始時から課税事業者になり課税選択届出書提出不要となる特例が適用されます。

     

    おわりに

    今回はインボイス交付業者となるための税務署における手続について解説しました。おわりに実際にインボイスを発行できるようにするための実務対応についてお話します。インボイスに必要な事項については第2回をご参照頂きたいのですが、インボイス制度開始日までにプログラム変更やバージョンアップなどで請求書や領収書などに必要事項が記載されるように対応することです。手書きで領収書を書く場合も必要事項を漏れなく記載できるようインボイス制度開始までに予習や書式の見直しをすると良いでしょう。
    なお、制度が開始されてから(令和5年(2023年)10月2日以降)インボイス交付業者登録される場合、インボイス交付業者登録日までは請求書や領収書などに登録番号を記載することができない一方、登録日後は登録番号の記載が必須となります。登録日後数日たってから税務署から登録通知が届くことがありますが、その場合登録日から通知日の間に請求書や領収書などを交付した場合、後日登録番号など不足事項を文書などで通知すればよいとされています(インボイスQ&A Q33)。

     

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