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事業承継シリーズ5 事業承継やM&Aの税金|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!

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2022/04/28

目次

    はじめに

    事業承継M&Aシリーズの最終回5回目は事業承継やM&Aに関わる税金についてお話します。事業承継やM&A自体複雑に感じますし、税金の取扱いも複雑そうに感じると思います。ですが、事業承継やM&Aの当事者が個人なのか法人なのか整理すればパターンは決まっており、優遇制度の種類もあまり複雑ではありません。
    前半は当事者別に原則的な取り扱いをお話し、後半で事業承継やM&Aの優遇税制についてお話します。

    原則的な取扱い①個人→個人

    まず、当事者が共に個人である場合の税金の取扱いをお話します。このパターンに当てはまる例は一般的な事業承継、個人株主同士の経営権譲渡です。個人事業主のように譲渡する資産が事業財産そのものであったとしても、会社のように譲渡する資産が株式や出資であったとしても、取扱いは以下の通りです。
    1.無償譲渡(いわゆる贈与)の場合 譲受人に譲受時時価に対する贈与税課税、ただし譲渡人の死亡に伴う譲受の場合は相続税
    2.有償譲渡(譲渡・買収価額=時価)の場合 譲渡・買収価額>譲渡人の譲渡資産簿価の場合、譲渡人に譲渡価額と簿価との差益に所得税(譲渡所得)課税
    3.低額有償譲渡(譲渡・買収価額<時価)の場合 譲渡資産時価>譲渡人の譲渡資産簿価の場合、譲渡人に時価と簿価との差益に所得税(譲渡所得)課税
                            譲受人に譲受時時価と買収価額の差額に対する贈与税課税
    4.高額有償譲渡(譲渡・買収価額>時価)の場合 譲渡・買収価額
    >譲渡人の譲渡資産簿価の場合、譲渡人に譲渡価額と簿価との差益に所得税(譲渡所得)課税
                            譲渡人に譲受時時価と譲渡価額の差額に対する贈与税課税

     上記のうち、1の場合譲受人における譲受事業資産又は株式・出資の取得価額は譲渡人が付していた簿価となります。一方、2~4の場合は買収価額となります。事業財産そのものの譲渡をする場合で前回第4回にお話しした将来の超過収益力(のれん)を譲渡・買収価額に上乗せする場合、のれんも取得価額に含めます。なお、のれんは税法上「営業権」といいます。

    原則的な取扱い②個人→法人

    次に個人から法人への事業承継またはM&Aの場合の税金の取扱いをお話します。このパターンに当てはまる例は個人事業主から会社への事業譲渡、子会社化のための株式買収、個人株主が絡む合併、会社分割、株式交換、株式移転及び株式交付です。こちらも譲渡する資産が事業財産そのものであっても、株式や出資であっても、取扱いは以下の通りです。
    1.無償譲渡(贈与・相続は問いません)の場合 譲渡資産時価>譲渡人の譲渡資産簿価の場合、譲渡人に時価と簿価との差益に所得税(譲渡所得)課税
    2.有償譲渡(譲渡・買収価額=時価)の場合 譲渡・買収価額>譲渡人の譲渡資産簿価の場合、譲渡人に譲渡価額と簿価との差益に所得税(譲渡所得)課税
    3.低額有償譲渡(譲渡・買収価額<時価)の場合 譲渡資産時価>譲渡人の譲渡資産簿価の場合、譲渡人に時価と簿価との差益に所得税(譲渡所得)課税
                            譲受法人は譲受時時価と譲渡・買収価額の差額を益金(法人税法上の利益)算入
    4.高額有償譲渡(譲渡・買収価額>時価)の場合 譲渡・買収価額>譲渡人の譲渡資産簿価の場合、譲渡人に譲渡価額と簿価との差益に所得税(譲渡所得)課税
                           譲受法人は譲渡・買収価額と譲受時時価の差額を寄附金として計上
    譲受法人における取得価額はいずれの場合も買収時の時価となります。なお、4の場合に計上される寄附金は損金(法人税法上の費用)に算入できる金額に限度があり、限度を超えた部分について法人税が多くかかることになります。

    原則的な取扱い③法人→法人

    次に法人から法人への事業承継またはM&Aの場合の税金の取扱いをお話します。このパターンに当てはまる例は会社から別会社への事業譲渡、合併、会社分割、法人株主が絡む株式交換、株式移転及び株式交付です。こちらも譲渡する資産が事業財産そのものであっても、株式や出資であっても、取扱いは以下の通りです。
    1.無償譲渡の場合 譲渡資産時価>譲渡人の譲渡資産簿価の場合、譲渡人は時価と簿価との差益を益金算入し、簿価を寄附金算入
              譲渡資産時価<譲渡人の譲渡資産簿価の場合、譲渡人簿価とは時価との差損を損金算入し、簿価を寄附金算入
    2.有償譲渡(譲渡・買収価額=時価)の場合 譲渡価額>譲渡人の譲渡資産簿価の場合、譲渡人は譲渡価額と簿価との差益を益金算入
                          譲渡価額<譲渡人の譲渡資産簿価の場合、譲渡人は譲渡価額と時価との差損を損金算入

    3.低額有償譲渡(譲渡・買収価額<時価)の場合 譲渡資産時価>譲渡人の譲渡資産簿価の場合、譲渡人は時価と簿価との差益を益金算入
                            譲渡資産時価<譲渡人の譲渡資産簿価の場合、譲渡人は時価と譲渡価額との差益を益金算入し時価と簿価の差損を損金算入
                            譲受法人は譲受時時価と譲渡・買収価額の差額を益金(法人税法上の利益)算入
    4.高額有償譲渡(譲渡・買収価額>時価)の場合 譲渡資産時価>譲渡人の譲渡資産簿価の場合、譲渡人は時価と譲渡価額との差益を益金算入
                            譲渡資産時価<譲渡人の譲渡資産簿価の場合、譲渡人は時価と簿価との差益を益金算入

                           譲受法人は譲渡・買収価額と譲受時時価の差額を寄附金として計上
    譲受法人における取得価額はいずれの場合も買収時の時価となります。なお、譲受人が個人の場合譲渡法人における取扱いは上記と同じで譲受人の個人は1の場合時価、2~4の場合買収価額を取得価額として寄附金処理はありません。

    事業承継税制

    ここからは、事業承継やM&Aの特例についてお話します。事業承継は多くの場合、金銭のやり取りなしに事業財産や株式、出資を贈与または相続します。そうしますと、先述の通り引き継いだ後継者に贈与税または相続税が課税され、経済的負担が生じ事業承継をためらう要因にもなります。そこで、事業承継に伴う事業財産または株式、出資の贈与または相続について税金の全てあるいは一部の猶予する制度があります。数年間経営を継続すれば猶予された税額が免除される場合があります。
    詳細は相続税解説シリーズ⑩で解説していますので、そちらをご覧ください。

    適格事業再編税制

    先述の通りM&Aにおいて実施時の時価評価額が帳簿価額を上回ると差益が生じ、その差益に課税されることで特に金銭のやり取りをせずにM&Aを行った場合、譲渡代金を受け取っていないのに税金の支払が生じる可能性があります。特にそのM&Aがすでに企業グループになっている会社同士で行った場合はM&Aの手続がより簡単なのに税金がかかることでグループ再編をためらう要因になります。そこで、実質的に同一企業グループになっているとされる以下の図表の要件を満たす場合、時価ではなく簿価を適正取引価額とみなして差益・差損を生じさせない「適格組織再編税制」が適用されます。
    (図表:財務省HP組織再編税制に関する資料より)
    適格組織再編税制が適用されると、非適格の場合M&A実施と共に消滅する繰越欠損金(過去の累積赤字)や繰越税額控除残高なども引き継がれます。

    みなし配当に注意!

    M&Aの際注意いただきたい税金の取扱いがあります。合併及び分割型分割(詳細は第2回をご参照ください)で先述の適格組織再編に該当しない場合、実際には配当金として支払っていないにもかかわらず、実質的に配当金の支払いがあったとみなして配当金に関する課税の取扱いを行う「みなし配当」という取扱いになることがあります。具体的には合併により解散する法人または分割した会社の純資産のうち過去の利益の積重ねに相当する部分(利益剰余金)について、解散または分割により株主または出資者に純資産の精算が行われることになり、過去の利益の積重ねの精算が実質的に利益の配当と同じ経済的効果を有することから配当金とみなすものです。この場合、株式や出資の譲渡価額は実際に受け取った金額から配当金とみなされる金額を差し引いた金額となります。ただし、配当金とみなされるとみなし配当金部分について源泉徴収が必要になるため、ここでいう「実際に受け取った金額」とは見た目の入金額ではなく源泉徴収差引前の受取額になることに注意が必要です。
    また、受取った金額のうちみなし配当部分については、以下の取扱いとなりますので合わせて注意が必要です。
    1.個人株主または出資者の場合:配当所得に該当し、通常の受取配当金と同様上場か非上場かで税率や確定申告の要否が異なる
    2.法人株主または出資者の場合:受取配当金として取扱い、通常の受取配当金と同様出資先法人の株式・出資割合に応じて益金算入額を判定する
    現実の実務では上記の説明の通りみなし配当が生じるとM&Aを行った企業・株主(出資者)共に事務及び金銭に多大な負担がかかるため、みなし配当が生じないような形でM&Aを進める段取りをするのが一般的です。

     

    おわりに

    5回にわたり、事業承継及びM&Aについて検討すべき事項を取り上げました。実際に事業承継やM&Aを検討・実行する際は内容の難しさから専門家を依頼されるケースが多いのですが、ざっとでも知識を知っておくことで我々のような専門家や相手と協議や交渉を進める際にコミュニケーションがとりやすくなり、不利な条件をつかまされることを未然に防止することができます。
    今回の事業承継・M&Aシリーズでお話した内容についてもう少し詳しくお知りになりたい方は当ページ下の電話番号への電話または「お問い合わせはこちら」のクリックからのお問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。初回は無料で対応させて頂きます。

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