公認会計士・税理士熊谷亘泰事務所

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2022/03/19

目次

    はじめに

    今年度令和4年度の通常国会に公認会計士法の改正法案が提出され、投稿日(3月25日)時点では衆議院で審議中です。今回の改正案では主に以下の事項が盛り込まれました。
    ・上場企業等監査人登録制度
    ・公認会計士登録に必要な実務経験年数の延長
    ・企業内会計士の登録事項柔軟化
    ・監査法人における監査受嘱制限の一部緩和
    ・登録抹消可能要件の創設
    ・日本公認会計士協会会則に盛り込むべき事項の追加
    上記の改正点の趣旨としては①公認会計士業務の品質向上、②実態と乖離している状態への対応の2つに収斂されるでしょう。公認会計士の活躍する領域は広がる一方、これまでよりも認知が向上し世の中から求められている責任も増しています。私も公認会計士の一人としてそのような実感を強く感じています。それだけ魅力があります。今回の記事は主にこれから公認会計士を目指す人向けですが、公認会計士や財務に興味のある方にもおすすめの記事です。
    なお、公認会計士と同じように会計系の国家資格として「税理士」があり、私も税理士の一人でありますが、税理士法も近年の実態に合わせることを目的に令和4年度の通常国会で税制改正法案の一つとして改正案が審議されています。税理士法の改正については以前取り上げていますので、ご興味のある方は合わせてご覧ください。

    税理士法改正についての記事を読む

    この記事における意見はあくまで公認会計士熊谷亘泰の私見を述べたものであり、金融庁や日本公認会計士協会などの公式見解を述べているものではありませんので、あらかじめ申し添えます。

     

    上場企業等監査人登録制度

    公認会計士や監査法人の最も主要な業務が上場企業の会計監査です。対象企業とも株主や債権者などの利害を持つ関係者ともつながりを持たない第三者たる会計の専門家が監査を行うことで公正かつ高品質な監査が実現します。その一方で、ただ利害関係からの独立性や知識があるだけでは不十分で、これらを担保するために事務所として監査の品質を高めるための取組みが求められています。その監査品質担保の取組みを推進させて資本市場をはじめ経済社会の信頼を得るため、上場企業監査を行う事務所としての登録するとともに定期的に品質管理体制の状況の検査を受ける制度として「上場会社監査事務所登録制度」という制度があります。
    現在でも既に日本公認会計士協会が運用している制度なのですが、法令の根拠がなくあくまで会計士協会による自主的制度の位置づけです。今般の改正案では、この制度が公認会計士法に明記されます。日本公認会計士協会が備付け、管理する上場会社等監査人名簿に登録されている公認会計士または監査法人ではないと上場企業の監査を行うことができないことが法律で明記され、名簿に登録された公認会計士または監査法人は定期的に金融庁や日本公認会計士協会による品質管理体制の検査を受けることとされます。
    監査人名簿への登録は、過去3年以内に名簿抹消があった、業務停止処分を受けているなどの欠格要件がない限り登録できますが、不正な手段で登録申請した、業務停止処分を受けたなど監査業務を行うにふさわしくない状況になったときは名簿からの取消もあります。もちろん、名簿の取消しを受けると上場企業の監査を行うことができなくなり、すでに上場企業と監査契約がある場合は契約解除となり、対象となる上場企業は事業年度の途中でも別の名簿登録事務所に監査を依頼することになります。
    また、当事務所のような個人の公認会計士事務所が上場企業等監査人名簿に登録し上場監査を行う場合、名簿登録済みの監査法人や一定の人数の公認会計士と共同して行うこととされています。この規定は個人の公認会計事務所が監査責任者となる場合に適用されます。理由は上場企業での監査は手続をこなす量も多く内容も高度なため一定の作業時間と品質を確保するためです。そのようなこともあり、個人の公認会計士が新たに上場企業の監査をするために名簿登録することは稀で、当事務所も上場企業等監査人登録は行わず、他の監査法人からの依頼を受けて補助者として公認会計士監査業務に携わっています。
    なお、上場企業に該当しない企業の公認会計士監査については登録制度対象外のため、当事務所でもお引き受けすることが可能です。ただし、登録制度の対象外だからと言って監査の品質を下げて良いわけではないことを申し添えます。

     

    公認会計士登録に必要な実務経験年数の延長

    公認会計士試験に合格すればすぐに公認会計士になれるものではありません。といいますのは、公認会計士試験は難関試験と言われますが公認会計士となるための必要最低限の知識や能力を確認しているだけで、実際に公認会計士として活躍できるようになるためには実際の現場で経験を積んで実務知識や仕事のスキルをあげる必要があるのです。現行の公認会計士法では公認会計士資格を取るために必要な実務経験年数は2年とされています。実務経験は試験合格前でもよく、会計監査のみならず、経理・財務管理業務や税理士事務所での申告書作成・巡回監査など会計に関係する業務であれば認められます。ご覧の皆さんも何となくわかると思いますが、2年間では1年目の手取り足取りからようやく一通りの業務の流れを理解する程度で、自分の判断で業務をこなすレベルになるのは難しいでしょう。そこで、今回の改正案では公認会計士になるために必要な実務経験期間が3年に延長されることが盛り込まれ、公認会計士のスキル維持向上が図られることになりました。実際私が試験合格後監査法人で会計監査実務経験を積んである程度自分の判断で仕事をこなせるようになるのに3年はおろか5年くらいかかりました(遅熟なのです…)。
    なお、公認会計士資格取得には実務経験の他、一定の実務補習(平日夜や土曜日に補習所というところに通って実務に関する知識を勉強します。大学のように単位制で定期的に試験があります。)を受講し、公認会計士協会が主催する修了考査(事実上の補習所卒業試験です)に合格する必要があります。実務補習に関しては今回特に改正はありません。

     

    企業内会計士の登録事項柔軟化

    ここ最近10年、個人事務所や監査法人勤務ではなく、企業の経理や財務部門などに勤務し会計の専門家として決算業務やIR業務、さらにはCFOとして活躍するいわゆる企業内会計士が増加しています。当然通常の会社員同様勤務先が仕事場なのですが、現行の公認会計士法では、公認会計士は個人事務所や監査法人が仕事場だという前提で法律が設計されており、監査法人以外の企業に勤務先企業があっても会計士名簿上形式的に公認会計士事務所を開業して登録する必要があります。そこで今回の改正案では企業内会計士の勤務実態に合わせるため、会計士事務所を実際に経営していない場合は勤務先を会計士名簿に登録すればよいことになりました。
    万が一リモートワークベースでの場合、自宅を会計士事務所として会計士名簿に登録することは元々可能なため、勤務先の判断に合わせることになるでしょう。また、本業は企業で勤務し副業として個人事務所を行う場合は自宅を事務所として登録すれば勤務先の登録は不要になるでしょう。(ただし、競業や利益相反行為の禁止、利害関係先に対する監査業務受嘱の制限はあります。)
    なお、今般の税理士法改正案では、近年のリモートワークの普及や働き方改革に合わせて税理士事務所スペースの設置など物理的要件の緩和が盛り込まれていますが、公認会計士業務はもともと顧客の事務所などの現場作業が多く公認会計士事務所については事務所スペース設置などの物理的要件はありません。むろん、当事務所のような公認会計士事務所兼税理士事務所の場合は税理士法の開業規制の影響を受けます。

     

    監査法人における監査受嘱制限の一部緩和

    公認会計士や監査法人が会計監査業務を行おうとする場合、独立した第三者の立場で公正公平に監査することを担保するため、対象企業に関して出資関係や通常の取引に関係しない債権債務、役員就任、財務経理業務請負・委託契約があるなど一定の利害関係をもつ場合、監査受嘱不能、または、監査法人内の利害関係者の担当からの除外となります。
    この受嘱となる要件は監査法人自体が利害関係を持つ場合は勿論のこと、監査法人の出資者兼役員に該当する「社員」及びその配偶者が対象企業に利害関係を持つ場合でも所属する監査法人での監査業務受嘱が禁止されています。しかしながら、比較的規模の大きく「社員」や部門が多い監査法人ではある「社員」の配偶者が経理財務担当として勤務しているという理由だけで監査業務受託自体ができなくなり、実際には何ら関与する可能性がないのに制限が厳しすぎるとの意見がありました。そこで、今回の改正案では利害関係が配偶者が財務経理担当であるのみであれば、「社員」本人を監査メンバーから除外するのみで監査業務は受託できるようになります。むろん、配偶者が対象企業の出資者(1株でも保有していると該当します)や役員(財務経理担当であるかどうかは問いません)であったり、対象企業との貸し借りや係争案件がある場合は改正後もこれまで通り「社員」本人が所属する監査法人は利害関係者になり監査契約を受嘱することができません。

     

    登録抹消可能要件の創設

    現行の公認会計士法では公認会計士が以下のいずれかに該当する場合、日本公認会計士協会の資格審査会の議決を経て登録が抹消されることになっています。
    1.死亡
    2.業務廃止(公認会計士資格の自主返上)
    3.公認会計士法第4条に掲げる欠格事由(禁固刑以上の刑が執行中または執行終了後一定期間以内、破産、監査法人の「社員」登録抹消など)に該当
    4.心身の故障等により公認会計士業務を行う適性を欠く場合
    今回の改正案では、客観的に判断可能な上記1~3については資格審査会を経ることなく登録抹消されることになり、日本公認会計士協会が資格審査会の議決を経て登録抹消ができる場合として以下の事由が盛り込まれました。
    1.不正な手段による公認会計士登録
    2.一定期間にわたり継続的専門研修制度(CPE)を一定時間以上受講しなかった場合
    3.2年以上継続して所在が不明である場合
    特に2.継続的専門研修制度については日々変化する会計基準や法令、ビジネス環境に対応し、公認会計士全体の品質を維持向上させることを担保するため原則毎年40時間以上の研修受講が公認会計士に義務付けられており、私も毎年40時間以上研修を受講し、業務品質向上に努めております。でも公認会計士の中には多忙や研修を受けなくても仕事はできるなどという理由で定期的な研鑽をせず、古い知識や制度の理解のまま誤った対応をする公認会計士も存在します。
    今回盛り込まれた3つの事由は、現行でも日本公認会計士協会の規則で処分されるのですがこれを法令化して強化するものです。

     

    日本公認会計士協会会則に盛り込むべき事項の追加

    公認会計士法第44条では日本公認会計士協会が行う、会員の管理、研修・研鑽、綱紀観察などに関する業務について一定の事項を会則に盛り込む旨の規定があります。今回の改正案で以下の事項が追加されます。
    1.上場企業等監査人名簿への登録に関する規定
    2.会計に関する教育その他知識の普及及び啓発のための活動に関する規定
    1.は先述の上場企業等監査人名簿制度の法定化に伴うものです。2.についてもこれまで日本公認会計士協会が主体となって学校で「ハロー会計」と呼ばれる会計教育などを行っていますが、この取り組みを法令化したものです。実際に私も過去にとある札幌市内の高校での職業紹介行事で日本公認会計士協会会員の一人として公認会計士に関する紹介活動を行ったことがあります。公認会計士という資格・職業を知らない生徒が多く、紹介ブースに立ち寄った生徒からこんな職業があるのだと関心を受けていたことを覚えています。今後とも日本公認会計士協会の活動のみならず、私個人としても公認会計士および会計の普及・啓蒙をブログ、セミナー、日々の業務で図る所存です。

    おわりに

    今回は、「公認会計士の世界も変わっている」とのタイトルで公認会計士法の改正についてお話しました。一つ申し上げたい私見として公認会計士の業務に関することについて私見を申し上げます。公認会計士法第2条に公認会計士の業務に関する規定があり、
    1.他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査又は証明をすることを業とする
    2.公認会計士の名称を用いて、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の調製をし、財務に関する調査若しくは立案をし、又は財務に関する相談に応ずることを業とすることができる(ただし、税務業務など他の法律で規制されている業務を除きます)
    とあります。この規定は一見もっともらしいのですが、企業内会計士の活躍や業務領域拡大には十分対応していないのです。今回の改正案には盛り込まれませんでしたが、是非とも公認会計士の活躍領域の広がりに合わせた業務規程の改正を望みます。

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