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交際費と広告宣伝費(損金・経費解説シリーズ⑧)|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!

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【令和6年10月リライト】交際費と広告宣伝費(損金・経費解説シリーズ⑧)|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!

2024/10/18

目次

    はじめに

    10回にわたってお届けする損金・経費解説シリーズ、今回のテーマは交際費と広告宣伝費についてです。交際費と広告宣伝費はいずれも企業アピールのための支出と言えますが、交際費と認められると経費算入に制限があります。今回は交際費と広告宣伝費の違いを中心にこれら2つの経費についてお話しします。
    なお、このシリーズは以下の通りになっており、今回の内容は令和6年10月現在の法令に基づいています。
    第1回    減価償却
    第2回    繰延資産
    第3回    資産の評価損
    第4回    給与、賞与
    第5回    保険料
    第6回    寄附金
    第7回    租税公課
    第8回(今回)  交際費、広告宣伝費
    第9回    圧縮記帳
    第10回    貸倒損失、貸倒引当金

     

    広告宣伝費とは

    まず、広告宣伝費とは何か確認しましょう。広告宣伝費とは不特定多数の者に対する宣伝的効果を意図した費用、すなわち相手を特定せずに企業アピールするための費用です。よく思い浮かぶ例としては、メディアに対する広告費用、ホームページやSNSに関する費用があります。街頭で配るチラシやメルマガ、SNSメッセージなどによる宣伝は個別に宣伝しますが不特定多数を対象としているため、こうした宣伝にかかった経費は広告宣伝費に該当します。広告宣伝費は明らかに企業アピール目的であるため、個人事業主の場合必要経費算入ができますし、法人の場合も損金算入できます。
     

    交際費とは

    次に、交際費とは何か確認しましょう。交際費とは得意先や仕入先その他事業に関係のある者に対する接待、供応、慰安、贈答などの行為のために支出する費用をいいます。つまり、特定の相手に対して何らかのもてなしをするための費用です。よく思い浮かぶ例としては、会食代、お中元・お歳暮代、お祝い花代、得意先向けイベント経費、慶弔費があります。むろん、特定の相手のためであってもビジネス活動に直接必要な仕入や経費は含まれず、ビジネス活動とは直接関連のないものが対象になります。
    ビジネス活動とは直接関連がないことから、企業PRをするとともに節税手段とすることもあります。そのため、交際費とされる費用については法人税における損金算入制限が設けられた経緯があります。具体的な制限については後ほど詳しく取り上げます。

     

    広告宣伝費となる費用の具体例

    ここまで、広告宣伝費と交際費とは何か確認しました。では、具体的にどのような経費が広告宣伝費となり、どのような経費が交際費になるのでしょうか。国税当局内部の規則である法人税基本通達では以下の通り区分しています。(参考リンク:国税庁HP No.5260 交際費等と広告宣伝費との区分
    カレンダー、手帳、手ぬぐいなどを贈与するために通常要する費用や次のような不特定多数の者に対する宣伝的効果を意図した費用は交際費等には含まれないものとされ、広告宣伝費となります。

    1. 製造業者や卸売業者が、抽選により、一般消費者に対し金品を交付するための費用または一般消費者を旅行、観劇などに招待するための費用
    2. 製造業者や卸売業者が、金品引換券付販売に伴って一般消費者に金品を交付するための費用
    3. 製造業者や販売業者が、一定の商品を購入する一般消費者を旅行、観劇などに招待することをあらかじめ広告宣伝し、その商品を購入した一般消費者を招待するための費用
    4. 小売業者が商品を購入した一般消費者に対し景品を交付するための費用
    5. 一般の工場見学者などに製品の試飲、試食をさせるための費用
    6. 得意先などに対して見本品や試用品を提供するために通常要する費用
    7. 製造業者や卸売業者が、一般消費者に対して自己の製品や取扱商品に関してのモニターやアンケートを依頼した場合に、その謝礼として金品を交付するための費用

    つまり、特定の相手のみに行わないものはもてなしであっても広告宣伝費とされます。ただし、対象者が以下の場合は告知が不特定多数に行われていても「一般消費者」向けとされず交際費とされますのでご注意ください。

    1. 医薬品の製造業者や販売業者が医師や病院を対象とする場合
    2. 化粧品の製造業者や販売業者が美容業者や理容業者を対象とする場合
    3. 建築材料の製造業者や販売業者が、大工、左官などの建築業者を対象とする場合
    4. 飼料、肥料などの農業用資材の製造業者や販売業者が農家を対象とする場合
    5. 機械または工具の製造業者や販売業者が鉄工業者を対象とする場合
       

    他の経費に該当する交際費

    取引の目的・内容は交際費とされるものであっても、交際費に該当しない場合があります。それは社内の人材を相手にした場合です。
    例えば、従業員の結婚や出産、不幸などに対してお祝い金または弔慰金を支払う場合を考えてみましょう。たいていの支払目的は従業員に対する慰安または福利厚生であり、企業アピールのためのもてなしが目的であることはほとんどありません。この場合、交際費としての性格にそぐわないことは明らかであり、法人税基本通達においても福利厚生費として取扱い、必要経費及び損金算入の制限はありません。ただし、社内規程で定める範囲内に限られそれ以上の支払は賞与とみなされ、従業員にとって給与課税対象となりますので留意が必要です。
    この他、法人税基本通達では以下の場合福利厚生費とされるとしています。(参考リンク:国税庁HP No.5261 交際費等と福利厚生費との区分

    1. 専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行などのために通常要する費用
    2. 創立記念日、国民の祝日、新社屋の落成式などに際し、従業員におおむね一律に、社内において供与される通常の飲食に要する費用

    なお、役員に対する慶弔金その他交際費と認められる費用は役員賞与とみなされ、支出前の税務署への届出なきものは損金不算入とされるうえ役員個人の給与課税及び源泉徴収の対象になりますので特に注意が必要です。
     

    交際費の損金算入限度額

    交際費とされるものとされないものについて取り上げましたが、交際費とされる場合の必要経費または損金算入制限について詳しくお話しします。

    1. 個人事業主の場合 
      特に金額制限はありません。ただし、ビジネスとの関連性が薄い相手に対する交際費は必要経費となりませんので留意が必要です。
    2. 法人のうち大法人(資本金が1億円を超える法人)の場合
      1人当たり10,000円以内の飲食代を除き、損金不算入となります。
    3. 法人のうち中小法人の場合
      年間800万円以内の部分及び1人当たり10,000円以内の飲食代を除き損金不算入となります。なお、年間800万円以内かどうかの判定は1人当たり10,000円以内の飲食代を含めて行います。

    個人事業主や中小法人の制限が緩い理由は、中小企業の営業活動は特定の取引先に対するものが中心であり、厳しい算入制限は営業活動を抑える効果が生じかえって中小企業振興の阻害につながるとされるからです。
    なお、令和6年度税制改正で2024年(令和6年)4月1日以降の飲食代について損金算入上限が従来の5,000円から10,000円に引き上げられました。理由は令和4年(2022年)ごろからの材料費及び賃金の増加で飲食料金の値上げが相次いだことから、5,000円以内で飲食代を抑えることが難しくなったためです。この変更は3月31日以前の飲食には遡って適用されないことに留意が必要です。また、事業年度に関係なく4月1日の飲食から適用されますので、事業年度が4月1日開始ではない法人では同じ事業年度内に2つの上限ルールが生じることになりますので特に判定間違いのないよう注意が必要です。

     

    おわりに

    今回は、企業アピールのための経費である広告宣伝費と交際費について取り上げました。広告宣伝の形は近年の情報化で刻々と変化しており、交際費についてもその時々の景気やご時世で形が変化します。一応の具体的取扱いを説明していますが、判断が微妙なものが多く実際の判断はそれぞれの取引の目的や支払先などを総合的に勘案して行います。税務調査でも税理士事務所による巡回監査でも取引ごとに個別に判定し、機械的ではなく意図をよく理解したうえで行ういわば調査や監査をする側の腕が試されるところでもあります。
    広告宣伝費や交際費に関する質問やご相談も承っておりますが、個別具体的なことが多く回答にお時間を頂戴することがあります。ご相談の際はあらかじめご了承くださいますようお願い致します。

     

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