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資産評価損(損金・経費解説シリーズ③)|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!

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【令和6年9月リライト】資産評価損(損金・経費解説シリーズ③)|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!

2024/09/06

目次

    はじめに

    10回にわたってお届けする損金・経費解説シリーズ、今回のテーマは資産の評価損についてです。評価損と聞くとあまり良いイメージではありません。ですが、資産活用や処分について改めて考える良い機会になります。最初に評価損の意義、次に具体的に評価損を計上する資産とそのタイミングについてお話します。
    なお、このシリーズは以下の通りになっており、今回の内容は令和6年9月現在の法令に基づいています。
    第1回    減価償却
    第2回    繰延資産
    第3回(今回) 資産の評価損
    第4回    給与、賞与
    第5回    保険料
    第6回    寄附金
    第7回    租税公課
    第8回    交際費、広告宣伝費
    第9回    圧縮記帳
    第10回    貸倒損失、貸倒引当金

     

    評価損を計上する意義

    評価損に対するイメージはあまり良くないものです。では、評価損とは何でしょうか?改めて評価損の意義を確認しましょう。
    評価損は平たく言うと「いったん投資した金額について、後々の売上や収入で回収できなくなる可能性が高くなって見込んだ損」です。つまり、リターンを期待していたけれどリターンが得られなくなる可能性が高くなった分だけ損失計上するというものです。「可能性が高くなった」という表現をしていますが、売却や処分で実際に回収できなくなる前に回収できない金額はあらかじめ損失として出しておくのです。評価損を出すことを通して利害関係者に企業の問題を早めに理解してもらうことで、むしろ企業の誠実さをアピールし、その後の経営改善にうまくつながるようにしているのです。この考え方は企業会計原則にも「保守性の原則」として取り入れられています。
    むろん、やみくもに評価損を計上して実態以上に悪くみせ、「助けてアピール」をすることはかえって信用を失いますし、不公平な税金逃れにもつながります。次の項目以降で具体的な評価損の計上の例を示し、タイミングと評価損の算定方法についても取り上げます。

     

    会計基準における評価損

    ここでは具体的にどのような場合に評価損を計上するのか列挙します。

    1. 棚卸資産の価値下落、減耗
    2. 固定資産の減耗、資産価値の減少
    3. 有価証券の価値下落

    以上の3つについて以下の項目で詳しく説明します。いずれも何らかのリターンを求めて投資したものの投資に似合ったリターンが得られなくなりそうだという状態であることが共通しています。広い意味で捉えますと、債権回収が難しいとの理由で不良債権に対して設定する貸倒引当金の計上も評価損に該当します。貸倒引当金については第10回で詳しい説明をします。
     

    棚卸資産の減耗損・評価損

    ここでは棚卸資産の評価損計上についてお話しします。棚卸資産は販売のために保有している商品や製品、材料のほか、部品などの貯蔵品が該当します。つまり、ビジネスの基本となる資産であり、通常棚卸資産として計上される金額には仕入コストや加工コストが含まれています。
    仕入や加工は売上を得るために行っており、通常仕入コストや加工コストを上回る価格で販売し、利益を上げることでビジネスが成り立っています。ところが、商品によっては市場動向に左右されたり、流行落ち、型落ちなど時間の経過したりすることで販売価格が下がることがあります。販売価格が下がっても利益を得られるのであれば特に問題ありませんが、販売価格が仕入コストや加工コストを下回りコスト回収ができない水準まで下がる赤字状態になるとその赤字分だけ損をすることになります。そのため、年度末に在庫のまま残った棚卸資産のうち販売時の利益(粗利益)が赤字見込みとなるものがある場合は棚卸資産として計上されている金額つまり仕入・加工コストから販売見込額の差額(赤字見込額)を評価損として計上します。
    また、棚卸資産の評価損は物理的な目減りやキズによる値崩れの場合にも計上します。実務上、不確定要素のある評価損が計上されることがないよう決算処分セールや閉店前セールはなどで早期処分・販売をして粗利益を確保し確定させることはよくあることです。また、傷モノ市や規格外品の値引き販売も同様の理由で行われます。

     

    固定資産の減耗損・減損

    ここでは固定資産の評価損についてお話します。固定資産は中長期的にビジネスを展開するために保有し活用している資産であり、固定資産に設備投資した金額は売上から仕入・加工コストや販売コストなどの経費を差し引いた利益によって中長期にわたって回収します。よって、赤字や支出超過、売却価額の下落などにより投資した金額の全てを回収できなくなるとその分だけ投資損となります。したがって、特定の固定資産または事業について赤字続きや売却処分価格の下落など損が見込まれる状況になった場合は、特定の固定資産又は事業に関連する固定資産グループについて、以後回収できると見込まれる金額と減価償却していない投資額の差額を評価損として計上します。この評価損を「減損損失」といいます。
    実務上全ての固定資産について損失見込額を見積もることは多大な負担になるため、まず損失が見込まれる状況が発生している資産または事業を絞り、回収対象となる売上が同じ固定資産をひとまとまりの資産グループにし、資産グループ単位で評価損計上の要否判定をし損失額を見積ります。
    なお、故障や滅失による固定資産の物理的な減少については物理的に減少した部分について減耗損失を計上します。

     

    有価証券の評価損

    ここでは有価証券の評価損についてお話します。トレーディング目的で有価証券を保有している場合は初めから相場変動で利益を得る目的で保有しているため、年度末に一旦含み益と含み損を現実の損益として計上します。では、トレーディングではなく中長期的に配当や利息、売却益を得る目的で保有している場合はどうなのでしょうか?一時的な損失は事後的に取り返せる可能性があるため損失計上しません。一方、相場価格が大きく下落したり、投資先の赤字状態の継続など損失が一時的とは言えないほどとなれば、有価証券に投資した金額が取り返せなくなる可能性が高くなります。
    そこで相場価格や実質的な純資産が大きく下落(50%以上下落)した場合は損失を取り返せる可能性が極めて低いと判断し、反証材料がない限り評価損を計上します。一度評価損を計上すると相場や業績が回復しても評価損を事後的に取り消すことはできません。

     

    税金計算における評価損の取扱い

    ここまで資産の損失についてお話ししましたが、税金計算においては安易な節税手段ともなりえます。そこで、ここで改めて税金計算上の取扱いを解説します。
    評価損は実際に処分や売却をする前に損になることが見込まれる金額を資産から減額し損失計上するものです。したがって見込額はあくまで予測、見積りとなるため主観性が入ることになります。一方、税金計算における所得計算では先述の通り主観的な要素が入ることによるやみくもな節税を認めると課税に不公平が生じ得ます。そのため、法人税計算では客観的事実に基づく物理的な滅失は損金算入を認め所得を減らせる一方、評価損については損金不算入とし申告書で所得加算調整し、実際に処分や売却を行って客観的に損失が確定した時点で申告書で所得減算します。
    また、所得税における所得計算においては評価損を必要経費とすることができません。棚卸資産については処分や売却をした時点で所得認識します。なお、固定資産および有価証券の売却処分に伴う損失は事業用であっても譲渡所得に分類されますが、一定の家屋を除き不動産同士あるいは上場株式同士でないと黒字と相殺することができず、他の所得とも通算して所得を減らすことはできません。

     

    おわりに

    今回は資産の評価損について取り上げました。評価損計上は大企業向けの会計基準で求められており、中小企業をはじめとする公認会計士監査を受けていない企業では税法で評価損計上が認められておらず見積りにも手間がかかることから、ほとんど行われていないのが現状です。それでも、銀行など企業に資金を供給する側にとっては思わぬ資金の焦げ付きを未然に防ぐために含み損があれば早めに教えてほしいという思いがあります。
    現実的に決算書には反映されないものの、業績の低下や価格の下落など損失が見込まれる要因がある場合は言いずらいものですが、できるだけ銀行などに伝えるようにしましょう。そうすることが融資に対する銀行との関係悪化と貸し渋りを防ぐことになります。

     

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