特定生産性向上設備等投資促進税制|札幌で税理士・公認会計士に相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!
2026/06/12
目次
はじめに
令和8年度税制改正では法人税法関連の改正でこれまでの中小企業投資促進税制よりもさらに優遇される「特定生産性向上設備等投資促進税制」が導入されます。ブログ更新日時点ではまだ適用開始には至っていませんが、今回は特定生産性向上設備等投資促進税制について概要を取り上げ、どのような法人で役立てることができるのかひも解きます。
制度創設の経緯
始めに制度創設の経緯に触れます。特定生産性向上設備等投資促進税制は産業競争力強化法を前提とした制度で同法第1条に規定されている「日本経済の再興と持続的発展のため、産業競争力を強化する規制改革や産業の新陳代謝活性化、中小企業の再生支援等の措置を講じる」ため、生産性向上につながる資産の設備投資を税制優遇により促進しようとすることを目的としています。
近年は国際経済事情の変化、資源価格の変動等による物価の継続的な上昇、人口減少や少子高齢化等の経済社会情勢が変化し、企業の事業活動の持続的発展の支援が求められています。そこで、事業の高付加価値化と、海外需要開拓や安定的な原材料の確保を通じた供給網の強靱化を推し進めるとともに、担い手の確保に資する生活基盤の維持を図るため産業競争力強化法の改正案が2026年(令和8年)5月29日に成立し、今回の税制優遇制度創設となりました。
経済産業省HP|「経済社会情勢の変化を踏まえた企業の事業活動の持続的な発展を図るための産業競争力強化法等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました
優遇措置の詳細
それでは特定生産性向上設備等投資促進税制の詳細について触れます。特定生産性向上設備等投資促進税制には以下の2つの税制優遇措置があり、選択適用となっています。
- 即時償却:取得価額の全額をその年度に償却(100%特別償却)
- 税額控除:取得価額の7%(建物等は4%)を法人税から直接差し引く(ただし、法人税額の20%が上限です)
従来からある中小企業投資促進税制は、
- 即時償却:取得価額の30%をその年度に償却(30%特別償却)
- 税額控除:取得価額の7%を法人税または所得税から直接差し引く(ただし、税額の20%が上限で個人事業主または資本金3,000万円以下の法人のみ適用可能)
となっているため、控除額や対象となる企業の範囲も有利になります。
さらに、2.税額控除を適用する場合法人税額20%の上限に引っかかり税額控除可能額の一部を使いきれなかった場合、最大3年間控除しきれなかった額を翌年度以降に繰り越して控除することができます。
対象となる法人と資産
それでは、特定生産性向上設備等投資促進税制の具体的な対象企業と資産について掲げます。
対象となる企業は青色申告書を提出している法人で、中小企業投資促進税制とは異なり大企業でも適用可能な一方法人税のみの制度であるため、個人事業主は適用対象外です。
対象となる資産は以下の通りです。
- 機械装置:1台160万円以上
- ソフトウェア:1資産当たりの取得価額が70万円以上
- 建物:1,000万円以上
- 工具・器具備品:120万円以上
- 建物附属設備・構築物:120万円以上
なお、本制度は生産性向上設備の導入促進が目的であるため、生産設備に該当しない固定資産(例:本店、寄宿舎等の建物、事務用器具備品、福利厚生施設及び研究開発中のソフトウェア、コピー頒布用のプログラムマスターなど)や貸付の用に供する固定資産には適用されません。
また、生産性向上に資することを目的としていることから、経済産業大臣による投資計画の事前確認が必要で、合計額が35億円以上(中小企業者等は5億円以上)、かつ年平均の投資利益率が15%以上見込まれることなどの基準を満たした投資計画であることが必要です。
適用するための流れ
ここでは、特定生産性向上設備等投資促進税制の適用を受けるための流れについて説明します。
- 投資計画の策定と確認:産業競争力強化法等改正法の施行の日から2029年(令和11年)3月31日までの期間内に上記基準を満たした投資計画の経済産業大臣による確認を受けます
- 対象資産の取得と稼働:投資計画の確認を受けた日以後5年を経過する日までの間に、確認を受けた対象資産の取得等をして、国内にあるその法人の事業の用に供します
- 申告書における明細書添付:対象資産の取得・供用をした事業年度の確定申告において特定生産性向上設備等投資促進税制の適用に関する明細書を申告書に添付して提出します
なお、税額控除を翌年度以降に繰り越す場合は繰り越した年度においても明細書の添付が必要です。
適用にあたっての注意点
ここまで特定生産性向上設備等投資促進税制の概要について取り上げてきましたが、適用に当たってはいくつか注意点がありますのでご確認ください。
- 一部の優遇税制との併用不可
特定生産性向上設備等投資促進税制の適用を受けている投資計画の期間中は、地域未来投資促進税制、中小企業経営強化税制及びカーボンニュートラルに向けた投資促進税制が適用できません。なお、中小企業経営強化税制の繰越税額控除制度は投資計画の期間中であっても適用できます。 - 大企業が適用する場合の追加要件
大企業については設立年度の場合や所得が前年度よりも上回る場合、継続雇用者の給与支給額が前年度比1%(特定のケースの場合2%)以上増加していることや、国内設備投資額が減価償却費の30%(特定のケースの場合40%)を超えていることが適用要件となっています。
なお、ここでいう大企業は租税特別措置法上の大企業を指し、資本金1億円超の法人、相互会社、資本金5億円以上ある大法人等と完全支配関係にある法人、投資法人、特定目的会社及び受託会社を指します。
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おわりに
今回は、特定生産性向上設備等投資促進税制について取り上げました。この税制は高額な生産設備の導入による生産性向上を目的とするため、大企業でも適用でき優遇割合も有利になっています。
その一方で企業の生産性向上が目的であるため、投資計画の策定・確認が求められ単に節税や課税の繰り延べのために制度を悪用されないよう対策が講じられています。
思い切った生産性向上のための設備投資をお考えの方におすすめの税制です。ブログアップ時点で当税制がいつから適用可能になるかが未定ですので、ご検討中の方は最新情報をご確認ください。

