公認会計士・税理士熊谷亘泰事務所

電車・バス運賃の在り方を考える|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!

お問い合わせはこちら

電車・バス運賃の在り方を考える

電車・バス運賃の在り方を考える|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!

2024/12/06

目次

    はじめに

    12月より弊事務所のある札幌市では、市電(路面電車)及びバスの運賃が15%程度値上げになりました。値上げの理由としては運転手不足解消のための処遇改善と電気代・燃料費高騰対策とされています。
    利用者にとっては負担が大きくなり利用者離れが進むとされていますが、果たして運賃設定は何が適切なのでしょうか?いくつかの視点で検討してみます。

     

    運行業者のコスト回収の観点

    運行業者は電車やバスを運行するために車両費、燃料費、電気代、人件費などのコストをかけています。当然コストを回収できなければ運行を続けることができなくなります。また、一定の利益が出ないと車両や設備の投資が難しくなり輸送品質の低下につながります。
    運賃値上げの根拠が不可避なコストの回収となるわけです。もちろん、適正な(コスト+利潤)以上の運賃設定は次項で取り上げる利用者に過大な負担を強いることになります。そのため、運賃値上げのための(コスト+利潤)が適正なのかどうかを各地を管轄する運輸支局を通して運輸局が審査することになります。
    運賃設定の基準には2つあり「上限運賃」と「実施運賃」というものです。「上限運賃」は路線の新設やルート変更、通常運賃の値上げの際に設定するもので、事業者が作成した(コスト+適正利潤)を示した原価計算書を提出し運輸局が審査して適正と判断した場合運賃設定または改定が認可されるものです。一方、「実施運賃」は定期券や割引乗車券の新設や廃止、値上げの際の運賃をいい、「上限運賃」を上限として改定予定日前30日以内に運輸局に届け出て、著しく不適当なものとして道路運送法第9条第6項の要件に該当しない限り運輸局から変更命令が出ます。

     

    利用者負担の観点

    運賃設定が運行業者側の都合だけで決まるのでは利用者にとっては利用しにくいものになる可能性があることは冒頭に申し上げた通りです。そこで、地域住民に運賃設定に参加してもらい運行社・利用者双方が納得する形で運賃を決める「協議運賃」という制度があります。この制度に基づき公共交通協議会が設置されている自治体が都市を中心にあり、今回の札幌市内におけるバス運賃値上げは札幌市の公共交通協議会での協議に基づき行われました。
    協議運賃制度の場合、協議会での合意運賃は運輸局による審査が不要で、改定予定日前30日以内に運輸局に届け出て、著しく不適当なものとして道路運送法第9条第6項の要件に該当しない限り運輸局から変更命令が出ます。

     

    運賃に関連する補助金・助成金制度

    運賃は理論的には採算が取れるように設定しますが、現実には利用者負担に配慮し運賃収入だけでは赤字になるケースが多くあります。そこで、国交省や多くの自治体ではバス運行に伴う赤字を埋めるための路線維持補助金をバス事業者に交付し、地域住民の足を維持する取組みを行っています。
    しかしながら、利用者の減少と燃料費・人件費等の増大により赤字額が増えると補助額が増え財政負担が大きくなるとともに、バス事業者の経営改善意欲が下がる可能性があります。そうなると路線の廃止・統合による合理化が現実味を帯びてきます。この他に運転手不足による運行本数の維持困難も全国的に問題になっていることから、需要分析に基づいた適切なバス路線設定が今後重要になりましょう。

     

    ダイナミックプライシング

    電車やバスの運賃は原則時間に関係なく距離数によって一定のケースがほとんどです。しかしながら、日や時期によって込み合う時間帯と閑散とした時間帯があります。そこで、込み合う時間帯・時期には運賃を高めに設定して運行遅延や車内混雑を回避する一方、閑散とした時間帯・時期は安めにして気軽に利用しやすいようにするダイナミックプライシングという考え方が検討されています。
    時間別の運賃設定は利用動向を正確に把握することで上記の効果が高まります。近年はキャッシュレス決済やIoTの普及で利用動向データが取りやすくなっており、今後ダイナミックプライシングが広がる可能性があります。

     

    おわりに

    今回は電車やバスの運賃の設定について取り上げ、付随する話題として路線維持補助金やダイナミックプライシングについても触れました。近年は交通を移動サービスとしてとらえるMaaSという言葉が広まっています。電車やバスの維持だけにとらわれず、生活や観光の足として最適な交通は何か、一方で限られた人材や物品をどう効率的に活用するかというイシューから交通機関の体系を見直す良いきっかけが来ているのではないかと考えています。
     

    当店でご利用いただける電子決済のご案内

    下記よりお選びいただけます。