2024年からのNISA|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!
2023/07/28
目次
はじめに
2024年(令和6年)よりNISA制度が変わり、様々な面でこれまでよりも使い勝手が良くなります。でも、NISAのメリットについてピンとこない方もいるのではないでしょうか。この記事ではNISAの特徴を含め新しいNISAについて取り上げます。
なお、新NISA制度については金融庁HPhttps://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/nisa2024/index.htmlに概要が掲載されています。
NISAとは?
はじめにNISAとは何かここでおさらいしましょう。NISAという言葉は”Nippon Indivisual Savings Account"(日本版個人貯蓄口座)の略語で、イギリスのISA制度をモデルに2014年(平成16年)1月から開始されました。
口座の種類としては大きく2種類あり、一般NISAとつみたてNISAがあり、一般NISAの派生版として未成年の将来資金形成を狙いとしたジュニアNISAという制度があります。
特徴はいずれの制度も取得から一定の保有期間(一般NISA:5年間、つみたてNISA:20年間)の間、一定の年間投資上限(一般NISA:120万円、つみたてNISA:40万円)までは配当や利息、売却益に税金が課税されないことです。つまり、税金の心配をすることなく投資や貯蓄を通した財産形成をすることができるようにすることを狙いにした制度です。
一般NISAとつみたてNISAの違いは、保有期間及び非課税上限額の違いもさることながらつみたてNISAのほうがより長期安定的な資産形成目的に適した制度設計になっており口座内で購入できる金融商品が長期・積立・分散に適している投資信託商品に限定され、購入方法も定期継続的な方法に限定されます。また、一般NISAとつみたてNISAはいずれか1つのみ選択可能で両方の口座を同時に保有することはできません。
なお、保有期間中ずっと保有している必要はなく必要に応じて売却することが可能で、非課税保有期間を過ぎた場合でも一般の証券口座に移管して引き続き保有し続けることが可能です(ただし、配当や利息、売却益に税金がかかるようになりますのでその点はご留意ください)。ただし、株式等を一般の証券口座からNISAまたはつみたてNISAに移すことはできず、仮にNISAで保有していた商品の売却によって損失が生じても他の所得と相殺することはできず損失発生に伴う節税効果はありません。
金融庁HP:NISAとは?
通常の証券口座との違い
ここでNISAと通常の証券口座との違いについて再度確認しましょう。先述の通り、NISAは通常であれば所得税等の課税対象となる配当金や利息の受け取り、売却時の購入価額との差益が保有期間中一定の上限以内まで非課税となることが大きな違いです。
でもそれだけではありません。NISAは投資や貯蓄を通した安定的かつ一定の伸び率のある財産形成を狙いとした制度でありデイトレードのような短期間で儲けを得られる形の運用や非上場株式や債券など投資リスクが極端に高いあるいは低い投資は相性が良くありません。そのため、NISAは上場株式や投資信託、REIT(不動産投資信託)などに購入可能商品が限定され、債券、非上場株式、FX、先物、金(きん)などの商品を購入することはできません。さらに先述の通りつみたてNISAはより長期安定的な資産形成を目的としているため、より長期安定的な資産形成に適した投資信託に限定されています。一方、通常の証券口座では特に目的の制限なく売買することができます。
金融庁HP:一般NISAの基礎知識
新しいNISA制度の特徴
ここから今回の本題である2024年(令和6年)からの新しいNISA制度についてお話しします。
変更点は以下の通りです。
- 非課税保有期間の無期限化
- 口座開設期間が恒久化
- 一般制度(成長投資枠)とつみたて制度の併用が可能に
- 非課税限度額の引き上げ
現行のNISA制度は貯蓄から投資へシフトすることを促進するための時限立法として成立し税法改正で制度の延長が行われてきました。更に投資へのシフトを促進するため先般の令和5年度税制改正で特に期限のない恒久的な制度に変更され、内容もより充実したものになりました。
また、現行の制度では1人につきいずれか1つしか選択できなかった一般(成長投資)枠とつみたて枠の2つの口座を両方持つことが可能になります。年間非課税投資額上限は、一般NISAに該当する成長投資枠が120万円から2倍の240万円に、つみたて枠が40万円が3倍の120万円まで引き上げられます。また、購入額ベースの非課税保有額上限は2制度合計で1800万円とされうち成長投資枠は1200万円が上限となっています。
購入できる商品についても変更され、成長投資枠について成長投資とはいいがたい、整理・監理銘柄の上場株式や運用期間が20年以内の毎月分配型投資信託及び、先物取引やFXなどのデリバティブ(金融派生商品)が組み入れられた投資信託などは購入可能商品から除外されます。
なお、現行制度が終了する2023年(令和5年)12月31日時点で一般NISA口座またはつみたてNISA口座に残っている金融商品については新制度の下で開設される口座に移管することはできず、代わりに従来の口座を維持し残りの非課税保有期限までに発生した配当受取及び売却益については所得税等が非課税になる経過措置が設けられます。
個人型確定拠出年金(iDeco)との違い
ここまでお読みになった方の中にはNISAと似た非課税制度として個人型確定拠出年金(iDeco)を思い浮かべる方がいらっしゃるのではないでしょうか。ここで簡単に違いを解説します。
個人型確定拠出年金(iDeco)とは文字通り将来年金として受け取るための制度であり、つみたてNISA同様毎月定額の方法で掛け金を拠出し金融商品を買い付けます。
特徴的なのは年金受給可能年齢に達するまでiDeco口座で運用している金融商品を売却して口座から引出すことは原則不可能でiDeco口座内で預金として運用することになることです。また、iDeco口座は死亡や重度障がいなど一定の要件を満たさない限り途中解約ができません。上限額は毎月掛金に対して設定されており最大55,000円です。所得税の取扱いも、iDecoは掛金拠出時に所得控除できる一方年金受取時に所得として取り扱われることが、購入から配当受取・売却まで非課税限度の範囲内で課税所得に何ら影響しないNISA制度と異なります。
こうした制度設計の違いから、NISA制度はさまざまな目的での資産形成に向いており、iDecoは老後資金に特化した資産形成に向いています。
おわりに
今回は2024年(令和6年)からの制度を中心にNISAについて取り上げました。日本では投資に関する理解の不十分さや銀行の力が強いこと、失われた30年とも言われる長年の景気不振から貯蓄志向が強い傾向にあり、金融資産への投資をする人が少なかったと言われます。経済循環を促す観点から貯蓄から投資へのシフトを政府や経済界は目論んでいますが、投資しやすい環境にするためには非課税口座の仕組みだけではなく投資に関するリテラシーの向上も不可欠です。
私も投資リテラシーの向上に努め、今後機会を見てブログで金融商品投資のメリット、デメリットを分かりやすく説明したく存じます。