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【令和5年3月リライト】電子領収書・請求書等の保存|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!

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2023/03/03

目次

    はじめに

    3回にわたって電子帳簿保存法の3つの項目を取り上げています。今回は3回目で、特に話題になっている電子データの保存について取り上げます。今回の記事の内容は令和5年(2023年)2月現在の法令に依っています。
    第1回 会計ソフトやExcel等で作成した会計帳簿の保存
    第2回 領収書やレシートなどのスキャナ保存
    第3回 電子領収書・請求書等の保存(今回)

     

    そろそろ電子データの電子保存を検討しましょう

    いきなりあおるようなタイトルですが、2024年(令和6年)1月1日以降、電子データの電子保存の取扱いを守っていないと取引の証拠なしとみなされる可能性があるのです。電子データで作成または入手した取引の証拠となる文書は原則2022年(令和4年)1月1日以降電子データのまま、しかも、決められた方法で保存する必要があるとされています。ですが、改正当時の周知期間が約3か月ほどとあまりに短期間でコロナ禍で行動自粛ムードがあり適用開始に対応が間に合わないとの反発が強かっため、2023年(令和5年)いっぱいまでは準備期間としその期間中は電子取引のデータで入手しても紙に印刷したものを保存するなど従来の取扱いでの保存を認めるとする「宥恕規定(ゆうじょきてい)」が当初の適用開始直前に設けられました。
    電子保存に関する今回の取扱いは所得税及び法人税の証拠書類として保存する場合に適用され、消費税については印刷した書面で証拠保存しても差し支えありませんが実務上電子保存に統一するほうが合理的です。
    具体的に対象となる電子取引ですが、「取引情報の授受を電磁的方法により行う取引」(改正電子帳簿保存法第2条第5項)のデータを指し、いわゆるEDI取引、ネット取引、Eメールなど電子通信(添付ファイル方式含む)による情報授受取引、クラウドサービスによる取引情報授受取引、スマホアプリを通じた取引などが該当します。もし、同一の書面を電子と紙の両方で受け取った場合、紙の書面を正本とする場合は紙保存で差し支えありません。一方、電子取引のデータを一度紙に印刷しスキャニングして電子データ化したものは電子取引データともスキャン保存データとも両方認められませんのでご注意ください。
    なお、従業員が立替精算した経費が上記の取引に該当する場合(例:ネットでの出張に必要な交通機関・宿泊の手配、ネットショップでの備品立替購入)、対象の電子取引データを勤務先に電子データのまま提出し勤務先が決められた方法で保存するのが原則ですが、経費精算が紙ベースになっている実務に配慮し当面は従業員がPCやスマホに保存し勤務先は日付、取引先、取引金額を検索できるように保存状況を管理することも可能です。
    【電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係編)Q1、Q2、Q3、Q4、Q6、Q7、Q10、Q13、Q25、Q56-2、Q56-3】

     

    対象となる電子データの範囲

    電子保存の対象となる電子データについてもう少し詳しくお話します。電子データは領収書や請求書はもちろんのこと、契約書なども対象です。近年はインターネットバンキングで振込をすることがありますが、インターネットバンキング取引を記録した振込明細書の電子データも対象になります。なお、税金納付にダイレクト納付を利用した場合の受信通知はダイレクト納付処理実行に対する税務署による受信報告にすぎず入金領収とは関係ないため、電子保存対象には当たりません。
    【電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係編)Q8、Q9】

     

    具体的な保存方法

    保存方法に関しては先述の通り一定の要件を満たす必要がありますが、データの形式に関しては特に決められた形式はありません。例えば、メールの本文に取引情報が載っている場合は電子メールファイルそのものを保存する方法でもPDF変換する方法でも構いせん。メールやクラウド請求システムに添付されているPDFに取引情報が載っている場合はPDFをダウンロードして保存します。また、スマホアプリやチャットに取引情報が載っている場合は取引情報の載った箇所をスクリーンショットした画像を保存します。また、EDIやクラウドサービスなどでXMLを使ってやり取りをしている場合、XMLのままでは文字の羅列となり不明瞭なため適切な保存と認められませんが、Excelやcsvなどに変換して一覧表化したものであれば、データの内容を改変しない限り合理的とされます。むろん、WordやExcelなどをPDF化したものも内容を改変しない限り認められます。
    なおデータストレージに保存・格納する場合、スキャン保存で使用しているデータストレージに格納しても構いません。
    【電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係編)Q31、Q32、Q33、Q36、Q38】

     

    電子保存に必要な要件

    電子取引データの保存は原則以下の方法で行うこととされています。

    1. 自社開発プログラムを用いて保存する場合、システム概要を記載した書類の備付け
    2. ディスプレイ等の備付け
    3. 検索機能の確保
    4. 以下のいずれかの措置を行うこと

      ・タイムスタンプを付与したうえでの授受
      ・受領後速やかなタイムスタンプの付与
      ・訂正削除履歴の残るシステムまたは訂正削除ができないシステムの使用
      ・訂正削除防止に関する事務処理規程の整備と備付け
    クラウドストレージなどデータ保管システムを使用して保存する必要はなく、通常のフォルダやドライブを使用しても構いませんが、タイムスタンプをつけるか、訂正削除防止に関する事務処理規程の整備と備付けのいずれかが必要となります。システムを使用しない場合例えば、
     1.2022年(令和4年)1月29日に(株)熊谷工業から受領した100万円の請求書のファイル名として"20220129_(株)熊谷工業_1000000”とする
     2."(株)熊谷工業"や"2022年1月分"など一定のグループ単位で作成したフォルダに格納する
    という方法や
     1.ファイル名を連番の番号とする
     2.ファイル番号順の金額、取引先、書類種別を記載した索引簿を作成する
    方法があります。電子帳簿やスキャン保存の場合と同様、クラウドサービスを使用して差し支えありませんし、バックアップ要件はありません。また、オンラインマニュアルやオンラインヘルプ機能にシステム概要書と同等の内容が盛り込まれていれば改めてシステム概要書を製本し備え付ける必要はありません。なお、保存する電子データは必ずしも相手方とのやり取りに使ったデータでなくともよく合理的な方法で編集され、内容が変更されていない状態で保存された請求データベースであればデータベース保存に代えて差し支えないとされています。
    【電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係編)Q14、Q15、Q22、Q23、Q26、Q40】

     

    PCを持っていない場合の保存方法

    事業を手掛けている方の中にはコスト抑制や操作スキルの問題からPCを持たず、スマートフォンで取引情報やり取りしている人も少なくありません。PCを持っていない場合どのように電子保存すればよいのでしょうか?
    スマートフォンでのやり取りでも先述の要件を満たして電子データを保存する必要があります。スマートフォンの場合データ保存アプリがまだ充実しておらず、一定のルールでファイル名とフォルダのルールを定め、ファイル管理簿を作成して容易に検索できるようにし、改ざん防止のための事務規程を整備するという方法になることが現状では可能な方法ではないでしょうか。スマホ版の電子帳簿保存法対応データストレージアプリが待たれるところです。
    なお、電子データ印刷のためのプリンターが手元にない場合はコンビニ等の有料プリントで印刷して差し支えないものとされています。
    【電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係編)Q17】

     

    副業をしている場合の電子取引書類保存の取扱い

    近年では、従業員として雇用され給与を受け取る業務を本業としつつ、ご自身で収入を得る副業を行っている方も少なくありません。副業においては受発注や請求などを行いますが、これらのやり取りが電子で行われることも決して珍しくありません。これら副業における受発注や金銭のやり取りに関する電子データも一定の方法で電子保存するのでしょうか?
    副業で収入を得ている場合令和2年度税制改正で副業収入が年間300万円以上になった場合請求書や領収書等の保存が義務化されました。電子帳簿保存法は必ずしも本業で事業を行っている場合に限定して適用されるものではないため、副業の場合でも請求書や領収書等を電子でやり取りしている場合は一定の方法で電子保存しなければなりません。副業を行っている方は自分は対象外だと高をくくることなく電子保存対応するようにしましょう。
    【電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係編)Q59】

     

    令和5年税制改正における変更点

    ここまで、電子取引データの電子保存についてお話ししました。この記事を一通りお読みになった方の中にはあまりに手間で対応できないと思った方も多いのではないでしょうか。こうした声を踏まえ、令和5年度税制改正大綱で令和6年(2024年)1月1日以降の取引から適用予定の以下の緩和策が示されています。

    1. データ検索要件を不要とする対象者を、現行の年間売上高1,000万円以下から5,000万円以下に拡大し、さらに電子データを出力した書面を税務調査において提示できるようにしている者にも適用
    2. 電子データ電子保存の一定要件を満たして保存することができないことに相当な理由があると認められ、かつ税務当局の質問調査に対してダウンロードまたは書面出力によって提出・提示の求めに応じることができる場合、一定要件を満たさない状態で電子保存することを認容

    2.の相当な理由が現状では抽象的なものにとどまっており現場の裁量により許容範囲が変わる可能性があります。可能な限り、要件を満たすように努めて頂くとともに、使いやすいデータストレージの開発と普及も進んでほしいと筆者は願っています。
     

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