足し算と掛け算の要因分析!|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!
2022/09/09
目次
はじめに
決算や業績をこまめに見ていますか?そのように質問すると「もちろん見ています」という回答をする方がいらっしゃいます。では、どのように見ていますか?という質問にはどうでしょうか?漠然と決算や業績を見ていても「ああそうか」くらいに思うものです。でも、見方を知っているとすっきりはっきりと現状が分かり、今後のアクションも取りやすくなります。そこで今回は、要因別に分解するという方法での見方をお話します。
分解方法には大きく2つあり、足し算の式になるように分解する方法と掛け算の式になるように分解する方法です。2つの分解方法それぞれについてまず総論的な説明をし、その後よく用いる分解方法を解説していきます。
足し算式要因分解
要因分析の1つ目は、要因A+要因B+要因C+…=全体と捉えて分解する分析方法です。この方法では区分を1つ設定して分解します。例としては、
1.部門・地域別分析(WHERE)
2.時期別(日別・月別・四半期別・年別)分析(WHEN)
3.相手先別分析(WHO)
4.商品別・ライン別分析(WHAT)
5.チャネル別・販売方法別分析(HOW)
が挙げられます。WHY以外の4W1Hを意識すると分けやすいのではないでしょうか?この分解方法を用いることで特に注目すべきところを絞り込むことができます。もちろん、一つの区分だけでなく複数の区分で分解することでさらに絞り込みがしやすくなります。この分解方法はデータベースの要素をいくつか設定することで簡単に分解でき、Excelにあるピボットテーブルや業務用ソフトの分解機能を使ってすぐにできます。次項目以降分解方法の例をご紹介いたします。
部門・地域別分析
ここでは場所(WHERE) に着目した分析についてお話します。この分析の例は「部門」「地域別」です。特に比較的広範囲で事業を展開している事業者が売上や製造原価の分析をする際に有効です。
この分析を行うことで、地域や部門、工程特有の原因がないか確認し、的を絞ることができます。また、各地域や営業部門で取り扱っている商品やサービスのジャンルが類似している場合は、地域や営業部門同士の比較にも有効です。
年度・月別分析
ここでは時間(WHERE) に着目した分析についてお話します。この分析の例は「年度比較分析」「月別推移分析」です。時間は平等に与えられているため、どの事業者のどの項目にも適用できる分析です。
この分析は汎用的なぶん原因分析結果が抽象的になり、改善点が不明確になるリスクもあります。そのため、最初は大まかに企業全体の年次分析から始めて、その後他の要因分析に時系列を組み込む形での複合分析を行ったり、年度から四半期、月次、日次と時間の区切りを細かくしたりすることによって原因の特定を効率よく行うことができます。
商品・相手先別分析
ここではWHO、WHEREに着目した分析についてお話します。HOWに着目した販売方法やチャネルによる区分は商品ラインアップや相手先とも密接に絡むため、この項目でまとめてお話します。この分析の例は「商品別」「相手先別」です。
まず、相手先別分析ですがB to Bのように相手先が特定されているのであれば比較的容易に適用できます。一方、不特定多数の相手先がある場合にはあまりに数が多いため細かくなりすぎる問題があります。そこで不特定多数を相手にする事業の場合、店舗、ECサイトといった販売箇所が複数ある場合は地域別やチャネル別を代わりに用います。また、マーケティングの精緻化、効率化のためによく用いられる顧客別RFM分析を組み込むことも相手先別分析の精度を引き上げます。
次に商品別分析についてお話します。商品やサービスのアイテム数が少ない場合は個別の商品やサービスで区分してもそれほど煩雑ではないですが、アイテム数が多くなると細かくなりすぎて却って原因特定が難しく非効率になります。そこで、類似した商品やサービスでグループを作ってグループで分解して分析するグループ別分析をすると的が絞りやすくなります。また、グループ作りの切り口を複数設けることも分析精度向上に有効な方法です。例えば、食料品店で、①種類別(青果、鮮魚、精肉など)、②価格帯別(高価格帯、中価格帯、低価格帯)の2つの切り口を使ってグループを作りマトリックス表にして分析する方法です。
掛け算式要因分解
要因分析の2つ目は、要因A×要因B×要因C×…=全体と捉えて分解する分析方法です。この方法では要因を複数の切り口からなる構成要素に分けます。特に理由(WHY)を数値的に分析するときに有効な方法です。よく用いられる要因は数量、時間、単価、率です。また、この分析は前年実績、予算、他社、他部門など比較対象を設定し、比較することでより深度を高めることができます。つまり足し算式要因分解を組み合わせるのです。次項目以降掛け算式要因分解の例をご紹介します。
数量×単価分析
ここでは商品の売上やコストの分析によく用いられる、数量と単価に分解する分析方法についてお話します。数量は売ったり生産したりした量、単価は価値を表しています。売上や原価は2つの要因の組み合わせであり、なぜ増減したのかを探るためには量の増減なのか価値の増減なのかを分解して原因を正確に把握し、把握した原因に基づいた適切な改善行動に役立ちます。
売上分析では販売数量×単位当たり販売単価となりシンプルですが、コスト分析では単価についていくつかの要因に分けることがあります。仕入商品であれば仕入数量×仕入単価ですが、製品であれば材料や工賃、製造経費の単価を1製品当たり単価に換算するか、製造数量単位をそれぞれの単価に対応するように換算する必要があります。例えば材料費は1製品当たりの材料使用量、工賃は1製品当たりの作業時間に換算するといった具合です。いずれにしてもその時々でばらつきが生じるため、標準的数量をあらかじめ設定したり特定期間単位でざっくり分析するなどしてばらつきの影響をある程度抑えます。
なお、製造コストについては標準的な数量や単価を設定し、実際の結果と数量差異や単価差異を算出することで増減要因を分析することもできます。
時間×単価分析
ここでは請負業やサービス業での分析によく用いられる、時間と単価に分解する分析方法についてお話します。サービス業や請負業ではモノが無かったり、建設業のようにモノはあっても全くのオーダーメイドで単純比較ができないケースがあり、数量×単価分析がなじまないことがあります。一方、サービスや請負には作業時間がかかるため、売上を作業時間×時間当たり単価に分解して計算することがあります。作業時間はサービスにつぎ込んだ人的資源、単価は提供した価値を表し、売上の増減理由が作業時間によるものなのか、あるいは単価によるものなのか分解することで作業の効率性・提供量や提供した付加価値の度合いを把握することができます。
この時間×単価分析は特にプロジェクトベースの業務の場合採算管理に使うことがあり、工数管理といわれます。プロジェクト開始時に各メンバーの標準的作業単価と作業時間を見積もり計画上の売上高を算出します。その後実際の作業進捗度を、実際に参加したメンバーの作業時間×当該メンバーの単価の合計で算出し、計画上の売上高と比較します。比較した差を作業時間の差とメンバー単価の差に分解して進捗度の違いなのかサービス品質の違いなのかを把握するものです。
残高×利率分析
掛け算式要因分解は損益の要素を分解するだけではありません。例えば利息や配当金は一定時点の保有高に利率や単位当たり配当金額をかけて計算されます。このように利息や配当金など残高を基にした料金の場合には残高×利率分析が役立ちます。増減要因が保有高の増減によるものなのか、あるいは利率など割合の増減によるものなのかが分かります。残高×利率分析は必ずしも借入先、貸付先や投資先ごとに行う必要はなく全体の残高と平均利率(または配当割合)を算出して全体の傾向を分析しても構いません。
おわりに
今回は要因分析についてお話しました。会計の専門家であるため財務的な分析を取り上げましたが、数字で表すことができるものであれば財務的なものでなくても応用できます。例えば、人口や来客数を足し算式に要因分解すれば地域別、性別、年齢別、月別、来客動機別、増加理由別(出生なのか転入なのか)などで分解できますし、処理数を掛け算式に要因分解すればインプット数×処理速度に分析するなどです。
単純ですが、いろいろな切り口で分解できます。当事務所では要因分解による原因分析について一緒に考えることが可能です!下記のお問い合わせフォームリンクからお気軽にお問い合わせください。