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令和4年度税制改正大綱③|札幌市の公認会計士・税理士熊谷亘泰事務所

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令和4年度税制改正大綱③|札幌市の公認会計士・税理士熊谷亘泰事務所

2022/01/06

政府の税制改正大綱

 税制改正について昨年から与党大綱を解説しましたが、昨年12月24日の閣議で政府税制改正大綱が決定されました。おおむね与党大綱を踏襲しており、第1回と重複する点が多いため、今回は与党大綱の解説で取り上げなかった事項や与党大綱から変更になった点を中心に解説します。
 そもそも税制改正大綱は財務省HPによりますと次の流れで進むものです。政府税制調査会が中長期的視点から税制のあり方を検討する一方、毎年度の具体的な税制改正事項は与党税制調査会が税制改正要望等を審議し、その後取りまとめられる与党税制改正大綱を踏まえて、「税制改正の大綱」が閣議に提出されます。
 令和4年度政府税制大綱の冒頭に挙がっているのが、
 ・賃上げに係る税制措置の抜本的強化
 ・スタートアップと既存企業の協働によるオープンイノベーション促進措置
 ・カーボンニュートラルの実現に向けた観点等を踏まえた住宅ローン控除等の見直し
 ・土地に係る固定資産税等の負担軽減措置の激変緩和措置
を図ることとされています。

個人所得課税の改正大綱

1.住宅ローン減税の見直し
 長年の利率低下を踏まえ控除額が年末ローン残高の1.0%から0.7%に縮小されることは与党大綱の解説でお話しましたが、今回は限度額と控除期間が優遇される住宅について解説します。
 ・認定住宅(長期優良住宅の普及の促進に関する法律に基づき認定された住宅)
  居住開始年度 令和4年~令和5年 借入限度額5000万円、控除期間13年
         令和6年~令和7年 借入限度額4500万円、控除期間13年
 ・ZEH(ゼッチ、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)水準省エネ住宅
  居住開始年度 令和4年~令和5年 借入限度額4500万円、控除期間13年
         令和6年~令和7年 借入限度額3500万円、控除期間13年
 ・省エネ水準適合住宅
  居住開始年度 令和4年~令和5年 借入限度額4500万円、控除期間13年
         令和6年~令和7年 借入限度額3500万円、控除期間13年
なお、認定住宅の場合住宅ローンに代わり、通常住宅に増してかかる費用の10%を税額から控除できる認定住宅新築等特別税額控除という制度もあり、今回の政府税制対応によりますと令和5年度まで延長するとされています(住宅ローン控除との併用不可)。
2.配当金支払時の源泉徴収対象の見直し
 配当金のうち、完全子法人(保有割合100%)が支払うもの及び配当支払基準日現在発行済株式等総数の3分の1以上を保有する者へ支払うものについては、令和5年10月1日以降の支払から所得税及び住民税の源泉徴収をしないものとされます。
3.控除証明書の電子化拡大
 電子化による申告効率化推進のため、現状生命保険控除に限られている電子控除証明書の対象を、社会保険料控除及び小規模企業共済等(iDeco含む)掛金控除にも拡大することとされたことは与党大綱の解説でも触れましたが、今回の政府大綱で令和4年10月1日以後提出となる年末調整書類(保険料控除申告書)及び令和4年度の確定申告から適用とされました。
4.ふるさと納税ワンストップ控除申請の記載事項見直し
 ふるさと納税をした個人が確定申告せずに住民税控除を受けることができるワンストップ控除申請に関する書類について、令和4年4月1日以後行われる寄付から性別の記載が不要となるとされました。

資産課税の改正大綱

1.住宅資金贈与の非課税措置延長
 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた住宅取得等資金の一定額の贈与税非課税について令和5年(2023年)12月31日まで延長し、令和4年4月1日からの成人年齢引下げに合わせて受贈者の対象年齢を20歳以上から18歳以上に引下げることとされたことは、与党大綱の解説でも触れました。今回は贈与税非課税限度額を補足します。
 ① 耐震、省エネ又はバリアフリーの住宅用家屋 1000万円
 ② ①以外の住宅用家屋 500万円
 この非課税制度は住宅取得が対象であるため、取得する家屋を賃貸や事業に使用する場合は適用されませんのでご注意ください。
2.所有者不明土地利用円滑化法の対象拡大と固定資産税等の優遇拡大
 損傷、腐食等により利用が困難で引き続き利用されないと見込まれる建築物の建つ土地を所有者不明土地に関する固定資産税及び都市計画税の軽減措置の対象とする改正は今回の政府税制大綱では盛り込まれませんでした。

3.死亡届情報等の通知
 法務局や市町村が死亡届等死亡に関する情報を受けた場合、戸籍等の副本や土地家屋に関する固定資産課税台帳の死亡登録情報、つまり相続が発生した事実を税務当局に通知するものとされたことは与党大綱の解説でも触れましたが、死亡届は戸籍法に基づく制度であることから、今回の政府大綱で戸籍法改正の施行日以後から適用とされました。

4.不動産登記情報の通知事項拡大
 登記所から市町村に不動産登記情報を通知する際に登記名義人死亡情報及びDV被害者等の住所に代わる事項も通知すると共に、市町村が発行する固定資産課税台帳記載事項に関する証明書にDV被害者等の登記上の住所が記載されている場合その住所に代わる事項を記載することとされたことは、与党大綱の解説でも触れましたが、今回の政府大綱で令和4年4月1日から適用とされました。

法人課税の改正大綱

1.賃上げ税制の見直し
 賃上げ税制度制度見直しについては、与党大綱の解説で触れましたが今回の政府大綱で、青色申告書を提出する法人が、令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度において賃上げをした場合に適用するとされました。
2.オープンイノベーション税制の拡大
 出資対象となる事業者の要件のうち、事業者の設立からの期間について、赤字会社で研究開発費が売上高の10%以上を占める会社の場合、設立10年以内から設立15年以内に延長するとされ、出資株式の最低保有期間を取得日後最低5年から最低3年に短縮するものとされることは、与党大綱の解説で触れましたが、令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度において出資する場合に適用するとされました。
3.環境負荷低減事業活動設備に対する税制の整備
 青色申告をしている農林漁業者が環境負荷低減事業活動実施計画に基づき環境負荷低減事業活動機械や設備などを取得し、実際に環境負荷低減事業活動に使用した場合、取得年度に取得価額の32%相当額を特別償却できるとされることは、与党大綱の解説で触れましたが、以下の事項が盛り込まれました。
 ・ 適用を「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律(仮称)の施行日から令和6年3月31年までの対象資産取得とされた
 ・ 環境負荷低減事業活動実施計画に基づき建物や建物付属設備、構築物を上記適用期間内に取得した場合取得年度に取得価額16%相当額の特別償却をできるとされた
4.隠蔽・仮装による申告と無申告に対する重課措置
 隠蔽・仮装による申告をしたり、無申告の状態であったりした場合、対象となる事業年度の売上原価、販売費、一般管理費及び損失については保存されている帳簿書類により実際に取引があったことが明らかでない限り、法人税額計算において損金不算入となるとされることは、与党大綱の解説で触れましたが今回の政府大綱で、令和5年1月1日以後開始する事業年度から適用するとされました。

5.貸付用固定資産の少額固定資産特例からの適用除外
 貸付に供した固定資産については取得価額10万円未満資産一括費用化特例と一括償却資産損金算入制度の適用対象から除外されることは、与党大綱の解説で触れましたが今回の政府大綱で、現行制度の期限である令和4年4月1日以後取得する資産から適用するとされました。なお、取得価額10万円未満資産一括費用化特例と一括償却資産損金算入制度そのものは2年延長となり令和6年3月31日までの取得が対象をされました。

消費課税の改正大綱

1.免税販売場における適用対象者の制限
 免税店など輸出物品販売場で免税で購入できる非居住者を、短期滞在、外交または公用の在留資格を持つ者及び、国内に2年以上住所及び居所を持たないことを在留証明や戸籍附票の写しにより証明できる日本国籍保有者に限るとされたことは、与党大綱の解説で触れましたが今回の政府大綱で、令和5年4月1日以後行われる課税資産の譲渡から適用するとされました。
2.免税適用手続におけるデジタル化
 免税購入を希望する際に行うパスポートの情報提供等を「訪日観光客等手続支援システム」を用いてできるようにするとされたことは、与党大綱の解説で触れましたが今回の政府大綱で、令和5年4月1日以後行われる課税資産の譲渡から適用するとされました。
3.免税購入品を輸出しない場合の消費税即時徴収
 免税で購入された物品について輸出しなかった場合、免税対象でなくなることから税関長は消費税の即時徴収を行うことができるとされています。この即時徴収について令和4年4月1日以降税関官署の帳に委任することが可能となり、柔軟かつ適時に免税とならなくなった消費税を徴収できることが盛り込まれました。

 

国際課税の改正大綱

 1.海外子会社の配当と株式譲渡を組合わせた租税回避防止措置の見直し
 海外子会社からの配当の益金不算入と配当落ちし実質価額の下落した当該海外子会社株式の譲渡損失を組み合わせた租税回避を防止するため、令和2年度税制改正で内国法人の一定の支配関係がある外国子法人株式の簿価から益金不算入となった外国子法人配当金を控除し、譲渡損失が生じないようにする「子会社株式簿価減額特例」が導入されました。
 今回の政府大綱では、配当基準日が配当金受取日後の場合、直前に終了した事業年度の最終日の翌日から実際に当該配当金を受けるまでの間に、利益の発生などにより利益剰余金が増加したことを書類で証明できれば、増加した利益剰余金を外国子法人株式の簿価に加算することができるようになるとされました。これは、配当に充当する原資の実態を反映させるためです。
 2.市場及び店頭デリバティブ取引に関する所得の取扱いの明確化
 日本に5年以上継続して居住していない者や外国法人が、金融商品取引法に基づき国内の市場及び店頭で取引されるデリバティブ取引で得られる所得のうち日本の所得税や法人税の課税対象になる範囲について、現行の所得税法及び法人税法では明確な規定がなく、デリバティブを国外に所有していると主張すれば日本の所得税や法人税を免れる可能性がありました。そこで、今回の改正大綱でデリバティブ取引の決済によって生ずる所得のうち、日本国内の市場または店頭で取引されるものは「国内源泉所得」、日本国外の市場または店頭で取引されるものは「国外源泉所得」であることが明文化されることとされました。

納税環境整備の改正大綱

1.財産債務調書の提出義務者・提出期限の見直し
 現行ではその年の12月31日現在の財産価額総額が20億円以上である日本国内居住者に提出義務がある財産債務調書を令和5年分から10億円以上に引下げると共に、提出期限を確定申告期限と同じ翌年3月15日から翌年6月30日までに延長するとされています。国外財産調書についても提出期限が翌年6月30日までに延長するとされています。
 その一方、令和5年度分より「その他の動産の区分に該当する家庭用動産」(主に家事用に使用している家具、家電類)のうち、財産債務調書への記載を省略できる取得価額基準額を100万円未満から300万円に引き上げるなど記載上の配慮もなされます。
2.eLTAX(地方税電子申告納税システム)の対象拡大
 税務手続電子化推進のため、現状一部の地方税の申告・申請・納税に限られているeLTax利用の対象を地方税に関わる全ての申告・申請・納税に順次拡大するとされたことは、与党大綱の解説で触れましたが今回の政府大綱で、申告・申請については令和4年4月1日以後実務的対応が整い次第順次拡大し、納税については令和5年4月1日以後行われる納付から対象拡大するとされました。

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