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令和8年度与党税制改正大綱|札幌市の公認会計士・税理士熊谷亘泰事務所

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2025/12/27

与党(自由民主党・日本維新の会)の税制改正大綱

年末になり税制改正が話題になる時期になりました。今回から3回にかけて令和4年度の税制改正大綱について特に影響が大きいものを取り上げます。
そもそも税制改正大綱は財務省HPによりますと次の流れで進むものです。政府税制調査会が中長期的視点から税制のあり方を検討する一方、毎年度の具体的な税制改正事項は与党税制調査会が税制改正要望等を審議し、その後取りまとめられる与党税制改正大綱を踏まえて、「税制改正の大綱」が閣議に提出されます。今回はこのうち、特にその時々の情勢が反映される与党税制改正大綱について取り上げます。今年は自民党・日本維新の会の新たな枠組みでの連立政権となった高市内閣となり、「経済あっての財政」の方針が前面に出ています。
初めに基本的な考え方として挙がっているのが、

  1. 物価高への対応
  2. 「強い経済」の実現に向けた対応
  3. 地方の伸びしろの活用・暮らしの安定
  4. 公平かつ円滑な納税のための環境整備
  5. 自動車関係諸税の総合的な見直し
  6. 防衛力強化に係る財源確保のための税制措置
  7. 揮発油税等の当分の間税率廃止及びいわゆる教育無償化に係る財源確保

が挙げられ、高市政権の政治傾向が表れたものとなっています。以上の考え方を踏まえて具体的な改正要望事項と検討事項の主なものを紹介します。
 

個人所得課税の改正大綱

1.物価上昇局面における基礎控除等の対応
昨年に引き続き物価上昇に伴う税負担の軽減の観点から年収の壁問題で与野党が激しい議論をした箇所です。
今回の改正大綱では令和8年度以降の所得税について合計所得が2,350万円以下である場合基礎控除(本則部分)を現在より4万円多くし、62万円にするとされています。また、令和8年度以降の所得税について給与所得控除の最低金額を現在の65万円から4万円多くし、69万円にするとされています。
さらに、令和7年度改正で導入されている基礎控除特例について、令和8年度と令和9年度においては合計所得が489万円以下である場合42万円の加算(上記本則部分と合わせて基礎控除額104万円)、489万円超~655万円以下である場合42万円の加算(上記本則部分と合わせて基礎控除額67万円)にするとされ、令和10年度以降は合計所得が132万円以下である場合37万円の加算(上記本則部分と合わせて基礎控除額99万円)にするとされています。
あわせて、令和9年1月1日以降給与及び公的年金等に係る源泉徴収税額を見直すとされています。基礎控除引き上げに伴い、配偶者控除、扶養控除、ひとり親控除といった親族の所得額により適用を判断するものについて該当する親族の合計所得金額上限を62万円に引き上げるとされています。勤労学生控除の合計所得金額上限についても75万円から85万円に引き上げるとされています。
なお、住民税においても上記引き上げに合わせた所要の見直しを行うとされています。

2.住宅ローン控除等の延長及び見直し
住宅ローン控除については適用期限を令和12年12月31日まで5年間延長するとともに、より環境性能の高い住宅の建設を促進するため、認定住宅やZEH水準省エネ住宅に該当しない省エネ基準適合住宅については新築の場合令和9年12月31日までの適用とされるとのことです。

3.こどもNISA口座新設
18歳までの引き出し制限があり使い勝手に不便さがあった従来のジュニアNISAに代わるものとして、NISA口座の開設年齢下限を撤廃するとともに、令和9年度よりつみたてNISAで運用できる投資商品のうち一定の条件を満たすものに限定して運用でき引き出し制限が12歳までになった未成年者特定非課税累積投資勘定(こどもNISA)を新設するとされています。

4.高額金融所得を有する富裕層に対する課税強化
分離課税で定率課税である金融資産や不動産の譲渡所得について高額であるほど税負担率が低下し富裕層に有利になっている状況の是正を強化するため、現行では総合課税所得と分離課税所得の合計が3億3000万円以上である場合超えた部分についての最低税率を22.5%としているものを令和9年度より総合課税所得と分離課税所得の合計が1億6500万円以上である場合超えた部分についての最低税率を30.0%に引き上げるとされました。
5.青色申告特別控除の見直し
電子化による申告効率化と正確性を担保する電子帳簿による記帳の推進のため、令和9年度より正規の簿記の原則に基づく(複式簿記による)記帳による控除額について電子申告要件を設けたうえで現行の55万円から65万円に引き上げるものとされ、変更履歴保存や複数条件検索機能がある会計ソフトで記帳して電子申告をした場合75万円の控除が受けられるものとされています。また、複式簿記による正確性の高い記帳を推進するため、令和9年度より事業所得または不動産所得の前々年度の収入金額が1000万円を超える場合は簡易簿記を用いている場合青色申告特別控除が適用されないことになるとのことです。

6.住民税におけるふるさと納税控除限度額の引き下げ
多額に寄付できる富裕層によるふるさと納税の適用多用による租税回避を防止する観点から、令和10年度以降個人住民税におけるふるさと納税に係る税額控除上限について従来の住民税所得割の20%以内に加えて193万円以内の定額基準が追加されるとされています。また、高額返戻品などによるふるさと納税稼得競争抑制の観点から令和8年10月1日以降のふるさと納税対象指定基準として返礼品の寄付金受領額に対しての金額的割合が40%未満であることが追加されるとされています。なお、急速な変更による自治体や返礼品製造者の混乱を防ぐため、金額的割合は令和11年9月30日まで行われた寄付について経過措置で引き上げられるとされています。
7.防衛特別所得税創設と復興特別所得税の見直し
防衛財源確保の観点から令和9年度より所得税額の1%の防衛特別所得税を導入するとされています。一方、増税負担感解消のため、復興特別所得税については現行の2.1%から1%引き下げた1.1%にするとされています。
 

資産課税の改正大綱

1.教育資金贈与の非課税措置廃止
直系尊属から教育資金の贈与を受けた教育資金の一定額の贈与税非課税制度については富裕層優遇との批判や学校無償化等の進展から令和8年(2023年)3月31日までの期限を延長せず廃止するとされています。

2.特例事業承継税制の適用申請期限延長
事業承継が思うように進まないケースがいまだに多く事業承継を円滑に進める観点から、相続税と贈与税に関する納税猶予である特例事業承継税制適用に必要な特例承継計画の提出期限を令和8年3月までから令和9年9月までに延長するとともに、個人事業資産の承継の場合必要な特例承継計画の提出期限を令和10年9月までに延長するとされています。

3.固定資産税及び不動産取得税の免税点引き上げ
近年の物価や市場相場高騰に対応するため、令和9年度以降固定資産税の免税点のうち家屋については20万円→30万円に、償却資産については150万円→180万円に引き上げ、不動産取得税の免税点のうち土地については10万円→16万円、家屋のうち建築に係るものは23万円→66万円、建築に該当しない家屋は12万円→34万円にそれぞれ引き上げるとされています。

4.貸付不動産の相続税評価の適正化
大都市を中心に不動産の市場価額と相続税評価額との間に乖離があり、この乖離を利用した賃貸不動産共同運用商品や信託商品の購入による過度な相続税節税策がみられるため、被相続人が相続直前5年以内に取得または新築した一定の貸付用不動産については相続時期における通常の取引価額を基に計算するものとされています。ただし、極端に地価や不動産相場、鑑定評価額が変動したなど課税上の弊害がない限りは取得または新築した貸付用不動産の取得価額を基に地価等の変動で時点修正して算定した価額の80%相当金額によって評価できるものとされています。
 

法人課税の改正大綱

1.中小企業少額減価償却資産特例の適用範囲拡大
中小企業における設備導入や入れ替えを支援する観点から導入されている少額減価償却資産の一括損金算入特例について、価格高騰に対応するため1単位当たり30万円未満までとされているものを改正法施行後40万円未満までの減価償却資産取得まで拡大するとされています。当改正は個人事業主においても適用されるとのことです。一方、常時採用する従業員数が400名を超える法人については一定の事業規模があり下支えの意義が薄いことから少額減価償却資産の一括損金算入特例の対象外にするとされています。
2.特定生産性向上設備等投資促進税制の創設
生産性向上による競争力強化を支援する観点から、産業競争力強化法の改正を前提に青色申告書提出法人が生産等設備を構成する一定規模以上の機械装置、工具、器具備品、建物、建物附属設備、構築物及びソフトウェアを投資計画(35億円以上(中小企業および農協等は5億円以上))に基づいて導入した場合、取得価額までの特別償却(即時償却)または取得価額の7%の税額控除を選択適用できるとされています。
3.賃上げ税制の適用縮小
賃上げ促進のため導入されている一定割合の賃金増加について税額を控除するいわゆる賃上げ税制について大企業では賃上げが一定程度進んで意義が薄れたことから「全法人向け」制度を令和8年3月31日までに開始の事業年度をもって廃止するとされています。「中小企業向け」制度は現行通り存続する一方、教育訓練費増加に伴う控除割合増加措置は令和8年3月31日までに開始の事業年度をもって廃止すると共に、常時採用する従業員数が2000人以上の中堅企業に対しては令和9年3月31日までに開始の事業年度までとし、控除適用可能賃金増加率を3%→4%、増加率が4%以上の場合に控除率を15%加算する措置を、増加率5%の場合控除率5%加算、増加率6%の場合控除率15%加算と厳格にするとされています。
4.特別新事業開拓事業者株式取得特例の見直し
特別新事業開拓事業者の株式を取得した際に特別勘定を計上し一括損金計上する特例について適用期限を2年延長したうえで、中小企業者以外が取得する場合の取得価額要件を1億円以上→2億円以上への引き上げ、発行法人以外のものから取得し過半数の所有権を有することになった場合の取得価額要件を5億円以上→7億円以上への引き上げ及び発行法人を被合併法人とする合併をした場合の翌事業年度から5年間の均等益金算入条項が設けられるとされています。また、発行法人以外のものから3億円以上20億円以下の株式を取得した場合において3年以内に過半数の議決権を保有することになる見込みであれば取得価額の20%を特別勘定に算入して損金算入できるようにするとされています(ただし、3年経過後過半数の議決権を保有しなかった場合は特別勘定を取り崩し一括益金算入)。

5.企業グループ間取引に係る書類保存特例の創設
企業グループ間取引の実態把握と透明化を促進する観点から、移転価格税制において関連者とされる当事者との取引のうち、工業使用権やノウハウなど知的財産の譲渡や貸し付け、利用、コンサルティングなどについて契約書や領収書、請求書などの取引関連書類に取引内容及び対価の明細の記載がない場合には別途取引内容及び対価の明細の記載した文書を作成するものとされています。

消費課税の改正大綱

1.国境を越えたEC(電子商取引)に係る課税の見直し
ECサイトで少額物品を購入する際に国外から発送された場合に本来輸入消費税の対象になるものの十分に捕捉できていない現状があることから、ECサイトで1単位あたり税抜き1万円以下の物品を国外発送で購入した場合日本の消費税が課税されることを明確にしたうえで少額資産販売事業者登録制度を導入し消費税の徴収を強化するとされています。
2.プラットフォーム課税の適用拡大
1.と同様の理由で上記1.の物品譲渡及び国外事業者が日本国内において行う資産の譲渡の年間対価合計が税込50億円以上となるECサイト等の運営業者にについて「第2種プラットフォーム事業者」とした上で本来の販売者ではなく当該運営業者が課税事業者であるとみなして消費税を課税するものとされています。当該改正によるプラットフォーム課税の適用拡大に伴い、現行制度でプラットフォーム課税の対象となっているアプリストア等の電気通信利用役務当プラットフォーム業者については「第1種プラットフォーム事業者」とするとされています。
3.適格請求書発行事業者である小規模個人事業者に係る税額控除特例の延長と見直し
消費税インボイス制度導入時に適格請求書発行事業者として登録しなければ免税事業者であった事業者について令和8年3月31日までに開始する課税期間までの間であれば適格請求書発行事業者として登録しても消費税納税額が課税売上高の2割とすることができるいわゆる2割特例について、個人事業者に限り令和10年度まで特例を延長する共に納税額を課税売上高の2割→3割とすることとされました。この改正はフリーランスや委託契約採用など個人事業者に納税負担増加に伴う収入減への不安が大きく反対意見が多いことに配慮したものと思われます。
4.適格請求書発行事業者以外からの課税仕入れに係る税額控除経過措置の延長拡大
消費税インボイス制度導入時に適格請求書発行事業者となっていない事業者との取引打ち切りや条件改悪緩和のために導入された適格請求書発行事業者以外からの課税仕入れに係る税額控除経過措置について、現行の経過措置では令和8年9月30日まで消費税相当額の80%控除、令和8年10月1日から3年間は消費税相当額の50%控除で令和11年9月30日までの取引をもって終了とされているものを、令和8年10月1日から2年間は70%、令和10年10月1日から2年間は50%、令和12年10月1日から2年間は30%相当額の控除可能となり、経過措置の延長と控除率引き上げを行うとされています。
5.自動車税環境性能割の廃止
環境性能の高い自動車への買い替え促進のため導入されていた自動車税環境性能割及び軽自動車税環境性能割はかえって自動車購入の阻害要因になっていたとの声があったことから令和8年3月31日をもって廃止されるとされました。
6.国際観光旅客税(出国税)の引き上げ
近年増加しているインバウンド観光客に対して観光環境整備などの応分の負担とオーバーツーリズム抑制の観点から令和8年7月1日の出国分から現行1,000円となっている国際観光旅客税を3,000円に引き上げるとされています。
7.暗号資産に対する消費税の取り扱い明確化
暗号資産についての消費税課税関係の明確化のため、金融商品取引法改正を前提に有価証券と同等の取り扱いとし譲渡や貸付は消費税非課税とする一方、仕入税額控除割合判定のための課税売上割合の計算において譲渡対価の5%を分母に相当する資産の譲渡等の対価に算入するとされています。

 

国際課税の改正大綱

グローバル・ミニマム税制の見直し
国際最低課税額計算における実効税率計算において対象範囲を明確にするため、国または地方公共団体の取り決めにより適用された税額控除に対して計上した繰延税金資産及び時価評価に伴う差額に対して計上した繰延税金資産または繰延税金負債は含まれないものとされています。

納税環境整備の改正大綱

1.電子化進展に伴う犯則調査手続の見直し
文書の電子化が進展していることから、国税犯則調査いわゆるマルサによる調査において調査官は裁判所があらかじめ発行する許可状に基づき、調査対象となる電子データの所有者に対して記憶媒体へのダウンロードまたは電子メールやクラウドファイル共有アプリなどによる情報提供を命じることができるとされ、提供命令があったことをみだりに漏らしたり、提供に応じなかったりする場合の罰則や裁判所からの許可状提示にあたり、裁判所の許可を得て所有者の住居に入ることができる処分や措置を講じることができるとされています。
また、裁判所が発行する許可状の電子化や調査で調査官が入手した電子データの検察への引継ぎや租税条約に基づく相手国への電子データ情報提供についても手続きを整備するとのことです。さらに地方税の犯則調査においても電子データの入手について同様の改正が行われるとされています。

2.eLTAX(地方税電子申告納税システム)ダイレクト納付の利便性向上
eLTAXを利用した地方税のダイレクト納付において金融機関における口座引落処理のタイミングの関係で納期限翌日に引落処理されることがあるため、期限内申告をしてダイレクト納付処理を納期限当日に行った場合に実際の引落し処理が納期限翌日に行われた場合でも納期限当日の納付とみなして延滞金の計算を行うとされています。この取り扱いは令和10年4月1日以後に行うダイレクト納付処理から適用されるとのことです。
3.国税・地方税の情報連携拡充
課税情報に関する国税当局と地方公共団体との情報交換連携を強化するため、令和9年5月1日から個人住民税・固定資産税・自動車税・軽自動車税・滞納情報に対するオンライン照会を可能にするとともに、令和9年9月1日から固定資産税の償却資産に係る配分通知等の情報交換ができるようにするとされています。

4.大規模災害時の森林環境税免除手続きの簡素化
大規模災害発生時に納税者・市町村職員双方の負担を軽減するため、納税義務者が特定非常災害の指定を受けた災害により森林環境税の免除要件に該当したことが明らかになった場合は、納税義務者からの免除申請がなくとも市町村長が免除決定をすることができる所要の措置を講じるとされています。
 

今後の検討事項

 今後の検討事項として以下の事項が挙げられています。
1.少子高齢化進展に伴う世代間課税公平化に向けた年金課税の見直し
2.デリバティブ取引に対する所得課税制度の一本化
3.正規の簿記による青色申告の普及、給与所得控除・扶養控除などの人的控除の見直し、個人事業と法人成り同族企業との課税バランス確保といった小規模事業者向け税制の見直し
4.カーボンニュートラル実現のための税制の整備
5.カーボンニュートラルやシェアリングへのシフトなど自動車の環境変化を見据えた自動車関連課税制度の見直し
6.原料用石油製品等の免税・還付措置の本則化
7.複式簿記による記帳、優良電子帳簿の普及・一般化、記帳義務の適正な履行担保のための制度整備
8.課税公平のための事業税における社会保険診療報酬の実質非課税や医療法人の軽減税率の見直し
9.地方税収と事業環境変化を踏まえた、電気供給業及びガス供給業の収入による外形標準課税の見直し


 今回は大変長くなりましたが、政治色が反映される与党の税制改正大綱についてお話致しました。

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