各省庁からの令和8年度税制改正要望|札幌で税理士・公認会計士に相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!
2025/11/21
目次
はじめに
年末となり税制改正の話題が出始めます。今年の税制改正協議は与野党の変化や多党化の流れがあり、昨年度以上に混とんとすることがあると思われます。しかしながら、大部分の改正事項は事前に各省庁から出た要望を基にしたものであり、事前に各省庁からの要望事項を理解するとある程度税制改正の大枠が理解できます。
そこで今回は各省庁からの令和8年度税制改正要望について取り上げます。初めに各省庁からの主な要望事項を列挙し、次に要望事項からひも解ける動向を分析します。
主な要望事項
では、各省庁からの要望事項を以下表に掲げます。なお、財務省HPに各省庁からの要望事項の一覧が掲載されていますので以下のリンクもご参照ください。
財務省HP|要望事項一覧表(全府省庁版)
| 省庁 | 主な要望事項 |
|---|---|
| 内閣府 | ・地方における企業拠点の強化を促進する税制措置の拡充・延長(地方拠点強化税制など) ・中山間地域等で雇用・生活サービスの場となる拠点整備を後押しする税制措置 ・地震防災対策用資産に係る固定資産税の特例拡充・延長など、防災・減災関連の優遇措置 |
| 総務省 | ・国土強靱化実施中期計画等を踏まえた「財源確保方策」の検討開始(複数税目) ・退職等年金給付の積立金に対する特別法人税の撤廃又は課税停止措置の延長(法人税) ・中小企業経営強化税制の拡充・延長や、少額減価償却資産の損金算入特例の延長など、中小企業投資を後押しする措置(所得税・法人税ほか) |
| 文部科学省 | ・専修学校に関する税制上の所要の措置(学校教育法改正に伴う対応:法人税・消費税・所得税など) ・学校法人に係る「指定寄附金制度」の充実・手続き簡素化(寄附促進:法人税) ・高等学校等就学支援金制度の拡充に伴う税制措置(いわゆる「高校無償化」関連:所得税等) ・地元企業の地域学校協働活動への参画促進に向けた法人税額控除の創設(産学連携・人材育成) |
| 防衛省 | ・防衛力強化に係る財源確保のための税制措置(複数税目を対象) ・航空機騒音対策(移転措置)事業に係る事業用資産の買換え特例の延長(所得税・法人税) ・防衛関連試験研究に係る法人税額の特別控除の拡充・延長(R&D税制の防衛分野での活用) |
| こども家庭庁 | ・小規模保育事業の制度改正に伴う不動産取得税・固定資産税・事業所税等の特例継続(保育事業の税負担軽減) ・ひとり親家庭の高等職業訓練促進資金等の住宅支援資金の債務免除に対する非課税措置の延長(所得税・個人住民税) ・児童養護施設退所者向け自立支援資金の債務免除への非課税措置の延長(自立支援) |
| 金融庁 | ・「資産運用立国」の推進に向けた税制要望(NISA等の利便性向上・投資促進) ・インフラファンドの税制優遇(損金算入等)について、時限措置の延長と要件緩和(再エネ投資促進) ・金融・証券税制の見直しなど、国際金融センターとしての競争力強化(各種要望PDFに整理) |
| 農林水産省 | ・認定就農者向けに農協等が取得した償却資産の固定資産税特例(課税標準1/3)を2年延長 ・農地中間管理機構が取得した農地の固定資産税・都市計画税の課税標準特例(1/2)を2年延長等 ・農林漁業用軽油に対する石油石炭税の還付措置(地球温暖化対策税の上乗せ分)を3年延長 ・東日本大震災関係の登録免許税・印紙税・特別償却の特例の見直し(縮減・廃止) |
| 経済産業省 | ・印紙税の在り方の検討、申告・納税手続きのデジタル化を踏まえた整備 ・スピンオフ円滑化のための税制措置見直し、早期事業再生法成立に伴う各税目の所要の措置(所得税・法人税・消費税等) ・大胆な投資促進税制の創設、カーボンニュートラル投資促進税制の延長等(設備投資支援) ・国際課税(国際課税制度・外国子会社合算税制等)の見直し |
| 国土交通省 | ・住宅ローン減税や認定住宅投資型減税など住宅取得促進策の延長等(所得税) ・新築住宅の固定資産税1/2軽減特例(戸建3年・マンション5年)の延長要望(地方税) ・被災地の土地・建物の譲渡や被災代替資産に係る印紙税・登録免許税・所得税等の特例縮減・延長・廃止の見直し |
| 環境省 | ・「税制全体のグリーン化の推進」(ネット・ゼロ・循環経済・ネイチャーポジティブ等を支える枠組み) ・車体課税のグリーン化(環境性能に応じた課税への見直し ・既存住宅の省エネ・耐震・バリアフリー・三世代同居リフォーム等に係る所得税・固定資産税の特例延長 ・再エネ発電設備への固定資産税特例(拡充・延長)など、脱炭素投資を促す措置 |
|
厚生労働省 |
・「主な税制改正要望」として、健康・医療・福祉・子育て等に関する税制措置を要望(セルフメディケーション税制の拡充・継続等) ・医療・介護事業、医薬品等に関する各種特例・非課税措置の見直し・延長など |
| 復興庁 |
・特定復興産業集積区域における各種税制特例(建物・家屋・土地・償却資産等)の縮減・廃止、事業税の資本割特例の延長など |
以上まとめましたが、設備投資に関する優遇措置や災害関連措置の見直しが複数の省庁から上がっています。一方、文部科学省が高校無償化財源確保を要望したり、経済産業省がデジタル化に対応した印紙税見直しと申告・納税手続きのデジタル化を踏まえた整備を要望したりなど、税制優遇措置だけでなく財源や手続きの面からの要望もあります。
要望事項からひも解けること
ここまで要望事項を主な要望事項を取り上げましたが大きく分けますと
- 投資促進の視点
- 企業活動振興の視点
- 生活支援の視点
- 誘致促進の視点
- 財源確保の視点
に分類できると言えます。
投資促進の視点では、
- 住宅ローン減税や認定住宅投資型減税など住宅取得促進策の延長等
- 「税制全体のグリーン化の推進」(ネット・ゼロ・循環経済・ネイチャーポジティブ等を支える枠組み)
企業活動振興の視点では、 - 地方における企業拠点の強化を促進する税制措置の拡充・延長(地方拠点強化税制など)
- スピンオフ円滑化のための税制措置見直し、早期事業再生法成立に伴う各税目の所要の措置(所得税・法人税・消費税等)
生活支援の視点では、 - 専修学校に関する税制上の所要の措置(学校教育法改正に伴う対応:法人税・消費税・所得税など)
- 医療・介護事業、医薬品等に関する各種特例・非課税措置の見直し・延長など
誘致促進の視点では、 - 中山間地域等で雇用・生活サービスの場となる拠点整備を後押しする税制措置
- 金融・証券税制の見直しなど、国際金融センターとしての競争力強化
財源確保の視点では、
- 高等学校等就学支援金制度の拡充に伴う税制措置
- 防衛力強化に係る財源確保のための税制措置
などが挙げられます。財源確保の視点での要望は増税につながる一方、残る4つの視点での要望は減税につながります。減税につながる要望は活動促進につながげる狙いがあることは明確ですが、財源確保の視点の場合も一見すると活動阻害につながりそうですが、本質的には国民生活向上を目的としていることがうかがえます。
おわりに
今回は、令和8年度の税制改正要望事項として各省庁から上がっているものを取り上げました。今回複数の省庁から上がっている要望の中で特徴的なものとして、防災・復興税制の見直しがありました。特に東日本大震災関連のものは震災から来年(2026年、令和8年)3月で15年となり、ある程度復興が進んでいることから各省庁も制度が形骸化していると判断していると読めます。一方で能登半島での地震や大雨、度重なる台風被害や大雪災害など各地で災害が毎年起こっています。
災害・復興対策の下支えは必要ですがあまりに特例措置が多く過ぎると事後的に増税の要因となります。今後は、非常時だからとかこつけた対策が取られていないか、検証を行う必要があるのではないでしょうか?


