地方税解説シリーズ⑨(法定外目的税)|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!
2025/08/01
目次
はじめに
地方税解説シリーズ第9回目は地方税法には規定されず自治体独自に制定している法定外税について取り上げます。自治体独自で課税している理由は様々あるのですがあまりに不条理な課税とならないよう、
- 同一の課税標準(対象となるもの)に対してかかる税金の負担が課税されない者よりも著しく重くなる場合
- 自治体間の物流に重大な影響を与える場合
- 国の経済施策に合致しない場合
には総務大臣が独自の税金を設けようとしている自治体と協議し、同意しないことができるようになっています。つまり、独自に税金を課税することができるといっても他の自治体との差や国全体の政策との整合性には留意しなければならないということです。
今回は自治体独自の税金をいくつかご紹介します。なお、自治体独自の税金で特に課税自治体の多い宿泊税については近年新設する自治体が相次いでいることもあり文章量が膨大になるため別途取り上げます。
なお、各回のテーマは以下の通りです。
第1回 地方税の種類
第2回 個人所得課税
第3回 法人所得課税
第4回 事業税
第5回 不動産課税
第6回 自動車課税
第7回 事業所税
第8回 その他の地方税
第9回 法定外税(今回)
第10回 国民健康保険
番外編 宿泊税
産業廃棄物税
自治体独自に設定している税金には、複数の自治体で設けられている税金もあれば単一自治体独自で設定されている税金もあります。ここでは、比較的多くの自治体で設定されている税金である産業廃棄物税(内容がほぼ同一の税金を含む)をご紹介します。
産業廃棄物税を設定している理由で多いのは、①産業廃棄物の抑制と再生利用の促進、②適正処理に充当する費用の確保です。産業廃棄物税を設定している自治体はすべて道または県です。課税対象は産業廃棄物税を設定している道県全てで最終処分場へ搬入される産業廃棄物(1トン単位)ですが、熊本県を除く九州各県では焼却処理場へ搬入される産業廃棄物も対象となっていたり、三重県と滋賀県では中間処理施設へ搬入される産業廃棄物に対しても一定の処分係数をかけた数量に課税されたりしています。納税は多くの道県で特別徴収方式が採用され、産業廃棄物を持ち込んだ業者がいったん処分業者に産業廃棄物税を納め、その後処分業者が道県に納税しますが、産業廃棄物を持ち込んだ業者が自社処分する場合は業者が自ら申告して道県に納税します。また、中間処理にも課税される三重県と滋賀県では特別徴収方式が採用されておらず産業廃棄物を排出した業者が自ら申告して納税します。
なお、当事務所のある北海道では「循環資源利用促進税」という名称で、最終処分場に持ち込まれた産業廃棄物に対して1000円/トン課税されます。
核燃料税
次にご紹介する法定外税は核燃料税です。核燃料税を課税している自治体は全て原発が立地している自治体で、原発を稼働している電力会社に対して申告納付方式で課税されています。福島第一原発事故に伴い東電が免除を要請した福島県を除く、原発が立地している道県の他、鹿児島県薩摩川内市(九電川内原発)、新潟県柏崎市(東電柏崎刈羽原発)、愛媛県伊方町(四電伊方原発)、佐賀県玄海町(九電玄海原発)が導入しています。導入目的は原発立地地域の安全対策の他、福島第一原発事故後稼働停止が相次いだことによる税収減少補充などがあります。
名称や課税対象は自治体により異なります。当事務所のある北海道では「核燃料税」という名称で泊原発を道内に設置している北海道電力(北電)に対し、①発電用原子炉への核燃料挿入(挿入した燃料価額)、②発電用原子炉の熱出力(1,000kW単位)について課税しています。北海道で導入されたのは泊原発稼働開始直前の1988年(昭和63年)9月で当初は①の核燃料挿入のみでしたが、長期間原発が停止していることを踏まえ2013年(平成25年)に停止中でも課税可能な②発電用原子炉の熱出力に対する課税ができるようになりました。
なお、原発以外の核関連施設が多く立地する茨城県(核燃料等取扱税)では9種類、再処理施設が多く立地する青森県(核燃料物質等取扱税)では7種類の課税対象があります。
観光協力税(美ら島税)
次にご紹介する税金は観光協力税です。導入している自治体はいずれも沖縄本島近くの離島にある伊平屋村、伊是名村、渡嘉敷村、座間味村の4村で、座間味村のみ美ら島(ちゅらしま)税という名称になっています。4村はいずれも澄んだ青い海と自然が観光の目玉ですが、観光客の来客による環境悪化の影響を受けます。その一方で地方税法に定める村税は人数の限られる村民や村内に立地する者に対するものが主体であることから、観光客にも環境保全維持のための負担をしてもらう目的で設けられています。
課税対象は旅客船や航空機などでの入域に対して課税され、1人1回の入域につき1000円課税されます。入域目的は問われずビジネスや帰省など観光以外の目的でも課税されますが、障害者及び中学生以下の者(伊平屋村、伊是名村は高校生も含む)は免除されています。納税は特別徴収方式で船会社や航空会社が運賃と共に徴収し、乗客から預かった環境協力税を村に納付します。
駐車場利用税
次にご紹介する法定外税は駐車場利用税です。駐車場利用税という名称の税金はなくあくまで駐車場利用者が駐車場に駐車する行為に対して課税する税金であることを説明するためにここでは呼んでいます。
駐車場利用税を課税している自治体は2つあり、岐阜県の乗鞍環境保全税と福岡県太宰府市の歴史と文化の環境税です。いずれも2003年(平成15年)に導入され、乗鞍環境保全税は乗鞍地域の自然環境保全、歴史と文化の環境税は太宰府天満宮などの歴史的文化遺産や観光資源の保全と整備に充てられています。いずれの地域もマイカーや観光バスなどでやってくる観光客が多く環境保全のための財源確保が課題となっていたようです。
乗鞍環境保全税は乗鞍鶴ヶ池駐車場の利用に課税され、乗車定員10名以下の自動車(タクシー(マイカーは乗入禁止))が1回300円、乗車定員11名以上29名以下の自動車(マイクロバス)が1回1,500円、乗車定員30名以上の一般乗合用バスが1回2,000円、乗車定員30名以上のバス(貸切バス)が1回3,000円となっています。納税は乗鞍鶴ヶ池駐車場指定管理業者(現在は乗鞍国際観光株式会社)が駐車場利用者から駐車料金と一緒に税金を預かり、毎月前月1か月分を岐阜県に納付することになっています。ただし、乗合路線バス(現在は濃飛バス、アルピコ交通の2社)についてはバス会社が直接岐阜県に申告して納税します。
一方、歴史と文化の環境税は太宰府市内の有料駐車場利用者に課税され、二輪車(原付含む、自転車除く)が1回50円、乗用車が1回100円、マイクロバスが1回300円、大型バスが1回500円となっています。ただし、利用者が障害者の場合は免除されます。納税は有料駐車場運営者が駐車場利用者から駐車料金と一緒に税金を預かり、年3回前月までの4か月分を太宰府市に納付することになっています。
遊漁税
次にご紹介する法定外税は、山梨県富士河口湖町が河口湖及びその周辺でフィッシングを行う者に課税する遊漁税です。導入されたのは2001年(平成13年)7月1日で、当時河口湖周辺でブラックバスのルアー釣りがブームとなり、違法駐車やトイレ不足による汚染、ルアーや釣り糸などによる環境悪化が問題になっていました。導入当時は河口湖周辺の1町2村が一斉に導入しその後市町村合併で富士河口湖町となり、1町単独で課税しています。1回の遊漁に対して課税され、1回200円です。徴収はフィッシングの際に購入する河口湖漁業協同組合発行の1日遊漁券購入の際に遊漁料金と一緒に行われ、年間遊漁券利用の場合は利用の都度遊漁税券を購入します。その後、河口湖漁業協同組合が毎月15日までに前月1ヶ月間に利用者から預かった遊漁税を町に納税します。
別荘等所有税
次にご紹介する目的外税は、静岡県熱海市が市内の別荘等の保有者に対して課税する別荘等所有税です。熱海は気候が温暖で首都圏に近いことから1万棟を超える別荘がありますが、別荘所有者は熱海市民でない場合が多く市民税を納税していない一方、別荘の存在で生活関連施設(ごみ処理、し尿処理、上下水道の整備)や安心、安全のための消防はしご車、救急車の整備など行政コストが増大します。また、不動産の所有に関しては地方税法に規定され全国の市町村で課税される固定資産税がありますが、課税基準が評価額によっており経年による価値の減少で税収が減る問題があります。そこで、別荘等の保有者に一定の行政コスト負担をさせるための税金として別荘等所有税が1976年(昭和51年)4月1日に導入されました。
課税は固定資産税同様に1月1日時点で別荘等の建物を保有する者に対し熱海市が直接賦課する形で行われ、税額は延べ床面積で650円/1㎡となっています。納期は固定資産税同様年4回ですが、時期は①/6月15日~6月30日、②8月15日~8月31日、③10月15日~10月31日、④翌年1月15日~1月31日(熱海市の固定資産税の納期は4月、7月、1月、2月)と異なっています。
なお、別荘等の建物を保有する者とは具体的に以下の者を指します。
- 賦課期日(1月1日)現在で、熱海市内に家屋を所有しており、かつ、熱海市に住民登録又は市県民税(法人の場合は、法人市民税)の申告の無い所有者
- 賦課期日現在で、他人に家屋を貸し付けている所有者(当該賃借人が賦課期日現在で熱海市に住民登録又は市県民税(法人の場合は、法人市民税)の申告が無い場合に限る。)
- 賦課期日現在で、旅館業法の許可をうけていない寮、保養所などの所有者
ワンルームマンション税
次にご紹介する目的外税は、東京都豊島区で専用面積30㎡未満の狭小住戸を有する集合住宅等を建築した者に1戸あたり50万円課税される狭小住戸集合住宅税(ワンルームマンション税)です。この税金は単身世帯が区内全世帯の56%を占め、かつ東京23区の中で全世帯のうち最もワンルームマンションの割合が高い(約40%)ことから狭小なワンルームマンションの建設を抑制し、ファミリー世帯が住める広い住宅の供給にシフトさせるために2004年(平成16年)に設けられました。
区としては地域活動への参加が制限される単身世帯よりもより活動の幅が広いファミリー世帯を増やしたい思惑があるようです。同様の理由で港区にも最低住戸専用面積を25㎡以上とし、かつ総戸数が30戸以上の集合住宅を建築する場合一定数50㎡以上のファミリー世帯向け住戸を設けるよう求める制度があります。また、目的は異なりますが千代田区には過度なビジネスおよび商業建築の開発を抑制し住宅供給を確保するため、大規模建築物の建設に対して地域貢献整備施設の建設または開発協力金の負担を求める制度があります。
特に商業建築や単身世帯の割合が高い東京23区内ならではの制度ですが、今後他の自治体でもその自治体ごとのあるべき姿を目指すため建築規制や金銭的負担を課す制度が設けられるかもしれません。
空港連絡橋利用税
次にご紹介する目的外税は、大阪府泉佐野市で導入されている空港連絡橋利用税です。泉佐野市には関西国際空港がありますが、空港関連の都市整備、空港連絡橋の維持保全支援、感染症のための高度医療整備など多額の歳出があり本税導入前は財政健全化団体に該当するほど財政が悪化していました。そこで財政健全化の一環で2013年(平成25年)3月30日より空港連絡橋の利用者から利用税を徴収することになったものです。泉佐野市では財政健全化のためふるさと納税の獲得に力を入れiPadなど高額な商品を返礼品としたところ、総務省から泉佐野市への寄附金をふるさと納税として認めないとした決定を受けその後訴訟になったことでも有名です。その後、総務省の通達でふるさと納税認定要件が明確化されたこともあり、2020年(令和2年)7月より要件を満たしたうえで泉佐野市への寄附金がふるさと納税として認められています。
話がだいぶ横道にそれましたが、空港連絡橋利用税は自動車1台につき1往復100円徴収され利用者は関空連絡橋にある料金所で通行料金と一緒に支払います。その後、関空連絡橋を運営管理している西日本高速道路(NEXCO西日本)が翌々月に1か月分の空港連絡橋利用税を市に納付する特別徴収方式を採用しています。
なお、NEXCO西日本の障害者割引が適用される利用者は1往復50円に減免されています。
宮島訪問税
次にご紹介する法定外税は宮島訪問税という宮島(厳島)訪問者に所在する広島県廿日市市が課税する税金です。宮島は世界遺産である厳島神社があり、大変風光明媚な観光地として多くの観光客が訪れています。多くの観光客が訪れることでインフラ整備や災害対応、環境美化など行政サービス費用が多く必要となりこうした観光地における行政サービス費用を負担してもらう目的で2023年(令和5年)10月1日から徴収が開始されています。
観光に関する行政サービス負担という意味では、多くの自治体で導入または導入を検討している宿泊税や熱海市の別荘等所有税、沖縄4村の観光協力税と似ていますが、宿泊施設や別荘地が少ない一方対岸の市民からの税収がある点では異なるところもあります。
税額は以下の2種類あります。
- 訪問者が宮島を訪問(入域)するごとに1人1回 100円
- 1年分を一時に納付する場合は、訪問者1人1年ごとに 500円
入域の都度納税する場合は以下の3種類の方法があります。
- 旅客船舶(フェリーや貸し切り船など)を利用して宮島を訪問(入域)する場合は、運賃などに税を上乗せして船舶運航事業者が徴収します。【特別徴収】
- 個人船で桟橋を利用して宮島を訪問(入域)する場合は、桟橋の使用料とともに桟橋管理者などが税を徴収します。【特別徴収】
- 個人船で自然海岸から宮島を訪問(入域)する場合は、訪問した日から起算して10日以内に廿日市市役所、宮島支所または大野支所で税を納付します。【申告納付】
一方、1年分を一時に納付する場合は、初回の訪問(入域)予定日の前月10日までに、廿日市市役所、宮島支所または大野支所で税を納付します。【申告納付】
なお、宮島訪問税は観光客への行政サービス負担を目的とした税金であるため以下の場合は課税対象外です。
- 宮島町の区域の住民
- 宮島町の区域内にある事務所・事業所に通勤する者(48時間/月以上の雇用があること)
- 宮島町の区域内にある学校に通学する者(48時間/月以上の授業などがあること)
対象外かどうかは、廿日市市が発行する証明書により船舶運航事業者など(特別徴収義務者)が判別します。
また、課税することが社会通念上好ましくない以下の場合は課税が免除されます。
- 未就学児
- 学校(大学を除く。)に修学し、修学旅行その他の学校教育上の見地から行われる行事、活動などに参加している者並びにその引率者および付添人
→学校が「修学旅行などその他の学校行事であることの証明書【課税免除証明書】」を作成し、乗泉寺に船舶運航事業者など(特別徴収義務者)に提出します - 療育手帳、精神障害者保健福祉手帳または身体障害者手帳を交付されている障がい者
石油価格調整税
最後にご紹介する目的外税は、沖縄県で導入されている石油価格調整税です。沖縄県には多くの離島がありますが本土また沖縄本島からの石油の輸送コストがかかるため何も措置がないと本土そして沖縄本島よりも燃料価格が高くついてしまい離島住民の生活に大きな負担となります。
そこで、沖縄県では沖縄本島と県内の離島間の石油製品輸送コストに関して補助金を交付して本島と離島との価格差を埋めています。その補助金の財源として石油元売会社が沖縄県内で販売する石油製品に1㎘あたり1,500円の税金を課しており、この税金が石油価格調整税です。この税金は沖縄本土復帰時の1972年(昭和47年)6月1日から導入されています。納税は石油元売会社が申告により直接沖縄県に納付する方式を採用しており、消費者は直接この税金を負担しません。よって、燃料価格のうち石油価格調整税相当分にはガソリン税同様消費税を上乗せすることができます。
なお、本土と沖縄県との高い輸送コストに伴う燃料価格の調整策としてガソリン税の減免措置があり、本土の他都道府県よりも1㎘あたり7,000円減免されています。この減免額と石油価格調整税の上乗せ額を差引すると1ℓあたり5.5円の減免措置が取られていることになります。
おわりに
今回は地方税法に規定されていない自治体独自の税金についてご紹介しました。今回は税金知識の理解や税務実務の確認というよりも、税金の役割つまり税金、行政と地域事情のつながりを知って頂くことが重要であると考えています。国政だけでなく地域に身近な地方自治の在り方をご覧の皆様に考えていただく材料となれば幸いです。


