地方税解説シリーズ⑤(不動産課税)|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!
2025/07/04
目次
はじめに
地方税解説シリーズ第5回目は不動産課税について取り上げます。不動産に関して様々な税金があります。地方税としては固定資産税や不動産取得税があり、譲渡すると売却益に住民税が課税されます。今回は固定資産税と不動産取得税を中心に取り上げます。住民税は第2回、第3回で取り上げていますのでここでは割愛いたします。固定資産税については動産に対するものも含めて取り上げます。
なお、各回のテーマは以下の通りです。
第1回 地方税の種類
第2回 個人所得課税
第3回 法人所得課税
第4回 事業税
第5回 不動産課税(今回)
第6回 自動車課税
第7回 事業所税
第8回 その他の地方税
第9回 法定外税
第10回 国民健康保険
番外編 宿泊税
固定資産税の概要
始めに固定資産税について取り上げます。
固定資産税は固定資産の所有者に対して所在地の市町村が固定資産の資産価値に対して課税する税金です。東京23区内にある固定資産に対しては東京都が都税の一つとして課税します。
課税対象となる固定資産に該当するものとしては以下のものがあります。
- 土地:田、畑、住宅地、塩田、鉱泉地(温泉など)、池沼、山林、牧場、原野などの土地
- 家屋:住宅、店舗、工場(発電所や変電所を含む)、倉庫などの建物
- 償却資産:会社など(事業者)が所有する構築物(広告塔やフェンスなど)、飛行機、船、車両や運搬具(鉄道やトロッコなど)、備品(パソコンや工具など)など
固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に対して課税され、年4回分割で納付します。納期限は市町村によって異なります。税額は所在地の市町村が計算しますが、固定資産税の計算方法及び課税対象者の把握については次項で詳しくお話しします。
総務省HP|固定資産税
固定資産税の計算
固定資産税の計算方法及び課税対象者の把握についてこちらで説明します。
土地及び家屋については原則として不動産登記により所有者が登録されているため、登記簿や土地補充課税台帳、家屋補充課税台帳に所有者として登録されている者を所有者とみなして把握します。土地や家屋の評価は3年に1回各市町村が行い、評価額に1.4%を掛けて固定資産税額を計算します。
一方、償却資産については土地や家屋と異なり行政が所有者を把握する仕組みがないため、所有者が所在地の市町村に申告をすることにより把握する形になっています。課税対象となる償却資産は所得税または法人税の所得計算において必要経費または損金算入できるものに限られるため、償却資産の申告は事業者が行うことになります。申告は1月1日時点での所有資産の種類と取得金額、耐用年数を同じ年の1月31日までに行います。市町村は申告された内容に基づき償却資産の評価額を毎年計算し、評価額に1.4%を掛けて固定資産税額を計算します。
固定資産税の特例
固定資産税の基本的な計算については前項で述べましたが、政策上固定資産税の減免を行うことがあります。ここでは主な特例を掲げます。
- 公益法人等に対する非課税特例:宗教法人、学校法人、社会福祉法人、公益社団法人等がもっぱらその公益事業のために使用する固定資産については、公益性に着目し必要な申請書類を所在地の市町村に提出することで固定資産税が免除されます。
- 住宅用地特例:日常生活への負担を軽減するため、200㎡以下の住宅用地(住宅やマンションの建つ底地)は、課税標準額が価格の6分の1に軽減されます。200㎡を超える住宅用地は、超えた部分の課税標準額が価格の3分の1になります。ただし、空き家土地活用促進のため、市区町村長から特定空家または管理不全空家として勧告された住宅用地については上記の軽減措置の対象から除外されます。
- 新築住宅特例:住宅新築の促進を図るため、2026年(令和8年)3月31日までの間に新築された住宅には、住宅の種別により新築年度の翌年から3~7年間課税標準額が価格の2分の1になります。なお、減額は床面積120㎡部分相当までが対象です。
- 認定先端設備等導入計画特例:生産性向上のために年平均の投資利益率が5%以上となることが見込まれる投資計画を策定して導入し、かつ、雇用者給与等支給額を1.5%以上増加することを表明した場合に投資計画に基づいて導入した以下の資産について導入年度の翌年から3年間課税標準額が価格の2分の1になります。また、雇用者給与等支給額を3.0%以上増加することを表明した場合には導入年度の翌年から5年間課税標準額が価格の4分の1になります。
- 機械装置(最低取得価額160万円以上に限る)
- 測定工具及び検査工具(最低取得価額30万円以上に限る)
- 器具備品(最低取得価額30万円以上に限る)
- 建物附属設備(最低取得価額60万円以上の固定資産税課税対象の資産に限る)
国土交通省HP|固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置
中小企業庁HP|固定資産税の特例(中小企業等経営強化法による支援)
不動産取得税の概要
ここからは不動産取得税について取り上げます。
不動産取得税は不動産を何らかの形で取得したことに対して所在地の都道府県が取得不動産の価値に対して課税する税金です。課税対象となる不動産の取得は有償での購入に限らず、贈与や家屋の建築による取得を含みます。一方、相続や合併、会社分割(一定の支配継続等要件あり)、共有物の分割(分割前の当該共有物に係る持分の割合を超える部分の取得を除く)による取得は課税対象外です。
課税対象となる不動産に該当するものとしては以下のものがあります。
- 土地:田、畑、住宅地、塩田、鉱泉地(温泉など)、池沼、山林、牧場、原野などの土地
- 家屋:住宅、店舗、工場倉庫などの建物
不動産取得税は取得があった都度取得者に対して課税され一括納付します。税額は所在地の都道府県が計算し、原則として先述した直近の固定資産税評価額を課税標準として課税標準額に4%を掛けた金額です。ただし、土地と家屋のうち住宅については土地の有効活用及び住宅購入促進の観点から税率が3%に軽減されています。
総務省HP|不動産取得税
不動産取得税の特例
固定資産税同様に不動産取得税にも政策的配慮から特例が設けられています。主なものを以下に掲げます。
- 公益法人等に対する非課税特例:宗教法人や学校法人がもっぱら本来の事業のために使用する不動産については、公益性に着目し必要な申請書類を所在地の都道府県税事務所に提出することで不動産取得税が免除されます。
- 住宅用地取得に対する特例:固定資産税同様住宅購入促進のため、住宅用の土地を取得した場合は、次の1.または2.のいずれか高い方の額を土地の税額から軽減します。
- 150万円×3%
- 土地1㎡当たりの価格×住宅の床面積の2倍(1戸当たり200㎡を上限)×3%
ただし、土地を取得した日から一定の期間内に、その土地の上に住宅が新築されているなどの一定の要件を満たすことが必要です。
- 新築住宅取得に対する特例:固定資産税同様住宅新築促進のため、新築住宅については不動産取得税の計算にあたり課税標準額の計算において評価額から1,200万円を控除します。ただし、住宅の床面積が50㎡(一戸建て以外の住宅で貸家の用に供する場合は40㎡)以上240㎡以下であることが必要です。
おわりに
今回は不動産に関する地方税を取り上げました。固定資産税通知書には「都市計画税」と書かれた税金が追加で課税されていることがあります。都市計画税とは、都市計画事業や土地区画整理事業の費用の財源となる税金で固定資産税や不動産取得税とは異なり目的が特定されている目的税です。都市計画事業や土地区画整理事業を行う市町村(東京23区内は東京都)が課税主体となり、課税対象は市街地区域内にある土地と家屋です。課税は固定資産税と一緒に行われ、納期も固定資産税と同じです。都市計画税は先述の1月1日現在の固定資産税評価額に最大0.3%を掛けて算出されます。
不動産の売買では「固定資産税精算金」の名目で売買日から年末までの期間で固定資産税額を日割り按分した金額をやり取りすることがよくあります。この精算金は納税義務を次の取得者に移転するわけではなくあくまで実質的な負担を求めるものです。よって、税務上「固定資産税精算金」は売買代金の一部とみなされ、売手にとっては譲渡所得または売却損益の一部となり、買手にとっては固定資産たる不動産の取得価額の一部になります。確定申告の際は誤って不動産所得における必要経費のマイナスや購入時の必要経費としないよう注意が必要です。
総務省HP|都市計画税


