地方税解説シリーズ②(個人所得課税)|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!
2025/06/13
目次
はじめに
地方税解説シリーズ第2回目は日本に居住するすべての人が課税対象となる個人所得課税について取り上げます。個人所得課税の主なものは住民税と通称される個人都道府県民税と個人市町村民税ですが、いったん国庫に入り国によって各地方自治体に分配される森林環境税についても今回取り上げます。
なお、各回のテーマは以下の通りです。
第1回 地方税の種類
第2回 個人所得課税(今回)
第3回 法人所得課税
第4回 事業税
第5回 不動産課税
第6回 自動車課税
第7回 事業所税
第8回 その他の地方税
第9回 法定外税
第10回 国民健康保険
番外編 宿泊税
個人都道府県民税、個人市町村民税の概要
始めに個人都道府県民税と個人市町村民税の概要をまとめます。課税対象者は毎年1月1日に該当する市区町村に居住している者です。実務上毎年1月1日現在住民票登録のある市町村が課税します。課税対象は前年の1月1日から12月31日までの1年間で得た所得で、徴収期間は6月から翌年5月までです。都道府県民税については居住している市町村が市町村民税と一括して徴収し、東京特別区(23区)内に住民票登録がある場合は住民票登録のある特別区が都民税と特別区民税を徴収します。
税率は都道府県民税が標準4%、市区町村民税が標準6%ですが地方税法が定める上限の範囲内で条例により異なる税率を設定することができ、いくつかの地方自治体で標準よりも高い超過税率を条例で設定しています。また、所得課税のほかに自治体住民が平等に行政費用を負担する趣旨で均等割という定額の税額が設定されています。均等割については都道府県税標準額が1人1,000円、市区町村民税標準額が1人3,000円ですがこちらも地方税法が定める上限の範囲内で条例により異なる税率を設定することができ、いくつかの地方自治体で標準よりも高い金額を条例で設定しています。なお、年間所得が一定額以下の者については条例で均等割が免税されます。
次の項目で徴収方法や税額の計算方法について取り上げます。
個人住民税の徴収方法
個人都道府県民税と個人市区町村民税の徴収は居住地の市区町村が一括して行うとお話ししましたが、具体的にどのように徴収するのか説明します。徴収方法は2種類あります。
- 普通徴収:市区町村から納税者本人に直接納税通知書を送付し本人が年4回(6月末、8月末、10月末、翌年1月末)期限で納付するもの
- 特別徴収:給与所得を受け取っている納税者について勤務先が毎月の給与から天引きして翌月10日までに代わりに納付するもの
近年各市区町村は滞納防止と税収安定化のため特別徴収を強化しており、勤務先を退職する場合、支給額が少なく天引きできない場合など限定された場合を除き、毎月の個人都道府県民税と個人市区町村民税を天引きし納付するよう勤務先に呼び掛けています。勤務先にとっては従業員の居住市区町村が複数ある場合それぞれの市区町村に納付するため事務が煩雑です。普通徴収から特別徴収への切り替え、反対に特別徴収から普通徴収への切り替えは勤務先が納税者本人に代わって行います。
なお、納税通知送付時点の住所が1月1日時点の居住地から変更になった(住民票登録が変わった)場合は1月1日時点の居住地の市区町村に課税徴収権があるため、1月1日時点の居住地の市区町村から納税通知が届きます。
徴収期間はなぜ6月から?
課税対象期間は1月1日から12月31日までですが、徴収期間は翌年の6月から翌々年の5月までとなっており、1年半ほどのずれがあります。なぜなのでしょうか?
個人都道府県民税と個人市区町村民税の所得は主に3つの方法で把握しています。
- 税務署に翌年3月15日までに提出する所得税確定申告書
- 1.の確定申告書と同日までに提出する住民税確定申告書
- 勤務先から翌年1月31日までに提出される給与支払報告書
- 年金支給者から提出される年金源泉徴収票
以上の4つの書類を居住地の市区町村が取りまとめて個人都道府県民税と個人市区町村民税を計算するため、5月ごろまで税金計算に時間がかかるからなのです。個人都道府県民税と個人市区町村民税についても所得税同様に納税者自身が税額まで計算して申告・納付する方式を採用すべきとの意見もありますが、移行時に課税時期のずれに伴う一時的な税負担増を懸念する意見もあり現状では変更されないものと思われます。
住民税申告書提出が必要な場合
先ほどの項目にある個人住民税の申告書というものについて補足します。
所得税の確定申告をしていれば、各市区町村は税務署から確定申告書情報を入手しますし、給与情報や年金受給情報も支払者から所得情報がもたらされます。よって、以下のいずれにも該当する場合に住民税申告書をお住いの市区町村に翌年3月15日までに提出します。
- 所得税の確定申告をしなかった
- 年度内の所得が給与所得のみ、または年金所得のみではなかった
- 年度内の所得が合計して43万円超あった
特に年度内の所得が43万円超の場合で、所得税の基礎控除額以下や年金申告不要制度に該当するなどの理由で所得税の確定申告が不要な場合に該当する場合はお住いの市区町村への申告を忘れないよう注意しましょう。
住民税申告書は所得及び所得控除を記載するのみで申告書の中で税金計算はしませんし、申告時の納付はありません。上述の通り、申告後市区町村の担当者が税金計算をし6月に納税通知が届きます。
森林環境税とは?
2024年(令和6年)度から1人1,000円の森林環境税が住民税課税時にお住まいの市区町村から徴収されています。では、この森林環境税とはどのような税金でしょうか?
森林環境税はパリ協定の枠組みの下におけるわが国の温室効果ガス排出削減目標の達成や災害防止を図るため、森林整備等に必要な地方財源を安定的に確保する観点から創設された税金です。森林環境税という名称の通り、間伐や営林人材確保、木材有効活用などの目的に限定されて利用することになっています。
森林環境税そのものは国税であり地方税ではありませんが、森林環境税として各市区町村が徴収した税収はいったん国庫に集約されます。その後、国は森林面積、林業従事者数、人口などの基準で各都道府県と市町村に配分します。この国から地方自治体に配分されるものを「森林環境譲与税」といい、森林環境税の課税に先立って2019年(令和元年)から配分が行われています。
総務省HP|森林環境税及び森林環境譲与税について
ふるさと納税と個人住民税の関係
お住いの自治体とは異なる都道府県や市町村に寄付し、税額控除と返礼品を受け取ることができるふるさと納税制度が始まって久しく返礼品や税額控除対象問題が毎年報道されるほどになりました。地方自治体にとっては個人住民税の別自治体への移転に相当するふるさと納税について個人住民税での税額控除の仕組みを取り上げ今一度ふるさと納税の仕組みを確認しましょう。
ふるさと納税の個人住民税(都道府県民税及び市区町村民税)における控除額は以下の1.と2.の合計額です。
- 通常の寄付金控除:(ふるさと納税額ー2,000円)×10% または 総所得金額×30%のいずれか低い金額
- ふるさと納税特例控除:(ふるさと納税額 - 2,000円)×(100% - 10%- 所得税の税率)または (所得割による住民税額)×20%のいずれか低い金額
ふるさと納税特例控除の適用にあたっては申告が必要で所得税または市区町村への住民税の確定申告でふるさと納税の寄付金控除を適用するのが原則です。ただし、ふるさと納税の控除適用のためだけに確定申告をする手間に配慮し、寄付先の地方自治体が5つ以内であれば寄付した自治体に申請すれば上記の個人住民税の税額控除を受けることができるワンストップ特例制度が利用できます。ワンストップ特例制度は所得税でもふるさと納税の控除を受けたい場合や6つ以上の地方自治体に寄付した場合は適用できず原則通り確定申告が必要になりますのでご注意ください。
おわりに
今回は個人所得課税と題して個人住民税の話題を中心に取り上げました。
最後に令和7年度税制改正で年収の壁対策で改正された人的所得控除について個人所得課税における影響をお話します。基礎控除は所得税においては引き上げが行われていますが、個人住民税では改正されず従来通り最大43万円です。
一方、新しく創設される特定親族特別控除は住民税にも2026年(令和8年)徴収分から導入され、給与所得控除の最低額、扶養控除、ひとり親控除、勤労学生控除の適用上限所得額も2026年(令和8年)徴収分から引き上げられます。ただし、19歳から22歳までの58万円から123万円以下の所得のある親族のいる所得者に適用される特定親族特別控除の最大控除額は所得税では63万円ですが、個人住民税では45万円と18万円少なくなっています。
個人住民税での人的所得控除額引き上げが所得税ほどではない理由としては、地方自治体の自主財源確保に配慮したためではないかと思われますが、所得の壁対策としてはやや効果が薄まる改正内容となっています。
どのような財産分配が住民生活の維持向上につながるのかあり方を考えていきたいところです。


