インボイス解説シリーズ(令和7年4月追加分)|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!
2025/05/02
目次
はじめに
インボイス制度が導入されて1年半が経過しインボイス制度対応がなじみ始めた一方、未だに取り扱いがどうなっているのかはっきりしていない論点もあります。今回は令和7年(2025年)4月に国税庁から公表されたインボイスQ&A最新版から新規追加されたQ&Aについて取り上げます。
今回新規追加になった論点のうち一部は特定の事業者特有の論点のため省略しています。
インボイス対応済みの場合の課税事業者届出書の要否
課税事業者になるケースには大きく2つあり、
- 2年前の消費税課税売上高が1,0000万円以上になった等の理由でなった
- 適格請求書等発行事業者に登録された(つまりインボイス対応をした)
です。1.の2年前の消費税課税売上高が1,0000万円以上になった等の理由で課税事業者になる場合対象年度開始前に「課税事業者届出書」を提出する必要がありますが、既にインボイス対応をしているため課税事業者になっている場合でも必要なのかという疑問が多く上がっていました。インボイス対応をして既に課税事業者になっている場合、2年前の消費税課税売上高が1,0000万円以上になったときに改めて「課税事業者届出書」を提出する必要はないことになっています。
(インボイスQ&A Q17-2)
予約サイトで事前決済済みの場合の宿泊代インボイス対応
近年では宿泊手配について予約だけでなく事前代金決済を予約サイトの中で行い、宿泊当日は代金決済をしないケースがあります。この場合宿泊施設での決済業務が行われないためインボイスに該当する文書(領収書、請求書など)が宿泊施設から発行されません。この場合、インボイス適格の文書をどうやって宿泊客に交付するかが問題になります。
インボイスの記載要件を満たしてさえいれば必ずしも領収書や請求書の形式でなくてもよく、フロントなどでチェックアウト時などに宿泊明細書でも構わないことになっています。また、宿泊施設・予約サイト運営会社ともに適格請求書等発行事業者であるため媒介者交付特例が適用できる場合、宿泊施設に代わって予約サイト運営会社がインボイス適格の領収書や請求書を宿泊客に交付できます。
なお、パックツアーなど旅行会社主催で企画した旅行商品の場合はあくまで旅行会社の商品の販売であるため、旅行会社が宿泊客にインボイス適格の領収書や請求書を交付する義務があります。また、旅行会社は宿泊について宿泊施設からの仕入に該当するため仕入税額控除を受けるために宿泊施設からインボイス適格の請求書等を入手する必要があることにはご留意ください。
(インボイスQ&A Q49-3)
インボイス記載事項のHP参照形式の可否
業者によっては記載事項簡素化のため一つの文書内でインボイス適格要件を満たす情報を完結せず、登録番号など共通事項についてHP参照形式にしているケースがあります。このケースがインボイスの適格要件を満たしているのかどうかが問題になります。
単に企業HPに登録番号などインボイス要件事項を記載しているだけではインボイス適格にはなりませんが、領収書などに記載事項QRコードやURLリンクを載せているなど相互の関連性が明確な状態であればインボイス適格であるとされます。
なお、この形式でのインボイス適格文書を入手した事業者が仕入税額控除を受ける場合、HP画像のダウンロードや印刷、常時URL参照可能な状態にする必要があります。
(インボイスQ&A Q72-2)
複数年にまたがる取引のインボイス交付
保守契約など長期間にわたる契約の場合、契約書や請求書の対象期間が1年を超えることがあります。この場合、複数年度にまたがった取引になりますが発行した契約文書がインボイス適格になるかどうかが問題になります。
消費税納税額の計算は原則1年で区切るため各事業年度の消費税額を割り出す必要があります。ただし、必ずしも1年以内で区切ってインボイス適格の契約書や請求書などを交付する必要はなく、1年を超える期間の取引金額と消費税額が記載されていても問題ありません。
なお、この形式でのインボイス適格文書を入手した事業者においては、当該事業者の各会計期間に対応する消費税額が明記されていない文書を受け取った場合は各会計年度の消費税額が不明となり、積上げ計算による仕入税額控除の算定はできなくなりますのでご注意ください。
(インボイスQ&A Q77-3)
任意組合構成員の場合の仕入先の帳簿記載
任意組合の構成員となっている場合取引先からの請求書等の受領は幹事会社が行い、各構成員には精算書を交付するケースがあります。この場合、各構成員は幹事会社がインボイス適格の請求書等を保存していることをもって幹事会社が交付した精算書で仕入税額控除を受けることができることになっていますが、会計帳簿に記載すべき取引の相手先がもともとの取引先なのか幹事会社なのかが問題になります。
幹事会社と各構成員との間で仕入先の情報を確認できる状態であることを前提に、会計帳簿に幹事会社と幹事会社経由仕入れであることを記載すれば仕入税額控除を受けることができることになっています。ただし、精算書に記載された取引にインボイス適格と非適格の両方の取引が記載されている場合、それぞれの金額を区分して記帳する必要がある点はご留意ください。
(インボイスQ&A Q93-2)
現金主義会計の場合の仕入税額控除のタイミング
小規模事業者において現金主義会計を採用し支出費に経費計上する会計処理をしている場合において、支出の翌年になってインボイス適格の文書を入手した場合、支出年度の消費税計算において仕入税額控除を受けることができないのではないかという疑問が生じます。
支出後にインボイス適格の文書を入手した場合でもインボイス適格の文書を入手したことをもって支出年度の仕入税額控除を受けることができることになっています。
(インボイスQ&A Q98-2)
割引・割増で購入したイベントチケットの仕入税額控除額
従業員の福利厚生目的で事業者がまとめてイベントチケットを購入し従業員が期間中にチケットを利用するケースがあります。このケースではイベント観戦時にインボイス適格の書類を入手しインボイス適格の文書に記載されている金額がチケット一括購入時の金額と異なることがあり、どのタイミングでの金額で仕入税額控除を受けられるのかが問題になります。
イベントチケットなどの物品切手を購入した本人が使う場合は購入時に購入価額で仕入税額控除することができますが、他人が使う場合は使用時に受領したインボイス適格の文書の金額で仕入税額控除を受けることが原則になっています。よって、事業者が一括購入したチケットを従業員が利用する場合仕入税額控除は受領したインボイス適格の文書の金額で計上し、割引購入した場合の割引額は消費税対象外の雑収入とするのが原則です。ただし、事務負担に配慮し割引が適用された実際の購入金額によって仕入税額控除を受けることができます。
一方、割増価格で一括購入した場合仕入税額控除はイベント実施時に受領したインボイス適格の文書に記載の金額が上限となり、差額は消費税対象外の取引として取り扱います。
(インボイスQ&A Q101-2)
フリマサイトで仕入れた場合のインボイス入手要否
フリマやオークションのサイト・アプリを通して商品を仕入れる場合、取引の相手方が匿名になっていることがあります。古物営業法の許可を得ている古物商が商品を仕入れる場合、インボイスなしで会計帳簿に必要な事項を記載するのみで仕入税額控除を受けることができる特例がありますが相手方が匿名で取引をしている場合でも特例を適用できるかどうかが問題になります。
1万円以上の取引の場合、古物営業法により相手方の確認をし古物台帳に相手方の住所、氏名、職業及び年齢を記載する義務があり消費税法上の帳簿にも相手方の住所と氏名の記載がないと仕入税額控除を受けることができないことになっています。このため、古物商が取引の相手方を確認していない場合仕入税額控除を受けることができないことになりますが、消費税額の80%(50%)を控除できる経過措置はフリマアプリ等の名称及び取引である旨を消費税法上の帳簿に記載することを条件に受けることができます。
一方、1万円未満の取引の場合は相手方不明のままでも特例を適用し満額の仕入税額控除を受けることができます。ただし、相手方が適格請求書等発行事業者の場合は1万円未満でもインボイス適格の文書の受領と保存が必要ですので注意が必要です。
なお、古物商でない事業者がフリマやオークションのサイト・アプリを通して商品を仕入れる場合、古物仕入れに関する特例の適用はありませんのでフリマアプリ等の名称及び取引である旨を消費税法上の帳簿に記載すれば消費税額の80%(50%)を控除できる経過措置が適用できるにとどまります。ただし、相手方が適格請求書等発行事業者でインボイス適格の文書の受領と保存ができれば満額の仕入税額控除を受けることができます。
(インボイスQ&A Q106-2)
おわりに
今回は2025年(令和7年)4月にインボイスQ&Aに追加された事項について取り上げました。2023年(令和5年)10月に消費税インボイス制度が開始されて1年半が経過し、インボイス実務が進み細かい不明点が出てくるようになりました。今回取り上げた事項の多くは詳細な実務におけるものが多く今後も新たな取引スキームが出てくるにつれてQ&Aが追加されるものと思われます。また、来年2026年(令和8年)10月にはインボイス非適格取引の80%控除経過措置が50%に縮減されることになっていますが、今年7月の参議院選でインボイス制度廃止や消費税引き下げを公約にする政党の動きもあり今後のインボイス制度の動向は変わる可能性があります。
当事務所では、消費税の改正やインボイス制度について動きがありましたら逐一ブログで取り上げます。


