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中小企業向け共済制度

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2025/02/28

目次

    はじめに

    事務所の関与先から節税になる方法は何かないかと聞かれることがあります。そう聞かれたときに説明するのが中小企業向け共済制度です。共済ですのでもしものときに備えるための制度ですが、掛金が経費または所得控除になることで税金負担を抑制しながら備えることができるのが特徴です。
    今回は、中小企業向け共済として国が運営する3つの共済制度をご紹介し、特に中小企業や自営業の方の備えと節税に役立てばと存じます。
    今回ご紹介する3つの共済制度は、

    1. 小規模企業共済
    2. 倒産防止共済(経営セーフティ共済)
    3. 中小企業退職金共済

    です。以上の順番で詳しくご紹介致します。
     

    小規模企業共済

    はじめに小規模企業共済から紹介します。
    小規模企業共済とは、小規模企業の役員・事業主が退職または廃業したときに退職金として受け取るための資金を掛ける共済で昭和40年(1965年)に発足した共済制度です。小規模企業の経営者や個人事業主が廃業や退職の事態に陥った際に、その後の生活を安定させたり、事業の再建に備えたりできるようにすることや小規模企業経営者や個人事業主は一般の労働者・従業員と比べ、社会保険や労働保険など各種制度の恩恵を受けることが少なかったため、そういった社会保障政策の不備を補充する機能を果たすことが目的です。
    小規模企業共済に加入できる役員・事業主は、小規模企業(建設業・製造業・運輸業・農業・宿泊業・娯楽業は常時従業員数が20名以下、左記以外の事業は常時従業員数が5名以下)に所属する以下の方です。

    • 個人事業主
    • 共同経営者としての要件を満たす方(2人まで)
    • 家族従業員
    • パート従業員
    • アルバイトなどの臨時に期間を定めて雇い入れている方

    ここでいう常時使用する従業員とは、共済加入時点で、次の従業員を除いた正社員として雇用されている方をいいます。

    • 個人事業主
    • 共同経営者としての要件を満たす方(2人まで)
    • 家族従業員
    • パート従業員
    • アルバイトなどの臨時に期間を定めて雇い入れている方

    なお、常時使用する従業員の数はあくまでも共済加入時の人数要件であって、その後従業員の数が増加して要件に該当しなくなったとしても共済契約は続けることができます。よって、規模が小規模なうちに加入しておき規模が拡大しても十分な退職資金を備えておくように加入するとお得な制度です。
    ただし、

    • 事業を兼業している給与所得者(法人または個人事業主と常時雇用関係にある方)、サラリーマン(例:アパート経営の事業をしているサラリーマン)
    • 会社等の役員とみなされる方(相談役、顧問その他実質的な経営者)であっても、商業登記簿謄本に役員登記されていない方
    • 独立行政法人勤労者退職金共済機構が運営する「中小企業退職金共済制度」「建設業退職金共済制度」「清酒製造業退職金共済制度」「林業退職金共済制度」(以下、中退共等)の被共済者
    • 生命保険外務員
    • 配偶者等の専業従事者・従業員(ただし、共同経営者の要件をすべて満たせば、「個人事業主の共同経営者」として加入できます)
    • 小規模企業者であるほかに、小規模企業者に該当しない個人事業主または小規模企業者に該当しない会社等の役員を兼ねており、それを主たる事業としている方
    • 学業を本業とする全日制高校生等

    は役員や事業主とされていても加入できませんのでご注意ください。
    掛金は原則月払い(毎月18日口座振替)で1,000円~70,000円の範囲で500円刻みで設定することができます。掛金の変更は一定の申請をすることでできます。1年分の一括前払、半年分の一括前払も可能です。また、掛金は所得税における「小規模企業共済掛金等控除」として全額所得控除を受けることが可能で、年末調整、確定申告いずれにおいても適用可能です。一方で企業における損金や必要経費に算入することはできませんので経理の際はご注意ください。
    この制度は退職金の他、もしものときの事業資金貸付制度があり、掛金累計額に応じて貸付限度額が設定され、通常は年利1.5%の貸付を受けることができます。貸付期間は、6カ月、12カ月、24カ月、48カ月、60カ月から選ぶことができ、6カ月、12カ月の場合は期日一括返済、24カ月、48カ月、60カ月の場合は6ヶ月ごとの元利均等返済となります。また、返済が難しい場合は借換をすることができます。もちろん、繰上返済も可能です。
    なお、特別な事情がある場合は通常の利率よりも低い特別貸付もあります。
    退職時または廃業時に受け取る共済金は一時金で受け取ることもできますし、年金で受け取ることもできます。一時金受け取りの場合所得税法上は退職所得扱いとなり税金負担が軽減されます。一方、年金受け取りの場合は雑所得(公的年金)の扱いとなります。
    詳細は以下のリンクをご参照ください。
    中小機構HP|小規模企業共済とは

     

    倒産防止共済(経営セーフティ共済)

    次に倒産防止共済(経営セーフティ共済)について取り上げます。
    倒産防止共済(経営セーフティ共済)とは、取引先事業者が倒産した際に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度で昭和53年(1978年)に発足した共済制度です。無担保・無保証人で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借入れでき、掛金は損金または必要経費に算入できます。昭和40年代後半から景気後退に伴い倒産件数が増加する中、取引先数が限定され、取引先企業の財務情報などの入手も困難な中小企業は、突然の取引先企業の倒産で被害を受けることが多いことから、中小企業の相互救済のための仕組みとして作られました。
    倒産防止共済(経営セーフティ共済)に加入できる企業は中小企業基本法に定義される中小企業者に該当する法人または個人事業主です。業種ごとに要件があり以下の表の通りです。

     

    業種 資本金の額または
    出資の総額
    常時使用する従業員数

    製造業、建設業、運輸業、その他の業種

    3億円以下 300人以下
    卸売業 1億円以下 100人以下
    サービス業 5,000万円以下 100人以下
    小売業 5,000万円以下 50人以下
    ゴム製品製造業
    (自動車または航空機用タイヤおよびチューブ製造業と工業用ベルト製造業を除く)
    3億円以下 900人以下
    ソフトウェア業または情報処理サービス業 3億円以下 300人以下
    旅館業 5,000万円以下 200人以下

    ※「常時使用する従業員」とは、原則として2ヶ月を超えて雇用される方であり、かつ、週当たりの所定労働時間がその企業の通常の従業員とおおむね同等である方をいいます。したがって、以下の方は除きます。

    • 法人の役員
    • 事業主
    • 事業主の家族従業員
    • 雇用期間が2ヶ月以下の方(アルバイト等)

    掛金は原則月払い(毎月27日口座振替)で5,000円~200,000円の範囲で5,000円刻みで設定することができ800万円まで積み立てることができます。掛金の変更は一定の申請をすることででき、掛金を前払いすることも可能です。また、掛金は先述の通り企業における損金や必要経費に算入することができ、前払の場合も1年以内の分までであれば支払時に一括で損金や必要経費に算入できます。法人の場合は経理実務上支払時に経費処理する方法の他、掛金を資産計上しておき申告の際に申告書上で損金算入する方法があります。一方、個人事業主の場合は「特定の基金に対する負担金等の必要経費算入に関する明細書」を確定申告の際に添付することで必要経費に算入することができます。
    貸し付けを受けることができる取引先の倒産には、破産・再生などの法的整理の他、手形・電子債権交換所取引の停止、私的整理、災害に伴う不渡りなどが含まれます。ただし、貸付請求額が少額であって、次の1.ならびに2.のいずれの額にも達しないときなどは貸付を受けられないことになっています。

    1.  50万円(共済契約締結時の掛金月額が5,000円であり、かつ共済契約が効力を生じた日から共済金の借入手続きの日までの期間が6か月以上10か月未満である共済契約者にあっては、5,000円に掛金の納付をすべきであった月数を乗じて得た額の10倍に相当する額)
    2. 共済契約者の月間の総取引額の20%に相当する額

    なお、この制度に加入する目的で多いのがしばらくの間掛けておき資金が必要になったときに解約する資金準備目的での加入です。解約の際に受け取れる手当金の額は、掛金納付月数(前納している場合、充当する月が到来していない期間分は掛金納付月数から除く)に応じて、掛金総額に次の表の支給率を乗じて得た額となります。
     

    掛金を納付した月数

    任意解約 みなし解約 機構解約

    1か月~11か月

    0% 0% 0%
    12か月~23か月 80% 85% 75%
    24か月~29か月 85% 90% 80%
    30か月~35か月 90% 95% 85%
    36か月~39か月 95% 100% 90%
    40か月~ 100% 100% 95%

    みなし解約に該当する事由として、

    • 個人事業主の死亡
    • 会社等法人の解散
    • 事業譲渡
    • 会社等法人の分割

    があり、機構解約に該当する事由として12か月分以上の掛金の滞納をしたときなどがあります。40カ月以上掛けて満額の解約金を受け取ることで中期資金の確保に役立てるスキームが悪用されもしもの運転資金不足に備える共済本来の目的が果たせない状態になりつつあることから令和6年(2024年)の税制改正で令和6年(2024年)10月1日以降に共済契約を解約し、再度共済契約を締結(再加入)する場合、その解約の日から2年を経過する日までの間に支出する掛金については、必要経費または損金に算入できないことになりました。
    中小機構HP|経営セーフティ共済とは

     

    中小企業退職金共済

    最後に中小企業退職金共済について説明します。
    倒産防止共済(経営セーフティ共済)とは、昭和34年(1959年)に中小企業退職金共済法に基づき設けられた中小企業のための国の退職金制度で、独立行政法人勤労者退職金共済機構・中小企業退職金共済事業本部(中退共)が運営しています。
    中小企業は大企業と異なり退職金支払いに備えた積み立てをする資金的余裕に乏しく、退職金制度の設計も難しいケースが多いです。そこで、国の制度として中小企業で資金を出し合って退職金資金を積みたて運用し、簡単に退職金制度を設けることができるようにしたものです。
    中小企業退職金共済に加入できる企業は以下の通りです。

    • 製造業、建設業、運輸業、その他の業種:資本金または出資の総額3億円以下、常時雇用する従業員数300人以下
    • 卸売業:資本金または出資の総額1億円以下、常時雇用する従業員数100人以下
    • サービス業:資本金または出資の総額5,000万円以下、常時雇用する従業員数100人以下
    • 小売業:資本金または出資の総額5,000万円以下、常時雇用する従業員数50人以下
      上記の要件に該当しなくなった場合は制度脱退となり、加入企業に解約手当金が支払われます。また資産移換の申出等の要件を満たしていれば、従業員の労働契約が承継されている場合に限り被共済者(従業員)の同意を得たうえで確定給付企業年金、確定拠出年金(企業型)または特定退職金共済制度(以下、「特定企業年金制度等」という)へ解約手当金相当額の範囲内の金額を引き渡すことができます。加入対象となる従業員から役員や事業主は除きますが、役員のうち従業員として賃金の支給を受けている等の実態があれば、加入することができます。
      毎月の掛金は従業員ごとに設定することができ、5,000円から30,000円まで16段階あり原則として毎月18日に口座振替となります。掛金は支払時に全額損金又は必要経費に算入することができます。
      退職者が発生したときに退職金の支払は一旦加入してい企業に入金され、企業が退職者に退職金を渡す形になります。

    独立行政法人勤労者退職金共済機構HP
     

    おわりに

    今回は3つの中小企業向け共済制度についてご紹介致しました。中小企業は資金余力に乏しく単独ではもしものときに備える資金を蓄えておくことが難しいです。そこで今回ご紹介した共済制度を活用し税制面での優遇を受けながら資金準備をすることができます。
    当事務所でも関与先企業の方にお薦めすることがあります。上手に活用して充実した中小企業になることを目指しましょう!

     

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