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医療費控除を知ろう!

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2025/02/14

目次

    はじめに

    確定申告を行う理由の一つで多いのが医療費控除の適用です。私の事務所でお引受けしている確定申告にも医療費控除を適用される方が多くいますし、税務署などでの確定申告相談支援に行っても医療費控除に関する相談を多く受けます。
    一方で医療費控除を受けることができたにもかかわらず、通院費や薬代などを記録しておらず医療費控除を受け損ねるケースも中にはあります。そこで今回は医療費控除について詳しく取り上げ、確定申告で得するあるいは損しないようお役に立てば幸いです。
    なお、今回の内容は令和6年(2024年)度の確定申告において適用される法令に基づいている旨あらかじめお断りいたします。

     

    医療費控除の適用できる範囲

    はじめに医療費控除が適用できる医療費について解説します。対象者は確定申告をする本人が1月1日から12月31日までの間に支払った医療費をはじめ、自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の医療費を負担した場合に適用することができます。特に同居しているお子様や親御さんがいる場合は、ご家族本人に所得がなくても確定申告で医療費控除を受けられるケースがありますのでご家族の分の医療費の領収書を保管するようにしましょう。もちろん、ご家族の方も確定申告を行う場合、同一内容の医療費について本人とご家族が二重に医療費控除を受けることはできませんのでご注意ください。
    対象となる医療費は以下の通りです。

    1. 医師または歯科医師による診療または治療の対価
      (ただし、健康診断の費用や医師等に対する謝礼金などは原則として含まれません。)
    2. 治療または療養に必要な医薬品の購入の対価
      (風邪をひいた場合の風邪薬などの購入代金は医療費となりますが、ビタミン剤などの病気の予防や健康増進のために用いられる医薬品の購入代金は医療費となりません。)
    3. 病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院、指定介護療養型医療施設、指定介護老人福祉施設、指定地域密着型介護老人福祉施設または助産所へ収容されるための人的役務の提供の対価
    4. あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術の対価
      (ただし、疲れを癒したり、体調を整えるといった治療に直接関係のないものは含まれません。)
    5. 保健師、看護師、准看護師または特に依頼した人による療養上の世話の対価
      (この中には、家政婦に病人の付添いを頼んだ場合の療養上の世話に対する対価も含まれますが、所定の料金以外の心付けなどは除かれます。また、家族や親類縁者に付添いを頼んで付添料の名目でお金を支払っても、医療費控除の対象となる医療費になりません。)
    6. 助産師による分べんの介助の対価
    7. 介護福祉士等による一定の喀痰吸引および経管栄養の対価
    8. 介護保険等制度で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担額
    9. 次のような費用で、医師等による診療、治療、施術または分べんの介助を受けるために直接必要なもの
      (1)医師等による診療等を受けるための通院費、医師等の送迎費、入院の際の部屋代や食事代の費用、コルセットなどの医療用器具等の購入代やその賃借料で通常必要なもの
      (注1)電車やバスなどの公共交通機関が利用できない場合を除き、タクシー代は控除の対象には含まれません。
      (注2)自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車場の料金などは、控除の対象には含まれません。
      (2)医師等による診療や治療を受けるために直接必要な、義手、義足、松葉杖、補聴器、義歯、眼鏡などの購入費用
    10. 日本骨髄バンクに支払う骨髄移植のあっせんに係る患者負担金
    11. 日本臓器移植ネットワークに支払う臓器移植のあっせんに係る患者負担金
    12. 高齢者の医療の確保に関する法律に規定する特定保健指導(一定の積極的支援によるものに限ります。)のうち一定の基準に該当する者が支払う自己負担金
       

    ここで、改めて適用誤りが多いケースをご紹介致します。

    1. 健康診断を受けただけでは健康診断費用は医療費控除対象外となりますが、健康診断の結果病気が判明し何かしらの手術や治療を受けることになった場合は健康診断費用も控除対象に含まれますので含め忘れの無いようご注意ください。
    2. 医療費は病気やけがの治療に対するものに対して適用できるため、見た目をよくする審美目的の手術や治療の場合は医療費控除対象外となります。特に歯科矯正や皮膚手術は審美目的の場合があるため、治療に該当する場合は医師から病気やけがの治療に該当する旨の診断書を入手することをお勧めします。
    3. 薬は医師の処方によるものだけでなくご自身の判断で購入した薬代も含みます。ただし、予防目的で購入した薬は含まれませんので安易に含めないようご注意ください。
    4. マッサージや施術は何かしらの症状があり、症状に対する治療目的であれば医療費控除対象になります。医療費控除を受ける際は、具体的な症状を説明できるようにしましょう。
    5. 通院のためのタクシー代を医療費控除対象にする方がいますが、上述の通り電車やバスではどうしても通院ができない場合に限られますので、安易にタクシーを利用しタクシー代を医療費控除対象に含めないようご注意ください。また、ガソリン代や駐車場代を医療費控除に含めようとする方がたまにいますが、いかなる理由であっても対象外になりますのでご注意ください。


    参考:
    国税庁HP|No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
    国税庁HP|No.1122 医療費控除の対象となる医療費

     

    医療費控除の控除限度額

    ここでは医療費控除がいくら受けられるのか説明します。
    医療費控除は(実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額)-10万円(その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5パーセントの金額)で、最大控除額は200万円です。
    相談を受けるとよく言われるのが、医療費が10万円かかっていないから通院や薬代の記録を保存していないというものです。所得が200万円未満となる場合、医療費控除下限額は総所得金額等の5パーセントの金額となりますので、通院が重なり所得が下がったケースでは年間医療費が10万円無くても適用できる場合があります。
    また、保険金などで補てんされる金額は生命保険契約などで支給される入院費給付金や健康保険などで支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金などが該当します。特に間違いやすいのが、入院などで多額の医療費がかかり年間医療費が10万円を超えた場合に実は高額療養費給付や入院保険金などを受けているのに医療費控除を適用する場合です。入院保険金や高額療養費を誤って所得として申告し、医療費控除を受ける段階で控除額から控除しないケースがありますが、入院保険金や高額療養費はあくまで入院代の補てんという目的があるため、課税所得には該当しません。一方、医療費控除計算の際に控除額から差し引かずに医療費控除を過大に受けるケースがありますので、入院して医療費が多額にかかった場合は特に注意が必要です。
    なお、退院が年末近くになり高額療養費や入院保険金の支給額が確定申告期限までに確定しない場合があります。この場合、支給見込額がある程度判明している場合は見込額、まだよくわからない段階である場合は給付対象の入院費全額を控除対象から除外する形で申告することになります。

     

    確定申告に当たって必要な資料

    どのようなものが医療費控除に該当し、いくら受けられるか説明しましたが、ここまで進んだ方の中にはどうやったら確定申告で医療費控除を受けられるのか気になる方もいるのではないでしょうか?ここでは、確定申告の際の手続についてお話しします。
    医療費控除を受けるためには必ず確定申告をしますが、その際申告書と一緒に「医療費控除の明細書」という添付書類を提出します。「医療費控除の明細書」は国税庁所定の様式となっており、国税庁HPからのダウンロードで入手できますし、税務署にも用紙が用意されています。また、e-Taxによる電子申告の場合入力フォームで必要な事項を記載すれば自動的に「医療費控除の明細書」が作成されます。
    「医療費控除の明細書」提出に当たり病院や薬局などで受け取った領収書やレシートなどを添付して提出する必要はありません。代わりに事後的な内容確認に備えて原則確定申告期限から5年間はお手元に領収書やレシートを保存しておくことになります。確定申告後安易に領収書やレシートを破棄しないようご注意ください。
    「医療費控除の明細書」には医療等を受けた家族の氏名、支払先、医療費の内容、支払金額、保険等で補てんされた金額を記入することになっています。1領収書ごとに記入してもよいですし、支払先ごとにまとめて記入しても構いません。
    また、保険診療の通院や薬代が多くかかる方には、毎年健康保険組合等から届く医療費の明細に記載されている診療等の合計金額を記載することで記入の負担を軽減することができます。ただし、医療費の明細は集計時期の関係で9月または10月までの記録が年明けに届き12月までの記録は確定申告期限近くに届くケースが多く、支払金額も医療機関等の保険請求額を基に計算しているため実際の支払額と若干異なります。その点はご留意の上ご活用ください。

     

    セルフメディケーション税制

    医療費控除は年間医療費支出が10万円または合計所得の5%を超える場合に適用できる制度のため、手術や治療が多い方や高額でない場合には適用できる可能性が小さい制度です。一方、近年は健康維持や予防の考え方が広がり未然に対策を講じる人も少なくありません。そこで、平成29年(2017年)よりセルフメディケーション税制という通常の医療費控除と選択適用できる制度が導入されました。
    セルフメディケーション税制は健康の保持増進および疾病の予防への取組として「一定の取組」を行っている居住者が対象となります。具体的には、次の取組が、「一定の取組」に該当します。

    1. 保険者(健康保険組合、市区町村国保等)が実施する健康診査<人間ドック、各種健(検)診等>
    2. 市区町村が健康増進事業として行う健康診査<生活保護受給者等を対象とする健康診査>
    3. 予防接種<定期予防接種、インフルエンザワクチンの予防接種>
    4. 勤務先で実施する定期健康診断<事業主健診>
    5. 特定健康診査(いわゆるメタボ健診)、特定保健指導
    6. 市町村が健康増進事業として実施するがん検診

    なお、申告される方が「一定の取組」を行っていることが要件とされているため、申告される方が取組を行っていない場合、控除を受けることはできないことになっています。
    セルフメディケーション税制対象になる医療費は特定一般用医薬品等購入費といい、医師によって処方される医薬品(医療用医薬品)やドラッグストアで購入できるOTC医薬品に転用された医薬品(スイッチOTC医薬品)等の購入費です。セルフメディケーション税制の対象となる商品には、購入の際の領収書等にセルフメディケーション税制の対象商品である旨が表示されています。スイッチOTC医薬品等の具体的な品目一覧は、厚生労働省ホームページに掲載の「対象品目一覧」をご覧ください。なお、一部の対象医薬品については、その医薬品のパッケージにセルフメディケーション税制の対象である旨を示す識別マークが掲載されています。
    セルフメディケーション税制による医療費控除額は、実際に支払った特定一般用医薬品等購入費の合計額(保険金などで補填される部分を除きます。)から12,000円を差し引いた金額(最高88,000円)です。なお、一定の取組(人間ドックなど)に要した費用は、セルフメディケーション税制による医療費控除の対象となりませんのでご注意ください。
    セルフメディケーション税制の適用を受ける場合は、確定申告の際に「セルフメディケーション税制の明細書」という通常の医療費控除とは別の様式の明細書を添付します。領収書やレシート、人間ドッグ等一定の取り組みを行っていることを証明する書類の提出は必要ありませんが、通常の医療費控除と同様に事後的な内容確認に備えて原則確定申告期限から5年間はお手元に領収書やレシート、取り組みをしたことを証明する文書を保存しておくことになります。

     

    おわりに

    今回は確定申告における医療費控除について取り上げました。医療費控除は誤りやすいポイントが多くあります。今回のブログでは特に誤解の多い点についても取り上げ、確定申告の際に後で損をすることがないように心がけております。
    また、医療費控除の申告の際に領収書の提出が求められないため、事後的に間違いに気づいて修正申告となり追徴されることがあります。医療費は慎重に集計しましょう。一方、確定申告後に医療費控除の申請漏れが判明した場合でも事後的に税金の還付を受けることができます。具体的には、申告年後から5年間、更正の請求という手続を行い判明した医療費の領収書などとともに税務署に提出します。提出後税務署での確認が行われ特に問題なければ更正決定という形で税金が還付されます。万が一、確定申告後に医療費控除適用漏れが判明してもあわてずに還付の手続を進めるようにしましょう。

     

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