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関税とは?

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2025/01/24

目次

    はじめに

    今月20日にアメリカではドナルド・トランプさんが2度目の大統領に就任し、America First(米国第一)の掛け声の下関税を引き上げアメリカ国内産業を保護すると主張しています。
    関税とはどのようなものなのか日常ではなかなか気に留めないものです。今回は関税について基礎知識を再確認し、トランプ政権の関税政策による日常生活や経済への影響は具体的にどのようなものなのか理解しやすくすることを目的としています。

     

    関税の性質と意義

    はじめに「関税」について基礎的な知識を確認します。税関ホームページ(関税の仕組みリンク)によると、「関税は、歴史的には古代都市国家における手数料に始まり、内国関税、国境関税というような変遷を経てきましたが、今日では一般に「輸入品に課される税」として定義されています」とあります。
    つまり、外から入ってくるものに対して受け入れる国家が追加負担を求めるものです。関税は税金ですので当然受け入れる国家の税収となり国家財源の一つとなります。そのため、関税によって国家財政の安定を目指した国もあります。この他税金の一般的な効果として、

    • 富の再分配
    • 景気の安定化
    • 所得の調整

    が挙げられますが、関税は特に外国からの輸入を調整する効果があり、

    • 国際的な富の偏在の調整
    • 国内経済・企業活動の保護
    • 物品の過不足調整

    効果があります。関税の引き上げは特に国内産業保護と物品過剰による販売価格値崩れ防止に効果があり、引き下げは消費者物価の抑制と品不足の解消に効果があります。そのため、経済政策として関税の見直しはよく用いられ、輸出を促進するために相手国に関税の引き下げを求めることはよくあり、双方が関税の免除・引き下げで合意することもよくあります。具体例として、EPA(自由貿易協定)や経済協定(EU内のEEC協定やTPP)が挙げられます。
     

    関税の経理、他の税金への影響

    ここでは会計事務所のブログということで、関税についての会計処理と他の税金への影響について取り上げます。
    関税そのものは租税公課に該当します。ただし、関税はモノの仕入や設備等の購入の際に輸入することでかかることが多くあります。こうした仕入や設備等の購入などモノ自体が資産に計上される場合は、租税公課として経費処理せず仕入(棚卸資産)や固定資産に含めます。こうした場合における関税は「付随費用」と呼ばれますが、理由は仕入や設備等の購入がなければ生じることはなく、仕入や設備等の購入に不可避であったため仕入や固定資産に含め、将来の販売代金によって回収するという理屈なのです。
    また、他の税金への影響にも触れますと、上記の通り支払時経費または資産計上後経費化されるため所得税における事業所得や法人税の計算においても上記と同じタイミングで経費として認められます。消費税については、関税は税金に該当しモノやサービスの対価には該当しないため関税に対して消費税がかかることはありません。なお、輸入したモノの本体価格に対しては非課税品目でない限り輸入時に消費税がかかり、関税と一緒に税関または金湯機関を通して消費税を直接納付します。

     

    日本における関税

    ここで、関税がどのように設定されているのかお話しします。関税は以下の種類があります。
    (1)法律に基づいて定められている税率

    • 基本税率:国内産業の状況等を踏まえた長期的な観点から、内外価格差や真に必要な保護水準を勘案して設定されている税率です。
    • 暫定税率:一定の政策上の必要性等から、基本税率を暫定的に修正するため、一定期間に限り適用される税率です。基本税率に優先して適用されます。
    • 特恵税率:開発途上国・地域を支援する観点から、開発途上国・地域からの輸入品に対し、原産地証明書の提出等の条件を満たすことにより適用される税率です。最恵国待遇の例外として、実行税率(国定税率(特恵税率及び簡易税率を除く。)と協定税率のいずれか低い税率)以下に設定されています。
    • 入国者の輸入貨物に対する簡易税率:入国者が携帯し、あるいは別送して輸入される貨物に対し適用することのできる税率です。関税・消費税などを総合して水準が設定されています。
    • 少額輸入貨物に対する簡易税率:入国者が携帯し、あるいは別送して輸入される貨物以外の貨物で、課税価格の合計額が20万円以下の輸入貨物に適用することのできる税率です。

    (2)条約に基づいて定められている税率

    • 協定税率:WTO加盟国・地域に対して一定率以上の関税を課さないことを約束(譲許)している税率です。国定税率よりも低い場合、最恵国税率として、WTO全加盟国・地域及び二国間通商条約(経済連携協定を除く。)で最恵国待遇を約束している国からの産品に対して適用されます。
    • 経済連携協定等に基づく税率(EPA税率):経済連携協定等を締結している国からの産品を対象とし、それぞれの協定に基づいて適用される税率です。それぞれの協定の原産地規則等の条件を満たすことにより適用されます。 

    税率は原則として、特恵税率、協定税率、暫定税率、基本税率の順に優先して適用されます。ただし、特恵税率は対象となる国の原産品であるなどの条件を満たす場合に限られ、協定税率は、それが暫定税率又は基本税率よりも低い場合に適用されます。その他、EPA税率が適用される品目について、EPA税率≦一般特恵税率の場合、一般特恵税率の適用対象外となります。
    つまり、開発途上国・地域支援対象となる品目に関しては輸入を促進するため低い税率が適用され、次に協定やEPAなど双方の産業や貿易を活性化する目的で国際条約や協定で定められた低い税率が適用されます。一方、国際条約や協定で取り決めた税率よりも法律による関税率が低い場合は低い関税が課されるということです。
    一つ税関HP記載の例を挙げますと、「ベトナム来のコーヒー(いったもので、カフェインを除いてないもの)の税率を調べると、 本品の税番は、第0901.21号に該当するので、対応する税率は、基本税率(20%)、協定税率(12%)、特恵税率(10%)及びEPA税率((例)CPTPP:無税)となります。実際に適用される税率としては、EPA税率が他の税率より低いため、ベトナムの原産品であるなどの条件を満たす場合はEPA税率が適用され無税になります。EPA税率の適用条件を満たさない場合、ベトナムは一般特恵税率対象国ですが、本品に係るEPA税率が一般特恵税率より低いために一般特恵税率は適用されず、特恵税率の次に低い12%の協定税率が適用され」るとのことです。

    つまり、関税は相手国との関係性によって大きく変化するのです。関税は外国政府からの改正要望もあるため他の税金とは別の流れで毎年改正大綱が出されます。

    1105 関税率の種類(カスタムスアンサー)

     

    トランプ政権による日本に課す関税の変化

    話題を変えてトランプ大統領2期目就任に伴う関税について触れます。ブログ更新時点においては1月20日の就任直後ですが、就任前には就任とともに関税引き上げに関する大統領令を出すのではないかと言われていました。ところが、地球温暖化に対するパリ協定やWHO(世界保健機関)からの脱退などについて大統領令が出たものの、関税引き上げに関しては出ませんでした。就任初日での関税引き上げをしなかった理由としては、

    • 相手国との交渉の機会を与えた
    • 引き上げ率を慎重に検討している
    • 他の交渉カードを先に出して相手国の出方をうかがっている
      などがあると思われますが、筆者の憶測にすぎない旨申し添えます。
      関税引き上げの目的として、国内産業保護と物品過剰による販売価格値崩れ防止を先述しましたが、国内産業保護は補助金給付やセーフガードによる一時的関税引き上げでも対応できますし、販売価格値崩れ防止についても商品差別化がうまく行けば値崩れはある程度防止できます。つまり、関税による保護で技術や製品の改善を阻害し品質やサービスの低下につながる可能性があります。
      トランプ政権はGXやLGBTなどに後ろ向きである一方、ITやAIには開放的であることから、関税引き上げは国内産業保護というよりも、変化に否定的で不満の声を出したがっている層を取り込むための方便の一つであるともとれます。いずれにしても、本気で自国を守るのであれば相手国に対して関税引き下げを求め自国産品の輸出促進を促すことも一つの方法ですし、ITやAIによる外国からのテロや紛争からの防衛強化を図ることも一つの方法になるはずです。

       

    おわりに

    今回は関税について取り上げました。投稿しているブログ記事は会計や税金に関する知識の解説や最新動向の説明がほとんどですが、今回は政策について私見を述べました。関税や外国所得課税など国際的な課税策は外国との交流・貿易促進をとるか自国の保護・防衛をとるかという重要な外交カードになります。
    トランプ政権はAmerica Firstの掛け声の下関税を外交カードとして使っているわけですが、第1次政権のときにもあったように相手国特に中国による関税引き上げ対抗措置を講じられ、輸入価格が上がることでかえって自国の利益を損なう事態になることがあります。今後のトランプ政権の政策動向に注目したいところです。

     

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