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令和7年度与党税制改正大綱

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令和7年度与党税制改正大綱

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2024/12/27

与党(自由民主党・公明党)の税制改正大綱

年末になり税制改正が話題になる時期になりました。今回から3回にかけて令和4年度の税制改正大綱について特に影響が大きいものを取り上げます。
そもそも税制改正大綱は財務省HPによりますと次の流れで進むものです。政府税制調査会が中長期的視点から税制のあり方を検討する一方、毎年度の具体的な税制改正事項は与党税制調査会が税制改正要望等を審議し、その後取りまとめられる与党税制改正大綱を踏まえて「税制改正の大綱」が閣議に提出されます。今回はこのうち、特にその時々の情勢が反映される与党税制改正大綱について取り上げます。今年は11月の衆議院解散総選挙後与党の議席が過半数割れとなり、税制改正協議に国民民主党が入ったことでこれまでよりも議論が活発になった一方、年収の壁などについて国民民主党との最終合意に至らぬまま12月20日に与党税制改正大綱が出る形となり、年明けの国会審議において今回紹介する税制大綱の通りに法案が成立するかどうか不確実な状況となっています。
それでも、あまり報道されないものの重要なものがありますので今回は大綱通りに改正されるかどうかは別にして与党税制改正大綱にある重要事項を取り上げます。

初めに基本的な考え方のなかで下記の3点を踏まえ税制のあり方を不断に見直すことが求められるとしています。

  1. 持続的な経済的成長を目指し、活力ある社会を構築するための環境整備を図ること。(設備投資の促進等)
  2. 若者や現役世代を含め誰もが豊かさを実感できる、質の高い国民生活を実現すること。(所得向上、社会インフラの整備等)
  3. 我が国を取り巻くビしい国際環境や国際的要請を踏まえ、いわゆる安全保障及び経済安全保障の教会や地球温暖化対策等に取り組むこと。

また、主要項目及び今後の税制改正に当たっての基本的考え方として、

  1. 物価上昇局面における税負担の調整及び就業調整への対応
  2. スタートアップへの投資促進や「資産運用立国」の実現に向けた環境整備
  3. 法人税率引き下げ効果の検証と見直し
  4. 租税特別措置等の政策手段としての有効性と課税公平性との兼ね合いから見た見直し
  5. 地域経済を支える中小企業の取り組みを後押しする税制等
  6. 企業版ふるさと納税
  7. 都市・地方の持続可能な発展のための地方税体系の構築
  8. 屋外文苑施設等の整備の促進
  9. 私的年金等に関する公平な税制のあり方
  10. 公的年金等に関する公平な税制のあり方
  11. 人的控除をはじめとする各種控除の見直し
  12. 記帳水準の向上等と所得税青色申告制度の見直し
  13. 子育て支援に関する政策税制
  14. 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置
  15. BEPSやグローバル・ミニマム税制など新たな国際課税ルールへの対応
  16. 外国人旅行者向け免税制度の見直し
  17. 国境を超えた電子商取引に書かkる消費税の適正化
  18. 自動車関係諸税の総合的な見直し
  19. 防衛力強化に係る財源確保のための税制措置
  20. 税務手続のデジタル化による利便性の向上
  21. 課税・徴税手続等の整備・適正化

 

が挙げられています。以上の考え方を踏まえて具体的な改正要望事項と検討事項の主なものを紹介します。

個人所得課税の改正大綱

  1. 基礎控除の見直し
    物価上昇に伴う税負担の軽減の観点から令和7年度以降の所得税について合計所得が2,350万円以下である場合基礎控除を現在より10万円多い58万円に引き上げるとされています。
    あわせて、令和8年1月1日以降給与及び公的年金等に係る源泉徴収税額を見直すとされています。基礎控除引き上げに伴い、配偶者控除、扶養控除、ひとり親控除といった親族の所得額により適用を判断するものについて該当する親族の合計所得金額上限を58万円に引き上げるとされています。勤労学生控除の合計所得金額上限についても75万円から85万円に引き上げるとされています。
    なお、住民税においても上記引き上げに合わせた所要の見直しを行うとされています。
  2. 給与所得控除の見直し
    1.の基礎控除同様物価上昇に伴う税負担の軽減の観点から令和7年度以降の所得税について給与所得控除額の最低保証額を現在より10万円多い65万円に引き上げるとされています。
    あわせて、令和7年分以降の源泉徴収額表や、年末調整等のための給与所得控除のの給与等の金額の表等について所要の措置を講ずるとされています。
    なお、住民税においても上記引き上げに合わせた所要の見直しを行うとされています。
  3. 特定親族特別控除(仮称)
    報道の通り扶養控除適用対策のための学生バイトの給与調整をしなくて済むよう、令和7年度以降の所得税について生計を一にする19歳以上23歳未満の親族等の合計所得が基礎控除額(58万円)以上123万円以下の場合、世帯主が一定額の所得控除を受けられるようにするとされています。また、令和8年1月1日よりこの所得控除の控除額が一定金額以上の場合給与の源泉徴収に反映するとされています。
    なお、住民税においても上記引き上げに合わせた所要の見直しを行うとされています。
  4. 生命保険料控除の見直し
    子育て支援の観点から、令和8年分の所得税から23歳未満の扶養親族を有する居住者について新生命保険料(平成24年1月1日以降加入した死亡保険に関する生命保険料)に関する生命保険料控除の上限を現在より2万円多い6万円に引き上げるとされています。また、旧生命保険料(平成23年12月31日以前に加入した生命保険料)を一緒にかけている場合の生命保険料控除の適用上限も6万円に引き上げるとされています。(住民税)
  5. 住宅ローン控除適用上限の見直し
    若い世帯の住宅購入を後押しするため、令和7年度中に居住の用に供した住宅に対するローンについて、本人が40歳未満で配偶者を有する者、または、本人は40歳以上であっても40歳未満の配偶者または19歳未満の扶養親族がいる者について以下の住宅の認定を受けている場合、住宅ローン控除を受けられるようにするとされています。なお、この見直しは実質的に現行の住宅ローン減税の措置を1年延長するものです。
    認定住宅5000万円、ZEH水準省エネ住宅4500万円、省エネ基準適合住宅4000万円(住民税)
  6. 企業型確定拠出年金拠出制限の緩和
    確定拠出年金の活用による自主的な老後資金貯蓄を後押しするため、企業型確定拠出年金のマッチング拠出について、現在事業主掛金の額を超えることができないとされている企業型年金加入者掛金額について要件廃止するとのことです。
    また、企業型確定拠出年金の拠出限度額を現行より7千円多い月額6万2千円に引き上げるとされています(ただし、企業型確定給付年金制度に加入している者については確定給付年金掛金相当額を差し引く)。
  7. 個人型確定拠出年金及び国民年金基金拠出限度額の引き上げ
    先述の項目と同じ理由で、第一号被保険者(国民年金加入者)については、個人型確定拠出年金及び国民年金基金の拠出限度額をそれぞれ現行より7千円多い月額7万5千円に引き上げるとされています。また、第二号被保険者(厚生年金加入者)については、拠出限度額を現行より7千円多い月額6万2千円に引き上げるとされています(ただし、企業型確定拠出年金制度に加入している者については確定拠出年金掛金相当額を差し引く)。
  8. 本人確認におけるマイナカードスマホアプリの対応
    現在マイナンバーカード機能についてスマートフォンアプリに搭載することが検討されていますが、利便性向上のため確定申告時など税務手続において本人確認を行う際にマイナンバーカードスマートフォンアプリが使えるようにするとされています。
  9. 保険料控除等における控除証明書添付の省略
    確定申告時の提出準備及び税務署等での事務負担軽減のため、令和8年分の確定申告から小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除及び地震保険料控除について保険会社等から届く控除証明書の添付を不要とし、代わりに確定申告時に作成する控除明細書を記載して申告書と一緒に提出する形に変更するとのことです。
  10. 退職所得に関する源泉徴収票の提出義務化
    退職金の支給状況と退職所得に関する源泉税の課税状況把握強化のため、令和8年1月1日以降提出する源泉徴収票について現行は役員に対する退職金等のみとされている源泉徴収票の税務署への提出義務を全ての退職手当等に拡大するとされています。

     

資産課税の改正大綱

  1. 結婚・子育て資金贈与の非課税措置延長
    直系尊属から結婚・子育て資金の贈与を受けた結婚・子育て資金の一定額の贈与税非課税について令和8年(2026年)12月31日まで延長することとされています。
  2. 非上場株式及び個人事業資産の贈与に関する納税猶予の要件緩和
    事業承継を促進するため、令和7年1月1日以降行う贈与より、現行制度では後継者が贈与直前に引き続き3年以上承継対象の個人事業従事または承継法人の役員就任が必要とされているものを、贈与直前において個人事業従事または法人役員就任していればよいとするとされています。

     

法人課税の改正大綱

  1. 中小企業者等の法人税軽減税率の一部見直し
    中小企業者等に適用される法人税軽減税率について適用期間を令和9年(2027年)3月31日までに終了する事業年度までに延長する一方、比較的担税力があると思われる法人について公平な課税を行う観点から、所得金額が年10億円を超える事業年度については年800万円以下の部分の所得について適用される軽減税率を現行の15%から17%に引き上げるとされています。また、グループ通算制度適用法人についてはグループ内になる比較的小規模な企業への所得移転によるグループ全体での租税回避を防止するため、軽減税率適用から除外するとされています。
  2. 中小企業投資促進税制の適用拡大
    中小企業等が機械を購入した場合に購入額の30%の特別償却または7%の税額控除を受けられる中小企業投資促進税制について適用期間を令和9年(2027年)3月31日までに終了する事業年度までに延長し、農業の大規模化や法人化を促進するため適用除外となる大規模法人による50%以上保有法人のうち、農地所有的各法人を適用可能とするとされています。
  3. 非適格組織再編時の調整勘定(のれん)の算定方法明確化
    M&Aのうち、実質的に企業の所有者が変更になるとの理由で、買手において資産および負債を時価評価して受け入れる非適格組織再編の際に時価評価額と取得対価との差額である調整勘定について、資産と負債の価値が等しくなる場合や対価省略型の資産超過M&Aの場合における算定方法を明確化するとのことです。
  4. DX投資促進税制の廃止
    令和7年(2025年)3月31日までの投資が対象となっているデジタルトランスフォーメーション投資促進税制について、DX投資が進み一定の役割を終えたとの理由で延長されず令和7年(2025年)3月31日で廃止とのことです。

 

消費課税の改正大綱

  1. 免税方式の見直し
    免税制度を悪用して国外に持ち出さず国内に転売する消費税の課税逃れを防止するため、令和8年(2026年)11月1日以後行われる免税販売より、現行の免税店等での販売時に免税する方式から、販売から90日以内に税関長が確認した場合に消費税免税が認められ事後的に免税店が購入者に消費税相当額を返金するリファンド方式に変更するとのことです。
  2. 免税対象物品の見直し
    免税販売を促進して外貨獲得を後押しする一方、マネーロンダリング等の不正に利用されやすい金地金等について規制を強化するため、令和8年(2026年)11月1日以後行われる免税販売より、消耗品の購入上限(50万円)の撤廃や通常生活に用に供しない物品の要件廃止と対象外品個別指定とするとされています。

     

国際課税の改正大綱

  1. グローバル・ミニマム税制への対応
    税率引き下げ競争による低税率国への富の移転や国際的な租税回避を防止するためにアメリカのバイデン政権が最初に提唱したグローバル・ミニマム税制について令和8年(2026年)4月1日に開始する事業年度から国際最低課税額残余額に対して法人税を納税することとされています。対象法人は特定多国籍宜行グループに属する内国法人及び日本国内に恒久的施設を有する外国法人です。

     

防衛力強化財源確保の改正大綱

  1. 防衛特別法人税
    令和8年(2026年)4月1日以降開始される事業年度より法人税課税法人に対して基準法人税額(税額控除や外国税控除等控除前の法人税額)から500万円を控除した金額に4%をかけた金額を防衛特別法人税として、法人税等と同時に申告納税するものとされています。
  2. たばこ税
    防衛財源確保の観点から、課税標準となるたばこの本数換算方法を見直すとともに段階的にたばこ税額を引き上げるとのことです。なお、激変緩和と予見可能性確保のため令和9年(2027年)4月1日から令和11年(2029年)4月1日にかけて1年ごとに段階的に変更されるとのことです。

納税環境整備の改正大綱

  1. 電子帳簿等保存制度の見直し
    税務調査等により修正申告や期限後申告をしたり、更正や決定を受けたりしたとき、税務調査の際に調査官から申告の基になる会計帳簿の提示または提出を求められ、提示・提出を拒んだり、売上や収入の記載が著しく不十分な会計帳簿だった場合、追徴された法人税等の10%(記載不備の場合5%)の加算税を加算するとされていますが、令和9年(2027年)1月1日以降法定申告期限が到来する国税から、追徴対象から体裁または削除の記録が残る電子計算機処理システムを使用して作成された会計上帳簿だった場合を加算税の追徴対象から除外するとされています、
  2. eLTAX(地方税電子申告納税システム)の対象拡大
    地方税の税務手続電子化推進のため、賦課課税方式を取っている固定資産税、都市計画税、自動車税(軽自動車税)種別割について現在の紙面ではなくeLTAXを経由して納税通知書等を送付できるとされています。適用時期は、法人は令和9年(2027年)4月1日以降、個人は令和10年(2028年)4月1日以降送付する通知書からとされています。

 

今後の検討事項

 今後の検討事項として以下の事項が挙げられています。

  1. 少子高齢化進展に伴う世代間課税公平化に向けた年金課税の見直し
  2. デリバティブ取引に対する所得課税制度の一本化
  3. 暗号資産取引課税の環境整備
  4. 小規模企業等に対する課税と正規の簿記による青色申告の普及、人的控除のありからの見直し
  5. 原料用石油製品等の免税・還付措置の本則化
  6. 社会保険診療報酬に関する事業税実質非課税や医療法人に対する軽減税率の見直し
  7. 地方税収と事業環境変化を踏まえた、電気供給業及びガス供給業の収入による外形標準課税の見直し
  8. 住生活安定の確保・向上の促進を目的とした住宅政策との整合性を確保しつつ、地方税収の確保にも配慮した新築住宅固定資産税の減額措置の見直し


 今回の改正は、特に個人課税に関するものが多いようです。改正が確定しましたら必要な都度個別のテーマで記事アップ予定です。

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