【2024年12月版】北海道内の宿泊税の動向|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!
2024/12/20
目次
はじめに
当事務所では北海道観光を応援する観点から、今年度2回にわたり北海道内での宿泊税の動向について取り上げました。
(過去2回の記事リンク)
宿泊税と観光地振興を考える|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!
【2024年7月版】北海道における宿泊税の最新動向|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!
先般北海道議会で宿泊税条例が賛成多数で成立し北海道内で正式に宿泊税が導入される運びになりました。また、既に宿泊税の課税が行われている倶知安町とニセコ町については北海道との二重課税問題が生じ、今後導入予定の市町村においても同じように道と市町村での宿泊税二重課税について課題があります。また、札幌市でも宿泊税条例が可決成立しました。
そこで今回は、北海道における宿泊税の最新動向について取り上げ、道内市町村における宿泊税導入動向も含めてお話しします。
北海道宿泊税条例の要点
北海道宿泊税条例案が12月12日の北海道議会本会議で賛成多数で可決成立しました。地方税法第371条第2項に規定されている総務省同意を経て2026年(令和8年)4月めどに課税を開始するとされています。
税額は1人1泊当たりの金額で、2万円未満で100円、2万円以上5万円未満で200円、5万円以上で500円とされています。課税対象施設は旅館業法の許可を受けたホテル・旅館・簡易宿所または住宅宿泊事業法による届出をした民泊で、宿泊客から宿泊税相当額を徴収し3か月ごとに預かった宿泊税を道に納付します。
ただし、別途宿泊税を徴収している、または、導入予定の北海道内の市町村においては事務手続軽減のため例外措置があります。この措置については次の項目で説明します。
なお、学校行事に伴う宿泊(幼稚園や保育園、認定こども園、認可保育施設の宿泊行事を含む)については宿泊税が免除されます。
北海道HP|北海道宿泊税条例
導入済み市町村(倶知安町・ニセコ町)における二重課税問題
北海道内では2024年(令和6年)12月時点で、日本を代表するスノーリゾートとなっている倶知安町とニセコ町の2町が既に宿泊税を導入し町内で宿泊した者から宿泊税を徴収しています。これらの宿泊税に加えて北海道も宿泊税を課税するようになると、
- 宿泊者の納税負担増及び二重課税状態の発生
- 宿泊施設の事務負担増
の問題が生じることになります。
特に段階的定額制である北海道と異なり宿泊金額の2%とする定率制を導入している倶知安町は「定率制の町税と定額制の道税が混在すれば徴収事務を担う宿泊事業者の負担が増える」として北海道宿泊税について全道一律定額制とする北海道の当初方針に反対していました。また、ニセコ町は同じ段階的定額制であるものの、段階の違いや免税対象範囲の違い(認定こども園、認可保育施設など学校教育法に基づかない児童保育施設による行事が免税対象外)による宿泊施設側の混乱が生じるとして再協議を道に求める考えを示しています。
このうち、税額計算方式が異なる倶知安町への対策として定率制宿泊税を導入している市町村については北海道宿泊税を免除し、代わりに市町村は該当する市町村内での宿泊額に応じた北海道宿泊税相当額を北海道に交付するとしています(北海道宿泊税条例第23条)。また、段階的定額制を導入している市町村においては道と市町村両方の宿泊税の宿泊施設からの徴収業務を市町村が一括して行い、後日北海道宿泊税部分について市町村が道に払うとしています(北海道宿泊税条例第17条)。
定率制宿泊税導入市町村に対する北海道宿泊税免除については課税の公平性の観点から疑問の声もあります。
北海道、宿泊税で倶知安町を免税へ 道税相当分を納付で調整
宿泊税、ニセコ町も再協議要求 導入予定北海道に「実情考慮してない」
札幌市宿泊税条例の要点
北海道宿泊税条例の成立の前日12月11日には札幌市でも市議会本会議で宿泊税条例が賛成多数で可決成立しました。総務省同意を経て北海道と同時期の2026年(令和8年)4月ごろ課税を開始するとされています。ここでは札幌市宿泊税条例について要点を取り上げます。
税額は1人1泊当たりの金額で、5万円未満で200円、5万円以上で500円とされています。課税対象施設は旅館業法の許可を受けたホテル・旅館・簡易宿所または住宅宿泊事業法による届出をした民泊で、宿泊客から宿泊税相当額を徴収し翌月末に預かった宿泊税を市に納付します。北海道の場合と同様に学校行事に伴う宿泊(幼稚園や保育園、認定こども園、認可保育施設の宿泊行事を含む)については宿泊税が免除されます。
北海道宿泊税条例との違いは税額と納期ですが、倶知安町やニセコ町の事例とは異なり北海道宿泊税との事務の兼ね合いは大きく問題にはならないと思われます。ただし、総務省の審査次第では札幌市と北海道で導入時期にずれが生じ札幌市内の宿泊施設での徴税・納税事務に混乱が起こる可能性もあります。
いずれにしても宿泊税導入議論が自治体間で十分に調整されないまま進んだきらいがありますので、今後の導入時期や事務手続きの調整の動向には今後も注視する必要がありそうです。
札幌市HP|札幌市宿泊税条例
導入検討中の市町村における議論の動向
北海道の市町村ではこのほか12月17日に釧路市で1人1泊200円の宿泊税条例が市議会本会議で可決成立し、北海道と同時期の2026年(令和8年)4月ごろ課税を開始するとされています。
この他観光地を多く抱える函館市、旭川市、富良野市、千歳市、美瑛町などで宿泊税導入に向けた議論が行われています。今後は北海道宿泊税との兼ね合いも含めた導入議論がおこなわれることになりましょう。
北海道新聞記事|釧路市、宿泊税26年4月導入 条例案可決 一律定額200円で
おわりに
今回は北海道内の2024年(令和6年)12月における宿泊税の動向について取り上げました。
北海道に限らず全国的に観光客受け入れ態勢の強化のための財源確保とオーバーツーリズム対策のため宿泊税導入の動きが広がっています。ただ、北海道内の宿泊税導入の動きを見ると北海道と各市町村がそれぞれの都合で議論し連携していないため、税額がバラバラだったり宿泊施設側の事務負担がややこしくなったりしているように感じます。宿泊客、宿泊施設、行政、地域住民が共に観光地としての北海道を確立するためには、宿泊税本格導入後も北海道全体の視点と各地域の視点それぞれを取り入れて税制設計を適宜見直し改正していく必要があると旅好きの税理士の一人である筆者は思います。