ECサイト取引の消費税|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!
2024/08/02
目次
はじめに
ECサイトからの商品やサービス購入が当たり前の時代になっています。ところで、実店舗や対面での取引では消費税が含まれているかどうかについて気にしてもECサイトでの購入では気にしないことはありませんか?
ECサイトは日本国内だけでなく海外業者とも簡単にやり取りができる半面、消費税が課税される取引であるにもかかわらず取られていない、つまり、消費税から知らない間に逃れている可能性があるのです。
今回は、ECサイト特に海外との取引を中心に消費税の課税について取り上げます。
消費税がかかる取引
まず、消費税がかかる取引について確認します。消費税第4条(課税の対象)には以下の通り規定されています。
1 国内において事業者が行つた資産の譲渡等(中略)及び特定仕入れ(中略)には、この法律により、消費税を課する。
2 保税地域から引き取られる外国貨物には、この法律により、消費税を課する。
3 資産の譲渡等が国内において行われたかどうかの判定は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める場所が国内にあるかどうかにより行うものとする。ただし、第三号に掲げる場合において、同号に定める場所がないときは、当該資産の譲渡等は国内以外の地域で行われたものとする。
一 資産の譲渡又は貸付けである場合 当該譲渡又は貸付けが行われる時において当該資産が所在していた場所(以下略)
二 役務の提供である場合(次号に掲げる場合を除く。) 当該役務の提供が行われた場所(以下略)
三 電気通信利用役務の提供である場合 当該電気通信利用役務の提供を受ける者の住所若しくは居所(現在まで引き続いて一年以上居住する場所をいう。)又は本店若しくは主たる事務所の所在地
つまり、
- 日本国内で事業者が物の販売やサービスの提供をした場合
- 外国から物を輸入し港や空港にある保税倉庫などから日本国内の拠点に出荷する場合
に消費税がかかります。ですが、ECサイトでの取引の場合現実の場所でのやり取りを伴わないことがあるため、ECサイトで販売やサービスを提供している事業者が日本国内にある場合に消費税がかかることになります。
以上だけですとある問題が生じます。サービスを消費しているのは日本国内なのに事業者が日本国外にあることで課税されないことになり本来日本国内での消費行為に対して課税する消費税の目的が果たせなくなるのです。次項で詳しくお話します。
消費税がかかるといわれても…
日本国内での消費行為に対して課税する消費税の目的を果たすため、海外から輸入した物には保税倉庫棟から引き取った時点で関税などとともに消費税を納めることになっています。ところが、ECサイトによる配信サービスやクラウドサービスですと物のやり取りがなく税関を通ることなく国際間取引ができます。そこで、消費税法第4条第3項3号で「電気通信利用役務の提供である場合 当該電気通信利用役務の提供を受ける者の住所若しくは居所(現在まで引き続いて一年以上居住する場所をいう。)又は本店若しくは主たる事務所の所在地」にある場合に消費税を課税すると規定し、販売者側ではなく購入者側を規定することで本来の消費税課税目的に適うようになっています。
日本国内の販売者がECサイトを運営する場合ですと、販売業者は消費税の存在をほぼ知っていますし税務当局による調査も容易に行うことができます。一方、ECサイトの運営者が海外業者である場合、日本の消費税制度を知らないケースがありますし、対象地域が広く国家間の調査権の絡みで日本の税務当局による調査は容易ではありません。結果として海外ECサイトからの取引では本来消費税が取られるべきなのに取られない税金逃れができてしまう状況です。そこで、近年の税法改正でこうした海外ECサイト関連の消費税課税対策が行われています。次項以降詳しくお話します。
海外BtoBサイトでの消費税
日本国内の事業者であれば、消費税課税売上高が1000万円以上該当やインボイスを発行する等の理由で消費税課税事業者に該当すれば販売代金に消費税相当額を含めて請求されますし、海外の事業者であっても課税事業者として日本の国税庁に登録した場合は日本国内居住者への販売においては消費税相当額を含めて代金を徴収し納税することになります。
多くの人が知っているような比較的大規模な国際的プラットフォームやECサイト運営業者は日本の消費税課税事業者として登録しており日本の消費税込みで価格設定され代金が請求されます。一方、クラウドサービスの中には消費税課税事業者として登録していない海外配信業者も多くあります。日本を拠点とする事業者がこうした業者からクラウドサービスを利用した場合本来は消費税が課税されるにもかかわらず配信業者が課税事業者登録していないため消費税のやり取りがなされず、結果として消費税の課税逃れが生じることになります。
そこで、平成27年(2015年)の税制改正でリバースチャージ方式と呼ばれる消費税課税方式が導入されました。この方式は、
- 本来配信業者が日本国内の取引先から徴収し日本の税務当局に納税すべき消費税を、日本国内の取引先が直接納税する形にする一方、
- 本来配信業者に代金に含めて払うはずだった消費税を納税時に仕入税額控除として認めることで結果として対象取引に対する消費税納税をゼロサムにする
ものです。もう少し分かりやすく言うと本来海外配信業者が申告すべき消費税を、サービスを利用した国内事業者が代わりに申告する制度です。この制度は事業をしている者のみ関係する話ですので事業者向け海外クラウドサービスに限られ、動画や音楽配信など消費者向けの海外クラウドサービスは対象外です。また、売上高のうち消費税課税売上高が95%以上の場合や簡易課税制度を届け出ている事業者は当面適用不要です。
国税庁HP:国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係について
海外業者から購入の場合の消費税
事業者向け海外クラウドサービスについては、リバースチャージ方式による利用者が代わりに申告する形で消費税課税を図ることになっていますが、消費者向け海外クラウドサービスについては日本の消費税制度に知見のある課税事業者登録業者でない限り課税逃れのリスクが残ります。また、先述しましたが中小規模の海外配信業者ですと日本の消費税制度を知らないケースや知っていても登録しないケースがありこうした業者を把握し課税事業者登録を周知徹底することは税務当局にとっても大変な負担となります。
そこで、配信業者のサービスの多くがアプリストアやECモールといったプラットフォームを通して行われていることに着目しプラットフォーマーと呼ばれるプラットフォーム運営業者が配信業者に代わって消費税の徴収・申告・納税を行うプラットフォーム課税制度が令和6年(2024年)度税制改正で導入され、令和7年(2025年)4月1日以降の取引から適用されます。
この制度においては、プラットフォーマーが特定プラットフォーム事業者として所轄の税務署に届出を行います。そしてプラットフォーマーは該当する日本国内向け海外クラウドサービス取引について海外配信業者に代わって申告納税するとともに、プラットフォーマー名義でインボイス適格の領収書・請求書等を交付する必要があります。
一方、この制度が適用されると海外配信業者は日本国内向けサービスに関する消費税について徴収・申告・納税・インボイス適格の領収書・請求書等交付の必要が無くなります。なお、プラットフォーム課税は海外業者からの配信に限られますので、国内に拠点があるとされる事業者からの配信については従来通り事業者自身で消費税の徴収・申告・納税・インボイス交付が必要ですのでお間違いないようご注意ください。
おわりに
今回はECサイトでの消費税について海外取引を中心に取り上げました。ECサイトがあまり普及していなかった頃は国際取引が限られた業者だけで行われていたためこうした業者が国際取引に関する税の専門的な知識を理解し対応していればよかったのですが、インターネットの登場とECサイトの普及で国際取引が拡大し大衆化すると知識の理解と取引の捕捉が難しくなっています。世界的にECサイトでの消費課税の徴収困難が問題となっており、あの手この手で徴収し税収確保に努めているのが現状です。
新しいテクノロジーは便利な半面、課税についてはこれまでよりもより厳しくなっている傾向にあります。この記事を通して課税の動向について知り、結果として税金逃れとなるようなことがないようご対応ください。