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【2024年7月版】北海道における宿泊税の最新動向|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!

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2024/07/19

目次

    はじめに

    2月にこのブログで宿泊税について取り上げました。リンクはこちら

    このときは、

    • 宿泊税の制度
    • 宿泊税の使い道
    • 北海道内における宿泊税導入の動向
    • 宿泊税に代わる手段

    について取り上げました。このうち、宿泊税導入の動向は2月当時よりもだいぶ具体的になってきました。そこで今回は、北海道内における宿泊税の最新動向について取り上げ、持続的な北海道での観光客受入れの在り方を考えていきます。
     

    倶知安町における先例

    はじめにブログ更新時点で北海道で唯一宿泊税を導入済みの倶知安町における先例を取り上げます。もはや国際的なスノーリゾートとなっている倶知安では長期滞在観光客の急増によるインフラ整備や公共サービスの品質維持が早くから課題になっていました。そこで2019年(令和元年)11月から宿泊者に対して宿泊料金の2%を宿泊時に徴収することになりました。
    徴収した宿泊税は観光振興や環境維持に使われており、2024年(令和6年)度の宿泊税を財源とした事業においては2億6千万円の宿泊税が充当され、うち1億5980万円は地域DMO(観光地域づくり法人)の支援に充当されています。
    つまり、町民などから徴収する一般の税収だけでは賄うことが難しい観光振興財源を確保することが目的なのです。
    倶知安町HP:宿泊税を財源とした事業

     

    ニセコ町での導入

    導入時期と総務省の認可状況について 宿泊税は道内の他の自治体でも導入が検討されています。ここでは倶知安町と一体でスノーリゾートを形成しているニセコ町の状況について触れます。ニセコ町でも今年2024年11月から宿泊税の徴収が始まります。導入の目的は倶知安町とほぼ同じで、

    • 地域内交通の充実
    • 宿泊事業者の地球環境負荷低減を促進・支援
    • 観光協会組織強化、観光人材育成、観光のデジタル化推進
    • 景観・環境保全対策

    とあります。税率は倶知安町と異なり価格帯別定額制で、例えば1人1泊当たり5,001 円以上20,000円未満だと200円です。
    北海道内でも早くから国際的観光地として外国人観光客が多く来ているからこそ宿泊税の導入も早いというということになります。

     

    北海道の状況

    2月に宿泊税を取り上げた理由が北海道が全道の宿泊に対して宿泊税を徴収する条例案を北海道議会に提出したからです。そこでここでは、北海道議会におけるブログ更新時点までの状況を簡単に取り上げます。
    北海道議会に提出された条例案は宿泊税に関する有識者懇談会での議論を踏まえたもので、宿泊料金が2万円未満で100円、2万〜5万円未満は200円、5万円以上では500円を課税し修学旅行などの場合は免除するものです。2月の記事でも取り上げましたが、北海道における宿泊税は福岡県と福岡市または北九州市の場合と異なり市町村が課税している宿泊税との二重負担を回避するための軽減措置はなく、例えば倶知安町やニセコ町内での宿泊の場合道の宿泊税が導入されると現在の町による宿泊税に加えて上記額の道宿泊税を負担することになり宿泊税を導入していない市町村の宿泊よりもより高い宿泊税負担となります。
    高い宿泊税負担に利用者が納得するためには道の宿泊税の使い道によります。道が4月〜5月にかけて道内27カ所で開催した説明会では使途や導入時期に関する意見が続出し、道議会の委員会でも説明不足との指摘や課税免除に関する質問が出たようです。また、ニセコ町が5月に道に対し議論が不十分であると指摘する意見書を提出するなど合意形成には曲折が予想されるとのことです。こうした意見を受け、道は税収の使い道に関してはルールを設け、

    1. 道が定める方向性に合致する施策に関連があるもの
    2. 宿泊者の受ける効果に関連があるもの
    3. 自治体をまたぎ北海道全体に効果が広がるもの

    の3つに該当する取り組みに税収を充てるとしています。使途の透明性を担保するため、開始後も市町村や事業者と情報・意見交換できる仕組みを構築し、徴収を請け負う宿泊事業者や自治体向けに費用として交付金や補助金を用意することを想定しているようです。
    道がどのような方向性で観光政策を進めるのか継続的な説明が求められることでしょう。
    引用:日本経済新聞 宿泊税ラッシュの北海道、10自治体超も導入へ 26年メド

     

    他市町村の状況

    北海道内の他の観光客が多い市町村でも観光環境の整備や観光施策の財源として宿泊税を導入する動きが出ています。ニセコと並び後志地方を代表するスノーリゾートであるキロロリゾートがある赤井川村では2024年(令和6年)3月に宿泊税条例が成立し、1人1泊の宿泊料金が8千円~2万円未満の場合200円、2万円以上の場合500円の宿泊税を2025年(令和7年)4月から徴収するとのことです。ただし、修学旅行等の場合は免除となります。
    この他、札幌市、旭川市、函館市、釧路市、帯広市、北見市といったホテルが多い主要都市をはじめ、リゾート施設や宿泊施設が多く立地する北広島市、千歳市、小樽市、富良野市、美瑛町、音更町、留寿都村、占冠村が宿泊税導入を検討し条例案の取りまとめが進んでいます。また、この他の自治体にも宿泊税導入の動きがあります。
    温泉地がある市町村の場合、日帰り客であっても入浴すれば課税される入湯税による税収がありますが、宿泊税は温泉がない場合でも宿泊すれば課税対象となるため特にホテルやリゾート施設など温泉を備えていない施設が多い自治体にとっては有効な財源になるのでしょう。宿泊税が導入されると温泉宿泊施設での宿泊の場合、宿泊税と入湯税の二重課税が生じることにあり、税負担敬遠のため利用客が遠のくのではないかと懸念する温泉宿泊施設事業者もいるようです。実際に宿泊税導入を検討している札幌市や函館市、美瑛町、音更町などは古くからの温泉地があり二重課税による税負担への配慮も検討事項となりそうです。

     

    美瑛町の入場税

    今回の記事は宿泊税をテーマとしていますが、観光環境やインフラの整備という観点では沖縄県の4つの離島自治体が来島客に課税している環境協力税(美ら島税)や別荘所有者に課税する静岡県熱海市の別荘等所有税など宿泊客以外の観光客にも課税できる法定外目的税があります。
    今年に入り北海道でも美瑛町が人気スポット化し混雑と近隣道路の渋滞が問題となっている「青い池」に入場する人に課税する入場税を導入することを検討しているようです。2026年(令和8年)度の条例施行を目指すとしており、特定観光スポットの入場に対して課税するケースは全国初となるとのことです。
    宿泊税の導入が全国各地で検討されていますが、観光客が多いものの宿泊は近隣自治体に流れ宿泊客が必ずしも多くない自治体もあります。そうした自治体では観光環境整備やインフラ整備財源として観光目的に合わせた法定外の観光目的税の動きが出てくるかもしれません。
    引用:北海道新聞 青い池に「入場税」 北海道・美瑛町が検討 オーバーツーリズム対策

     

    おわりに

    今回は北海道内での宿泊税の動向について取り上げました。観光客が多く来ること自体は地域振興や魅力アップにつながり喜ばしいことですが、異常なまでの観光客で地元住民の日常生活を脅かしたり、観光に来たはいいもののがっかりして一時で終わったりしてはかえって地域の衰退と魅力ダウンにつながります。
    観光客にとっては来てよかった、地元住民にとっては暮らしが良くなった、地域や社会にとっては経済循環が良くなったと三方よしを目指すための観光環境やインフラ整備を自治体は取り組むのですが、それらの財源は地元関係者からの税収やふるさと納税などの寄付金、国からの交付金や補助金だけでは不十分なのが現状です。
    住民であり観光客にもなり得る我々はただ観光して楽しむだけではなく観光地に何かしらの負担をしてこそ楽しめるというマインドが必要になっているのでしょう。引き続き、観光に関してはブログで取り上げていきます。

     

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