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【令和6年2月リライト】電子領収書・請求書等の保存|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!

2024/02/16

目次

    はじめに

    電子帳簿保存法の改正により電子データである取引記録については令和4年(2022年)より電子保存が原則となりましたが、あまりに性急な改正であったため対応が追い付かないとの声が多くあがり、令和5年(2023年)までの2年間は宥恕(ゆうじょ)期間と言われる保存方法について柔軟に対応する旨の取扱いがありました。この宥恕期間が終了し令和6年(2024年)1月1日以降の取引より電子取引記録は原則通り電子データのままの保存が義務付けられました。今回の義務化は法人の決算期に関係なく1月1日以降の取引から適用されますので、事業年度の途中であっても次の事業年度を待つことなく適用されることにご注意ください。今回は具体的な対応について昨年アップした記事に最新情報や手直しをしておさらいします。今回の記事の内容は令和6年(2024年)2月現在の法令に依っています。
     

    電子保存義務化の概要

    電子保存に関する今回の取扱いは所得税及び法人税の証拠書類として保存する場合に適用され、消費税については印刷した書面で証拠保存しても差し支えありませんが実務上電子保存に統一するほうが合理的です。
    具体的に対象となる電子取引ですが、「取引情報の授受を電磁的方法により行う取引」(電子帳簿保存法第2条第5項)のデータを指し、いわゆるEDI取引、ネット取引、Eメールなど電子通信(添付ファイル方式含む)による情報授受取引、クラウドサービスによる取引情報授受取引、スマホアプリを通じた取引などが該当します。もし、同一の書面を電子と紙の両方で受け取った場合、紙の書面を正本とする場合は紙保存で差し支えありません。一方、電子取引のデータを一度紙に印刷しスキャニングして電子データ化したものは電子取引データともスキャン保存データとも両方認められませんのでご注意ください。
    なお、従業員が立替精算した経費が上記の取引に該当する場合(例:ネットでの出張に必要な交通機関・宿泊の手配、ネットショップでの備品立替購入)、対象の電子取引データを勤務先に電子データのまま提出し勤務先が決められた方法で保存するのが原則ですが、経費精算が紙ベースになっている実務に配慮し当面は従業員がPCやスマホに保存し勤務先は日付、取引先、取引金額を検索できるように保存状況を管理することも可能です。
    【電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係編)Q1、Q2、Q3、Q4、Q6、Q7、Q10、Q14、Q26】

     

    対象となる電子データの範囲

    電子保存の対象となる電子データについてもう少し詳しくお話します。電子データは領収書や請求書はもちろんのこと、契約書なども対象ですし、インターネットバンキング取引を記録した振込明細書の電子データも対象になります。
    なお、納税にダイレクト納付を利用した場合の受信通知はダイレクト納付処理実行に対する税務署による受信報告にすぎず入金領収とは関係ないため、電子保存対象には当たりません。ダイレクト納付による納税の証拠としては通帳や預金取引明細書が該当します。
    【電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係編)Q8、Q9】

     

    具体的な保存方法

    保存方法に関しては先述の通り一定の要件を満たす必要がありますが、データの形式に関しては特に決められた形式はありません。例えば、メールの本文に取引情報が載っている場合は電子メールファイルそのものを保存する方法でもPDF変換する方法でも構いせん。メールやクラウド請求システムに添付されているPDFに取引情報が載っている場合はPDFをダウンロードして保存します。スマホアプリやチャットに取引情報が載っている場合は取引情報の載った箇所をスクリーンショットした画像を保存します。
    また、EDIやクラウドサービスなどでXMLを使ってやり取りをしている場合、XMLのままでは文字の羅列となり不明瞭なため適切な保存と認められませんが、Excelやcsvなどに変換して一覧表化したものであれば、データの内容を改変しない限り合理的とされます。むろん、WordやExcelなどをPDF化したものも内容を改変しない限り認められます。
    なお、データストレージに保存・格納する場合、スキャン保存で使用しているデータストレージに格納しても構いません。
    【電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係編)Q32、Q32、Q34、Q36、Q38】

     

    保存要件

    電子取引データの保存は原則以下の方法で行うこととされています。

    1. 自社開発プログラムを用いて保存する場合、システム概要を記載した書類の備付け
    2. ディスプレイ等の備付け
    3. 検索機能の確保
    4. 以下のいずれかの措置を行うこと

     ・タイムスタンプを付与したうえでの授受
     ・受領後速やかなタイムスタンプの付与
     ・訂正削除履歴の残るシステムまたは訂正削除ができないシステムの使用
     ・訂正削除防止に関する事務処理規程の整備と備付け
    クラウドストレージなどデータ保管システムを使用して保存する必要はなく、通常のフォルダやドライブを使用しても構いませんが、タイムスタンプをつけるか、訂正削除防止に関する事務処理規程の整備と備付けのいずれかが必要となります。システムを使用しない場合例えば、

    1. 令和6年(2024年)1月29日に(株)熊谷工業から受領した100万円の請求書のファイル名として"20220129_(株)熊谷工業_1000000”とする
    2. "(株)熊谷工業"や"2022年1月分"など一定のグループ単位で作成したフォルダに格納する

    という方法や

    1.  ファイル名を連番の番号とする
    2.  ファイル番号順の金額、取引先、書類種別を記載した索引簿を作成する

    方法があります。電子帳簿やスキャン保存の場合と同様、クラウドサービスを使用して差し支えありませんし、バックアップ要件はありません。また、オンラインマニュアルやオンラインヘルプ機能にシステム概要書と同等の内容が盛り込まれていれば改めてシステム概要書を製本し備え付ける必要はありません。保存する電子データは必ずしも相手方とのやり取りに使ったデータでなくともよく合理的な方法で編集され、内容が変更されていない状態で保存された請求データベースであればデータベース保存に代えて差し支えないとされています。
    なお、システム整備や経理業務における電子保存への対応に負担が大きい事業者もいまだ多くいるため以下の軽減措置があります。

    1. 年間売上高5,000万円以下でかつ電子データを出力した書面を税務調査において提示できるようにしている者はデータ検索要件が不要
    2. 電子データ電子保存の一定要件を満たして保存することができないことに相当な理由があると認められ、かつ税務当局の質問調査に対してダウンロードまたは書面出力によって提出・提示の求めに応じることができる場合、一定要件を満たさない状態で電子保存することを認容

    また、災害等発生によりやむを得ず保存要件を満たせない状態にある場合は電子データさえ保存していれば差支えないことになっています(ただし、電子データの保存そのものは必要です)。

    【電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係編)Q15、Q16、Q23、Q24、Q27、Q41、Q60、Q61】
     

    PCを持っていない場合の保存方法

    事業を手掛けている方の中にはコスト抑制や操作スキルの問題からPCを持たず、スマートフォンで取引情報やり取りしている人も少なくありません。PCを持っていない場合どのように電子保存すればよいのでしょうか?
    スマートフォンでのやり取りでも先述の要件を満たして電子データを保存する必要があります。スマートフォンの場合データ保存アプリがまだ充実しておらず、一定のルールでファイル名とフォルダのルールを定め、ファイル管理簿を作成して容易に検索できるようにし、改ざん防止のための事務規程を整備するという方法になることが現状では可能な方法ではないでしょうか。スマホ版の電子帳簿保存法対応データストレージアプリが待たれるところです。
    なお、電子データ印刷のためのプリンターが手元にない場合はコンビニ等の有料プリントで印刷して差し支えないものとされています。
    【電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係編)Q18】

     

    副業をしている場合の電子取引書類保存の取扱い

    近年では、従業員として雇用され給与を受け取る業務を本業としつつ、ご自身で収入を得る副業を行っている方も少なくありません。副業においては受発注や請求などを行いますが、これらのやり取りが電子で行われることも決して珍しくありません。これら副業における受発注や金銭のやり取りに関する電子データも一定の方法で電子保存するのでしょうか?
    副業で収入を得ている場合令和2年度税制改正で副業収入が年間300万円以上になった場合請求書や領収書等の保存が義務化されました。電子帳簿保存法は必ずしも本業で事業を行っている場合に限定して適用されるものではないため、副業の場合でも請求書や領収書等を電子でやり取りしている場合は一定の方法で電子保存しなければなりません。副業を行っている方は自分には関係ないと思わず電子保存対応するようにしましょう。
    【電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係編)Q68】

     

    おわりに

    今回は電子取引データの電子保存について取り上げました。電子保存特にクラウドストレージを利用したデータ保存は以下のメリットがあります。

    1. 物理的な保管場所がなく遠隔地にいても確認することができる
    2. 万が一自身や火事など災害が発生した場合でも消失するリスクが大幅に減る
    3. 検索機能を利用して数多くあるデータを簡単に探せる

    年明けに発生した能登半島地震では確定申告の準備期間を迎える時期に建物の倒壊や火災で申告に必要な書類が焼失したケースもあったようです。PCやサーバに電子データを保存し、そのPCやサーバが焼失してしまうと同じように電子データが無くなり決算や確定申告が困難になります。電子データ保存には、クラウドストレージやクラウド会計ソフト付属のデータ保存機能の利用を是非ご検討ください。紙での保存に慣れている人にとって最初は使い勝手が悪いと感じるかもしれませんが、何度か使うと慣れてきて紙保存よりも楽だと感じると思います。


     

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