農業の会計・税務②
2021/08/27
農業にも数字による経営管理の重要性が増しています。また、税金も付き物です。農業に関する会計と税務について特徴的なことを解説します。
農業に関わる税金の詳細
農業にも税金がかかります。一方、農業は商工業と違うところもあり、農業特有の税金に関する制度があります。今回は、農業に係る税金のうち、主要なものを取り上げ、基本的な計算と共に農業特有の制度について触れていきます。
今回の記事をお読みいただくことで、税金に関する理解は勿論ですが政府や地方公共団体の農業政策の考え方も理解できるのではないかと考えております。
今回の記事をお読みいただくことで、税金に関する理解は勿論ですが政府や地方公共団体の農業政策の考え方も理解できるのではないかと考えております。
農業における税金の種類
農業を営んでいるとかかる税金について課税対象を明記して列挙します。
・所得税:個人のあらゆる所得に対して課税される国税、個人経営の場合農業所得にも課税
・法人税:法人所得に課税される国税、法人で農業経営している場合の農業所得にも課税
・都道府県民税、市町村民税:課税対象は所得税と同じで住民票及び農場や事務所のある全ての自治体から課税
・法人都道府県民税、法人市町村民税:課税対象は法人税と同じで農場や事務所のある全ての自治体から課税
・事業税:個人事業所得または法人所得などに対し都道府県が課税
・消費税:最終消費者の購入が課税対象となる国税、事業者が販売先から預かった消費税を納税
・地方消費税:課税対象は消費税と同じで住民票または本社のある都道府県から課税
・固定資産税:所有する固定資産に対し所在地の市町村から課税
・不動産取得税:土地や建物など不動産取得に対して土地や建物がある都道府県から課税
・相続税:死亡に伴い財産を相続したことに対し相続した者に課税される国税
・贈与税:財産を贈与したことに対し贈与を受けた者に課税される国税
・所得税:個人のあらゆる所得に対して課税される国税、個人経営の場合農業所得にも課税
・法人税:法人所得に課税される国税、法人で農業経営している場合の農業所得にも課税
・都道府県民税、市町村民税:課税対象は所得税と同じで住民票及び農場や事務所のある全ての自治体から課税
・法人都道府県民税、法人市町村民税:課税対象は法人税と同じで農場や事務所のある全ての自治体から課税
・事業税:個人事業所得または法人所得などに対し都道府県が課税
・消費税:最終消費者の購入が課税対象となる国税、事業者が販売先から預かった消費税を納税
・地方消費税:課税対象は消費税と同じで住民票または本社のある都道府県から課税
・固定資産税:所有する固定資産に対し所在地の市町村から課税
・不動産取得税:土地や建物など不動産取得に対して土地や建物がある都道府県から課税
・相続税:死亡に伴い財産を相続したことに対し相続した者に課税される国税
・贈与税:財産を贈与したことに対し贈与を受けた者に課税される国税
農業における所得税
一般に所得税は、(各種所得-所得控除)×税率-税額控除の算式で示されます。農業では各種所得のうち、農業経営で得た所得である「事業所得」に絞って説明します。
通常所得税は毎年2月から3月にかけて確定申告して年間の所得税を確定・納税します。ところが年に1回冬の納税ですと、特に稲作農家や畑作農家の場合農閑期で納税資金が不足し払うことが出来ない可能性があります。
そこで、年間農業所得が所得全体の70%以上で、かつ年間の農業所得のうち、9月1日以降得る所得が年間の70%を占める農家については、9月15日時点で確定した所得に基づき計算した税額が15万円以上だった場合その税額の2分の1をその年の10月15日までに一度納付します。この納税を予定納税と言い、納税額は税務署が計算します。確定申告の際は、確定した年間の税額から予定納税で納付した税金を差し引いて納税します。
この他、農業特有の税制として肉用牛売却所得特例があります。この税制は高度成長期に需要が高まった牛肉の流通を促進するため設けられたもので、必要な登録を受けた肉用牛の売却で売却額が100万円未満の場合所得税が免税される制度です。この税制はデントコーンなどの飼料作物を同時に栽培したり、稲作や畑作、果樹栽培の傍らで肉用牛を育成している場合に適用され、飼料作物の生産をしていない畜産・酪農専業の農家には適用されません。
通常所得税は毎年2月から3月にかけて確定申告して年間の所得税を確定・納税します。ところが年に1回冬の納税ですと、特に稲作農家や畑作農家の場合農閑期で納税資金が不足し払うことが出来ない可能性があります。
そこで、年間農業所得が所得全体の70%以上で、かつ年間の農業所得のうち、9月1日以降得る所得が年間の70%を占める農家については、9月15日時点で確定した所得に基づき計算した税額が15万円以上だった場合その税額の2分の1をその年の10月15日までに一度納付します。この納税を予定納税と言い、納税額は税務署が計算します。確定申告の際は、確定した年間の税額から予定納税で納付した税金を差し引いて納税します。
この他、農業特有の税制として肉用牛売却所得特例があります。この税制は高度成長期に需要が高まった牛肉の流通を促進するため設けられたもので、必要な登録を受けた肉用牛の売却で売却額が100万円未満の場合所得税が免税される制度です。この税制はデントコーンなどの飼料作物を同時に栽培したり、稲作や畑作、果樹栽培の傍らで肉用牛を育成している場合に適用され、飼料作物の生産をしていない畜産・酪農専業の農家には適用されません。
農業における消費税
先述の通り事業者は販売先から預かった消費税を毎年納付します。厳密には、預かった消費税から支払った消費税を差し引いた金額を引いて納付します。ですが、基準期間(原則2年前)の消費税がかかる売上が1000万円未満の場合、納付義務が免除される免税事業者となります。また、基準期間の消費税がかかる売上が年間5000万円未満の場合、支払った消費税について実額ではなく、預かった消費税に一定の割合をかけて簡便的に計算する簡易課税制度を使うことが出来ます。簡易課税制度で使う割合は、飲食品用作物の売上に対しては80%、花卉や飼料用作物、繁殖用生物など最終的に飲食品にならない作物の売上に対しては70%です。
また、2019年(令和元年)10月1日から複数税率が導入されていますが、販売品のうち、飲食品用作物は軽減税率8%、最終的に飲食品にならない作物は標準税率10%が適用されます。一方、仕入・経費は飲食品として販売されているもの及び戸配の定期購読新聞は軽減税率8%、それ以外の仕入れ・経費は標準税率10%が適用されます。
なお、人件費や税金、農協賦課金など物の譲渡やサービスの対価に該当しない不課税取引及び、利息や小作料、土地売買、保険・共済掛金など政策上非課税とされている取引については消費税がかかりません。
また、2019年(令和元年)10月1日から複数税率が導入されていますが、販売品のうち、飲食品用作物は軽減税率8%、最終的に飲食品にならない作物は標準税率10%が適用されます。一方、仕入・経費は飲食品として販売されているもの及び戸配の定期購読新聞は軽減税率8%、それ以外の仕入れ・経費は標準税率10%が適用されます。
なお、人件費や税金、農協賦課金など物の譲渡やサービスの対価に該当しない不課税取引及び、利息や小作料、土地売買、保険・共済掛金など政策上非課税とされている取引については消費税がかかりません。
農業における相続税・贈与税
相続税は相続のあった日から10ヶ月以内に申告・納税します。また、贈与税は1年間の贈与について2月~3月の確定申告の時期に申告・納税します。相続税には3000万円+600万円×法定相続人の数、贈与税には110万円の基礎控除があり相続・贈与があっても必ずしも申告義務が生じるわけではありません。相続税及び贈与税の一般的な内容に関しては、11回にわたる相続税解説シリーズで解説しておりますので、そちらをご参照頂きここでは農家の相続・贈与に欠かせない農地に関してお話します。
農地の財産評価は農地法及び都市計画法に従い以下の区分ごとに評価します。
・純農地:固定資産評価額×地勢、土性、水利等の状況の類似する地域ごとに国税局長の定める倍率
・中間農地:固定資産評価額×地価事情の類似する地域ごとに国税局長の定める倍率
・市街地農地:(宅地だった場合の1㎡あたり評価額ー国税局長が定める1㎡あたり整地費用)×地籍
・市街地周辺農地:市街地農地評価額×80%
なお、三大都市圏を中心に平成4年(1992年)に指定された生産緑地(令和4年(2022年)まで営農義務のある市街化区域内の農地)については、市街地農地の評価額から一定の割合を控除して評価します。
一般に農地の評価額は高額で上記の基礎控除では引ききれず課税が生じることが多く、農業承継の障害要因になりえます。そこで、農業経営を継続するなどを条件に農地の贈与・相続に関する贈与税または相続税の納税を猶予する特例があります。贈与税の猶予は前経営者の死亡による相続の発生に伴い納税免除され、相続税の猶予は農地相続人の死亡または別の農業後継者への一括贈与に伴い納税免除されます。一方、離農や推定相続人からの廃除など農業承継が行われないとされる一定の事由が生じた場合は、贈与または相続時点の税額及び猶予期間に対応する利子税を納付する必要がります。
農地の財産評価は農地法及び都市計画法に従い以下の区分ごとに評価します。
・純農地:固定資産評価額×地勢、土性、水利等の状況の類似する地域ごとに国税局長の定める倍率
・中間農地:固定資産評価額×地価事情の類似する地域ごとに国税局長の定める倍率
・市街地農地:(宅地だった場合の1㎡あたり評価額ー国税局長が定める1㎡あたり整地費用)×地籍
・市街地周辺農地:市街地農地評価額×80%
なお、三大都市圏を中心に平成4年(1992年)に指定された生産緑地(令和4年(2022年)まで営農義務のある市街化区域内の農地)については、市街地農地の評価額から一定の割合を控除して評価します。
一般に農地の評価額は高額で上記の基礎控除では引ききれず課税が生じることが多く、農業承継の障害要因になりえます。そこで、農業経営を継続するなどを条件に農地の贈与・相続に関する贈与税または相続税の納税を猶予する特例があります。贈与税の猶予は前経営者の死亡による相続の発生に伴い納税免除され、相続税の猶予は農地相続人の死亡または別の農業後継者への一括贈与に伴い納税免除されます。一方、離農や推定相続人からの廃除など農業承継が行われないとされる一定の事由が生じた場合は、贈与または相続時点の税額及び猶予期間に対応する利子税を納付する必要がります。
農業における固定資産税
一般的に固定資産税は不動産、機械、備品など長期間使用する資産に課税されます。ただし、1組10万円未満の資産、耐用年数1年以内の資産及び別の税金がかかる自動車には課税されません。
固定資産税は固定資産がある市町村(東京23区では都)が課税します。納税額は各市町村から通知が届く「賦課課税」ですが、不動産以外の固定資産は毎年1月に1月1日現在の状況を所在する市町村に申告します。
農業に特有の話では、農地の評価区分が先述の相続税・贈与税での区分とは異なり以下の通りです。
・一般農地(市街化区域外の農地):農地評価
・一般市街化区域農地:宅地評価
・生産緑地地区に指定された農地:農地評価
・三大都市圏の特定市街化区域内の農地:宅地評価
ここでの農地評価とは農地利用目的での売買実例価格を基にした評価をいい、宅地評価とは近隣の宅地売買実例をもとにした評価をいいます。農地のほうが宅地と比較し評価額が低く、税額が安くなる傾向があります。特定市街化区域内の農地以外の農地では負担平準化のため固定資産税計算に当たって特例計算方法があります。詳しくはリンクをご参照ください。
この他、農業用固定資産で特筆すべきことはトラクターやコンバインなど乗用型の農業機械や、牛馬、果樹等の生物(観賞用は除く)には固定資産税が課税されないことです。
固定資産税は固定資産がある市町村(東京23区では都)が課税します。納税額は各市町村から通知が届く「賦課課税」ですが、不動産以外の固定資産は毎年1月に1月1日現在の状況を所在する市町村に申告します。
農業に特有の話では、農地の評価区分が先述の相続税・贈与税での区分とは異なり以下の通りです。
・一般農地(市街化区域外の農地):農地評価
・一般市街化区域農地:宅地評価
・生産緑地地区に指定された農地:農地評価
・三大都市圏の特定市街化区域内の農地:宅地評価
ここでの農地評価とは農地利用目的での売買実例価格を基にした評価をいい、宅地評価とは近隣の宅地売買実例をもとにした評価をいいます。農地のほうが宅地と比較し評価額が低く、税額が安くなる傾向があります。特定市街化区域内の農地以外の農地では負担平準化のため固定資産税計算に当たって特例計算方法があります。詳しくはリンクをご参照ください。
この他、農業用固定資産で特筆すべきことはトラクターやコンバインなど乗用型の農業機械や、牛馬、果樹等の生物(観賞用は除く)には固定資産税が課税されないことです。
農業に関わるその他の税金
ここでは、比較的説明する内容が少ない税金をいくつか取り上げます。
①法人税
法人版の所得税です。個人の所得税と異なり予定納税は会計年度半年経過時に前年度納税額の半額または半年間の所得実績に基づいて「中間納付」の名目で行います(ただし、前年度納税額÷会計年度月数×6が10万円未満の場合不要です)。
②個人住民税(都道府県民税・市町村民税)
税額は市町村(東京23区では特別区)が前年度所得を基に計算し、納税額及び納付方法が各個人に通知されます。所得税と異なる点として所得に関係なく一定額課税される均等割がある点が挙げられます。
③法人住民税(都道府県民税・市町村民税)
個人住民税と同じく均等割があります。一方、税額は法人税と同じように申告書を作成し各自治体に申告して納税する点が個人住民税と異なります。理由は複数の自治体に事業所がある場合、事業所がある自治体全てから課税されるためです。
④不動産取得税
土地や建物の取得に伴って課税され、売買に限らず、贈与や等価交換、建物の建築でもかかります。ただし、相続の場合は原則非課税です。通常、土地・住宅には評価額の3%、住宅以外の建物には評価額の4%課税されますが、農用地利用集積計画に伴う農地取得の場合は3分の1減免があります。
⑤軽油引取税
先述の一覧では取り上げませんでしたが、農業者にとって特筆すべきことがあるため挙げさせていただきます。軽油引取税は軽油を給油所から購入した際に購入者に課税される都道府県民税です。軽油引取税には免税制度があり、農業機械用の軽油についても免税の対象になっています。
①法人税
法人版の所得税です。個人の所得税と異なり予定納税は会計年度半年経過時に前年度納税額の半額または半年間の所得実績に基づいて「中間納付」の名目で行います(ただし、前年度納税額÷会計年度月数×6が10万円未満の場合不要です)。
②個人住民税(都道府県民税・市町村民税)
税額は市町村(東京23区では特別区)が前年度所得を基に計算し、納税額及び納付方法が各個人に通知されます。所得税と異なる点として所得に関係なく一定額課税される均等割がある点が挙げられます。
③法人住民税(都道府県民税・市町村民税)
個人住民税と同じく均等割があります。一方、税額は法人税と同じように申告書を作成し各自治体に申告して納税する点が個人住民税と異なります。理由は複数の自治体に事業所がある場合、事業所がある自治体全てから課税されるためです。
④不動産取得税
土地や建物の取得に伴って課税され、売買に限らず、贈与や等価交換、建物の建築でもかかります。ただし、相続の場合は原則非課税です。通常、土地・住宅には評価額の3%、住宅以外の建物には評価額の4%課税されますが、農用地利用集積計画に伴う農地取得の場合は3分の1減免があります。
⑤軽油引取税
先述の一覧では取り上げませんでしたが、農業者にとって特筆すべきことがあるため挙げさせていただきます。軽油引取税は軽油を給油所から購入した際に購入者に課税される都道府県民税です。軽油引取税には免税制度があり、農業機械用の軽油についても免税の対象になっています。
おわりに
今回は農業に関する税金について農業特有の制度を中心にお話ししました。税金は、いつ、どの機関から、誰に、何に対して課税されるかを理解し、どのように納付するのかという4W1Hを押さえておけば具体的な計算方法については後で確認することで構いません。まずはどのような税金がかかっているのか理解していただくことが重要です。
農業にも税金がつきものですが、政策上農業者に特化して優遇されている制度も多くあります。優遇制度もまずどのような優遇なのかざっと理解することが重要です。
今回の記事がお役に立てば幸いです。
農業にも税金がつきものですが、政策上農業者に特化して優遇されている制度も多くあります。優遇制度もまずどのような優遇なのかざっと理解することが重要です。
今回の記事がお役に立てば幸いです。