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インボイス解説シリーズ(令和6年4月追加分)③|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!

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2024/05/10

目次

    はじめに

    2023年(令和5年)10月1日より開始されたインボイス制度が導入されて半年がたちました。インボイス制度開始後インボイス実務が動くにつれて新たな不明点や疑問点が生じています。今回はこうした不明点や疑問点に答えている国税庁のインボイスQ&Aの2024年(令和6年)4月改訂版で追加された項目を取り上げます。今回の改訂では実に23の項目が追加されています。ボリュームが多いため今回は3回に分けてアップしています。今回は特にインボイス制度における特例が中心です。2回目以前は以下のリンクをご覧ください。
    国税庁Q&Aの解説令和6年4月追加分その1
    国税庁Q&Aの解説令和6年4月追加分その2

    なお、過去にインボイスQ&Aに取り上げられた項目のうち特に多くの事業者に影響があるものについて過去に解説しておりますので、以下にリンクを貼っておきます。
    第5回 国税庁Q&Aの解説その1
    第6回 国税庁Q&Aの解説その2
    第7回 国税庁Q&Aの解説その3
    第8回 国税庁Q&Aの解説その4
    国税庁Q&Aの解説令和5年税制改正編
    国税庁Q&Aの解説令和5年10月追加分

     

    返信用封筒に貼った切手の仕入税額控除

    郵便料金については切手の貼られた郵便物をポストに投函した場合、インボイスなしでも仕入税額控除を受けることができる扱いがあります。では、同封した返信用封筒に切手を貼った場合、返信用封筒に貼った切手分の郵便料金についてもインボイスなしで仕入税額控除を受けることは可能なのでしょうか?
    今回のQ&Aによりますと、返信する相手方がそのままポストに投函して返送するのであれば、当初切手を貼り送付した側の郵便料金として帳簿に必要事項を記帳すればインボイスなしで仕入税額控除を受けることができるとのことです。
    (インボイスQ&A106-2)

     

    実費精算の出張旅費の仕入税額控除

    社員の出張旅費については通常必要な範囲内であれば事業者の必要経費とされ賞与支給として認定されないほか、出張旅費に対するインボイスなしで仕入税額控除を受けることができることになっています。では、インボイス適格の領収書等が発行されるケースがある実費精算方式でもインボイスは不要なのでしょうか?
    今回のQ&Aによりますと、社員の出張旅費について「通常必要な範囲内であれば」インボイス不要とされていることから、実費精算でインボイス適格の領収書等があったとしても帳簿に必要事項を記帳すればインボイスなしで仕入税額控除を受けることができるとのことです。インボイス適格の領収書等を入手している場合に提出を社員に依頼して保存しても構いませんし、宛名は前回ご紹介の通り明らかに社員であることがわかるのであれば社員名義でも構いません。
    もちろん、通常必要な範囲を超える場合は超える部分について当該社員への賞与とみなされますので、インボイスのあるなしに関わらず消費税の対象外となり仕入税額控除は受けられませんのでその点はご留意ください。
    (インボイスQ&A107-2)

     

    派遣社員や内定者など会社に所属していない人への出張旅費

    近年、直接企業が雇用せず派遣会社から派遣される形で企業の業務に従事し出張するケースがあります。また、リクルート強化の一環で内定者や採用面接者に企業までの旅費を負担するケースがあります。この場合、正規の社員であれば適用される出張旅費のインボイス不要特例が適用されるかどうかが問題になります。
    適用されるケースは、企業の業務に携わり企業が直接負担するケースになるようです。具体的には以下の通りです。

    • 適用されるケース:派遣社員の出張旅費を派遣先企業が直接精算する場合または派遣元が立替精算して実費を派遣先と派遣元でやり取りする場合、既に内定通知が出て入社誓約書等を交わし事実上入社が内定している場合
    • 適用されないケース:派遣社員の旅費を派遣費用の一部として派遣元に支払っている場合、採用面接や選考中で内定していない場合

    適用されないケースのうち、派遣社員の旅費を派遣費用の一部として派遣元に支払っている場合は派遣費用の請求書等がインボイス適格である必要があります。また、採用面接や選考中の人に旅費を支払う場合は、1回の購入金額が3万円未満の電車代やバス代を除き会社名義でのインボイス適格領収書等が必要になります。
    (インボイスQ&A107-3)

     

    タクシーチケットを使った場合のインボイス対応

    接待や饗応、出張では主催者が招待者にタクシーチケットを渡し主催者負担で移動のためのタクシーを手配することがあります。タクシーの多くはインボイス適格の領収書を発行することが可能ですが、招待者がタクシーに乗り主催者が購入したタクシーチケットでタクシー代を決済する場合、領収書が主催者に送付されることは稀で主催者が消費税の仕入税額控除を受けるために必要なインボイスを受取ることができない事態が生じます。
    そこで、Q&Aではタクシーチケットの利用記録としてクレジットカード利用明細を保存し、タクシー事業者のHPなどで利用したタクシー事業者が適格請求書発行事業者であることがわかる場合は、タクシー車内で発行された領収書がなくても仕入税額控除を受けることができるとされています。
    なお、タクシー事業者が適格請求書発行事業者でないとわかった場合あるいは判明しない場合、2029年(令和11年)9月30日までの利用までは経過措置を適用し消費税相当額の80%(2026年(令和8年)10月1日から50%)を控除することになります。
    (インボイスQ&A108-2)

     

    自販機特例・回収特例の3万円未満の判定方法

    3万円未満である自動販売機(ATMを含む)での購入や使用時に回収される入場券の購入についてはインボイスなしで仕入税額控除を受けることができます。ここで問題になるのがどの単位で3万円未満なのかどうかを判定するのかです。
    電車・バス・船代の特例と同様、1回の購入金額で判断します。例えば、自動販売機の場合お茶のペットボトルを2本購入した場合、自動販売機は1本づつ購入する形になっていることから1本の購入を1回の購入とみなして判定します。一方、入場券を4枚購入する場合はまとめ買いできることから1回の使用枚数で1回の購入とみなして判定します。
    (インボイスQ&A110-2)

     

    登録番号のない発行事業者からの請求書等の取扱い

    インボイス制度が開始されてから適格請求書発行事業者にとして登録されているかどうかにかかわらず、登録番号入っていない請求書等を受取るケースがあるのではないでしょうか?この場合、インボイス非適格となるため消費税額全額について仕入税額控除を受けることはできませんが、経過措置により2029年(令和11年)9月30日までの取引については消費税額のうち80%ないし50%を控除することができます。この経過措置は発行した業者が適格請求書発行事業者であるかどうかは関係なく、適格請求書発行事業者として登録されているにもかかわらず登録番号の記載がない請求書等を受取った場合にも適用可能です。
    もちろん、登録番号を入れて請求書等を再発行するよう依頼し登録番号の入ったインボイス適格の請求書等を受取れば消費税額全額の仕入税額控除を受けることができます。また、2事業年度前の課税売上高が1億円未満または当事業年度の開始6か月間の課税売上高が5000万円未満である事業者については、2029年(令和11年)9月30日までの取引で請求書等の合計金額が1万円未満であればインボイス非適格であっても消費税額全額の仕入税額控除を受けることができます。
    (インボイスQ&A113-2)

     

    消費税課税事業者選択届出書と2割特例の関係

    輸出入が多く消費税課税事業者になったほうが還付金が多く入ることから任意で課税事業者になることがあります。基準期間(原則2事業年度前)の消費税課税売上高が1000万円を超えることで消費税課税事業者となる場合は適格請求書発行事業者になることで半強制的に課税事業者になった事業者が受けられる2割特例(簡単に言うと売上にかかる消費税の20%だけ納税すればよい特例です)を受けることができず、原則通りあるいは下記で紹介する簡易課税制度を適用して納税額を計算し納付することになります。
    任意で課税事業者になった場合に2割特例の対象になるかどうかが問題になりますが、対象になります。ただし、インボイス制度開始前の2023年(令和5年)9月30日以前を含む事業年度に任意で課税事業者になっている場合、その年度については2割特例が適用されません。この場合、2割特例の適用を受けたい場合は事業年度終了日までに課税事業者不選択届出書を提出すれば適用を受けることができます。
    また、当初は任意で課税事業者になった場合でも基準期間(原則2事業年度前)の消費税課税売上高が1000万円を超えた事業年度は強制的な課税事業者となり2割特例を適用することができませんのでご注意ください。
    (インボイスQ&A116-2)

     

    簡易課税制度と2割特例の関係

    消費税の納税額の計算方法としては、

    • 売上にかかった消費税-仕入・経費にかかった消費税(原則的な方法)
    • 売上にかかった消費税×(1-業種別控除率)(簡易課税制度、基準期間(原則2事業年度前)の消費税課税売上高が5000万円以下の場合)
    • 売上にかかった消費税×20%(2割特例、基準期間の消費税課税売上高が1000万円以下の場合)

    の3種類が存在します。これまで免税事業者だったもののインボイス制度開始に伴って新たに消費税課税事業者になった事業者は3種類の方法が選択でき、簡易課税制度の業種別控除率が90%と2割特例を適用するよりも納税額が少なくなる卸売業に該当する場合は簡易課税制度を適用するほうが有利になります。
    簡易課税制度適用のためには適用を受ける年度の開始前日までに簡易課税制度選択届出書を所轄の税務署に提出する必要がありますが、インボイス制度対応のため課税事業者になった場合に限っては課税事業者になった年度の終了日までに提出すればよいことになっていますので、商品を仕入れて別の業者に販売しているビジネスをしている方は是非ご検討ください。2割特例については特に届出の必要はありません。また、簡易課税制度の届出をしている場合でも2割特例適用対象事業者である限り2割特例を選択できます。
    ただし、簡易課税制度は一度届け出をすると最低2年間適用が強制されます。例えば2、3年先を見据えて商品を大量に仕入れて当分在庫にしておくような計画がある場合は簡易課税制度の届出や2割特例の適用をせず、原則通りの方法で計算したほうが有利な場合もありますのでその点を念頭に置いてご検討ください。
    (インボイスQ&A117-2)

     

    おわりに

    今回まで3回にわたり国税庁が公表した令和6年4月改訂版インボイスQ&Aで新たに登場したQ&Aを取り上げました。インボイス制度開始に伴って実務が動くにつれて生じた疑問点が多く出てきているようです。今回の記事では特にインボイス保存不要特例や消費税納税額計算に関するQ&Aを中心に取り上げましたが、インボイスを入手するのが実務上困難な事例が多くあり、理屈通りにインボイス制度の運用がうまく行かないことがわかります。
    当事務所ではインボイス制度への対応について相談に乗っておりますので、今回の記事だけで疑問が解決しない場合は遠慮なくお問い合わせフォームよりお問い合わせください。

     

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