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インボイス解説シリーズ(令和6年4月追加分)②|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!

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2024/05/02

目次

    はじめに

    2023年(令和5年)10月1日より開始されたインボイス制度が導入されて半年がたちました。インボイス制度開始後インボイス実務が動くにつれて新たな不明点や疑問点が生じています。今回はこうした不明点や疑問点に答えている国税庁のインボイスQ&Aの2024年(令和6年)4月改訂版で追加された項目を取り上げます。今回の改訂では実に23の項目が追加されています。ボリュームが多いため今回は3回に分けてアップしています。今回は特にインボイスの入手及び保存に対する項目が中心です。1回目、3回目は以下のリンクをご覧ください。
    国税庁Q&Aの解説令和6年4月追加分その1
    国税庁Q&Aの解説令和6年4月追加分その3

    なお、過去にインボイスQ&Aに取り上げられた項目のうち特に多くの事業者に影響があるものについて過去に解説しておりますので、以下にリンクを貼っておきます。
    第5回 国税庁Q&Aの解説その1
    第6回 国税庁Q&Aの解説その2
    第7回 国税庁Q&Aの解説その3
    第8回 国税庁Q&Aの解説その4
    国税庁Q&Aの解説令和5年税制改正編
    国税庁Q&Aの解説令和5年10月追加分

     

    複数取引をまとめたインボイスを発行できるか?

    複数の拠点で納品している場合や月に何度も納品する場合には、発行者側受領者側双方の事務効率化のため、全拠点の1か月分をまとめた請求書を取引先の購買部門や経理部門に交付するケースがあります。インボイス制度の建前として一つのインボイス適格文書ごとに消費税額を算定し記載するルールがあり、各取引ごとに消費税額を算定する場合各拠点ごとまたは1取引ごとにインボイス適格の請求書や納品書を交付しなければならないのでしょうか?
    結論としては、複数の取引をまとめた請求書に各取引ごとに算定した消費税額を正しく集計してさえいればいちいち取引ごとに請求書をインボイスとして交付しなくても、まとめた請求書をインボイスとして取り扱うことができます。書類交付枚数増加による事務煩雑化は避けられます。
    (インボイスQ&A66)

     

    月の途中で登録事業者になった場合のインボイス発行

    適格請求書発行事業者登録の時期の関係で月の途中から登録事業者となることがありますが、例えば月次取引になっている場合登録日前と登録日以後で請求書等を分け、登録日以後の請求書等をインボイス対応しなければならないのでしょうか?
    月次取引の場合登録日前と登録日以後で金額を分割して請求書を作成するのではなく、登録日前の取引であったとしても登録月の取引に関する請求書は全てインボイス対応することになります。もし、登録事業者になる前に発行した前金の請求書があり取引実施前に適格請求書発行事業者登録が済んだときは、登録後改めてインボイス対応した前金請求書を再発行する必要はなく登録番号など追加情報の通知をすれば問題ないとされています。
    なお月途中での登録を避けるため、登録申請にあたっては申請書の登録希望日欄に月初の日付を入れることをお勧めします。登録希望可能日は申請日から15日経過以降の日付とされているため、余裕をもって登録希望日の1か月前には申請するようにしましょう。
    (インボイスQ&A77-2)

     

    従業員名義の立替経費領収書のインボイスは有効か?

    インボイス適格とするためには実際に負担する事業者の宛名が必要ですが、従業員が経費を立替える場合従業員本人の宛名の領収書等を持参して経費精算を行うことがあります。この場合、宛名が従業員本人でも精算する事業者のインボイスとすることはできるのでしょうか?
    従業員名簿などで事業者に所属していることがわかる場合は宛名が従業員本人の領収書等であっても事業者のインボイスとして保存して差し支えないとされています。ですので、従業員の一覧が整備されていない場合は労使関係保護のためにも整備するようにしましょう。なお、従業員の一覧をすぐに整備できない場合は従業員との立替金精算書を作成し従業員本人宛の領収書等と保存することになります。
    (インボイスQ&AQ94-2)

     

    セミナー参加費に関するインボイス

    セミナー参加費については原則として主催者がセミナーというサービスを提供していることからセミナー主催者がインボイス適格の領収書や請求書を参加者に交付することになります。
    ただし、講師料や会場費、資料代などを参加者が共同で負担し主催者は取りまとめる立場であるとの契約がある場合、主催者はセミナー経費を立て替えるに過ぎないため、主催者自身がインボイスを発行するのではなく講師などが交付したインボイスを保存し、参加者にはインボイスのコピーと共に立替金精算書を交付することになります。
    なお、上記の立替金の取扱いはセミナー主催者に法人格がないなどの理由で適格請求書発行事業者でない場合にも応用することができます。
    (インボイスQ&A94-3)

     

    社食代会社負担分の仕入税額控除

    近年では社員食堂を給食業者などが運営し、従業員に食事代の全部または一部を会社が助成するケースがあります。この場合、会社が従業員に助成する食事代について給与支給に該当せず仕入税額控除の対象とできるかどうかが問題になります。
    食堂運営業者との間の契約で会社助成分についてインボイス適格の請求書を受領し保存している場合、給与認定されるかどうかに関係なく仕入税額控除の適用を受けることができます。ただし、給与天引きや別途経費精算などの形で従業員から本人負担分を一旦会社が預り、会社が会社負担分と合わせて食堂運営業者に食事代を支払っている場合は、請求書に記載されている消費税のうち会社負担分のみ仕入税額控除が可能となりますのでご注意ください。
    (インボイスQ&A94-4)

     

    電子データ形式インボイスの保存

    インボイス制度導入とともに近年経理事務でインパクトの大きい制度として電子帳簿保存法改正に伴う電子証憑の電子保存義務化です。この義務化で2024年(令和6年)1月1日以降の取引については電子データ形式の請求書等について所定の方法で電子データをダウンロードし保存する必要があります。この義務化は消費税の仕入税額控除の適用を受ける場合にも適用されるのでしょうか?
    仕入税額控除適用にあたっても電子データのインボイス適格請求書等は電子データそのものが原本となり、紙に印刷したものの保管のみではインボイスの保存要件を満たしません。ただし、法人税や所得税の扱いとは異なり必ずしもダウンロードして保存しなくてもECサイトのマイページなどからすぐにインボイスのデータを閲覧できる状態であれば保存しているものとみなされるようです。
    (インボイスQ&A102-2)

     

    金融機関手数料のインボイス保存方法

    銀行など金融機関での取引でかかる手数料は消費税課税取引に該当し、手数料の消費税について仕入税額控除を受ける場合原則としてインボイス適格の取引明細書等の保存が必要です。ATM取引については自販機特例でインボイスなしでも会計帳簿に必要事項を記載すれば仕入税額控除を受けることができますが、窓口やネットバンキングでの取引ではどのようにすればよいのでしょうか?
    窓口やネットバンキングでの取引が多頻度で取引ごとにいちいち取引ごとにインボイスを入手することが困難なケースが多いため、銀行などが適格請求書発行事業者登録を継続することを前提に、一取引だけサンプルでインボイス適格の明細書等を受領し他の取引については通帳記録や利用明細書などを証拠として保存することで仕入税額控除を受けることができるとされています。
    なお、ネットバンキングの利用者ページにおいてインボイス適格の月次手数料一覧を掲載する金融機関がありますが、この一覧については前項目のインボイスの電子データ保存の取扱いに従いダウンロードして所定の方法で保存しなくてもログインできれば利用者ページで手数料一覧表を閲覧できる状態であれば適切に保存されているものとされます。
    (インボイスQ&A103-2)

     

    国外業者からECサイトで買った場合の請求書等の保存

    国外業者については日本の消費税制度に対応していないことが多くありますが、国外業者からECサイトで物品やサービスを購入した場合消費税の仕入税額控除を受けるにはどのようにすればよいのでしょうか?
    事業者向けEC取引についてはリバースチャージ方式という一旦購入者が消費税を直接負担する形にし、同時に負担する消費税について仕入税額控除を受けることで実質的に消費税を納税しない方式を適用します。よって、国外業者に消費税を支払う形ではないためインボイス適格の請求書等の入手及び保存は不要です。
    一方、音楽配信や書籍購入など個人向けEC取引で仕入税額控除を受けるためにはインボイス適格の請求書等の入手及び保存が必要となり、販売元の国外業者が日本の適格請求書発行事業者登録をしていない場合や日本の消費税法に対応したインボイス適格の請求書等を発行していない場合は、仕入税額控除を受けることはできません。また、国外業者とのEC取引については2029年(令和11年)9月30日までの取引に適用される消費税相当額の80%または50%の仕入税額控除の経過措置が適用されませんのであわせてご注意ください。
    (インボイスQ&A103-3)

     

    おわりに

    今回は、インボイスの受け取り、保存、インボイス制度の意義に関係する消費税の仕入税額控除の適用を中心に国税庁インボイスQ&A令和6年4月改訂版の追加項目を解説しました。
    経費精算でよくあるのが、宛名が会社名でないと会社経費として認められないという誤解です。今回のQ&Aでもある通り従業員が会社の事業のために立て替えた経費であることが明らかであれば必ずしも宛名にこだわる必要はありません。また、レシートとは別に領収書がないと経費として認めないという誤解もありますが、レシートのみインボイス対応しているお店も少なくありませんのでインボイス制度対応の観点からはレシートを保存するほうが確実です。どちらかというと宛名の有無よりも支出の中身のほうが事業経費になるかどうかの判断基準になると考えてください。
    最後に電子帳簿保存法との兼ね合いで書類の保存について申し上げますと、インボイス対応の請求書等電子データを所定の方法で保存するのが、消費税だけでなく法人税や所得税の証拠保存策として理想的です。ただし、法人税や所得税における取引の証拠は必ずしもインボイス対応の書類でなくても構わないため、例えばクレジット決済と経費の場合、インボイス対応として電子データの請求書等の閲覧サイトをすぐに開けるようにし、法人税や所得税における経費の証拠として毎月のクレジットカードの利用明細を保存しておく方法もあります。
    今回のQ&A解説が事務効率化とインボイス対応を両立できる事務改善にお役に立てれば幸いです。

     

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