BLOG ブログ

飲食店業の会計・税務シリーズ⑤

飲食店業の会計・税務シリーズ⑤

コロナ禍の中で厳しい状況が続く飲食店業界ですが、現状は正しく把握できていますか?また、税金について理解していますか?その問いかけにお答えし、飲食店経営者の経営管理に役立つ記事です。

飲食店周辺ビジネスの会計

今回は、飲食店と深く関係する事業に関する会計を中心に取り上げます。飲食店の会計・税務の解説シリーズですので、飲食店向けに取引先となる業者の理解の参考となることを目的としています。そのため、内容としては相手を知り飲食店経営に上手に活用するためのものです。
今回取り上げる事業は以下の通りです。
・宿泊業
・宅配サービス業
・信販、電子マネーQR決済業
・不動産賃貸業
・食品、酒類卸売業
・リース業
他にも関連する業種がありますが、特に取引が多いであろう業種に絞ってお話いたします。

宿泊業の特徴

飲食店同様不特定多数の客を相手にし一定時間空間を提供する業種と言えば、ホテルなどの宿泊業ではないでしょうか。レストランを設置して飲食店を運営しているホテルも数多くありますが、ここでは飲食店とは別の事業と捉えてお話させていただきます。
宿泊業と飲食店との共通点は先述の通り不特定多数の客を相手にし一定時間空間を提供することですが、収益源は大きく異なります。料理の提供に課金する飲食店に対し、宿泊業は宿泊部屋の提供に課金されます。そのため、飲食店以上にスペースの稼働率を重視しています。ですから、稼働率の時期的な変動に合わせて宿泊料金を変動させ少しでも稼働率が上がるようにしているのです。近年では稼働率向上のために周辺の飲食店の紹介や提携に力を入れているホテルもあります。また、大きな建物や設備を必要とするため、毎月一定の固定費割合が極めて高い一方、部屋の稼働に応じてかかる変動費は少なくなっています。よって飲食店と比較し売上増減以上に損益変動が大きくなります。

宅配サービス業の特徴

ここ2年ほどコロナ禍による外出自粛の影響もあり、宅配メニューを導入したお店も多いのではないでしょうか。自前で宅配のノウハウがないお店の多くでUber Eatsや出前館などの宅配業者に委託して宅配しているかと思います。ここでは、これらの宅配業者についてお話します。
宅配業者は宅配サービスに対して課金します。そのため、飲食店にとっては宅配注文に比例して経費が増える変動費に該当します。宅配業者は宅配すればするほど売上が上がるわけですが、多くの業者では自前で配送スタッフを雇用して賃金を支払うのではなく、配送スタッフを個人事業者として委託契約を交わし配送サービス委託料を支払う形態が多くなっています。つまり宅配業者の主要経費も宅配注文に比例する変動費となり、注文の多寡で損益が極端に増減しないようになっています。

信販、電子マネーQR決済業の特徴

近年配送と並んで対応するお店が増加しているのがキャッシュレス決済ではないでしょうか。ここでは、キャッシュレス決済に関わる信販、電子マネーQR決済業についてお話します。
信販業、QR決済業ともに決済に対して一定割合の手数料を販売業者側から徴収して売上としています。しかし、信販(クレジットカード)業と電子マネーQR決済業では決定的に異なる点があります。
信販業ではクレジットカード決済によりお客さんに対する売掛金(ツケ)を手数料を差し引いて買い取り、お店に変わってお客さんから代金回収を代行する形になっています。つまり債権回収代行業です。
一方、電子マネーQR決済業ではあらかじめお客さんのチャージにより預かった代金を、お店での決済により手数料を差し引いてお店に払う形になっています。つまり代金取次業です。
そのため、同じ手数料でも性質が異なり、信販業は債権に対する利息、電子マネーQR決済業は取次手数料となります。特にこの違いは消費税に影響し、クレジットカード手数料は非課税、電子マネーQR手数料は原則課税となります。

不動産賃貸業の特徴

多くのお店では賃貸で出店しているのではでしょうか。ここでは、不動産賃貸業についてお話しします。
当然ながら不動産賃貸業の収入はお店などから毎月定額(場合によっては売上歩合)で入ってくる賃料です。多くの場合賃料は定額ですが、ショッピングセンターなどでは施設全体の集客のインセンティブにつなげるため、上述の決済手数料のように売上に応じて一定割合を賃料として徴収する「歩合賃料」を導入している場合があります。この場合、飲食店経営においては変動費となります。
不動産賃貸業にとっての経営リスクは何よりも賃貸物件の稼働率、つまり入居率です。一度契約し入居すれば安定した収入が得られる一方、退去すると収入が一気に下がり、新たな入居者を探すためのコストもかかります。不動産賃貸業者にとっても飲食店の繁栄・繁盛が何よりの繁栄につながることは言うまでもありません。

食品、酒類卸売業の特徴

飲食店は飲食ビジネスである以上、食品業者や酒類業者との関係は切っても切れません。そこでここでは食品や酒類卸売業についてお話します。
卸売業の意義は、取扱分野の商品に関して様々なところから調達(仕入)し、必要とする業者へ卸す(販売)いわば人と物をつなぐ業者です。通常卸売業は多種多様な商品を取り扱うことで利益を得るため利益率が低くなっており、多くの人へつなぐ、多くの物をつなぐことが重要だと言えます。特に食品・酒類は種類が多岐にわたり、特に生鮮品は保管できる期間が短いため、迅速かつ的確につなぐことも重要になってきます。
そのため、幅広く商品を取扱う食品・酒類卸売業は取扱商品の知識が大変豊富で、食材やお酒を仕入れる際も役立つアドバイスが得られることもあるようです。

リース業の特徴

お店によってはオーブンやレジなど購入金額が高額な備品什器について、数年間月払いでリースしているところもあります。ここでは、リース業についてお話します。
リース業の収入は毎月のリース料です。リース業者はリースする物品を一括で購入することもありますが、資金繰りのバランスをとるため割賦(分割払い)で購入したり、別のリース契約を組んでリース料を毎月支払ったりすることがあります。また、リース業は一度契約すると長期間収入になる点が不動産賃貸業と似ていますが、リース契約が無いと元手となる物件の経費が生じない点は、不動産賃貸業と異なる点です。
リースについては主な目的が2つあり、単純に必要な一定期間だけ借りることを目的とする場合と、代金決済を長期間に分散し最終的には使えるまで使う実質的な資金借入を目的とする場合があります。いずれにしても、支払期間を分散し資金繰りに役立つ1つの手段ではあります。

おわりに

今回は切り口を変えて飲食店そのものではなく、飲食店周辺の事業についてお話しました。飲食店経営には自らの事業について知ることは当然ですが、周辺事業についても知ることにより飲食店経営に役立つ知見を得ることができます。
周辺事業として取り上げた業種は必ずしも飲食店のみを取引相手としているわけではありません。しかしながら、飲食店はジャンルが幅広く多くの地域で展開されている身近な存在で、周辺事業者にとってもマーケットが大きな魅力のある相手先です。
飲食店業は来店するお客さんだけでなく、多くの周辺事業者に支えられて成り立っていることがわかっていただけますと益々発展していけるのではないかと筆者の私は思います。