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飲食店業の会計・税務シリーズ③

飲食店業の会計・税務シリーズ③

コロナ禍の中で厳しい状況が続く飲食店業界ですが、現状は正しく把握できていますか?また、税金について理解していますか?その問いかけにお答えし、飲食店経営者の経営管理に役立つ記事です。

飲食店に関わる税金

今回は飲食店にかかる税金についてお話します。
飲食店特有の税金は特にありませんが、かかる税金の種類は多くあります。何に対してかかるのか、どのタイミングで納付するのか税金の種類によって異なります。今回は飲食店経営で関わってくる主な税金について取り上げ、何に対してかかるのか(課税対象)、誰にかかるのか(納税義務者)、どのタイミングで納付するのか(納付時期)について解説するとともに、税金対策や気を付けて頂きたいことを取り上げます。

飲食店の所得税

所得税は個人に係る税金で、1年間の給与やその他収入のほか個人経営の場合1年間で得た儲けに対してかかります。個人事業で継続的に得た儲けを「事業所得」といい、1年間の売上から仕入やその他必要経費を差し引いた金額を所得つまり儲けとして課税対象になります。事業所得とするためには開業時に「開業届」という届出書を税務署に提出します。開業届を出していない場合「雑所得」となり、仮に赤字になった場合赤字を給与などほかの所得と相殺することができません。つまり、「開業届」を提出することで赤字になったときに他の所得と相殺し、節税になるのです。
また、他の所得で赤字を相殺しきれなかった場合相殺できなかった赤字は「青色申告」という複式簿記の方法(詳細は第2回参照)で記帳した場合、翌年度以降発生する黒字と相殺することができます。青色申告をする場合は「青色申告承認申請書」を青色申告をしたい年の3月15日までに税務署に提出し、対象年度内に却下通知がない限り承認されたものとみなされます。青色申告をすると、同一生計の家族に対する給与を経費とできる「青色専従者給与」や青色申告特別控除(所得から10万円~65万円を控除)などが受けられます。
飲食店の儲けは確定申告が必要です。毎年1月1日から12月31日までの期間について2月16日から3月15日までの間に確定申告しましょう。
なお、飲食店の所得計算の際注意が必要なのはまかないなどの自家消費です。自家消費について代金が無料または通常とるべき金額の30%引き以上で割引した場合、通常とるべき金額で売り上げたものとみなすことになります。

飲食店の住民税

住民税は個人に係る税金で、都道府県民税と市町村民税を総称したものです。住民税は所得税と同じ方法で計算しますが、税率や控除額が異なり所得税の確定申告をした場合、所得税確定申告書を基にお住いの市町村の徴税部門が都道府県民税と市町村民税を合わせて計算します。
経営者の場合住民税は毎年1月1日から12月31日までの期間を対象とした税額を翌年1月1日現在お住まいの市町村から6月に納税通知書が届いて、6月、8月、10月、1月の年4回に分けて当該市町村に支払います。この徴収方法を普通徴収といいます。
この他、都道府県に所得に対して5%課税される個人事業税という税金がかかります。個人事業税に関しても所得税確定申告書を基にお住いの都道府県の税金事務所が計算し、納税通知書が届いて8月と11月の2回に分けて都道府県の税金事務所に支払います。なお、事業税には290万円の所得控除があり、事業所得が290万円以下の場合免税となります。

飲食店の消費税

消費税は事業をしていればお客さんから飲食代に含めて預り、仕入や経費に含まれる消費税を差し引いて税務署に納付します。ここでは、飲食店に特化した消費税の論点をいくつか取り上げます。
1.税率
飲食品を取り扱うお店であるため、標準税率の10%か軽減税率の8%かの区分けが他の業種に増して重要です。軽減税率8%が適用されるのは、「飲食料品の譲渡」とされます。お店での提供は「食事サービスの提供」とされ「飲食料品の譲渡」には該当しません。よって、標準税率10%となります。一方、テイクアウトやデリバリーの場合、お客様に「飲食料品を譲渡」して実際の飲食はお客様の好きな場所で行うため、「飲食料品の譲渡」として軽減税率8%が適用されます。なお、店内飲食か持帰りかの判定は注文時のお客様の意思で判定することとされ、実際には注文時の意思と異なっていた場合でも勘定のやり直しは不要とされています。店内飲食品の残りを持ち帰る場合でも当初注文時の意思を優先し、標準税率10%が適用されます。
仕入や経費に掛かる消費税率は、食材仕入れは軽減税率8%、その他サービスや酒類仕入れは標準税率10%となります。
2.免税事業者
2つ前の会計年度の課税売上高(消費税のかかる売上高)が1000万円以下だった場合、一部の場合を除き消費税の納付は免除されます。免除された事業者のことを「免除事業者」となります。ただし、2023年(令和5年)10月1日から開始されるインボイス制度に対応する場合、インボイス制度開始後は納税義務が免除されません。インボイス制度については後述します。
3.簡易課税制度
2つ前の会計年度の課税売上高(消費税のかかる売上高)が5000万円以下だった場合、仕入や経費に含まれる消費税の差引額を売上に対する一定の割合を掛けて簡便的に計算する「簡易課税制度」が適用できます。飲食店の場合、6種類に分類されている区分のうち、第4種事業とされ一定の割合は売上の60%です。
4.インボイス制度
2023年(令和5年)10月1日から一定の記載事項を備えた請求書やレシートが保存されていなければ、該当する仕入や経費に含まれる消費税の控除ができなくなるインボイス制度が導入されます。飲食店のお客様の多くは個人消費者であり、消費税の納付を行わないため特段インボイス制度対応は不要とお考えの方が多いと思いますが、会社の経費で飲食するお客様がいる場合、その会社で仕入や経費に含まれる消費税の控除を受けるために一定の記載事項が記載されたレシートや領収書をそのお客様に交付する必要があります。インボイス制度については5回にわたる解説シリーズがありますので、詳細はそちらをご参照ください。

飲食店を経営する法人の法人税・法人地方税

飲食店の中には会社を立ち上げて経営するケースがあります。会社のような法人で経営する場合には、所得税・個人住民税に変わり、法人税・法人住民税が課税されます。また、都道府県から法人事業税も課税されます。
個人の所得税・住民税・事業税と異なる点は以下の通りです。
・飲食店以外の事業を展開していても所得を分類せず、法人内の所得はひとまとめにして計算する
・法人は会計期間を任意の1年間にすることができるため、法人によって会計期間が異なり、申告期限は年度末から2か月以内となっている
・法人税率は原則単一(中小法人の場合2段階)で、所得税のような累進課税(所得が多くなるほど段階的に税率が上がる)は適用されない
・複数の自治体にまたがって展開することがあるため、地方税である住民税や事業税についても事業を展開する自治体に別途申告書を提出する
・決算書は会社法等に基づき申告書とは別途作成し、税金計算のための所得を決算書上の利益に調整を加える形で計算する
なお、消費税については個人の場合と大きく異なりません。

飲食店の固定資産税

お店が自己所有の土地建物の場合、毎年1月1日時点で所有する土地建物について固定資産税が所在する市町村から課税されます。この固定資産税は市町村が登記簿を基に土地建物を評価し、一定の割合を掛けて算定します。このように課税する側が税額を計算する課税方法を賦課課税と言います。納期は第1期が4月16日~30日、第2期が7月16日~31日、第3期が9月16日~30日、第4期は12月16日~12月31日の4階です。
お店が賃貸であった場合であったとしても、固定資産税がかかる場合があります。お店の中にある機械や備品なども固定資産税の対象です。ただし、自動車は自動車税や軽自動車税が別途課税されるため固定資産税はかかりません。
機械や備品などを「償却資産」といい、1月1日時点のお店の償却資産の一覧を毎年1月31日までに所在する市町村に申告します。
なお、固定資産税には免税点制度があり評価額が一定金額以下であれば、免税されます。

お酒を提供しているお店の酒税対応

飲食店の中にはお酒を提供している店もあります。お酒に関する税金として酒税があります。酒税は酒造メーカーや輸入者に課税され納税するもので消費者や飲食店は直接負担せず仕入代金に含まれる形で間接的に負担しています。
また、店内メニューの一つとしてお酒を提供する場合、酒販免許など特別な対応は必要ありません。ただし、テイクアウトメニューとしてお酒を販売する場合は、酒類販売業とされ「一般酒類小売業免許」が必要です(酒税法第9条)。もし、無免許でお酒をテイクアウト販売すると1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます(酒税法第56条)。また、酒造メーカーや酒販店からの仕入れであれば特段問題ありませんが、飲食店で果実酒などを自家製造する場合は「酒類製造免許」が必要です(酒税法第7条)。もし、無免許でお酒を自家製造すると10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます(酒税法第54条)。
お酒を提供する場合は、酒税法に基づく免許が必要ないか今一度確認をお願い致します。

おわりに

今回は飲食店にかかわる税金に関するお話をさせて頂きました。
税金は、いつ、どの機関から、誰に、何に対して課税されるかを理解し、どのように納付するのかという4W1Hを押さえておけば具体的な計算方法については後で確認することで構いません。まずはどのような税金がかかっているのか理解していただくことが重要です。
飲食店特有の論点としては、消費税の複数税率のいずれに該当するのかと、酒税法に基づく免許がいるのかどうかです。飲食店は提供する料理、規模、営業時間、価格帯、お酒の提供の有無などさまざまなお店がありますので一概には言えませんが、税金に関してはおおむね共通しているものと思われます。今回の記事がお役に立てば幸いです。