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飲食店業の会計・税務シリーズ①

飲食店業の会計・税務シリーズ①

コロナ禍の中で厳しい状況が続く飲食店業界ですが、現状は正しく把握できていますか?また、税金について理解していますか?その問いかけにお答えし、飲食店経営者の経営管理に役立つ記事です。

飲食店の計数管理

今回から5回にかけて飲食店経営者向けに会計経理と税金について解説いたします。
飲食店業界はコロナ禍による休業・時短要請、外出制限、三密防止等の理由で投稿時の2021年10月時点において全体的に厳しいと言われていますが、実は飲食店によって状況は千差万別です。飲食店業界は他の業界と比較して、ジャンルが多岐にわたり、開業率、廃業率共に高くなっています。そのため、一概に「飲食店業界の○○は~だ」のような話し方はしにくいですが、飲食品を店内で人々に提供することは共通していますので、共通事項を中心に、特定のジャンルのみで特に重要と思われる個所では特定のジャンル限定の内容も触れます。
5回の内容は以下の通りです。
第1回 飲食店の計数管理
第2回 飲食店の日常会計実務
第3回 飲食店に関わる税金
第4回 飲食店の決算・確定申告
第5回 周辺ビジネスの会計・税務

開業に必要なもの・資金と貸借対照表

まず飲食店の開業と会計との関係についてお話します。
飲食店に限らず開業に必要なものは資金です。資金は何のために使うでしょうか?また、どこから確保するのでしょうか?その2つの疑問に関してある一時点での状況を示した一覧表を「貸借対照表」といいます。
「貸借対照表」では資金の使い道を「資産」として左側に、資金の出どころを「負債」及び「純資産」として右側に一覧を示します。左側と右側の合計金額は必ず一致します。
飲食店で開業時にある「使うもの」の例として、当面の運転資金、食材、調理設備、飲食設備、「確保するところ」の例として、自前の開業貯金、銀行等からの借入が挙げられます。
これらの項目を一覧表にすることで開業時の現状が一目でわかるのです。なお、貸借対照表は開業時のみならず決算の都度作成することで、定期的に一時点でのお店の現状を一目で確認できます。

売上と売上原価

経営状況の把握には一時点だけではなく、一定期間の動きを見ることも必要です。飲食店を開業する目的は何でしょうか?目的は人によってさまざまかと思いますが、その目的が達成できているかどうかを測る結果は何でしょうか?こちらもお客様の笑顔、感謝の言葉、販売数量など様々ありますが、経営者以外の人でも一目でわかる結果は売上ではないでしょうか。お客様の笑顔・感謝、販売数量があったとしても、売上による収入が不足すれば経営は続かなくなります。高い廃業率は短期間での売上減少から生じています。売上を稼ぐ金目目的での飲食店経営ではお客様に愛されることが難しいですが、売上をあげなければ経営は持続しません。その売上を得るためには必要な出費があります。食材の購入、働くスタッフの人件費、その他もろもろの運営経費がありますが、特に売上に直接対応するのがメニュー提供までにかかる、食材のコスト、調理スタッフの人件費そして厨房設備に関する諸経費です。これら売上に直接対応するコストを「売上原価」といい、売上から売上原価を差し引いて算出した、売上を得たことによる正味のもうけを「売上粗利益(または売上総利益)」といいます。売上粗利益は売ったことに対する稼ぐ力を表します。
稼ぐ力をあげるには、提供数量を増やすか、メニュー単価を引き上げるか、あるいは食材仕入れなどの売上原価を抑えることになります。いずれか一つのみを選ぶとは限りませんが、選択はお店の戦略・方針にかかっています。

人件費

ここでは人件費について少し詳しくお話します。人件費と聞くと真っ先に浮かぶのは給与やバイト代ではないでしょうか。人件費の基本が給与であることは当然なのですが、それだけではありません。社会保険制度に加入しているでしょうか?給与が一定の金額を超えると社会保険や労働保険に加入する必要があり、社会保険料及び労働保険料も人件費の一つです。
給与やバイト代は毎月一定のルールに従って支給していますか?時には資金繰りが苦しく支払えない時もあるかもしれません。その月に支払えない場合でも給与(賃金)は労働の対価であることから、会計上労働を受けた月の費用となり未払賃金を負債として認識します。また、未払賃金の支払義務は仕入代金のツケ(買掛金)や銀行借入、その他諸々の経費未払金に優先します。
最後に給与から社会保険料の従業員負担分、源泉所得税、源泉住民税を天引きしていますか?法律で求められている天引きですので、忘れずに天引きし、期限までに社会保険料はお店の地域を管轄する年金事務所、源泉所得税はお店の地域を管轄する税務署、源泉住民税は従業員の住む市町村にそれぞれ払いましょう。会計上、天引きした金額は預り金という負債で認識して後日納付する金額をプールします。

設備関連費・賃借費

飲食店では調理や飲食スペースへの設備投資が必要になります。また、自前でお店の建物を所有する場合設備投資となります。設備投資は原則固定資産という資産に計上します。固定資産は長期間使用する資産であり、建物や設備については「減価償却」という使用見込期間にわたって一定の計算方法で費用に振り替えます。原則固定資産に計上と申し上げましたのは、長期間減価償却の管理をするのが手間になるため、1組当たりの金額が少額であれば購入時に費用化できる取扱いがあります。お客様が利用するテーブルやいす、食器などは費用化できるケースが多いです。
また、自前で設備投資することは一気に多額の出費となるため、借入による資金調達のほか、お店については賃借、設備についてはリースによる月払いをするケースが多くあります。
賃借料やリース料は毎月支払うことがほとんどですが、費用として認識するのは支払対象となる月に認識します。従って、前月分払いであれば前月に費用計上し、同時に未払費用という負債が認識されます。一方、翌月分払いであれば支払時に前払費用という資産を計上し、翌月になって前払費用という資産を費用に振り替えます。
飲食店では稀ですが、総額300万円以上で中途解約が極めて困難なリース契約については、借入によって自前の資産を購入したものと実質的に同一であるとみなし、固定資産とリース債務(借入金に相当)を貸借対照表に計上することになっています。

借入利息

飲食店の開業に当たっては開業資金確保のため借入を行うことが多くあります。借入れたときは預金という資産が増加し、借入金という負債が増加します。借りた時点では業績への影響はありません。
一方、借入金はあくまで借入でありいずれは返済が必要です。返済はお金で返すため(現実的には預金引き落としが多いため)、預金という資産が減少する一方、借入金負債が減少します。また、借入には通常月払いで利息の支払が求められます。利息は貸し付ける金融機関等に対する貸付サービス料であるため、一方的な資産の減少となり、費用計上しお店の業績に反映されます。
支払利息は契約内容により向こう1ヶ月分前払いとなる場合と過去1ヶ月分後払いとなる場合とそれぞれあります。いずれの場合でも費用処理されるのは、利息支払い対象月です。翌月分支払済みで決算を迎えると前払費用という資産、当月分未払いで決算を迎える場合は未払費用という負債が貸借対照表に計上されます。

損益計算書

ここまで飲食店の業績に関わる項目について少し詳しくお話しました。その業績は確定申告や業績把握のために一定の期間で区切って集計します。業績を内訳ごとに集計した表を「損益計算書」といい、一定期間中のお店の成績表です。
少なくとも年に1回確定申告の時期は申告に必要なため作成するのですが、業績把握と今後に向けての見直しや行動のためには、毎月こまめに損益計算書を確認することをお勧めします。毎月把握するために会計システムや帳簿への記帳をこまめに行うことが必要です。こまめに記帳を行うコツについては、次回お話します。
損益計算書には売上をはじめ、売上原価、その他経費が科目(項目)ごとに示し、売上から売上原価やその他経費を差し引いた残りが利益または損失として表示されます。

おわりに

今回は飲食店の計数管理について「決算書を見る」観点で項目分けしてお話いたしました。
数字が苦手で計数管理は…という方がいらっしゃいます。お店の現状をどのように理解・把握しているでしょうか?営業時間、来客数、売上金額、現金・預金残高など様々ありますが、事業経営は資金が尽きるとできなくなります。その資金の動きの中身は様々あり、そのような資金の動きになった原因は日常の経営環境にあります。
なんとなくこういう状況だから経営はこうなった、ということはある程度分かりますが、実際に数字を見てみると「やはりそうだった」「必ずしもそうではなかった」ということがわかります。会計によるきちんとした業績表で現状分析することが正しい分析と正しい判断につながります。今回はそのことを申し上げて以上と致します。