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農業の会計・税務③

農業の会計・税務③

農業にも数字による経営管理の重要性が増しています。また、税金も付き物です。農業に関する会計と税務について特徴的なことを解説します。

農業経理について

前回まで農業の会計と税金についてお話しましたが、実際に記録を取らなければ意味がありません。そこで今回から次回の2回は知識というよりも、簿記など実践的な事柄を取り上げ、実際に取り組む際に役立つ内容をお話しいたします。
今回は主に年間を通して生じる取引に関する以下の項目を取り上げます。
・資材の購入
・人件費の支払
・自主販売
・委託販売(諸手数料含む)
・自家消費
・ローン返済

資材の購入

農業資材の購入は多岐かつ頻繁に発生します。しかし、農業資材の経理作業は比較的単純です。購入記録である納品書や請求書、レシートなど購入先から渡される書類があるためです。書類に記載されている「購入日」、「購入した業者の名称」、「購入金額」を会計ソフトに入力します。中には購入記録書類が渡されない場合がありますが、その場合でも預金・貯金通帳、クレジットカード利用明細などから「購入日」、「購入した業者の名称」、「購入金額」を調べて会計ソフトに入力します。
なお、上記事項の記録は消費税法上、消費税納付額を計算する際に控除する消費税に含めるために必要なことなのですが、令和5年10月のインボイス制度導入により根拠となる購入記録書類に必須記載事項が追加されました。詳細は当サイトのブログ記事「消費税インボイス解説シリーズ①」をご参照ください。

人件費の支払

人件費は支払という意味では農業資材購入と同じですが、支払先が内部の従業員のため相手から受取る書類がありません。支払う金額の計算自体、支払う側である雇用主が行うため外部の第三者から見ると客観的に正しい金額なのかどうかわかりにくいものです。
会計ソフトへの入力は給与明細控や支給一覧表から行いますが、給与規程や支給額計算式を文書化しておくことで給与計算の客観性をある程度担保できます。また、給与未払対策のためにも当月支給額は支給日に全額支払うようにし、資金不足が生じている場合は他の支払よりも優先順位を上げて支払うようにしてください。
なお、残業代や日給、時給については支給対象期間を毎月一定の日(例:毎月20日までの1か月間)に定めて明確にし、支払漏れや二重払いを防止をしましょう。

自主販売

ここからは生産した農産物の販売に関する経理実務についてお話をします。主な販売ルートとして生産者が直接消費者や業者に販売するルートと、農協などを通じて販売するルートがあります。ここでは直接販売する場合についてお話します。
・自ら運営する直売所で販売する場合
直売所全体の日々の売上を集計します。現金売上の場合は売上現金がそのまま売上になります。一方、キャッシュレス決済の場合入金は数日後となりますが、販売した当日に売上とし、後日入金について「売掛金」として記録し、入金時に「売掛金」を「消し込み」ます。
・農協などが運営する直売所で販売する場合
レジを運営管理者が管理しており売上の報告は運営管理者から報告さえる形が多いかと思われます。その場合でも、入金額ではなく当日販売した金額が売上となります。
・特定の業者に直接販売する場合
販売時に納品書など販売した農産物の内容を記載した書面を渡すケースが多いかと思います。また、代金は後日となる場合が多く毎月決まった日に請求書を送付することもあるかと思います。売上は販売日基準で計上し、送付した納品書または請求書の控えを基に売上と「売掛金」を計上し、入金時に「売掛金」を「消し込み」ます。
なお、所得税法第41条では農業収入は収穫時に収穫時の農産物価額で計上すると規定されています。農業法人の場合は適用されないのですが、決算時に未出荷在庫があった場合収入として未出荷在庫数量×収穫時農産物単価を加算することになります。一方で、翌年度は未出荷在庫数量×収穫時農産物単価を収入から控除します。

委託販売(諸手数料含む)

ここでは農協などに農産物を渡し、選別や保管を経て市場などに卸される場合の売上経理についてお話します。
多くは農協などに販売委託し、市場などに卸された時生産者が販売したとみなす形になっています。この形式の場合、共選共計方式ですと最終的な販売先や販売時の販売価格が他の生産者の農産物と混在しわからないため、平均価格×卸数量を生産者ごとの集荷時数量等で按分して販売代金を精算する形になっています。
また、精算金額は農協等が徴収する委託手数料や保管費用、加工費用を控除して精算されます。精算は1回ではなく複数回行われることもあります。売上経理の際は精算報告書を基に実際に受け取る精算額ではなく、手数料等控除前の金額で計上し、手数料等については経費として別途計上します。なお、決算時は決算までに販売済で未精算の分についても売上計上し、売掛金を認識することになります。ただし、精算見込額が決算申告時までに判明しないケースもありますので、実務的には精算の都度売上計上することもあります。

自家消費

農産物は他者への販売のみを目的として生産しているわけではありません。生産者自ら消費することも多々あります。その場合、会計に影響はあるのでしょうか。
自家消費の場合お金のやり取りが生じないため何も影響がないかのように思います。しかしながら会計上はあたかも家計を別人のようにとらえて売上計上することになります。売上金額は他人に販売した場合の価格×自家消費数量で計算します。理由は自家消費分の生産に係る経費も販売用の生産経費と同じように必要経費として所得を減らすからです。経費の発生とつじつまを合わせるために売上を上げるのです。
ただし、実務上他人に販売した場合の価格の50%を超えない範囲で値引き販売したとみなして売上計上する場合はその売上金額で確定申告して差し支えないとされています。

ローン返済

最後にローン返済の経理についてお話します。
ローン返済は現金預金のマイナスと借入金のマイナスとして経理します。借入金は新規借入による入金時は借入金のプラスになりますが、所得にはなりません。理由は後で返済する義務があるお金だからです。言い換えれば、所得になる収入や経費は後で返済したり、返済を受けることがないものなのです。
ただし、ローンにつきものである利息については、借り物ではなく後で返済を受けることもありませんので経費となり、元本とは別に支払利息という科目で経理します。
経理に慣れれば単純なのですが、経理に不慣れな方は、元本と利息を一緒に払うことから経理処理を大変間違いやすいところですのであえて取り上げさせていただきました。

おわりに

今回年間を通して生じる取引に関する会計の実践的な内容を取り上げました。
年間を通して生じる取引は比較的取引が多く事務的な作業量は多いですが、定着すればそれほど難しくないことが多いです。事務を楽しく効率的に行う秘訣は、実際に取引の場面をイメージしながら行うことです。特に記帳作業は文字と数字の羅列でなかなかやる気になりにくいものです。しかし記帳をすることで日々の作業の結果が目に見える形で記録に残り、皆様の日々の努力が見えてきます。
次回はあまり頻度の高くない決算時特有のトピックを取り上げます。