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消費税インボイス解説シリーズ⑦

令和5年(2023年)10月1日より開始される適格請求書(インボイス)に関して、個別具体的な論点を解説していきます。

【令和3年7月インボイスQ&A対応】インボイス制度に関する様々な疑問その3

インボイス解説シリーズを6月下旬から8月初旬の6週にわたって掲載しましたが、その後7月30日付で国税庁の消費税の適格請求書等保存方式に係るQ&A(インボイスQ&A)の改訂があり、Q&Aの追加及び改訂がありました。
これまでアップした6回のシリーズで触れた話に関する追加・改訂については、該当する記事の手直しと更新で対応しています。今回は新たに追加されたQ&Aのうち、6回のシリーズで触れていないものについて取り上げます。

インボイス制度開始後いつでも業者登録できるか

既に課税事業者となっている場合は登録申請書を所轄の税務署長あてに提出すれば、所定の審査後、会計期間や課税期間に関係なく登録日から適格請求書発行事業者になることができます。むろん過去の回で解説した通り2023年(令和5年)10月1日のインボイス制度開始前に業者登録された場合はインボイス制度開始日の2023年(令和5年)10月1日付での適格請求書発行事業者登録となりますので、今回のケースはあくまでインボイス制度開始後に適格請求書発行事業者登録する場合であることをご理解ください。
なお、課税事業者選択届出書を提出して新たに課税事業者になったうえで適格請求書発行事業者登録する場合は、課税事業者となる課税期間の初日から適格請求書発行事業者となりますのでご留意ください。
(参考:令和3年7月改定版インボイスQ&A 問6)

個人事業を相続した場合のインボイス発行事業者登録

個人事業を親族などから相続するケースがあります。では、事業の相続に伴って適格請求書発行事業者としての権利・義務も相続されるのでしょうか?いいえ、相続されません。インボイスを発行・交付する権利義務は特定の事業者固有であり、事業承継といっても個人事業の場合当事者は別事業者扱いとなるためです。
そのため、相続人が事業承継して新たに事業を行う場合は相続人本人が開業届とともに新たに適格請求書発行事業者登録申請書を所轄の税務署長に提出する必要があります。
一方、亡くなった被相続人については死亡に伴い個人事業者でなくなるため、「個人事業者の死亡届出書」と「適格請求書発行事業事業者の死亡届出書」を所轄の税務署長に提出する必要があります。これらの届出により、被相続人の登録は死亡日の翌日から4か月を経過する日または相続人の適格請求書発行事業者登録日のいずれか早い日に効力を失います。被相続人の事業者登録の効力を失うまでの間、事業承継した相続人は被相続人の登録番号を使ってインボイスを発行・交付できるみなし登録事業者となります。
なお、インボイス制度開始前の2023年(令和5年)4月1日から9月30日までの間に被相続人が死亡し、事業相続が生じる場合、被相続人の適格請求書発行事業事業者登録申請が2023年(令和5年)3月31日のインボイス制度開始時事業者登録申請期限を過ぎますが、「期限までに提出できなかった困難な事情」とされインボイス制度開始時から業者登録が認められる事由になりますので、その点はご安心ください。
(参考:令和3年7月改定版インボイスQ&A 問16)

インボイス制度導入を機に課税事業者になる場合の消費税確定申告

インボイス制度導入を機に免税事業者から課税事業者になる場合、インボイス制度開始日である2023年(令和5年)10月1日から課税事業者になる特例があります。
この特例を適用する場合、消費税の確定申告及び納付は2023年(令和5年)10月1日から最初の課税期間末日までの期間についてのみ行います。
また、個人事業者の場合前々年、法人の場合前々事業年度における消費税課税対象の売上高が5000万円以下ですと、仕入税額控除額を課税売上高に対する一定割合とする「簡易課税制度」を適用することが出来ます。簡易課税制度の適用を受けたい場合、通常は適用を受けたい課税期間の直前1ヶ月前までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を所轄の税務署長に提出する必要がありますが、今回の特例を受ける場合は2023年(令和5年)10月1日以降最初の課税期間末日までに提出すれば2023年(令和5年)10月1日からにさかのぼって簡易課税制度を適用することができます。
(参考:令和3年7月改定版インボイスQ&A 問9,問10)

インボイスに税抜価額と税込価額が混在してもOKなのか

レジから出てくるレシートに記載されている商品ごとの金額は通常税抜表示か税込表示に統一されていますが、例えばタバコなどは希望小売価格がはじめから税込価格のため、他の商品が税抜価格で設定・表示されている場合表示方法が不統一となります。この場合、簡易インボイス適格のレシートに記載される消費税額は1回の取引単位で(つまり、レシート1枚単位で税率区分ごとに集計して)計算するため、消費税額計算の方法が定まらなくなります。
そこで、商品によって税抜価格表示と税込価格表示が混在する場合、レシート1枚単位の消費税額計算は
①税抜価格合計×消費税率
②税込価格合計×(消費税率+100%)×消費税率
のいずれかに統一して計算します。なお、税抜価格を税込価格に、または税込価格を税抜価格にすることによって生じる円未満の端数処理は事業者の任意です。
(参考:令和3年7月改定版インボイスQ&A 問48)

委託販売手数料のインボイス対応

委託販売におけるインボイスの発行・交付については、シリーズ第5回インボイス制度に関する様々な疑問その1でお話しました。
一方、委託販売等においては受託者に委託手数料を支払うことが多々あり、現行の消費税通達では、委託対象の商品やサービスに8%の軽減税率対象のものが含まれていない場合、経理を簡単にするため、委託者側は手数料を差し引いた受託者からの入金額を売上とし、受託者側は販売先からの入金額を売上、委託者への支払額を仕入として経理して差し支えないとされています。
インボイス制度導入後は、委託者側は上記の経理を継続する場合受託者から受け取ったインボイス適格の売上精算書等を保存する必要があります。一方、受託者側は委託者からインボイスを受取らなくても上記の経理を継続して適用できます。
なお、委託商品に食品など軽減税率8%の商品が含まれている場合、委託者側は手数料差引前の売上と費用としての委託手数料を相殺せずに両建て経理し、受託者側も手数料のみを売上計上し、販売先からの入金額を預り金の受取り、委託者への支払額を預り金の支払として経理する必要があります。
(参考:令和3年7月改定版インボイスQ&A 問91,問92)

締日が決算日と異なるインボイスがある場合の消費税額計算

事業者によっては、相手先の要望や決算早期化などの理由で請求書を決算日と異なる日までの期間で締めて作成し、相手先に送付することがあります。一方、仕入れる側も自らの決算日と異なる締日で請求書が届くことがあります。
請求書の締日が決算日と異なる場合(例:決算日は3月31日、請求書締日は3月20日)、3月21日から3月31日までの取引について請求書記載の消費税額を集計して消費税を計算する「積上げ方式」が適用できるかどうかが問題になります。
売上消費税の計算について積上げ方式を適用する場合は、請求書に3月21日から3月31日までの取引と4月1日以降の取引に関する消費税額をそれぞれ明記する必要があります。なお、売上消費税計算の場合積上げ方式は任意適用ですので、決算日をまたぐ請求期間についてのみ期間中の税込売上合計から税率を割り返して計算する「割戻し計算」を適用することも可能です。
一方。仕入消費税の計算は積上げ方式が原則のため、決算日をまたぐ請求期間についてのみ「割戻し計算」を適用することはできません。代わりに仕入の都度経理し、納品書に記載の税込仕入金額を基に割戻し計算して算出した消費税額を1年分集計することができます。
いずれにしても、インボイス適格の納品書や請求書を発行・交付する際は得意先の決算日を考慮する必要がありそうです。
(参考:令和3年7月改定版インボイスQ&A 問93,問96)

おわりに

今回はインボイス制度導入に関する個別具体的なよくある論点のうち、令和3年7月改定版で追加されたものについてお話しました。
今後もインボイス対応が進むにつれて新たな疑問点が生じ、インボイスQ&Aも新たな疑問点に対応して更新されるものと予想されます。下記に国税庁HPのインボイスQ&Aのリンクを再掲いたしますので、インボイス制度対応にあたりこまめに確認してください。