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農業の会計・税務①

農業の会計・税務①

農業にも数字による経営管理の重要性が増しています。また、税金も付き物です。農業に関する会計と税務について特徴的なことを解説します。

農業にも数字で把握する経営管理を

「農業に会計」と言われるとあまりピンと来ないかもしれません。農業は1年間の作業サイクルがあり、その年の収穫も日々の天候や生育を見ますと肌感覚でわかるとおっしゃる方もいらっしゃるでしょう。
でも、農業にお金は必要ないのでしょうか?そんなことはありませんよね。お金の動きはどうなっているのか把握しているのでしょうか?通帳の動きや取引書類のみでは全体的なお金の動きは把握しきれないのです。全体的なお金の動きを把握し農業経営の判断材料の一つとなる情報を提供するのが会計です。
会計や簿記は農業以外のビジネスでも使用しますが、農業は1年間の作業サイクルがあったり、自然の影響を受けやすいため、農業会計特有の特徴もあります。今回は農業会計の特徴をかいつまんでお話します。

農業における売上

どのビジネスにも必ずあるのがビジネスの成果を表す売上です。農業においては他の者へ農産物を販売することをもって売上となります。この時の売上は、販売数量×販売時点の数量当たり価格となります。
農業の場合、売上に関して他のビジネスと比較し特徴的な点が3つあります。
1.販売時期が収穫期に左右されることがある
2.市況により販売価格が日々変化する
3.地区内の農作物を農協などが一括して引き取り、生産者不特定の状態で市場に販売することがある
また、農作物はそのまま販売するだけでなく、自家消費やさらなる加工に回されることがあります。
これらの特徴を踏まえた会計上の詳しい解説は、3回目で解説します。

農業における仕入と売上原価

モノ作りビジネスに必ずあるのが仕入です。農業にも仕入があります。種苗、素畜、肥料、飼料、農薬などです。一方、売上原価は仕入の他、農業生産に関する経費が含まれます。例えば、作業委託料、農機の燃料費、農地賃借料などです。
仕入及び売上原価の基本的な会計処理については、製造業の原価計算に準じます。
また、農産物のうち販売できる状態のものについては「製品」、田畑や牧場で生育中のものは「仕掛品」、生育前の種苗は「原材料」、そして未使用の肥料や飼料、農薬などは「貯蔵品」として在庫となります。在庫計算も製造業の原価計算に準じます。なお、種苗や素畜から直接農産物を得ない果樹や乳牛などについては次の項目をご覧ください。
これらの特徴を踏まえた会計上の詳しい解説は、3回目で解説します。

農業における経費

事業をするには仕入の他に人件費や賃借料、消耗品費など経費がかかります。事業によって得られる利益は売上から売上原価と経費を差し引いたものになるのですが、農業に係る経費にはどのようなものがあるのでしょうか?
比較的金額の大きい経費としては、燃料費、光熱費、減価償却費、賃借料、販売委託費が挙げられます。
このうち、農産物の収穫や生育にかかる活動で発生した経費については、売上原価として販売した農産物の売上と同じ時期に費用となります。一方、農協等に支払う販売委託料や直売店の運営費など販売できる状態になってから発生する経費は販売費、事務用品費など生産販売に直接関係ない事業経費は一般管理費となります。販売費及び一般管理費は略して「販管費」と呼ぶこともあり、いずれの経費も売上に関係なく経費が発生したとき(支払ったときとは限りません)に費用になります。
発生と支払の違いについては、3回目で解説します。

農業における固定資産

農業では土地や生産施設など生産する場所が必須です。また、近代農業では農機や管理設備など機械装置を多く使います。このようなビジネスにおいて長期間利用するものについては会計上「固定資産」として取り扱います。ここまでは、農業以外のビジネスと共通しているのですが、これらの他に農業特有の固定資産があります。
全ての農家に共通するものではないのですが、牛馬等や果樹等、それ自体が農産物として販売されず、長期間成育させる生物です。牛馬等のうち、畜肉用や将来の競走馬として厩舎に販売する目的で生育されているものはそれ自体が販売目的の農産物となるため棚卸資産のうち「仕掛品」となりますが、それ以外の例えば搾乳用や観賞用、繁殖用、競走用などの牛馬等は「固定資産」となります。
固定資産は一定の年数にわたって経費化する「減価償却」を行います。詳細については、3回目で解説します。

保険・共済と会計

農業は自然相手の事業であるため、天候や災害、疫病により収穫が大きく変動します。また、農作業は肉体労働が伴うため、作業中に不測のケガや病気が起こる可能性も相対的に高いです。そのため万が一に備えて保険や共済に加入することが多いでしょう。
では、保険や共済の掛金は前述の事業経費に含まれるのでしょうか?含まれるものと含まれないものがあります。例えば収入共済は事業収入保障に当たるため、共済掛金は事業経費となります。一方、生命保険や生命共済は作業中の事故が原因であっても、保険金支給事由が作業中事故に限定されないため個人経営の場合掛け金は経費となりません。また、収入共済金は事業収入になりますし、生命保険金や生命共済金は個人経営の場合事業収入になりません。火災保険や建更共済、自動車保険などモノに対する保険は対象となるモノが事業用なのかどうかで事業に関する収入・経費に含めるか判断します。

税金は経費になるか

税金も払うものですので、事業経費となるかどうかの議論があります。税金についても農業経営に直接関連するかしないかで事業経費になる税金とならない税金があります。
1.事業経費となる税金の例
・農地・農業施設・設備に関連する固定資産税
・農業用車両に対する自動車税及び軽自動車税
・農地や農業用施設を取得したときの不動産取得税
・事業に関する契約にかかった印紙税
・事業経費に含まれる消費税のうち仕入税額控除に充当されなかった部分
・農業法人の場合における法人税及び法人住民税
・事業税
2.事業経費とならない税金の例
・個人経営の場合の所得税及び住民税
・自宅及び自宅用地に対する固定資産税
・私用車両に対する自動車税及び軽自動車税
・自宅及び自宅用地を取得したときの不動産取得税
・相続税及び贈与税

おわりに

今回は農業会計の特徴をかいつまんでお話ししました。
2回目以降は以下のテーマを取り上げる予定です。
第2回 農業に関わる税金の詳細
第3回 農業経理・決算事務の留意点①
第4回 農業経理・決算事務の留意点②
第5回 農業法人の決算・申告