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消費税インボイス解説シリーズ⑤

令和5年(2023年)10月1日より開始される適格請求書(インボイス)に関して、個別具体的な論点を解説していきます。

インボイス制度に関する様々な疑問その1

インボイス解説シリーズ5回目と6回目の2回で、インボイス制度に関する細かい論点・疑問点を国税庁Q&Aに載っているものの中から解説していきます。
1回目から前回4回目までインボイス制度に関してほとんどの事業者に共通する一般的な論点を解説しました。
わかりやすく解説するよう心掛けてはいますが、抽象的な話も多くイメージしにくいかと思います。そこで、今回は実際の業務がどうなるのかイメージしやすくなるよう、細かい論点を取り上げることにしました。
全ての疑問について触れることは難しいですが、参考になることがあれば幸いです。

事業者登録の取消しはあるか?取りやめることは出来るか?

適格請求書発行事業者登録は以下のいずれかに該当する場合、所轄税務署長の決定により取り消しとなります((新)消費税法57条の2第6項)。
① 1年以上所在不明であること
② 事業を廃止したと認められること
③ 合併により消滅したと認められること
④ 消費税法の規定に違反して罰金以上の刑に処されたこと
また、取引先が一般消費者のみになったり、非課税取引のみになったりするなどインボイスの発行及び交付の必要性が無くなった場合、「登録取消届出書」を所轄の税務署に提出することにより、適格請求書登録事業者をやめることが出来ます((新)消費税法57条の2第10項第1号)。ただし、登録取消しの効力は提出日の翌課税期間から(課税期間終了まで30日以内提出の場合、翌々課税期間から)となり、課税期間が終了するまでは引き続きインボイスの発行と交付が必要ですのでご注意ください。
なお、事業廃止や法人解散、合併に伴い適格請求書発行事業者登録をやめる場合は別途「事業廃止届出書」または「合併による法人の消滅届出書」を提出することで税務署長による取消決定がありますので「登録取消届出書」は不要です。
(参考:令和3年7月改定版インボイスQ&A 問14,問15,問17)

返品や値引があった場合どのようにすればよいか

返品や値引を行った場合、マイナスのインボイスとも言える「適格返還請求書」を交付することになります((新)消費税法57条の4第3項)。記載事項は通常のインボイスと同様で、金額や数量がマイナス記載になります。「適格返還請求書」交付不要な取引の要件も通常のインボイスと同様です。
また、大量購入などに伴う対価の返還(いわゆる割戻やリベート)を行う場合も「適格返還請求書」を交付します。
(参考:令和3年7月改定版インボイスQ&A 問27,問52)

発行したインボイスに間違いがあったことに気づいたらどうするか

発行したインボイスに間違いがあったことに気づいた場合、交付した事業者は修正したインボイスを取引先に再発行しなければなりません((新)消費税法57条の4第4項,第5項)。インボイスを受取った事業者が手書きなどで内容を追加・訂正した場合、そのインボイスは無効となります。そのため、受取ったインボイスに誤りがあったことが分かった場合はご面倒でも交付した業者に修正再交付を依頼してください。
一方、インボイスを交付した事業者からインボイス修正依頼を受けた場合はご面倒でも再発行に応じてください。実務的には
1.改めて記載事項のすべてを記載したものを交付
2.修正した事項のみを明示したものを交付
する方法の2つがあります。
(参考:令和3年7月改定版インボイスQ&A 問29,問30)

インボイス交付不要の取引を具体的に

第1回目でお話しましたが、インボイス交付が不要な取引は以下の通りです。
1.3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の輸送
2.出荷者等が別の業者に委託して卸売市場において行う生鮮食料品等の販売
3.生産者が農協、漁協又は森林組合等に委託して行う農林水産物の販売
4.3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等
5.郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限られます)
このうち、1~3は後述し、ここでは4.の範囲について詳しく解説します。
自動販売機などにおける3万円未満取引のインボイス交付不要の対象となる機械は自動販売機のほか、コインロッカーやコインランドリー、金融機関のATMにおける手数料の伴う入出金・振込など1つの機械で代金受領とサービス提供が完結する機械に限られます。そのため、セルフレジやコインパーキング、食券・入場券の券売機、ネットバンキングなど資産の譲渡やサービス提供は別に行われる場合は、取引金額が3万円未満でもインボイス発行・交付依頼があった場合は、インボイス適格の領収書やレシートを発行・交付する義務があります。
(参考:令和3年7月改定版インボイスQ&A 問32,問33,問38)

電車やバス、船舶のインボイスの取扱い

この項目では、筆者の得意分野である公共交通機関におけるインボイスについて解説します。
前項目のインボイス発行不要となる公共交通機関における3万円未満の判定は、1回の取引の税込金額で判定します(インボイス通達3-9)。例えば、新幹線の東京~新函館北斗間の指定席を大人4名分購入する場合、乗車券・指定席特急券23,630円/1人×4人=94,520円についてインボイス発行免除要件に該当するかどうか判断します(この例ですと客からインボイス適格の領収書を求められた場合、販売した事業者はインボイス適格の領収書を発行する義務があります)。乗車券(特急券)1枚単位や、法人販売によくある月次まとめ請求金額単位で判定しませんのでご注意ください。
また、3万円未満取引のインボイス発行不要となる公共交通機関は具体的に以下の通りです。
1.船舶:国内のみで航行する客船やフェリー
     国際航路及びRo-Ro船や貨物船など旅客を載せない船は対象外です
2.バス:一般乗合旅客運送事業として行うもの全て
     市内近郊路線の他、空港リムジンバスや都市間高速バス(ツアー形式のものを除く)、定期観光バスも含みます
3.鉄道:JR、地下鉄、私鉄の他、路面電車、モノレール、新交通システムなど
     旅客運送のみが対象のため、入場券や手回品料金、貨物輸送は対象外です
飛行機も公共交通機関ではないかお思いの方がいると思いますが、飛行機は1回の購入金額が3万円未満でも仕入税額控除のためにはインボイスが必要です。この免除特例は不特定多数が一度に利用し発行する手間を軽減するための特例で、飛行機の場合金額に関わりなく搭乗開始前に購入し搭乗者を把握するため、発行があまり煩雑でないとの理由で特例が適用されていないと思われます。
なお、インボイス不要な取引で実際にインボイスを受取って保存していない場合は、会計帳簿に利用日と利用した交通機関、取引金額を記載すれば仕入税額控除が認められます。むろん、インボイス不要の取引であってもインボイス交付を依頼し保存することは可能です。
(参考:令和3年7月改定版インボイスQ&A 問33~35,問80,問85)

委託販売のインボイスはだれが行うのか

この項目では、委託販売のインボイスについて解説します。
最初にインボイス発行不要となる取引のうち委託販売に該当する
2.出荷者等が別の業者に委託して卸売市場において行う生鮮食料品等の販売
3.生産者が農協、漁協又は森林組合等に委託して行う農林水産物の販売
について詳しく解説します。
2.の対象となる「卸売市場」の範囲ですが、①中央卸売市場、②地方卸売市場、③①及び②に準ずる卸売市場のうち農水大臣の確認を受けた市場です。
また、農協、漁協又は森林組合等に委託する農林水産物の販売のうち、対象となる取引は、生産者が売値・出荷時期・出荷先の条件を付けない「無条件委託方式」で、かつある区分の農林水産物について一定の期間における平均価格をもって生産者に期間内の販売代金を精算する「共同計算方式」であるもの、つまり売手である生産者が最終的な販売に関する情報について知りえない状態の委託販売に限られます。
これらの取引の対象になる生鮮品を仕入れた事業者が仕入税額控除を受ける場合、実際の販売者である生産者等に代わって卸売市場や農協等が発行する仕切書等のインボイス適格書類を保存します。
なお、卸売市場や農協等への委託販売に限らず委託販売の場合、
1.委託業者、受託業者共に適格請求書発行事業者である
2.委託業者が受託業者に事前に自らが適格請求書発行事業者であることを通知している
ことを条件に受託している事業者が受託者名義で代わりにインボイスを購入者に発行・交付することができます。
(参考:令和3年7月改定版インボイスQ&A 問36,問37,問39,問65)

おわりに

今回はインボイス制度導入に関する個別具体的なよくある論点の解説の前半でした。1回の記事ではボリュームがあまりに多いため、次回その2として解説の後半を掲載します。
なお、国際航路がインボイス免除特例の対象外と申し上げましたが、国際航路は船、飛行機共に輸出免税の対象(消費税法第7条第1項第3号)となり、そもそも日本の消費税がかからないため、インボイスの対象外になることを最後に補足します。