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消費税インボイス解説シリーズ②

令和5年(2023年)10月1日より開始される適格請求書(インボイス)に必要な記載事項について詳しく解説します

適格請求書(インボイス)の記載について

インボイス解説シリーズ2回目の今回は、インボイスの中身にかかわる記載事項について詳しく解説します。インボイスの記載事項はインボイスと認められるための必須事項であり、いずれか一つでも欠けていると「インボイス」とは認められません。記載事項の欠如があることで買い手である事業者が消費税の仕入税額控除を受けられず消費税を無駄に多く負担することになり、売り手の信用失墜にもつながります。
是非今回の解説をご覧いただき、必要な記載事項とその詳細な取り扱いを理解し、円滑なインボイス導入につなげて頂きたいです。

必要な項目のおさらい

前回の解説で掲げたインボイスに必要な項目をここでおさらいします((新)消費税法第57条の4①、インボイス通達3-1)。
① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 課税資産の譲渡等を行った年月日
③ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡である旨)
④ 課税資産の譲渡等の税抜価格又は税込価格を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
⑤ 税率ごとに区分した消費税額等
⑥ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

なお、上記の6つの記載事項が載っていれば様式は自由です。また、インボイスは名称が必ずしも「請求書」である必要はありません。つまり、必要な記載事項だけ注意して頂ければ結構です。

発行事業者の氏名又は名称は正式名称のみなのか

ここからは記載事項の詳細について解説していきます。ここでは、①適格請求書発行事業者の氏名又は名称について詳しく解説します。
例えば、個人商店ですと事業主の氏名ではなく、愛称や屋号を請求書などに記載しているケースがあります。このような場合事業者の氏名の記載は必要になるのでしょうか?国税庁のインボイスQ&A問35によりますと、電話番号などを併記するなどして発行事業者を特定できるのであれば、正式に登録されている氏名又は名称がなくても、屋号や省略した名称などを記載しても差し支えないとされています。
また、売手と買手で情報共有している取引先コードをもって発行事業者を識別する形式の請求書等の場合、双方が取引先コードで業者を特定できれば、正式に登録されている氏名又は名称がなくても差し支えないとされています(国税庁インボイスQ&A問36)。
以上の取扱いを踏まえますと、取引先同士で具体的に業者を特定できる程度の記載があれば、①適格請求書発行事業者の氏名又は名称の要件を満たすことになります。ただし、税務調査や会計監査等で第三者がインボイスを確認することもありますので、取引先コードの例であれば取引先コード一覧表を用意するなど取引当事者以外の第三者でも発行事業者がわかる工夫は必要でしょう。

登録番号とは?

続いて登録番号について解説します。登録番号とは、インボイスを発行する業者に国税庁から付与される識別番号で、この番号があることで公式にインボイスを発行できる業者であることがわかります。
登録番号のルールは、法人の場合「T+(法人番号13桁)」で、個人事業者の場合「T+(新たな固有番号13桁)」です。登録番号はインボイス発行業者登録の際に付与されます。登録手続の詳細に関しては次回お話いたします。
登録番号の記載がない場合、名称などで業者が特定できたとしてもインボイスとして認められないのはもちろんですが、実際には登録されていない番号があたかも登録番号であるかのように記載される場合もインボイスと認められません。そのため、架空の番号を記載してあたかもインボイスであるかのように装ったり、インボイス発行業者であるかのように偽る不正も想定されます。そこでこのような不正を防止するため、登録業者の一覧データベースである「適格請求書発行事業者登録簿」が登録開始日である令和3年10月より国税庁HPで公表され、真正なインボイス発行事業者かどうか確認できることになっています。
なお、登録番号は国税庁への登録が済んでいればインボイス制度開始前でも請求書等に記載して差し支えないことになっています(インボイスQ&ANo.50)。

課税資産の譲渡等を行った年月日とは?

次に「②課税資産の譲渡等を行った年月日」について解説します。
この項目は現行の請求書や領収書等にも記載が求められていますが、実際に物の引渡しやサービスを提供した日や月を何らかの形で記載されていれば問題ありません。例えば、請求書の明細行に取引日を記載したり、「○月分」などの記載です。請求書等の発行日は請求書を発行する日ですので、取引日当日の発行でない場合、発行日の記載をもって②課税資産の譲渡等を行った年月日を記載していることになりませんので、取引日の翌日以降請求書等を発行する場合、取引年月日の記載を忘れないようご注意ください。

税率ごとの区分の記載と消費税額の計算・記載

この項目では、
④課税資産の譲渡等の税抜価格又は税込価格を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
⑤税率ごとに区分した消費税額等
について解説します。
現行の複数税率対応請求書等(区分記載請求書等)の記載における税率や金額の記載については、
税込価格を税率ごとに区分して合計した金額 例:税込合計 8%分 1,080円 10%分 1,100円 を記載することになっています。
ただし実務上は 例:合計 8%分 税抜1,000円(消費税80円) 10%分 税抜1,000円(消費税100円) 
のように税抜金額と消費税額を併記する形で記載している業者も多くあります。
インボイス制度が導入されると最低消費税額合計を明記する必要があり、税率ごとの消費税額の記載がない場合、インボイスとは認められません。ですので、記載例は上記の税抜金額と消費税額を併記する形、または、
合計 8%分 税込1,080円(消費税80円) 10%分 税込1,100円(消費税100円)
のように税込金額と消費税額を併記する形で記載します。
なお、インボイスについては令和3年(2021年)4月1日から義務化された金額の総額表示(税込表示)の対象外ですので、念のため申し添えます。

適格簡易請求書

前項目までは記載事項の詳細な解説をしました。しかしながら、コンビニやスーパー、交通機関など不特定多数の利用者がいる場合、先述の全ての記載事項を記載しようとすると量が膨大で負担が非常に大きくなります。そこで以下に掲げる事業者については記載事項が簡便な適格簡易請求書の発行と交付でインボイスを交付したと認められます((新)消費税法第57条の4第2項、(新)消費税法施行令第70条の11)。
① 小売業
② 飲食店業
③ 写真業
④ 旅行業
⑤ タクシー業
⑥ 駐車場業
⑦ その他これらの事業に準ずる事業で不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業
なお、⑥駐車場業についてはコインパーキングなど不特定かつ多数の者に対するものに限られ、月極など駐車場利用者があらかじめ決められている場合は簡易でない適格請求書等の発行が必要ですのでご注意ください。

適格簡易請求書の記載事項は以下の通りです。
① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 課税資産の譲渡等を行った年月日
③ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡である旨)
④ 課税資産の譲渡等の税抜価格又は税込価格を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
⑤ 税率ごとに区分した消費税額等
です。簡易といっても「○○様」のように⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称が不要になるだけなのですが、不特定多数の客相手ですと、相手の名前を書く必要がないだけでも負担が軽減されます。先述の通り、「適格請求書」といっても「請求書」形式もしくは名称である必要はなく、レジなどから出力されるレシートでも記載事項が具備されていればインボイスと認められます。
つまり、現行のレシートに追加される必要事項は、登録番号と消費税額のみです。
レジや券売機、駐車場発券機などについて既にインボイスの記載事項に対応している機種があり、改修対応もできますので、インボイス未対応の業者におきましては、余裕のあるうちに業者に問い合わせることをおすすめします。

おわりに

今回はインボイスに記載する事項について解説しました。消費税の仕入税額控除を受けることができるインボイスであるために記載事項を全て満たす必要がありますが、一度準備さえできればそれほど面倒ではなく、現在お使いの請求書や領収書、レシートの様式に項目を追加するとの理解でよろしいと思われます。もっとも、今回のインボイス制度導入を機に様式を大幅に見直す事業者様もいらっしゃるかと思います。その際は、見直しに係るコストと便益をよく比較検討してください。
次回はインボイス制度導入にあたっての準備作業と時期について解説しますので、併せてご覧ください。