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相続税解説シリーズ~おまけ・贈与税~

贈与税の概要を理解しましょう

相続税について10回の解説シリーズをアップいたしました。今回は相続税とかかわりが深く、同じ相続税法で規定されている贈与税について解説します。
贈与は財産の一方的な移転という点は相続と同じですが、生前に随時行われ、移転する財産も任意である点が相続と大きく異なります。以上の共通点と相違点を踏まえ、相続税解説シリーズのおまけという位置づけであるため、相続税と共通する論点はなるべくこれまでの相続税解説10回シリーズに委ね、相違する点や贈与税独特の論点を詳しく解説する形で述べさせていただきます。

贈与税の納税義務者

最初に贈与税の納税義務者つまり、贈与税を払う必要がある人について解説します。贈与税の納税義務者は相続税法第1条の4第1項に規定されています。条文をかみ砕いて説明すると、「遺贈を除く贈与により個人から財産を取得した者」です。
もちろん世界中の受贈者が日本の贈与税納税義務者ではなく、
・贈与の時点で日本国内に過去10年以上居住実績がない外国籍の人
・贈与の時点で日本国内に過去10年以上居住実績がない贈与者からの贈与は日本の相続税を課税されません。
「過去10年以上」の非居住要件がある理由は、相続税の場合と同じく形式だけの国外移住などによる課税逃れ防止のためです。

贈与じゃないのに贈与税がかかることがある?

財産を実際に贈与しているわけではないのに贈与税が課税されることがあります。いくつか例を挙げます。
1.生命保険金の受取り(相続税法第5条、第6条)
相続税解説シリーズ第7回で紹介していますが、保険契約者(保険料支払人)と保険受取人が異なる場合に贈与税が課税されます。ただし、保険契約者の死亡に伴う保険金の受取は相続税の対象となり、贈与税は課税されません。また、相続税課税対象となる保険金の受取と異なり、贈与税課税対象の保険金受取には保険金控除がなありませんのでご注意ください。

2.著しく低い価額での譲受け(相続税法第7条)
通常対価を支払って財産を譲り受ける場合課税の問題は生じません。ところが、著しく低い価額(おおむね時価の70%未満)で譲り受けた場合、譲受人に財産の実質的な増加があったとみなし、時価と支払対価との差額が贈与税の課税対象となります。
なお、もう一方の当事者である譲渡人についても時価で売却し、時価と受取対価との差額は寄付金とみなされます。この場合、寄付金控除の対象でない限り節税効果はありません。

3.信託受益権の移転(相続税法第9条の2)
信託に組み込まれている財産は所有権移転の有無に関わらず、信託受益権が移転したときに課税関係が生じます。特に信託受益権を無償もしくは著しく低い価額で譲受けたときは、受益権の時価から支払対価を差し引いた差額に対し贈与税が課税されます。

4.名義預金や名義株の移転
税金は名義に関わらず実質的に財産から利益を得ている人に対してかかります。このため、単に預金や株式の名義変更をしただけで贈与税の課税対象になるわけではありません。名義変更をしなくても、例えば
・預金の入金内容が親からの入金ではなく子の収入が主になった
・届出印を本人のものに変更した
・株式の配当金入金口座を違う人の名義の口座に変更した
など、実質的に財産が移転していると認められる事情があると、名義変更がなくてもその時点で贈与があったとみなされることがあります。
一方、例えば子名義の口座を開設しても親の収入から入金して子自らの経費支払には使われていなかったり、親が通帳や届出印を保管しているなど実質的に親の財産と認められる場合はたとえ親の財産を子名義の口座に預入れたとしても預入をもって贈与とはみなされないこともあります。

借金と共に財産を譲り受けたときの税金

実質的に財産が一方的に移転したとき、一方的に移転した財産が贈与税の課税対象になると説明しましたが例外もあります。例えば住宅ローン債務引受けと共に住宅を贈与するように、借金と共に財産を譲り受けたいわゆる負担付贈与を受けた場合です。
この場合、負担付贈与を受けた人の贈与税は「贈与者から借金をし」「借金を対価に充当して財産を取得した」とみなして、贈与財産の評価額から引き受けた債務の額を引いた差額に対して贈与税が課税されます(相続税法第9条)。もし、その差額がマイナスであった(債務の額のほうが大きい)場合には贈与税が課税されません。
一方、負担付贈与をした人については「時価で財産を売却し」「その売却代金で債務を返済した」とみなして、移転した債務の額から贈与財産の帳簿価額を引いた差額に対して所得税または法人税が課税されます。なお、死亡に伴う財産紐づきの債務移転も負担付贈与同様に死亡した人に所得税が課税されます。詳しくは相続税解説シリーズ第3回目をご覧ください。

贈与税が課税されない贈与もあります

一方、財産の贈与であっても贈与税が非課税になる場合もあります。以下列挙します(相続税法第21条の4)。
1.法人からの贈与により取得した財産
→なお、法人から個人への贈与は所得税の課税対象となります。

2.扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの
→例えば、生活資金又は教育資金名目でも子が株式や住宅購入資金へあてたなど実質的に生活費又は教育費に充当されていない場合は課税対象となります。

3.宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者が贈与により取得した財産で当該公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの
→贈与を受けた個人が公益事業を運営している場合で、その財産が例えばその個人の資産運用に充てたり、親族への給与支払いに充てるなど私的流用に充てられている場合は課税されます。

4.特定公益信託で学術に関する顕著な貢献を表彰するものとして、若しくは顕著な価値がある学術に関する研究を奨励するものとして財務大臣の指定するものから交付される金品で財務大臣の指定するもの又は学生若しくは生徒に対する学資の支給を行うことを目的とする特定公益信託から交付される金品
→つまり、返済義務のない給付型奨学金のうち、財務大臣の認定を受けた奨学金です。なお、返済義務のある奨学金はそもそも贈与税の課税対象外です。

5.条例の規定により地方公共団体が精神又は身体に障害のある者に関して実施する共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利

6.公職選挙法の適用を受ける選挙における公職の候補者が選挙運動に関し贈与により取得した金銭、物品その他の財産上の利益で同法第百八十九条(選挙運動に関する収入及び支出の報告書の提出)の規定による報告がなされたもの
→つまり収支報告書に記載した名目上の政治献金です。収支報告書に記載がない政治献金には贈与税がかかるというわけです。

7.特定障害者扶養信託契約に基づく信託受益権

8.個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物又は見舞いなどのための金品で、社会通念上相当と認められるもの
→なお、相続税法解説シリーズ第8回でも解説しましたが、個人から受ける香典や花輪代など葬儀に関連する寄付は相続税にも影響しません。

9.直系尊属(両親または祖父母)から贈与を受けた住宅取得等資金のうち1年間で一定金額以内の部分
→1年間の上限額が定められており、令和3年12月31日までに新築等に係る契約が締結された住宅用家屋購入資金が対象で省エネ住宅認定されるか否か、また適用される消費税率によって上限額が異なります。なお、令和4年以降締結の新築契約について適用になるかどうかは未定です。

10.30歳未満の人が直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち年1,500万円以内の部分
→この措置は受贈者の所得が1000万円以上ある場合は適用されません。また、受贈者が30歳になるなど教育資金口座の役目を終えたときに教育資金に充当されず余った教育資金はその時点で課税対象の贈与があったとみなされます。
なお、富裕層の節税手段として利用されるケースが多く富の再分配の観点から問題ありとの指摘から、令和3年度税制改正で贈与年度に関わらず全額相続財産に加算されるとともに、令和3年4月1日以降の祖父母から孫への教育資金贈与の場合相続税の2割加算が適用されることになりました。

11.20歳以上50歳未満の人が直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち年1,000万円以内の部分
→この措置も上記の教育資金一括贈与と同様、受贈者の所得が1000万円以上ある場合は適用されません。また、これらの資金も富裕層の節税手段として利用されるケースが多いため、令和3年度税制改正で教育資金一括贈与と同じ内容の改正が行われています。なお、令和4年4月1日から成人年齢引き下げに伴い、贈与を受ける人について適用対象年齢が18歳以上に拡大されます。

12.相続や遺贈により財産を取得した人が、相続があった年に被相続人から生前贈与により取得した財産
→理由は相続前3年以内の贈与は全て相続税の課税対象となり、贈与に関する税金も相続時に一括精算されるためです。
 

贈与税の計算

贈与税は1月1日から12月31日までの1年単位で計算し、計算式は以下の通りです。相続税と異なり、所得税などと同様一人ずつ計算します。
贈与税額=(1年間の贈与財産評価額の合計ー110万円ー配偶者控除)×贈与税率

贈与税率は以下の通りです。
1. 各種控除後評価額が200万円以下      各種控除後評価額×10%
2.     〃  が200万円超300万円以下 各種控除後評価額×15%-10万円
3.     〃  が300万円超400万円以下 各種控除後評価額×20%-25万円
4.    〃  が400万円超600万円以下 各種控除後評価額×30%-65万円
5.    〃  が600万円超1,000万円以下 各種控除後評価額×40%-125万円
6.    〃  が1,000万円超1,500万円以下 各種控除後評価額×45%-175万円
7.    〃  が1,500万円超3,000万円以下 各種控除後評価額×50%-250万円
8.   〃  が3,000万円超 各種控除後評価額×55%-400万円
なお、直系尊属から対象年度の1月1日現在で20歳以上(令和5年度からは成人年齢引き下げに伴い18歳以上)の子や孫に贈与された財産に対しては、以下の軽減税率が適用されます。
1. 各種控除後評価額が200万円以下      各種控除後評価額×10%
2.     〃  が200万円超400万円以下 各種控除後評価額×15%-10万円
3.    〃  が400万円超600万円以下 各種控除後評価額×20%-30万円
4.    〃  が600万円超1,000万円以下 各種控除後評価額×30%-90万円
5.    〃  が1,000万円超1,500万円以下 各種控除後評価額×40%-190万円
6.    〃  が1,500万円超3,000万円以下 各種控除後評価額×45%-265万円
7.    〃  が3,000万円超4,500万円以下 各種控除後評価額×50%-415万円
8.   〃  が4,500万円超 各種控除後評価額×55%-640万円

配偶者控除は、婚姻期間が20年以上の配偶者間で住宅や宅地、これらの購入資金を贈与し、入居中または申告期限までに入居・購入予定の場合に最大2000万円の控除を受けられるものです。
なお、60歳以上の直系尊属から20歳以上(令和4年4月1日からは成人年齢引き下げに伴い18歳以上)の子や孫に贈与された財産については、毎年精算せず贈与者である直系尊属の死亡時に相続税の対象に含めて一括して税金を精算する「相続時精算課税制度」を選択することが出来ます。この制度を一度適用すると以後の同一当事者間の贈与にも適用されますのでご注意ください。詳しい解説は相続税解説シリーズ第9回をご覧ください。

贈与税の申告・納税

贈与税申告書の提出期限は、翌年2月1日から3月15日までとなっており、所得税の確定申告時期と重なります(相続税法第28条1項)。また、e-Taxを使って電子申告することもできます。
贈与税の納付は上記の申告期限までに行います(相続税法第33条)。なお、相続税と異なり年賦延納制度(相続税法第38条)や、不動産・有価証券等による物納制度(相続税法第41条)はなく、現金一括払いのみです(ただし、クレジットカード納付は利用できます)。

まとめ

今回は贈与税について説明しました。贈与は相続と異なり計画的に財産移転できることから、財産移転時期と控除制度の理解が節税対策では重要となります。また、財産移転に対価を伴うと計算方法も税率も異なる所得税の対象となることから、無償と有償の場合でシミュレーションし購入価格とかかる税金と比較することも節税対策になります。このような特徴を理解して財産の引継ぎをご検討ください。