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相続税解説シリーズ⑨

相続税はいくらかかるのか?

相続税解説シリーズ第9回目の今回は、いよいよ税金計算についてです。初めに多くの方が相続税で気にする基礎控除から解説し、その後具体的な税金計算について解説します。後半では贈与税の相続時精算課税と外国税額控除について解説し、相続税計算において考慮すべき事項を理解できるように構成しています。

税金を計算する前にまず基礎控除

「基礎控除」と聞くと相続税がかかるかかからないのかを判断する基準であると理解されている方が多い、重要な論点です。
基礎控除は課税価格(=相続財産-債務控除額ー葬儀費用)から控除するもので、控除額は3,000万円+600万円×相続人の数です。よく「財産が3,000万円以下だから相続税は関係ない」という話を聞きますが、3,000万円は基礎控除の最低金額なのです。
重要なのは600万円部分に掛ける「相続人の数」です。相続税法第15条2項によると「相続人」には相続放棄をした人を含み、養子については実子がいる場合や実子がなく養子が1人の場合は1人、実子がなく養子が2人以上の場合は2人とするとしています。
また、相続税法第15条3項によると特別養子縁組の養子や代襲相続した相続人の子孫は「実子」の1人として数えることになっています。

相続税の税率

いよいよ税額の計算について解説します。
税額計算をする前に先ほどの「課税価格ー基礎控除額」の総額を法定相続人が法定相続割合で相続したと仮定した割合で按分します。按分後各相続人(遺贈受益人)の按分額それぞれに以下の税率をかけて計算します。
1. 1,000万円以下の部分 10%
2. 1,000万円超3,000万円以下の部分 15%
3. 3,000万円超5,000万円以下の部分 20%
4. 5,000万円超1億円以下の部分 30%
5. 1億円超2億円以下の部分 40%
6. 2億円超3億円以下の部分 45%
7. 3億円超6億円以下の部分 50%
8. 6億円超の部分 55%
相続税は累進課税であり、たとえばある相続人の按分額が2,000万円だった場合、1,000万円については10%、2,000万円から1,000万円を引いた残額1,000万円については15%を掛けます。つまり、按分額全額に一律の税率が適用されるのではなく、一定金額に至るまでは低い税率、一定金額以上は1段階高い税率が適用されます。以上の累進課税を考慮した分かりやすい速算表方式ですと以下の通りです。
1. 按分額が1,000万円以下       按分額×10%
2.  〃 が1,000万円超3,000万円以下 按分額×15%-50万円
3.  〃 が3,000万円超5,000万円以下 按分額×20%-200万円
4.  〃 が5,000万円超1億円以下 按分額×30%-700万円
5.  〃 が1億円超2億円以下 按分額×40%-1,700万円
6.  〃 が2億円超3億円以下 按分額×45%-2,700万円
7.  〃 が3億円超6億円以下 按分額×50%-4,200万円
8.  〃 が6億円超以下 按分額×55%-7,200万円
その後、各相続人の上記税額を一旦集計し、集計した相続税の総額を再び各相続人(遺贈受益人)の課税価格を基準に按分して各相続人(遺贈受益人)の税額を計算します。
なお、遺贈の場合税額に20%加算があります。

税額控除が使えるケース

相続税は一度に多額の税金が発生するため、負担感が他の税金以上に高くなります。そこで、負担を軽減し生活に支障をきたすことがないよういくつか税額控除があります。
①贈与税控除
相続開始前3年以内に被相続人から相続人に贈与された財産について相続税の課税対象にもなることは以前説明しましたが、このままですと贈与税と相続税の二重課税となります。この二重課税を防止するため、贈与された年度に課税された贈与税のうち、相続税の課税対象にもなった財産の部分については税額控除をうけることができます(相続税法第19条)。

②配偶者控除
配偶者が相続に関わる場合、配偶者が最も多く財産を相続するケースが多いため、配偶者控除として最大1億6,000万円の税額控除を受けることができます。

③未成年者控除
相続人の中に未成年者がいる場合、未成年者は経済力が不十分なため、以下の算式で計算した税額の控除を受けることが出来ます。
未成年者控除の金額:(20歳-相続開始時の年齢)×10万円
なお、民法改正により令和4年4月1日から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられますが、未成年者控除についても令和4年4月1日以後生じる相続から、控除対象年齢が18歳未満に引き下げられ、未成年者控除も(18歳-相続開始時の年齢)×10万円に引き下げられます。

④障害者控除
障害者認定を受けている相続人については、以下の算式で計算した税額の控除を受けることが出来ます。ただし民法上の法定相続人である場合に限定されます。
障害者控除の金額:(85歳-相続開始時の年齢)×10万円
なお、当該相続人の税額から引ききれない障害者控除の金額がある場合、その相続人の3親等内の親族の相続税額の控除に充てることができます。

⑤相次相続控除
例えばお父様が亡くなってから5年後にお母様が亡くなるなど短い期間で2度相続が生じた場合、もともと多額な相続税を短期間で2度負担することになり、負担感がさらに高くなります。そのため、ある被相続人(先ほどの例ではお母様)の相続開始日前10年以内に相続した財産(先ほどの例ではお父様から相続した財産)を相続した場合、前回の相続で払った相続税額相当につき以下の税額控除があります。
相次相続控除の金額:前回相続の際被相続人に課税された相続税額×(今回相続の課税価格総額÷(前回相続の課税価格総額ー前回相続の際被相続人に課税された相続税額))×今回当該相続人が相続した財産の割合×(10-前回から今回の相続までの年数)/10
なお、今回相続の課税価格総額÷(前回相続の課税価格総額ー前回相続の際被相続人に課税された相続税額)が100%を超える場合100%となります。


生前贈与と相続時精算課税

生前に財産の贈与があると通常贈与のあった年に贈与税が課税されます。一方、生前贈与の目的として生きている間にあらかじめ財産を子に受け継ぐということも多くあります。
そこで、原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対して贈与した場合、「事前」相続と捉え、贈与した父母又は祖父母が亡くなったときにまとめて贈与税を精算する「相続時精算課税」という制度があります。
まず、制度の対象となる贈与のあった年にその都度以下の贈与税額を計算し、毎年確定申告の時期に贈与税申告をします。この他初回適用時には相続時精算課税選択届出書を戸籍謄本などを添付して税務署に提出します。
各年度の贈与税:(制度の対象となる贈与財産の金額ー(2,500万円ー過年度控除済の金額))×20%

次に、相続が発生したとき、対象となる相続人の相続税計算について以下の通り計算します。
(当該相続人の按分額+相続時精算課税を適用した贈与財産の贈与当時の財産価格)×税率ー相続時精算課税を適用した贈与税の過去納税額
以上の計算結果がマイナスとなった場合は過年度贈与税の還付を受けることが出来ます。
なお、この制度は一度適用すると以後の同じ当事者間の生前贈与についてすべて適用され、贈与の都度贈与税を払う方法に戻すことができなくなりますので注意が必要です。

外国で相続税がかかったら

国外に相続財産があったり、被相続人が外国籍の人であったりする場合、財産のある国や国籍のある国からも相続税に相当する税金を課税されることがあります。この場合、2つ以上の国から相続に対する税金を課税される、いわゆる国際的二重課税の状態になります。
そこで相続税においても所得税や法人税と同様に外国税額控除制度があります。
具体的には、全相続財産課税の対象者について、外国で課税された相続税に対応する税金のうち、日本でも課税された国外相続財産の部分について控除を受けることができます。

まとめ

今回は相続税額の計算について解説しました。相続税は複数の人にまたがって課税されるため、計算が複雑です。複雑だとしても言えることは、
1.相続財産の金額が大きいほど税額が増えること
2.今後の生活への配慮が必要な特に相続人には控除制度があること
3.同じ財産に課税された税金の分は控除できること
です。
以上のことを踏まえて万が一の相続の際に税金がかかるのか、またかかるとしたら負担はどのくらい軽減されるのかイメージできましたら幸いです。