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相続税解説シリーズ⑧

その他財産、債務、葬儀費用と相続税

相続税解説シリーズも残り3回となりました。第8回目の今回は第4回から第7回で取り上げなかったその他の財産と、相続財産から控除する債務及び葬儀費用について解説します。
今回は取り扱う範囲が広いため、これまでの解説よりも端折った解説になりますが、相続税がかかる財産の種類と控除対象となる項目が理解できるよう説明させていただきます。

生活に使うものの相続税

普段の生活に使っているもの、例えば家具、家電、乗用車などについては売買実例価額、精通者意見価格等を参考にして評価することが原則ですが、売買実例がないケースや査定することがないものもあります。そのため、相続日時点で新品を買った場合の価格から使用年数に応じた償却費を控除した価額で評価することもできます。
しかしながら、生活用動産は多岐にわたり全部を1つ1つ細かに評価すると時間と手間がかかり結果として申告期限に間に合わないことになりかねません。そこで、1個又は1組の価額が5万円以下のものについては、一世帯単位にまとめて評価することができます。例えば「家財一式○○万円」としてざっくり評価します。多くのケースでは1個5万円を超えるものは乗用車や新品の家具・家電などに限られると思われます。

コレクションの相続税

人によっては日常生活に普段使わないもののお宝などとして大切にしている骨董品や美術品をコレクションとしてお持ちの方もいらっしゃいます。相続税は被相続人が保有していた財産全てが課税対象となりますので、骨董品や美術品などのコレクションも相続財産となります。
評価方法は生活用動産とほぼ同じで売買実例価額、精通者意見価格等を参考にして評価しますが、鑑定結果によっては希少価値が認められ高値になることもあるため注意が必要な財産の一つでもあります。
また、乗用車でも高級車については中古車市場で高値が付くほどのものですと相続税評価額が高くなりますので、相続税対策としては注意が必要です。
コレクションはその人が愛着を持っているかどうかが大事ですので、安易に売却を検討することもいかがのものかと思います。被相続人、相続人それぞれの愛着度が相続税対策を左右するといっても過言ではありません。

知的財産を持っているときの相続税

相続税の課税される財産は形あるものだけではありません。特許権や著作権、営業権など形のない知的財産も課税対象となります。ここでは、知的財産の相続税評価について概略的に解説します。
知的財産の評価額は、知的財産を持っていることによってもたらされる利益(超過利益)などを基準に評価倍率をかけて計算します。具体的な評価方法は知的財産の種類ごとに定めがあります。
ここで著作権の相続について触れます。著作権は著作者人格権、著作財産権、著作隣接権の3つがあり、このうち著作者人格権は著作者の氏名表示や著作物の公表など著作者本人固有の権利であるため、本人が亡くなっても相続されることはなく相続税の課税対象にもなりません。一方、著作財産権と著作隣接権は著作物の利用に関する権利であり、他人に譲渡ができる他、相続対象ともなります。著作権の相続税評価は主に著作財産権の評価となります。
本人固有の権利という意味では医師や弁護士等のように資格者本人の技術、手腕又は才能等を主とする事業に係る営業権も本人が死亡すると消滅するため、相続税の課税対象外となります。

借金などの債務と相続税

第4回から前の項目までは相続財産について解説しましたが、ここからは相続税を減らす効果のある債務について解説します。
控除対象となる債務は、銀行などからの借入金をはじめ、未払金や仕入代金、未払税金など支払義務のあるものが対象となり、残債額が控除額となります。未払税金には被相続人に生前課税された税金の他、第3回で解説した準確定申告により確定した被相続人の所得税も含まれます。一方、借入金や家賃などの保証については原則控除対象の債務とはならず、原債務者側の返済が滞り、保証をしなければならなくなった状態でかつ、保証人が肩代わりした債務の代金を原債務者に請求するいわゆる求償権の行使をしても回収のめどが立たない場合に債務控除対象となります。
なお、ある相続人から被相続人が借入をしていた場合、相続の発生に伴い貸し付けた相続人が借入を引き継ぐ場合、債権者と債務者が同一人物になる(混同)ため債務は消滅しますが、相続税の計算においては相続対象債務として債務控除の対象になりますのでご注意ください。

限定承認と相続税

相続が発生した時、相続人全員が共同して家庭裁判所に申述をすることで、相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ、いわゆる限定承認という制度があり、この場合相続税ではなく被相続人の所得税の対象になることは第2回目で説明しました。今回はもう少し詳しく解説します。
限定承認をすると、債権者に対し債務の限定承認をした旨を伝えたうえで、限定承認した財産の評価額相当額を各債権者に債権の割合に応じて按分して返済し、返済できなかった債務は消滅します。
この場合、税務上は相続時に被相続人が相続人に財産を時価で売却し、相続人が売却代金を債務の返済に充てたと捉え、財産の時価が取得額を上回るいわゆる含み益の場合、その含み益に所得税が課税されます。
なお、相続財産で返済できない債務があった場合、所得税も返済できない債務となることから事実上免除されることになります。

葬儀に関する費用と相続税

相続税の計算に当たり控除対象となるものは債務だけでなく、葬儀関連費用も控除対象となります。ここでは、葬儀関連費用について解説します。
具体例として国税庁HPでは以下の通り列挙されています。
葬式費用となるもの
(1) 葬式や葬送に際し、又はこれらの前において、火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用
(2) 遺体や遺骨の回送にかかった費用
(3) 葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用
  (例えば、お通夜などにかかった費用がこれにあたります。)
(4) 葬式に当たりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用
(5) 死体の捜索又は死体や遺骨の運搬にかかった費用
葬式費用に含まれないもの
(1) 香典返しのためにかかった費用
(2) 墓石や墓地の買入れのためにかかった費用や墓地を借りるためにかかった費用
(3) 初七日や法事などのためにかかった費用

以上の例を見ますと、死亡から埋葬に至るまでの間の行為にかかる費用が該当し、その後の葬儀費用はます。また、香典は相続と関係なく遺族の利益となるため、相続税の計算には影響しません。そのため、香典返しも相続税の計算に含めません。
墓地や墓石については相続税がかからない財産のため除外されています。この他相続税がかからない相続財産として仏壇、神棚などの礼拝対象となる財産や公益事業への寄付金のうち相続税申告期限内に寄付したものが挙げられます。

まとめ

今回はその他財産、債務、葬儀費用について取り上げました。第4回から第7回までに取り上げた項目と比べて相続税対策においてあまり注目されない項目が多いですが、相続税対策において注目すべき論点はいくつかあります。例えば、生活用動産の一括評価、骨董品の評価、債務の限定承認、葬儀費用の範囲です。比較的多くの方に関わる論点ですので、今一度確認いただきたいところです。