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相続税解説シリーズ⑦

退職金と生命保険に関する税金の知識をおさらい

今回は退職金と生命保険の税金について相続税だけではなく税金全般について解説します。退職金と生命保険は受取りが一時で多額に入るものであり、受取事由によって税金の取扱いが異なります。特に生命保険は保険料・保険金共にその時の状況によってかかる税金も大きく変わるため、税金の取扱いについて正しい理解が必要です。
今回のテーマを通して生命保険と退職金の税金について理解いただけますと幸いです。

みなし相続財産

第2回目で軽く触れましたが、相続税の課税対象となる財産は遺産分割協議の対象となる民法上の相続財産だけではありません。税法は実質主義であり、実質的に被相続人から相続人に財産が移転していると認められる取引も相続財産とみなして課税されます。このような取引を「みなし相続財産」といいます。
「みなし相続財産」はあくまで死亡保険金の受取りや死亡に伴う退職金の受取りに限られ、それ以外の事由による保険金の受取りや退職金の受取りについては所得税または贈与税がかかります。今回はパターン分けをしたうえで、かかる税金の種類と計算方法について解説していきます。

生命保険のしくみ

ここからは生命保険の税金について解説していきます。具体的な税の取扱いの前に生命保険の仕組みをおさらいします。生命保険は死亡、病気、けがなどによる経済的な損失をカバーするため、多くの人がお金を出し合い、万が一の死亡、病気、けがなどの際に保険金を払う仕組みです。下記リンクもご参照ください。
保険は保険を契約して保険料を支払う保険契約者、保険の対象者となる被保険者、万が一の時に保険金を受取る保険受取人がおり、3つの当事者は個別に決まります。例えば自分が死亡した時の備えのために妻が保険金を受取る保険を契約した場合、保険契約者は本人、被保険者も本人、保険受取人は妻となります。
税金の課税は保険契約者と保険受取人との関係、そして死亡、病気、けがなど保険金支払事由となる事象(この事象を保険事故といいます)によって判断します。

生命保険料の税金

生命保険は保険金を受取ったときに課税される一方、保険料は税金を減らす要因となります。
具体的には、

・個人で契約した保険料:支払った年に生命保険料控除として所得税の控除対象
 この保険料控除は扶養家族が契約人の保険料を世帯主が負担した場合、世帯主の所得税の控除対象にすることができます。ただし、この場合扶養家族本人の所得税の保険料控除は適用できなくなります。

・会社など法人で契約した保険料:原則経費になるものの保険金や解約返戻金が会社に入る場合全部または一部を積立金として資産計上
 積立金として資産計上する割合は最大返戻率などを考慮した計上割合で、2年前に節税保険対策で見直され厳格化されました。

生命保険金の税務と相続税の取扱い

回りくどい説明になりましたが、ここから生命保険金を受取ったときの税金の取扱いを説明します。
保険契約者、被保険者、保険事故の内容、保険受取人の関係に着目して以下整理します。
①保険契約者と保険受取人が同一人(被保険者、保険事故は問わない)の場合 所得税の一時所得
保険契約時に死亡保険金受取人を被保険者とすることができないため、本人受取は除外しています。
②保険契約者と被保険者が同一人でその人の死亡に伴い別の保険受取人が保険金を受取る場合 相続税
③保険契約者と被保険者が同一人で死亡以外の保険事故で別の保険受取人が保険金を受取る場合 贈与税
④保険契約者と被保険者が別の人(保険事故の内容、保険受取人は問わない)の場合 贈与税

②の場合において保険受取人に相続税が課税されるのですが、死亡保険金は一度に受け取る金額が多額になるため、相続人全員の保険金について「500万円 × 法定相続人の数」で計算した控除があります。
なお、相続人以外の者が②のケースで死亡保険金を受取った場合は上記の控除が受けられない上に、いわゆる「遺贈」とみなされるため税額2割加算の対象となります。

退職金の税務

ここからは退職金の税金について解説します。
退職金の税金の取扱いは、受取事由により異なります。
①退職に伴う退職金の受取り 所得税の退職所得(他の所得とは分離して所得税計算します)
②死亡に伴う退職金の受取り 相続税
死亡に伴い退職金が支給される場合本人が死亡して受け取ることが出来ず、別の人に支給されることから相続税の対象となります。退職金も死亡保険金同様一度に受け取る金額が多額になるため、退職金総額について「500万円 × 法定相続人の数」で計算した控除があり、死亡保険金控除とは別に計算します。
なお、税法上の退職金は退職金規定等に基づき支給される退職金だけでなく、有給買取金や退職記念品、功労金、社会通念を超える弔礼金など退職を理由に退職後3年以内に支給される一時金も退職金として取り扱います。

生命保険と退職金制度を使った相続対策

ここまで生命保険と退職金の税金の取扱いを説明しましたが、相続税の課税対象となる死亡保険金や退職金の受取りには「500万円 × 法定相続人の数」の控除があることからしばしば相続税の節税対策に活用されます。
例えば、遺言代わりに現金を特定の推定相続人に確実に引き継ぐために生命保険を利用したり、オーナー企業で生前は利益を企業内に蓄え、相続時に退職金として遺族に渡したりするなどです。死亡に伴う退職金は相続財産となる株式の評価に当たり債務として扱われ、かつ、企業にとって経費となるため、株価引下げによる相続税の節税効果と会社の経費増加に伴う法人税の節税効果もあります。
ただし、世間一般と比較しあまりに退職金が高すぎると、過度な節税(租税回避行為)とみなされ経費性の否定(損金不算入)をされる可能性もありますので、死亡退職金の支給額は、世間常識に照らして一般的な金額にするよう注意が必要です。

まとめ

今回は相続税の課税対象となることのある生命保険と退職金について相続税にとどまらず他の税金にも触れて解説しました。
生命保険はもしもの時の経済損失の補填、退職金は勤務時の功労に対する報奨が本来の目的なのですが、税金が深く絡むことから、時として本来の目的の性格が薄い節税手段として利用されることもあります。筆者としては生命保険と退職金制度を本来の目的に適うかどうかを踏まえて活用していただきたいと考えております。過度な節税策で追徴課税されると、かえって財産を失う結果になり本末転倒ですのでね…