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相続税解説シリーズ⑥

有価証券の相続税と株の評価

相続税解説10回シリーズも後半の第6回目になりました。今回は有価証券の相続税です。有価証券を保有しているケースの多くは、資産家か会社のオーナーです。有価証券は保有目的によって評価方法が異なり、その方法も複雑です。ですが、この解説では難しい計算方法の説明ではなく、ざっとこんな感じで評価されることを理解していただけるよう、なるべく細かい点は触れず、概要を中心に解説します。もしもの時の有価証券の評価についてイメージいただけますと幸いです。

対象となる有価証券

対象となる有価証券は、いわゆる「有価証券」といわれるもの全てです。具体的には、株式、債券、投資信託です。所有している有価証券が円貨建てか外貨建てかを問いませんし、証券口座が国内か海外かも問いません。
投資信託に限らず「信託」といわれるものについては、分配金や精算利益を得るいわゆる「受益者」課税の原則があります。このため、受益者の死亡に伴い別の方が受益者となる場合新たな受益者に相続税が発生します。なお、当初から委託者と受益者が異なる「他益信託」の場合、委託者が財産を、証券会社や信託銀行などの受託者に信託した時に受益者に財産を贈与したとみなされ贈与税が発生しますので、併せて押さえていただきたいところです。

相続税計算における有価証券の評価

有価証券や信託の相続税について解説しましたが、税金計算に当たり実際にどのように評価するのか解説します。
(1)上場または店頭公開されている株式・公社債・投資信託
上場している金融証券取引所等が公表する相続日(被相続人が亡くなった日)の最終取引価格(終値)×株式数
(相続日当日に取引がなかった場合は相続日前後で最も近い取引日の終値)

ただし、個人間売買または負担付贈与以外で取得した上場株式の場合、株価変動を和らげるため相続日の月前過去3か月間の月間平均価格の最低価格が相続日終値を下回る場合はその最低価格を用います。

(2)取引相場または気配値のない株式
後述します

(3)取引相場または気配値のない公社債
発行価額に源泉徴収控除後経過利息の価額を加算した金額
ただし、いわゆる割引発行など特殊条件の公社債は異なる評価方法を用います。

(4)取引相場または気配値のない投資信託
相続日において解約または買取請求したと仮定した場合、証券会社等から支払いを受けることができる価額

結構ややこしい非公開株式の評価

取引相場または気配値のない株式については評価方法が複雑なため別タイトルで解説します。
まず、発行している会社の規模を「大会社」「中会社」「小会社」の3つに分類します。この分類は従業員数を主に業種・総資産額・売上高の4つで判定します。詳細はここでは割愛します。
次に、3つの会社分類に合わせて1株当たり価額を以下の通り評価します。
(1)大会社 類似業種比準価額(1株当たり純資産価額も選択可能)
(2)中会社 類似業種比準価額×L+1株当たり純資産価額×(1-L)
(Lは従業員数・業種・総資産額・売上高により変動)
(3)小会社 1株当たり純資産価額((類似業種比準価額+1株当たり純資産価額)÷2でも可能)

類似業種比準価額とは、自社の配当・利益・純資産(帳簿価額ベース)の3つについて同一業種の平均と比較した倍率に同一業種の株価をかけたものです。業種平均指標及び株価は国税庁から定期的に公表されています。
1株当たり純資産価額とは文字通り一株当たりの純資産価額ですが、帳簿価額ではなくあたかも被相続人の相続時点での課税評価額を計算するかのように、会社の資産と負債を相続時点で評価します。

ただし例外的な評価方法もあり、同族会社の株主のうち同族グループに該当しない株主だった被相続人の場合、配当還元方式といわれる年間の配当額を基礎とした計算方法で評価します。また、いわゆる持株会社や土地等保有会社なども例外的な評価方法で評価します。

会社の価値評価

1株当たり純資産価額はあたかも被相続人の相続時点での課税評価額を計算するかのように、会社の資産と負債を相続時点で評価すると説明しましたが、ここで他の回では触れることのない会社や事業を営んでいる個人に特有の資産の評価について解説します。
事業者特有の資産のうち主なものとして、売掛金と棚卸資産の評価について解説します。
(1)売掛金 元本金額+経過利息ー破産などにより回収不能と見込まれる金額
売掛金のほか、未収入金や貸付金など多くの債権も上記の式で評価します。
(2)棚卸資産 商品・製品: 相続時点における消費税抜きの販売価額ー(適正利潤+販売経費)
      原材料: 相続時点における仕入価額+引取運賃
      半製品・仕掛品: 上記の原材料価額+加工費
ここで棚卸資産に含まれるものについて補足しますと、販売目的で保有している資産がすべて含まれ、例えば分譲用の不動産や建設中の建物も棚卸資産として取り扱い、上記の通り評価します。

非公開株式の節税対策

非公開株式は先述の通り、類似業種比準価額や1株当たり純資産価額で評価しますが、価額計算の基礎となる自社の配当・利益・純資産の3つの金額が高くなると当然評価額が高くなり、相続税額も多くなります。そのため、オーナーなど非上場株式を保有する方について評価額引き下げによる節税を行うことが行われています。
対策としては、配当金を減らすのが単純ですが、中小企業ではもともと配当を長く行っていない企業も多く利益もそれほど大きくないことから、純資産価額で節税策を図るのが一般的です。
具体的には、資産内容見直しの例として余剰現金の不動産運用や遊休不動産の処分、相続時の利益圧縮の例として死亡時退職金制度の導入や死亡退職金準備のための役員生命保険の利用などがあります。
ただし、過度な節税対策は税務当局による否認リスクもありますので、慎重に行うべきと考えます。

名義株ありませんか?

有価証券も他の資産と同じように実質的な保有者に対して課税されます。いわゆる名義株といわれるもので、かつての商法で会社設立に最低7人の発起人が必要とされていたため、数合わせのために名義だけ借りたケースが多いです。
名義株かどうかの判断は、出資払込や贈与の状況、議決権行使の状況等を勘案し、名義人が株主としての実態があるかに着目します。例えば被相続人の妻名義の株式があるものの、一体の家計で株主として権利こうした事実がわかる資料がなかった場合、妻名義の株式は被相続人の名義株と判断され、相続税の課税対象となります。また、遺産分割の際相続財産なのかどうかが不明確になり、遺産分割トラブルの原因になります。
現在の会社法では最低株主数は1名のため、もしもの相続の前に株主名義を実質的な株主の名義にあらかじめ変更することをお勧めします。なお、名義書換えにより株式の譲渡や贈与とみなされ課税されるのではないかと不安になる方もいらっしゃるかと思います。もし、名義株の名義変更を検討されるされる際は、あくまで実質的な株主への名義書換えであることを疎明できるようにすることになります。

まとめ

今回は有価証券の相続税について解説しました。非公開株式については計算方法が複雑ですが、生前から株価に影響する論点を押さえて節税対策をすることができます。この点は他の相続財産と比較して予防策を打ちやすい相続財産といえます。
上場有価証券については日々価格変動があるため、含み益に注意して相続税対策をすることになります。