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相続税解説シリーズ③

相続の時にも所得税・消費税のことを考える必要がある!?

相続税解説シリーズ第3回目は、所得税と消費税について説明します。「このシリーズは相続税の解説だから所得税や消費税は関係ないのでは?」とお思いになった方!相続に関する税金は相続税だけではありません!相続が発生すると所得税や消費税の申告と納税も必要になることがあるのです!
相続に関する税金として相続税については当然意識されるのですが、通常毎年決まった時期に確定申告がある所得税や消費税についてはあまり意識しないものです。相続時の所得税や消費税の知識が不足し、申告を忘れたり、遅れたりする結果として余計な税金を負担することもあります。
そのためにも、相続税の細かい論点の解説に入る前に一度、相続時に生じる所得税と消費税について解説させていただきます。今回の解説を通じて相続税対策には所得税と消費税もセットになることをご理解いただき、相続が発生したときにスムーズに税金対策と相続に関する手続が進められるようになりますと幸いです。

準確定申告とは

「準確定申告」という用語の定義は法律で明記されていませんが、確定申告の義務がある人が年の途中で死亡した場合に行う申告のことです。
通常、確定申告はある年の1月1日から12月31日までの1年間に発生した所得を翌年の2月中旬から3月中旬にかけて計算し税額を確定させて税務署に申告書で申告をして税金を払ったり還付を受けたりします。ところが、年の途中でお亡くなりになると当然確定申告を行うことが出来なくなります。
そこで、お亡くなりになった方について1月1日から亡くなった日までの期間に発生した所得について年の途中で確定申告に準じた申告を行います。時期は違うものの「確定申告に準じて」申告することから「準確定申告」と呼ばれます。基本的事項は確定申告と同じですが、準確定申告ならではの論点もありますので次の小項目以降で解説します。

準確定申告の申告者と申告期限

確定申告は対象者本人または本人が委託した税理士が行いますが、準確定申告は本人が亡くなっているため、本人が申告義務者になることは当然なく、本人の権利義務を引き継ぐ立場にある相続人が申告義務者になります(所得税法第125条、消費税法第45条第2項・第3項)。つまり、相続人は相続時に相続税だけでなく所得税や消費税の対応も必要になるのです。また、相続人が複数いる場合は相続税の申告と同様に全相続人の連名で申告します。むろん、準確定申告書の作成・申告を税理士に委託することも出来ます。
申告する税務署は本人がお亡くなりになった時点の住所地を管轄する税務署です。
申告期限は本人がお亡くなりになった日の翌日から4か月を経過する日までで、前年の確定申告が未了であった場合前年分の確定申告も同日までに合わせて行います。
相続税の申告期限が死亡した日の翌日から10ヶ月を経過する日までですので、半年も期限が早いのです。相続に関する税金の対応に当たっては、先に所得税や消費税の対応を検討することをお勧めします。

準確定申告する所得の範囲

準確定申告する所得の種類は確定申告と同じで、対象となる期間は1月1日から本人がお亡くなりになった日までです。このため、相続開始後相続人に入金になったものや支払ったものは対象外となります。特に亡くなった本人の確定申告の中で相続人となる家族の医療費や保険料を含めて所得控除を受けている方は、過去の確定申告の流れで相続開始後の家族の医療費や保険料を誤って含めることがないよう注意が必要です。
また、所得が給与だけで年末調整をもって税金が確定し確定申告をしない方も多いですが、1か所だけから給与所得をもらっていた方については、死亡退職時に年末調整が行われるため、準確定申告は不要です。なお、給与のうち、本人死亡後に支給される給与は先述の通り準確定申告の対象外で、死亡時退職金とみなされ相続税の課税対象となります。

損失が出ていた場合

お亡くなりになった方の中には個人で事業をしていたり、不動産賃貸をしていたりする方もいらっしゃいます。このような方について事業所得や不動産所得を算定すると赤字になることがあります。
通常の確定申告では青色申告の場合、前年度払った所得税の一部を繰り戻す形で還付を受けるか、翌年度以降の所得と相殺するかを選択することが出来ますが、準確定申告では繰越す年度がないため、前年度払った所得税の一部を繰り戻す形で還付を受けるのみとなります(所得税法第141条)。
なお、当該還付金については相続税計算にも影響があります。詳細は後ほど解説致します。

遺産分割後に確定申告が必要なことも

準確定申告の期限は先述の通り相続開始時から4か月以内ですが、その後の遺産分割の結果再度申告が必要になる場合があります。
準確定申告特有の所得として非居住者(相続税法上の定義と若干異なり、日本国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内に国内に住所又は居所を有していた期間の合計5年以下である個人を指します)へ有価証券等を相続または遺贈した場合、相続人への譲渡とみなす所得があります。この所得については準確定申告期限後の遺産分割協議によって決まることもあるため、例外的に分割協議による確定後4か月以内に期限後申告、修正申告まては更正の請求をすることになっています。この場合、追加税額の発生に伴う過少申告加算税や延滞税は発生しません。

準確定申告した税金と相続税

準確定申告した所得税や消費税は申告期限内に相続人が決定した相続割合で按分して各相続人が納付します(国税通則法第5条第1項、第2項)。ただし、限定承認した相続人がいる場合、その相続人は限定承認した相続財産の範囲内でのみ負担(国税通則法第5条第1項)します。按分した税額を上回る相続財産のある相続人は、上回る金額の範囲で他の相続人の納税義務を連帯して負います(国税通則法第5条第3項)。
これら準確定申告した所得税や消費税は、相続税の計算において相続した租税債務とみなされ、相続資産から控除する債務に含まれます。これは所得税部分に相続税を課すいわゆる二重課税の防止の意図があります。一方、準確定申告の結果所得税や消費税が還付される場合、還付金は相続対象の財産とみなされ、相続財産に加算されて相続税の計算が行われます。このように、準確定申告の結果により相続税の計算、税額にも影響があるのです。

まとめ

今回は死亡した人について所得税と消費税の最終納税額の確定を行う準確定申告について解説をしました。冒頭にも申し上げましたが、相続時の税金は相続税だけではありません。他にも相続時の税金がかかるとの理解が不足し、思わぬ負担が発生したとのクレームを受けることがあります。当事務所では、このブログ記事、個別相談時、そして相続税申告代行業務時に準確定申告や他に係る税金についても説明し、思わぬ負担と感じることがないよう対応する方針です。
次回以降、再び相続税自体の論点を解説します。